日本各地の焼き物の種類│産地別の特徴や、魅力を解説
お葬式のマナー・基礎知識
日本には、世界にも認められる伝統的で美しい焼き物がたくさんあります。時代の移り変わりや土地の歴史とともに各地で発展を遂げ、現代まで受け継がれてきました。この記事では、日本遺産や伝統工芸品として有名な焼き物の種類と特徴、その魅力を産地別に紹介します。骨壺にも使われているなど身近だけど意外と知らない、焼き物の世界へ誘います。
焼き物を楽しむために知っておきたい基礎知識
日本における焼き物の歴史は古く、ルーツは縄文土器に遡ります。代表的な焼き物の陶器と磁器の特徴や、焼き物の楽しみ方について紹介します。
焼き物の代表的な種類
焼き物には、原料などの違いによっていくつかの種類があります。代表的なのは、土が原料の陶器と、石が原料の磁器です。2つまとめて陶磁器とも呼びます。石のように硬く焼き締められた、陶器と磁器の中間にあたるのがせっ器です。
陶器は、磁器と比べると吸水性が高く強度が低いので、少し扱いに気を使うものの、土のぬくもりや素朴さが感じられるのが魅力です。磁器は吸水性が低く、シミが付いたり匂い移りしたりしにくいので、普段使いしやすいという特徴があります。また、せっ器は吸水性はありませんが、質感は陶器に近いです。
産地別の特徴や魅力を知れば、焼き物がより身近に
焼き物は全国各地に産地があり、それぞれ違った特徴や魅力があります。産地ごとの違いを知ることでより身近に感じられ、心惹かれる焼き物に出会えることもあるでしょう。日用使いできる食器や部屋の飾りとしてだけでなく、最近では終活の一環として自分好みの焼き物で骨壺を準備する人もいます。ずっとお世話になる器なので、実はお墓以上にしっかりと選んだ方がいいかもしれません。
骨壺の種類と選び方。東西で2倍もサイズに違いが - 家族葬のファミーユ【Coeurlien】
骨壺は遺骨を納めるための入れ物です。火葬後に故人の遺骨を拾って納めます。日本では2~8寸までのサイズが流通していて、どのような骨壺で眠るのかは個人の自由ですが、お墓や納骨堂などは納められる大きさや形状といった選ぶべきポイントがあります。本記事では骨壺の選び方についてサイズ、材質、デザイン、価格の観点から紹介します。
【日本遺産】日本六古窯の焼き物の種類・特徴
日本六古窯(ろっこよう)とは、平安末期から鎌倉時代にかけて開かれ、現在も生産を続ける6つの窯の総称です。平成29年には、日本遺産に登録されたことでも知られています。日本六古窯で生産される6種類の焼き物の特徴や魅力を紹介します。
「せともの」の語源:瀬戸焼(愛知県)
産地 | 種類 | 特徴 |
---|---|---|
愛知県瀬戸市周辺 | 陶磁器 | 白く美しい素地 |
鎌倉時代に開かれたとされますが、その起源は5世紀頃ともいわれ、日本を代表する焼き物のひとつが瀬戸焼です。器の強度を高めるため表面を覆う釉薬(ゆうやく)を塗って焼き始めたことで、実用食器として好まれるようになりました。11~12世紀頃に、絵や模様に釉薬をかけて焼く施釉(せゆう)陶器を手掛けていたのは六古窯の中で瀬戸焼だけです。明治時代にはウィーンで開催された万国博覧会に出展し、海外からも高い評価を得ています。
食器などをよく「せともの」と呼ぶのは、瀬戸焼が語源です。現在では、「陶歯」という陶器で作った人工の歯や車の部品など、さまざまな製品が生み出されています。
赤茶色の急須で有名:常滑焼(愛知県)
産地 | 種類 | 特徴 |
---|---|---|
愛知県常滑市 | 陶磁器 | 鉄分を多く含む粘土の性質を活かした均一な赤茶色 |
瀬戸焼と同様、5世紀頃から焼き物の生産技術を持ち、中世には知多半島の丘陵地に累計3,000基を超す窯が築かれたとされる常滑焼。窯元としては1100年には開かれていたとされ、六古窯のうちで最も歴史があり、かつ最大規模を誇ります。明治時代には西欧の技術が導入され、陶管・焼酎瓶・煉瓦タイルなどの生産が始まりました。
常滑焼を代表する「朱泥(しゅでい)急須」で入れたお茶は、陶土の酸化鉄と反応してまろやかな味になると言われています。
常滑焼を代表する「朱泥(しゅでい)急須」で入れたお茶は、陶土の酸化鉄と反応してまろやかな味になると言われています。
丈夫で水がめとしても重宝された:越前焼(福井県)
産地 | 種類 | 特徴 |
---|---|---|
福井県丹生郡(にゅうぐん)越前町 | 陶磁器 | 水漏れしにくく硬くて丈夫 |
平安時代末期に、常滑の技術を導入して焼かれ始めたのが越前焼です。北海道から日本海沿岸まで船で運ばれ、水がめや壺などの生活雑器として重宝されてきました。室町時代に盛んだった既婚女性が歯を黒くする「お歯黒」の塗り物を入れる壺なども見つかっています。
自然の風合いが楽しめる:信楽焼(滋賀県)
産地 | 種類 | 特徴 |
---|---|---|
滋賀県甲賀市信楽町周辺 | 陶磁器 | 窯変(ようへん)という焼く過程で自然にできる色合いや模様 |
信楽焼は、常滑焼からの影響を受けたのが生産の始まりとされています。茶の産地でもある信楽は15世紀には壺が茶葉詰めとして用いられ、江戸時代には将軍に献上するための御用茶壷の生産がおこなわれるなど茶の湯の流行とともに茶道具が製作されました。
江戸後期から製造された火鉢は信楽の特産品となりました。この技術はのちに、どんぐり眼のたぬきの置き物に受け継がれます。
芸術家の岡本太郎の作品、大阪万博のシンボルである「太陽の塔」の背面「黒い太陽」は信楽のタイルで作成されています。また、NHKの朝ドラ「スカーレット」に登場したことで、近年また注目が集まっています。
江戸後期から製造された火鉢は信楽の特産品となりました。この技術はのちに、どんぐり眼のたぬきの置き物に受け継がれます。
芸術家の岡本太郎の作品、大阪万博のシンボルである「太陽の塔」の背面「黒い太陽」は信楽のタイルで作成されています。また、NHKの朝ドラ「スカーレット」に登場したことで、近年また注目が集まっています。
灰かぶりでできる世界に1つの模様:丹波焼(兵庫県)
産地 | 種類 | 特徴 |
---|---|---|
兵庫県篠山市 | 陶器 | 高温で長時間焼くことで、燃料の松の灰が器にふりかかりできる自然釉(しぜんゆう)と呼ばれる独特の色と模様 |
丹波焼の始まりは平安末期から鎌倉初期と言われています。桃山時代には「穴窯」が使用されていましたが、慶長頃に朝鮮式の「登り窯」や日本では珍しい左回転の「蹴りロクロ」が導入され、大量生産が可能となりました。昭和初期からは美術品としても高い評価を得て、1978年には「丹波立杭焼(たんばたちくいやき)」の名称で、国の伝統的工芸品指定を受けています。器の表面を削って稜線模様を付ける「しのぎ」という技法が有名です。
釉薬を使わない素朴な焼き上がり:備前焼(岡山県)
産地 | 種類 | 特徴 |
---|---|---|
岡山県備前市周辺 | せっ器 | 釉薬を使わず絵付けもしないため、土の独特の味わいと窯変による模様を楽しめる |
備前焼は「ひよせ」と呼ばれる良質な粘土を原料としていて、使い込むほど味が出ると言われています。古墳時代に朝鮮から伝わった須恵器(すえき)という土器が発展し、平安時代に椀などが作られるようになったのが始まりです。安土桃山時代には、茶の湯にも用いられ茶人に愛されました。
【伝統工芸】日本各地の有名な焼き物の種類・特徴
日本六古窯の他にも、国の伝統工芸品に指定されている焼き物は32品目にのぼります(2022年3月時点)。その中から特徴的なものを産地ごとに紹介します。
肉厚で温かみがある:益子焼(栃木県)
産地 | 種類 | 特徴 |
---|---|---|
栃木県 | 陶器 | 砂気が多く粘性が少ない陶土から生み出される、肉厚でぽってりとした素朴なフォルム |
江戸時代末期に、現在の益子町に窯が開かれたのが始まりとされる益子焼。昭和初期に民芸派の巨匠陶芸家・濱田庄司が、益子に工房を構えたことで広く知れ渡りました。1979年には国の伝統的工芸品に指定されています。初めは台所用品が中心でしたが、時代の移り変わりとともに民芸品としての生産が増えています。春と秋の陶器市には、合計60万人が訪れます。
日本一の生産量を誇る:美濃焼(岐阜県)
産地 | 種類 | 特徴 |
---|---|---|
岐阜県 | 陶磁器 | 時代に合わせてさまざまな色や形の焼き物が誕生している |
日本で生産される陶磁器の50%以上のシェアを占める美濃焼は、飛鳥時代に焼かれていた須恵器が起源とされています。安土桃山時代に茶の湯が流行した最中、淡黄色の「黄瀬戸(きせと)」・深い黒の「瀬戸黒(せとぐろ)」・上品な白色の「志野(しの)」・大胆な造形の「織部(おりべ)」という美濃焼を代表する4様式が誕生しました。国内に2つしかない国宝茶碗のひとつ「卯花墻(うのはながき)」は、美濃焼の志野様式です。
鮮やかな絵付けで人気:九谷焼(石川県)
産地 | 種類 | 特徴 |
---|---|---|
石川県 | 陶磁器 | 加賀百万石の装飾文化の影響を受けた豪華で鮮やかな絵付け |
九谷焼は、江戸時代初期、加賀の支藩の大名で茶人の前田利治の命によって、九谷村で窯を築いたのが起源とされます。50年ほどで窯が閉じられ一度は生産が途絶えましたが、約100年程経った後に職人たちの尽力により復興され、現在まで続いています。窯が閉じられる前の作品は、古九谷(こくたに)とも呼ばれます。皿・置き物・花器などが多く、「絵付けなくして九谷なし」という言葉が生まれるほどの鮮やかな仕上がりが魅力です。
格調高く品のある佇まい:伊万里・有田焼(佐賀県)
産地 | 種類 | 特徴 |
---|---|---|
佐賀県 | 磁器 | ガラスのように滑らかな白磁と鮮やかな絵付け |
日本磁器発祥の地として400年もの歴史を持つ有田焼。16世紀末の豊臣秀吉による朝鮮出兵の際に、佐賀藩主が連れ帰った陶工の李参平が、有田泉山で良質の陶石「白磁鉱」を発見したのが始まりとされています。
当初有田で焼かれた磁器は、伊万里の港から輸出していたので、伊万里焼という名で普及しました。骨董品などで「古伊万里(こいまり)」と呼ばれる焼き物は、江戸時代頃に作られた有田焼のことです。ヨーロッパの王侯貴族からも「IMARI」の名で愛されていました。明治時代以降に産地の名をとって有田焼と呼ばれるようになり、現在では有田焼と呼ぶのが主流になっています
当初有田で焼かれた磁器は、伊万里の港から輸出していたので、伊万里焼という名で普及しました。骨董品などで「古伊万里(こいまり)」と呼ばれる焼き物は、江戸時代頃に作られた有田焼のことです。ヨーロッパの王侯貴族からも「IMARI」の名で愛されていました。明治時代以降に産地の名をとって有田焼と呼ばれるようになり、現在では有田焼と呼ぶのが主流になっています
白磁と藍色が味わい深い:波佐見焼(長崎県)
産地 | 種類 | 特徴 |
---|---|---|
長崎県 | 磁器 | 透けるような白磁と、美しい藍色の染料の「呉須」で描かれる絵付け |
慶長3年(1598年)、藩主大村氏が朝鮮から連れ帰った陶工たちと窯を築いたのが始まりとされる波佐見焼。当初は陶器を生産していましたが、徐々に磁器に変わっていきました。高価な磁器を大量生産することで、大衆の手に届きやすくし、生産量を拡大していきます。江戸時代の商人が、舟の上でも安定して使えるよう重心を低くして作った「くらわんか椀」が代表作です。
焼き物の種類の数だけ魅力がある
全国各地で独自の発展を遂げた焼き物は、それぞれ違った特徴や味わいがあります。気になったものや、住んでいる場所の近くに窯元があれば、一度足を運んでみるのも良いかもしれません。実際に触れることで、より魅力を感じることができますよ。