「葬儀は人生最後のエンタメ」コロッケさん【インタビュー後編】~日々摘花 第49回~

コラム
「葬儀は人生最後のエンタメ」コロッケさん【インタビュー後編】~日々摘花 第49回~
ものまねタレントとして長年活躍し、「ものまね界のレジェンド」と呼ばれるコロッケさん。後編では葬儀や故人の供養についてのお考えを伺いました。

ものまねで「天国メドレー」をやってみたい

−−コロッケさんのコンサートは新旧の名曲を聴けることでも人気で、淡谷のり子さんや美空ひばりさん、フランク永井さんなど往年の大スターも登場します。亡くなった方々の歌をそのお姿とともに楽しめるのは、ものまねならではですね。

コロッケさん:僕のものまねは「五木ロボット」みたいにアレンジを加えることが多いのですが、例えばフランク永井さんのように、素晴らしい歌手だけど若い世代にはあまり知られていないという方のものまねをする時は、その方の特徴が全面に出るよう、ふざけずにものまねをします。そうすると、若いお客さんも盛り上がってくれるんですよ。

いつか、亡くなられた歌手の方々の歌ばかりをちゃんと聴いていただく「天国メドレー」もやってみたいと考えたりしています。年配のお客さんに「懐かしいね」と楽しんでいただけたらうれしいし、若いお客さんにもこんな素敵な歌手がいたということを知ってもらえたら、それもうれしい。

でもね、それぞれの世代に楽しんでいただく以上のことをやりたいんです。僕が考える本当のエンターテイメントというのは、パフォーマンスの瞬間に人の心を動かすだけではなく、時を経ても人々の記憶に残り、家族の対話や笑顔を生み出すもの。おじいちゃん、おばあちゃんと一緒に観に来てくれた小学生のお孫さんが帰宅後「窓を開ければ〜」と歌い、その光景をお父さん、お母さんが笑顔で眺める。そんな光景がものまねから生まれたら、と思っています。

懺悔映像に「あっち向いてホイ」。明るい葬儀があってもいい

−−ところで、葬儀について、コロッケさんはどのようなお考えを持っていらっしゃいますか。

コロッケさん葬儀は人生最後のエンタメ、というのが僕の考えです。だから、僕の葬儀では、思いっ切り楽しんでもらいたいですね。祭壇だけでなく、入り口から洗面所まで会場内の至るところに僕の顔マネ写真を貼って、トイレで用を足そうとしたら「何でここに顔があるんだよ」みたいな。皆さんがお腹を抱えて笑い、「いい加減にして」と突っ込まれるほど思いっ切りふざけたいです。

−−こんなことを申し上げていいのかわかりませんが、コロッケさんのご葬儀に伺ってみたいです。

コロッケさん:ありがとうございます。日本の葬儀のイメージって暗いけど、明るくて、参列するのが楽しみになるような葬儀があってもいいですよね。これは僕が芸人で、人を楽しませることが好きだからでもあるけど、それだけではありません。参列者が楽しんでくれるような葬儀をしよう、と考える方がその人らしさが伝わる葬儀になる気がするんです。

自分は真面目で、人を楽しませるような性分じゃない、という方もたくさんいるでしょうね。でも、ひとつだけでもやってみるといいと思うんです。映像を撮影しておいて、生前に言えなかったことを懺悔するとかね。男の人だったりすると、絶対、何かあるから(笑)。

まあ、そこまでしなくても、映像で参列者と「あっち向いてホイ」をするとか、何でもいいんですよ。生前は厳格なお父さんだったりしたら、「あっち向いてホイ」なんてかなりのインパクト。「こんなことをやる人だったんだ」って、泣き笑いです。
コロッケさん:葬儀には故人と面識のない人が参列することも多いけれど、明るい葬儀だと、そういう方にも故人の人となりが伝わる​のがいいですよね。袖振れ合うも他生の縁と言いますから、来世で会うこともあるかもしれないし。

暗い葬儀がダメだという話ではないんですよ。ご事情によっては、明るい葬儀なんてとてもできなかったりもする。明るい、暗い以前に、ご遺族の気持ちを損なうようなことがあってはいけない、というのは葬儀の大前提ですよね。

ただ、暗い葬儀にすればご遺族の気持ちが癒えるかと言えば、そうではないはず。葬儀の暗さによって悲しみが増して、気持ちが沈み込むというようなこともなきにしもあらず、なのではないでしょうか。だから、状況が許す限り、葬儀は明るく。残された人たちの気持ちが落ちていくような葬儀はしたくない​、というのが僕の思いです。

「自分が一番」よりも「相手が一番」の方が人生は開ける

−−葬儀や死は忌むべきもの、避けるべきものとされがちですが、葬儀を「人生最後のエンタメ」と考えると、死に対するイメージも少し変わりそうです。

コロッケさん死は怖いですし、別れはつらい。それはやっぱりそうだと思うんです。でも、自分の葬儀でみんなに楽しんでもらえるような何かをできないかな、とアイデアを練っていると、その恐怖がちょっと和らぐ気がするんですよね。自分が残したもので大切な人たちがくすりとでも笑ってくれる。その姿を想像すると、死が楽しみとはならないにしても、崖から落ちるような恐怖ではなくなるというか。

いや、もう、人間ってやっぱり死は避けられないですからね。遅かれ早かれ、この世との別れは誰にも訪れる。それならば僕は笑って別れたいし、お亡くなりになった方々のことも、最後の最後は笑顔で見送ることが供養になるのかなと思っています。

−−ありがとうございました。最後に、読者に言葉のプレゼントをお願いできますか。

コロッケさん:僕は自分で作った「相手が一番 自分が二番」という言葉を座右の銘にしているんです。人は「自分が一番」と思うと、相手のことが見えなくなって、物の見方が自分中心になりますよね。

芸人を例に挙げると、お客さんにウケない時に「わかってくれないなら、いいや」と相手を切り捨てたり、我を張れば、そこで終わってしまう。一方、「相手が一番」なら「なぜウケないんだろう」「どうすれば、笑ってもらえるだろう」と考えますから、ウケなくて一時的にヘコんだとしても、それが成長の糧になります。

物事って人間関係に左右されるところが大きいですから、「自分が一番」よりも「相手が一番」の方が人生は開ける、と僕自身の経験から思います。でも、今の世の中は「自分が一番」の人が増えている気がするんですよね。それはやっぱり、いいことではないと思うんです。だから、「相手が一番 自分が二番」。僕自身に言い聞かせているこの言葉を、皆さんにも伝えたい​です。

~EPISODE:さいごの晩餐~

「最後の食事」には何を食べたいですか?
赤ウインナーのケチャップ炒めです。うちは貧乏でしたから、魚肉の赤ウインナーを使って母が作るケチャップ炒めはごちそうでした。僕にとって「思い出の味」と言えば、赤ウインナー。食べると、母と姉と一緒に食卓を囲んだ熊本の実家の光景とか「ものまねの大会で初めて優勝した時も、帰り道で赤ウインナーを買ってひとりで食べたなあ」とか、人生のいろんなことを思い出します。

赤ウインナーのケチャップ炒め

かつてお母様が作ってくれた「赤ウインナーのケチャップ炒め」。現在はコロッケさんが家族のために作り、4人のお子さんのお弁当にもよく入れたそうです。調理法にも一家言あり、「ウインナーに切れ目を入れることと、切れ目が開くまで焼いた後、一度火を止めてケチャップを入れ、ふたをしてフライパンを揺すってケチャップを全体に絡めることがポイント。ケチャップが焦げず、しっかりと味が絡みます」と優しい笑顔でコツを伝授していただきました。

プロフィール

ものまねタレント/コロッケさん

【誕生日】1960年3月13日
【経歴】熊本県熊本市出身。1980年、NTV「お笑いスター誕生!!」でデビュー。テレビやラジオで活躍する一方、全国各地でのものまねコンサートや大劇場での座長公演を定期的に務める。現在のものまねレパートリーは500種類以上。
(取材・文/泉 彩子  写真/鈴木 慶子)