「喉仏」は体に宿る仏様。火葬後におこなう収骨の方法も

お葬式のマナー・基礎知識
「喉仏」は体に宿る仏様。火葬後におこなう収骨の方法も

この記事はこんな方におすすめです

最近、葬儀に参列した
収骨で喉仏が特別扱いされる理由が気になった
火葬後の収骨時、最後に骨壺へ納められる喉仏。実は収骨時に「喉仏」と言われるのは「軸椎(じくつい)」という骨であり、普段私たちが見ている男性の喉にある喉仏とは別物です。本記事では、喉仏の実態や古くから大切にされてきた理由をはじめ、収骨の方法や分骨について詳しく紹介します。

収骨で「喉仏」が大切に扱われる理由

火葬後におこなわれる収骨で、最後に骨壺に入れられるのが喉仏です。大切に扱われる理由には、喉仏の形が深く関係しています。まずは喉仏の実態と、収骨時に大切に扱われる理由から紹介します。

火葬後の「喉仏」は、男性の喉にあるものとは別物

普段、私たちが“喉仏”と表現している男性の喉にある突起部分と、収骨時に“喉仏”と呼ばれるものは別物です。収骨時に喉仏とされるものは、軸椎(じくつい)という骨のこと。軸椎は背骨の上から2番目の骨で、女性にも存在します。対して、男性の喉にある喉仏は甲状軟骨という軟骨です。軟骨は火葬によって燃えて消失するため、代わりに軸椎を喉仏としているのです。

「喉仏」が大切にされるのは形が仏様に似ているから

軸椎が喉仏と呼ばれるのは、形が座禅を組んでいる仏様(お釈迦様)に似ているためです。その形から「体に宿る仏様」と考えられ、大切に扱われてきました。
<軸椎の特徴>
  • 輪になった形で中が空洞になっている
  • 丸い突起がある
  • 平らな突起がある
なお、喉仏にはいくつかの言い伝えがあります。一説では「火葬後に喉仏がに残るキレイと、生前に善いおこないをした証拠」と考えられ、極楽浄土へ行けると言われています。

火葬後におこなう収骨の方法

お骨を拾って骨壺へ納める儀式を収骨と呼びます。やり方は係員から指示されますが、基本的なマナーや、やり方を知っておくと安心です。ここでは、お骨を拾う順番や東西での違いなどを詳しく紹介していきます。

二人一組で、故人と縁の深い人からおこなう

また、収骨は「喪主→遺族→親族」のように、故人と縁の深かった順におこなうのが一般的です。なお、小さい子どもは無理に参加する必要はありません。
収骨をするのは、火葬後に収骨室へ移ったタイミングです。長さの異なる箸が対になった骨上げ箸(御骨箸)を使い、二人一組で1つのお骨を拾って骨壺に納めます。

「喉仏」は最後に喪主が拾う

収骨では「足→腰→お腹→胸→頭」と、骨壺に納めるお骨の順番が決まっています。これは、生きているときと同じ姿にするためです。また喉仏を拾うのは最後で、故人と最も縁の深かった人、つまり喪主です。喉仏を納めたら係員が骨壺を箱に入れ、収骨は完了となります。
なお、収骨のやり方は地域によって異なる場合があります。例えば、大きな骨や歯から拾い始める、拾い上げたお骨をほかの人へ箸から箸へと受け渡すなどです。とはいえ、収骨は係員の指示に従って進めれば問題ないので、心配する必要はありません。

収骨の方法は西日本と東日本で異なる

東日本はすべての遺骨を骨壺に納める“全収骨”、西日本は一部のみを骨壺に納める“部分収骨”と、収骨の方法は東西で異なります。全収骨と部分収骨では拾うお骨の量が異なるため、使用する骨壺のサイズにも違いがあります。
東日本 西日本
収骨の方法
【全収骨】
足から順にすべてのお骨を拾い、最後に喉仏を骨壺に納める
【部分収骨】
足から順にお骨を少しずつ拾い、最後に喉仏を骨壺に納める(残った遺骨は、火葬場で供養してもらう)
骨壺のサイズ 7寸サイズ(直径21センチほど)が主流 5寸サイズ(直径15センチほど)または、6寸サイズ(直径18センチほど)が主流

また、骨壺については以下の記事で詳しく紹介しています。

収骨や「喉仏」に関するよくある疑問

収骨でよくあるのが「喉仏が見当たらない」「途中で骨を落としてしまうのが不安」という声です。やり方や流れと同様、基本的には火葬場の係員の指示に従えば問題ありません。とはいえ、先に対処法を知っておくと、いざというときに慌てずに済むはずです。そこでここでは、収骨や喉仏に関するよくある疑問を解決していきます。

「喉仏」が見当たらないときは?

火葬後に喉仏(軸椎)が見当たらないことはほぼありません。ただし割れている、ボロボロになっているなど、喉仏の状態が良くないと見つからないことがまれにあります。
キレイな喉仏は丸く、中心が空洞になっています。骨が割れてしまってどれが喉仏か分からない場合は、曲線を描いている骨を探してみると、見つけられるかもしれません。なお、骨がボロボロになってしまうのは、故人の骨密度が関係していると言われています。

収骨時に骨を落としてしまったときは?

収骨は慎重におこなうことが大切です。しかし普段はしない儀式であり、緊張からお骨を落としてしまうことも考えられます。そのようなときは、やり直せば問題ありません。慌てずに落ち着いて、係員の指示に従ってくださいね。

宗派や地域によっては「喉仏」を分骨することもある

分骨とは、お骨を複数の骨壺に分けて供養すること。お骨を複数のお墓に納骨するとき、一部を手元に置いておきたいときなどに選ばれる方法です。ここでは、分骨について詳しく紹介します。

浄土真宗では分骨をすることもある

浄土真宗では、喉仏のみ分骨することがあります。通常は骨壺を1つ用意し、そこにすべての遺骨を納めますが、 浄土真宗で分骨する時には2つ必要となります。1つは故人のお墓へ納めるもので、喉仏以外のすべての骨を納めるためサイズは大きめです。もう1つの骨壺は、東本願寺か西本願寺に分骨するために必要となり、喉仏のみを納めるのでサイズは小さめです。
しかし、浄土真宗の教徒だからといって、京都まで納骨に行くのは難しいこともあるでしょう。関東などでは分骨をしないことを選択する人も多いようです。そのほか、分骨してもお寺には納骨せず、手元供養とし、三回忌や七回忌といった法要の際に、お墓へ納骨することもあります。

分骨をする際は事前の手続きが必要

分骨をする際は分ける骨壺の数だけ分骨証明書が必要です。分骨証明書は火葬場に発行してもらいます。火葬の前から手続きができる火葬場もありますが、なかには当日のみのところもあるので、自分で分骨証明書の発行手続きをする場合は、あらかじめ確認しておくとスムーズです。
分骨はお墓に納骨した後でも可能です。しかし、単にお骨を取り出すだけでなく、閉眼供養や開眼供養も必要になるなど、手続きが少し複雑になってしまいます。分骨することが前もって分かっている場合は、先に手続きすることをおすすめします。
なお、分骨証明書の発行手続きは葬儀社に代行を依頼することもできます。分骨用の骨壺も同時に用意できるので、相談してみても良いかもしれません。

分骨後に手元供養をする地域・方法もある

西日本の一部の地域では、喉仏だけを骨壺に納めて仏壇で供養する“手元供養”をする風習があります。その地域以外の人も、喉仏などのお骨を手元供養することで、故人を身近に感じられるでしょう。手元供養で用いられるのは、ミニ骨壺やミニ仏壇、遺骨アクセサリー、遺骨プレートなどです。
手元供養について、詳しくは以下の記事で紹介しています。

大切にされてきた「喉仏」には、多くの想いが詰まっている

喉仏の骨は形が仏様の座禅姿に似ていたり、数々の言い伝えがあったりと、古くから大切にされてきました。収骨では喪主によって最後に骨壺へ納められるなど、数ある骨の中でも特別な存在と言えます。「体に宿る仏様」とも言われる喉仏には、故人はもちろん、先人たちや家族の想いも込められています。喉仏の大切さを知ってから収骨に参加すると、また違った見方ができるのではないでしょうか。

この記事の監修者

瀬戸隆史 1級葬祭ディレクター(厚生労働省認定・葬祭ディレクター技能審査制度)
家族葬のファミーユをはじめとするきずなホールディングスグループで、新入社員にお葬式のマナー、業界知識などをレクチャーする葬祭基礎研修などを担当。