蓮華とは、ハスの花や睡蓮の総称。花色と仏教の関係も解説

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蓮華とは、ハスの花や睡蓮の総称。花色と仏教の関係も解説
古くから仏教と深い関わりを持つ蓮華(れんげ)はハスや睡蓮などの総称とされ、仏教においては花の色によって異なる意味を持つと言われています。この記事では蓮華と呼ばれる3種類の花の見ごろや花言葉などを紹介するとともに、蓮華と仏教との結びつき、そして人としての心の在り方を表す「蓮華の五徳」について詳しく解説します。

蓮華と呼ばれる3つの花

古くから蓮華と表される花には、ハス、睡蓮(すいれん)、蓮華草(れんげそう)があります。最初に、それぞれの花の特徴や違いについて解説するので、区別するための参考にしてください。

1.ハスの花

蓮華とは文字通り、ハスの花のことです。
ハス科に属するハスは、大きな花を咲かせ、優雅な香りを漂わせます。朝の早い時間帯から咲き始め、数時間経ったらツボミになる、という過程を繰り返し、3日くらいで花の寿命を迎えるのが特徴です。
花弁が散った後は、花の付け根だった部分が剥き出しになります。この付け根が「ハチの巣」を想起させる姿なので、「ハチス」と名付けられました。次第になまりが入り、現在はハスと呼ぶのが一般的です。
水面から芽が出て成長すると、空に向かって茎が伸びる立ち葉が出現するのも、特筆できる性質の1つ。光沢がなく、丸みを帯びた葉を付けます。
ちなみにハスの根は、料理に使うレンコンとして親しまれています。東京などの一部地域ではレンコンをハスと呼ぶこともあるようです。
科名 ハス
開花時期 6月下旬~8月初旬
代表的な花言葉 清らかな心・神聖
西洋での花言葉 あなたと一緒なら苦痛がやわらぐ

2.睡蓮(すいれん)

睡蓮は、ハスと異なるスイレン科の花ですが、蓮華と表す場合があります。形がハスに近い印象を与えるのに加え、花は日差しが弱まると閉じるため、眠るハス(睡蓮)と表記されるようになったといわれています。
水の中から睡蓮の芽が出て成長が進むと、浮き葉が現れます。葉には、エナメルを思わせる艶があり、深い切れ目が入っているのが特徴です。
主に仏教では、この睡蓮とハスの花を合わせて蓮華としています。
科名 スイレン
開花時期 5月〜10月(種類によって差がある)
代表的な花言葉 信仰・純粋な心・清浄
西洋での花言葉 清らかな心

3.蓮華草(れんげそう)

田畑や野原でみられる春に咲くピンク色の可愛らしい花は、蓮華草(れんげそう)といいます。
休耕地に咲く蓮華草は、春の風物詩の1つ。根に窒素(ちっそ)を溜め込み、土壌を豊かにする性質があるため、一時的に耕作を休んでいる田畑に植えられていました。化学肥料を用いることが多くなった近年では、蓮華草畑を見かけることは少なくなっています。
花びらの付け根が白く、先端に向かって濃いピンク色のグラデーションを作るのも蓮華草の魅力です。放射線状に広がって開花する様子がハスを想起させるため、蓮華と呼ばれるようになりました。
科名 マメ
開花時期 桜が散り、気温が上がる4月~5月頃
代表的な花言葉 私の幸福・心がやわらぐ
西洋での花言葉 あなたと一緒なら苦痛がやわらぐ

蓮華と仏教の関係とは

前述の通りハスや睡蓮をまとめて蓮華といい、仏像の台座や香典袋など、仏教関連のものに描かれることがよくあります。また、浄土には4種類のハスが咲くという言い伝えもあり、蓮華は古くから仏教と深い結び付きを持つ花です。ここでは、仏教と蓮華の関係について紹介します。

もともと仏教とともに伝来した言葉

中国から仏教とともに伝わり「高貴な仏の悟り」を表す、蓮華。泥の深くに根を伸ばし、成長した後も泥に汚れることなく綺麗な花を咲かせる姿は、仏教の教えと通じるものがあり、古くから大切にされてきました。
泥を俗世に例え「汚れた世の中や煩悩にそまらず清らかである」という意味の「泥中の蓮(でいちゅうのはす)」や「ハスは泥より出でて泥にそまらず」などのことわざが残っています。

仏教における重要なモチーフ

仏具の題材にされるほど、仏教界で大切な存在とされている蓮華。なかでもハスは、仏教誕生の地であるインドの国花で、古くから深い関係があります。
悟りを開く前の仏様は、未開敷蓮華(みかいふれんげ)というハスのツボミを手にしており、悟りを開いた後は、開敷蓮華(かいふれんげ)と呼ばれる開花した状態のハスを手にしているのが特徴です。また、蓮華は、お盆のお供物など、仏教関連の儀式にも欠かせないものとされています。

蓮華座は悟りの世界を表す仏像の台座

仏像を安置する台・蓮華座は、その名の通り蓮華を題材としています。花の下にある泥を「迷いの世界」、泥に汚れず咲く花を「悟りの世界」として表現。仏像が俗世にそまらず、悟りを開いた状態であることを意味します。
また、お墓に設置された蓮華座は、亡くなった人が蓮華の咲く浄土へ行ったことを意味するほか、「無事に浄土へ着いてほしい」といった遺族の思いが込められています。

極楽浄土に咲く4種類の蓮華の色

お盆のお供え物や飾りには、さまざまな色の蓮華があり、色によって異なる意味を持ちます。仏教で用いられる教典「摩訶般若波羅蜜経」に記されているのは、白・紅・黄・青の4色です。それぞれ、白蓮華(びゃくれんげ)、紅蓮華(ぐれんげ)、青蓮華(しょうれんげ)、黄蓮華(きれんげ)と呼ばれます。
特に重要と言われるのが、白蓮華です。妄念や欲望に惑わされない清らかな仏の心を意味していると言われます。

仏教の教えを凝縮した「蓮華の五徳」とは

ハスの花が備える5つの特徴は、仏教における心の在り方と合致すると言われています。また、生きている間に蓮華の五徳を実践すれば、亡くなった後、浄土に咲くハスの上に生まれるという教えも。そこで、ここでは蓮華の五徳の意味について紹介します。人生を歩む上の道標として、取り入れてはいかがでしょうか。

淤泥不染の徳(おでいふぜんのとく)

ハスは、泥の中に根を張り育ちますが、決して汚れることなく美しい花を見せてくれます。人も同様に、困難な状況下でも清らかな心を維持できることを表す言葉です。

一茎一花の徳(いっけいいっかのとく)

1本の茎に1つの花を付けるハスのように、人は誰もが2人といない唯一の存在。自分の信念を持ち、人生を歩むことが大切とされています。

花果同時の徳(かかどうじのとく)

通常、植物は花が咲く時期と種ができる時期が異なります。しかし、ハスは開花と同じタイミングで種ができると考えられるほど、尊い植物。ハスに付いた種のように、人も誕生した瞬間から仏の心を備えていると言われています。

一花多果の徳(いっかたかのとく)

1輪に多くの種を付ける性質を持つ、ハスの花。種が新たな花を咲かせるように、自分から悟りを開くことで、たくさんの人の幸福を引き寄せると考えられています。

中虚外直の徳(ちゅうこげちょくのとく)

外側が固く、内側には複数の空洞が通るハスの茎は、太陽の方向へぐんぐんと伸びます。一直線に伸びるハスの茎のように、脇目をふらずまっすぐ生きることを目指すのも、仏教における大切な教えです。

仏教でも重要な蓮華は美しくゆかりのある花

ハス・睡蓮・蓮華草の3つがある、蓮華。このうち、仏教とのつながりがある蓮華は、ハスや睡蓮です。仏教界において大切に扱われ、重要な意味を持ちます。また、大輪の花は大変美しくもあります。
ちなみに、ファミーユのロゴマークも蓮華をモチーフにしています。公園や植物園でハスや睡蓮を見かけた際には、ファミーユのことも思い出していただければ嬉しいです。