ホスピスで受けるケアとは?自宅で最期を迎える選択肢も

終活
ホスピスで受けるケアとは?自宅で最期を迎える選択肢も
ホスピスとは、死が近づいている患者に対して緩和ケアをおこない、残りの人生を穏やかに過ごしてもらうことを目的とした医療施設です。専門のスタッフが全面的にサポートしてくれるので、終活の際、最後の住まいの選択肢として検討するのも良いかもしれません。本記事ではホスピスの意味やホスピスケアが受けられる場所、かかる費用などを解説します。

残りの人生を過ごすホスピスとはどんな場所か

ホスピスでは主に末期がんの患者を対象に、症状による痛みやさまざまな不安を緩和するケアがおこなわれます。ホスピスの意味や受けられるケア内容、診療について解説します。

ホスピスとは死期の迫った人が心穏やかに過ごす施設

ホスピスとは主に、患者の症状の痛みや将来への不安を和らげ、その人らしい最期を迎えるために全面的なサポートをする施設を指します。対象となるのは、末期がんや重い病気などで、病気の治癒が望めないと宣告された人や、余命わずかな終末期を迎えている人です。
ホスピスの歴史は、1967年にイギリス・ロンドン郊外にある「聖クリストファー・ホスピス」の開設により始まったそうです。最近は緩和ケア病棟にホスピスという名が多く使われており、療養施設というイメージが定着しつつあります。また、ホスピスで受けるケアのことをホスピスケアと呼びます。

ホスピスで受けられるケアの内容

ホスピスでは痛みなどの症状を緩和する身体のケア、患者本人とその家族の心のケア、福祉制度を利用する際のサポートなどを全面的におこないます。医師、看護師、ホームヘルパー、ソーシャルワーカー、ボランティアがグループとなって、患者とその家族のケアにあたります。ホスピスで受けられるケアの主な内容は以下のとおりです。
【身体のケア】
  • 症状による痛みを緩和する治療
  • 食事のサポート
  • 身だしなみを整える(身体を拭く、髪を整える)
【心のケア】
  • 不安や家族・仕事などの心配ごとなどについて専門家がカウンセリングなどをおこなう
【生活面のケア】
  • 買い物代行
  • 外出のサポート
  • 福祉制度を利用する際のサポート

緩和ケア・ターミナルケアとホスピスケアの違い

ホスピスケアと似た意味を持つ、「緩和ケア」と「ターミナルケア」。どれもケアという面では共通していますが、その目的や対象患者が若干異なります。ホスピスケアと「緩和ケア」、「ターミナルケア」の違いについて解説します。

不安を和らげる「緩和ケア」

「緩和ケア」は、病気やケガなどの症状による体の傷みやだるさ、将来や家族の不安などを和らげることを目的としています。日本では主にがん患者が対象です。病気の治癒が望めない患者に対するホスピスケアと違い、治る見込みのある人にも施されます。また、「緩和ケア」は病気の進行度と関係がなく、がんと診断されたときから対象になるため、治療と同時におこなわれます。

終末期医療を意味する「ターミナルケア」

ターミナルには「終末」の意味があり、「ターミナルケア」は終末期医療とも言われます。痛みを和らげ、死を迎えるまでの残りの人生を自分らしく穏やかに生活できるようサポートすることが目的です。ターミナルケアは疾患問わず対象です。開始する時期に決まりはありません。延命治療の可否やケアを受ける場所も含め、患者本人やその家族の意志で決められます。

ホスピスケアが受けられる主な場所

ホスピスケアが受けられる場所は、ホスピス緩和ケア病棟だけでなく、自宅や施設などもあります。それぞれの特徴について解説します。

病院(ホスピス緩和ケア病棟)

ホスピス緩和ケア病棟は厚生労働省が指定する基準を満たした専門の施設で、全国各地にあります。病室は個室が多く、プライバシーが守られているため、家族とゆっくり過ごすことも可能です。
ホスピス緩和ケア病棟では、基本的にがんの治癒を目指す治療(抗がん剤の投与など)はほとんどおこなわれません。ただし、点滴やレントゲン、血液検査などは医師と患者本人、家族との話し合いで必要に応じて通常の治療は受けられます。症状がつらい場合は、緩和ケアの一環として放射線治療などがおこなわれる場合もあります。
<ホスピス緩和ケア病棟の利用を検討する際の相談先>
  • かかりつけ医
  • ソーシャルワーカー
  • ホスピス緩和ケア病棟

自宅(在宅ホスピス)

在宅ホスピスとは、自宅でホスピスケアが受けられることを意味します。症状が安定している、家族のサポートが受けられるなどの条件を満たせば、担当医や看護師が自宅まで訪問してケアをおこなってくれます。住み慣れた自宅で家族のそばにいながらサービスを受けられます。
症状の急変といった万一に備えて、24時間医師や看護師と連絡できる体制が取られます。在宅ホスピスは家族に介護の負担がかかるデメリットもありますが、さまざまな状況の変化により、自宅でのケアが難しくなった場合は、ホスピス緩和ケア病棟や一般病棟への入院も可能です。
<在宅ホスピスの利用を検討する際の相談先>
  • かかりつけ医
  • ホスピス緩和ケア病棟
  • 訪問看護ステーション
  • 市町村の窓口(高齢福祉課など)

施設(在宅ホスピス型施設)

介護・医療との連携がとれていて在宅ホスピスが受けられる住居と一体型の施設もあります。病院ではありませんが、訪問看護や介護ステーションが併設されているため、24時間365日専門のスタッフが対応してくれます。また、緊急の場合も医師が訪問して診療にあたります。事前に連絡をすれば、家族の面会や宿泊も可能なため、自宅でのケアが難しい場合でも安心して利用できます。利用を検討する際は、希望するケアがしっかり受けられるか確認してください。
<施設の利用を検討する際の相談先>
  • 施設の担当者

ホスピスにかかる費用と利用できる制度

ホスピスケアは受ける場所によってかかる費用が異なります。利用する期間が長いほど費用がかかりますが、一定の条件を満たせば、高額療養費制度や介護保険制度が適用される場合も。こちらでは、ホスピスにかかる費用について解説します。

費用の内訳

ホスピスにかかる主な費用の内訳(例)を紹介します。
ホスピス
緩和ケア病棟
在宅ホスピス(自宅・施設)
費用の内訳 1.入院費(目安)
・3割負担:1日約15,000円
・1割負担:1日約5,000円
※高額療養費制度適用前、治療内容・所得・入院日数などでも変わる

2.食事代
1日1,380円(一食あたり460円)
※標準負担額となる

3.差額ベッド代
個室などによって保険外の費用がかかる場合がある
1.訪問診療費用
医療費の自己負担分

2.訪問看護費用
週3回訪問看護を受けた場合
・3割負担:一ヶ月あたり約40,000円
・1割負担:一ヶ月あたり約13,000円
※管理療養費、基本療養費のみの金額

 3.その他
・薬代(院外処方の場合)
・衛生材料費
・医師や看護師の交通費

施設利用の場合、以下のような費用も発生する
・入居時の敷金
・毎月かかる費用
(家賃、管理費(光熱費)、介護費、食費)
※料金は施設によって異なる
※日用品などは自分で準備する必要がある

高額療養費制度

高額療養費制度とは、加入している健康保険から入院費や医療費の自己負担額の上限を超えた分が払い戻される制度です。例えば、70歳未満の人が制度を利用すれば、自己負担額の限度額である約93,000円(所得によって金額は異なる)の支払いですみます。ただし、保険適用外の治療、食事代、差額ベッド代は支給の対象になりません。
ホスピス病棟にかかる費用では、入院費のみが制度の対象です。在宅ホスピスの場合も診察や薬代などの医療行為に関しては健康保険が適用されるため、高額療養費制度の対象です。
1年間の医療費が一定金額以上の時に還元される「医療費控除」とは別物です。併用できますが、どちらも自己申告制で、それぞれに規約と申請期限があります。双方のルールを確認しながら申請を進めてください。

介護保険制度

ホスピス緩和ケア病棟は医療機関に分類されるため、入院費に介護保険制度は利用できません。ただし、在宅や施設でホスピスケアを受ける場合は、介護保険制度の利用が可能です。
65歳以上の第1号被保険者であれば、原因を問わず要介護認定を受ければ、介護サービスの対象となります。40歳~64歳の第2号被保険者は、がんなどの特定疾病に罹患し、医師から回復の見込みがない状態と診断された場合、介護保険サービスを受けられます。
1年間の医療費と介護費の負担額が大きくなったときには、高額介護合算療養費制度が適用になります。在宅ホスピスを利用している、通院からホスピス病棟に入ったという場合は、合算制度も確認してみてください。

ホスピスも視野に「その人らしい」最期を

ホスピスでは、体や心のさまざまな苦痛を専門のスタッフが緩和してくれます。苦痛が少しでも緩和されれば、笑顔が増えたり、人生の最後にやりたいことができたりするなど、その人らしく過ごせるはずです。大切な家族の最期が穏やかであるために、終末期医療やホスピスについても一度話し合ってみることをおすすめします。