死生観とは生と死の考え方。その日に備えて自分と向き合おう

終活
死生観とは生と死の考え方。その日に備えて自分と向き合おう
死生観とは、文字通り「生と死に対する考え方」のこと。年齢を重ね、同世代の人の死や病気を経験すると、誰しも生と死について自然と考えるものです。この記事では、死生観の意味やポジティブな側面、自分らしい最期を迎えるために考えたい内容、終活のやり方を紹介します。

死生観とは何かを考える

長い人生の中で、生と死を考えることは意外と多いものです。自分なりの死生観を持つことは、いつかやってくる死への心構えにつながります。まず初めに、死生観の意味や考えるきっかけ、ポジティブな側面から紹介します。

死生観は生死についての考え方という意味

死生観とは、文字通り「生と死に対する考え方」のことです。生き方を考える「人生観」とセットでよく目にします。

海外では、死生観はその人が信仰している宗教に影響される部分が大きいとされます。それに対し、日本人は「自分は無宗教だ」と思っている人が多いので、宗教による直接的な影響は小さめです。

1970年代頃からは、「死生学」という死生観をあらゆるジャンルで検証する学問分野が誕生しました。結びつきの強い哲学、宗教などに加え、医学、心理学、芸術など、様々なアプローチで生と死についての研究が進められています。

とはいえ、死後のことは誰にも分かりません。死生観に決まりはありませんので、人それぞれ自分の考え方を持っていて問題ないのです。

生と死の考え方だが、考えるきっかけは「死」が多い

生と死について考えるきっかけは人によるものの、死や病気が関連していることが多いようです。例えば身近な人が亡くなる、自分や家族が病気をする、事故にあって生死を彷徨う、ニュースで戦争や流行り病を耳目にするなど、死を身近に感じることで改めて命の尊さを感じ、無意識に人生やその先にある最期の瞬間に思いを巡らせるものです。
また、死を考えることがタブー視される風潮は世界中にあります。しかし、最近は日本でも“終活”という言葉があるように、自らの死を意識する人や、死に備える人が増えています。

このように、人は生と死を強く意識したときに、自分なりの死生観を持つようになります。

死生観のポジティブな側面について

死生観を持つまでの過程で、自分なりの生と死のあり方を考えることで、自分だけでなく家族などの身近な人の死と向き合えます。それにより、死に対する不安な気持ちを少し軽くできるかもしれません。
漠然とでも生と死を考えることは、今後の人生の生き方を見直すきっかけにもなります。元気なうちに死に関して考えると、今やるべきこと、やりたいことが明確になっていきます。また死への備えをしておけば、自分が最良と思える最期を叶えられるでしょう。それが残された家族に迷惑をかけないことにもつながるはずです。

死生観を持つべく、自分の最期を考える

すぐに自分の死生観を持つのは大変ですが、「家族に見守られながらこの世を去りたい」など、希望する最期の瞬間は比較的考えやすいかもしれません。ここでは、自分らしい最期を実現するための考え方を紹介します。

最期を迎える場所を考える

人は誰しも、いつの日か死が訪れます。最期の瞬間をどこで迎えたいのか、自分の理想を考えてみてください。最期を迎える主な場所は、病院・介護施設・自宅などです。
    <それぞれの特徴>
  • 病院:医師などが常駐しているため、いざというときに対応してもらえる安心感がある
  • 介護施設:看取り介護に対応している施設であれば、そこで最期を迎えられる
  • 自宅:住み慣れた環境で過ごせ、最期を迎える瞬間は家族に看取ってもらえる
そのほか、葬儀やお墓の問題なども考えておくことをおすすめします。

治療やケアに関することを考える

不治の病にかかり、余命がわずかになった際に受ける終末期医療のことをターミナルケアと呼びます。今は元気でも、命にかかわる病を患う可能性は考えておいた方が賢明です。
もしも自分がターミナルケアを受けることになったら、延命治療を望むのかどうか、今のうちから考え始めてみてはいかがでしょうか。自分の意思を決定し、それをあらかじめ家族に伝えておけば、望む最期を迎えられるはずです。
ターミナルケアについては、以下の記事で詳しく紹介しています。

今後の人生でやりたいことを決める

生と死、そして自分の人生を考えたときは、「やり残したまま死んだら後悔しそうなこと」や「今後の人生で実現させたいこと」なども考えてみてください。
具体例が思い浮かばないときは、今までの人生を振り返ってみると昔の記憶が蘇って「親と一緒に行ったあそこに行きたい」「学生時代のあの子に会いたい」など、やりたいことが見えてくるかもしれません。
思い浮かんだものはメモに残してリスト化すると、うっかり忘れてしまうのを防げます。メモに書き記した内容を見つつ、「すぐに実現できそうなもの」と「そうでないもの」に分類し、前者のものから取り組み始めると、日々の生活にハリが出ます。

満足のいく最期のための終活

自分の死に際を考えても死生観を持つまでには至らない。そんなときには終活が役に立ちます。終活とはこれからの人生を自分らしく生き、満足のいく最期を迎えるための活動です。まずは身近なことから取り組んで、段々と生と死に関する内容に迫っていくのも1つの方法です。ここでは、終活の進め方の例を紹介します。

1.終活を前向きなものと捉える

終活は、自分はもちろん、大切な人たちのために少しずつ最期への準備を進めることです。悲観的にならずに、前向きに捉えることを意識してください。
終活でやらなければならないことが見えてくると、「残りの人生はこれだけか」と思い悩む暇はなくなります。「まだ人生はこれからだ、明るくテキパキと過ごそう」と、自然とポジティブな考えが湧いてきそうです。
もっともっと前向きになりたい人は、以下の記事でポジティブシンキングのコツをつかんでください。

2.すぐにできることから始める

終活とひと口に言っても、大がかりなものから今すぐ挑戦できるものまであります。まずは、すぐにできる簡単なことから始めてみてはいかがでしょうか。
例えば、洋服の整理も終活の一環です。元気と気力があるうちに整理をしておくと、家族に負担をかけないで済みます。整理する際は不要なものを見極めるために、保有している洋服を「今後も着るもの」と「着ないもの」に分けてみてください。迷った洋服は一度保留にして、その後も着なかったら思い切って処分すると良いかもしれません。
その他、電子機器のデータ整理もお忘れなく。死後、故人のスマートフォンやパソコンなど、電子機器に残されたデータを“デジタル遺品”と呼びます。他人に見られたくないデータがある場合は、今のうちに整理しておくと安心です。ほかにも、ネット銀行や各種SNSのログイン情報なども、家族にしっかり伝わるよう手段を講じておくことも大切です。
デジタル遺品の整理方法などは以下の記事で詳しく解説しています。

3.自分の希望をノートや文書に記す

終活などの最中に自分の人生終盤への希望が出てきたときは、エンディングノートの活用がおすすめです。望む葬儀や医療、財産に関する情報、家族へのメッセージなどを書き記せます。家族に自分の希望を伝えられる上、書くために自然と人生を振り返るので、生と死に向き合うきっかけにもなります。
また、エンディングノートとは別の書面として、リビング・ウィルがあります。リビング・ウィルとは、終末期医療において自分が意思表示できなくなった状況に備えて、希望する治療内容や方針を示す文書のこと。延命治療の希望の有無などを始め、医療に関する希望を生前に表明しておくことで、自分が望む最期を迎えられる可能性が高まります。
リビング・ウィルの基礎知識は下の記事でご確認ください。

4.人生会議をして身近な人と話し合う

人生会議とは、自分の大切にしているもの、希望する医療やケア内容を自ら考えた上で、信頼できる人や医療・ケアチームと話し合うことです。厚生労働省が取り組みを推奨しています。
人生会議に取り組んでおくと、万が一のときに信頼できる人から自分の希望を医療従事者に伝えてもらえます。それにより、自分の希望を汲んだケアを受け、理想に近い生活を送れる可能性が高まるでしょう。人生会議に取り組む際は「自分が信頼できる人は誰なのか」「大切にしている物事は何か」を考えることから始めてください。

人生会議の進め方については以下の記事で詳しくご紹介しています。

死生観を持ち、この先の人生をより良いものに

死生観が気になった今こそ、自分の生き方と向き合い、望む最期をじっくり考える良い機会です。終活は決して暗いものではありません。「やってみたい」と感じるものがあれば、今できるものから挑戦してみてはいかがでしょうか。自分なりの死生観が持てるように、今この瞬間を大切に、そしてこれからの人生を楽しんでくださいね。

この記事の監修者

政田礼美 1級葬祭ディレクター(厚生労働省認定・葬祭ディレクター技能審査制度)
家族葬のファミーユ初の女性葬祭ディレクター。葬儀スタッフ歴は10年以上。オンライン葬儀相談セミナーなどを担当。