家族葬のお布施相場はいくら?地方や宗派で違う価格と内訳を紹介

ご家族の通夜・葬式準備
家族葬のお布施相場はいくら?地方や宗派で違う価格と内訳を紹介

この記事はこんな方におすすめです

初めて家族葬をおこなう人
家族葬のお布施相場や内訳を知りたい人
お布施は、故人に対する僧侶の読経や戒名授与へのお礼であり「施し」という宗教的意味を含みます。一般葬と家族葬でお布施の金額は変わりませんが、地域や宗派などによって変動することも。この記事では、家族葬で渡すお布施の目安や内訳、宗派別でみるお布施の違い、渡し方のマナーについて紹介します。

家族葬の場合、お布施の相場はどれくらい?

葬儀で僧侶にお経を読んでもらった場合、お布施を渡すのが古くからの習わしです。故人を供養した僧侶に遺族が感謝の気持ちを示すために渡すので、お布施に固定の金額はありません。しかし、実際にはどのくらいの金額を渡せば良いのか悩む人も多いはず。そこで、まずはお布施の額の目安について紹介します。

家族葬のお布施の額は地域によって異なる

2020年2月に株式会社鎌倉新書が実施した第4回「お葬式に関する全国調査」によると、お布施の全国平均は23万6,900円です。ただし、地域によってお布施の平均額は変わります。
■地域別のお布施の相場
  • 北海道・東北地方:約31万円
  • 関東地方:約29万円
  • 中部地方:約25万円
  • 近畿地方:約21万円
  • 中国・四国地方:約20万円
  • 九州地方:約17万円
金額差は、葬儀の形式ではなく地域ごとの習慣や寺院・宗派の違い、戒名の位などによるものです。

お布施にはダメな金額はない

お布施には、香典のようにダメな金額や枚数は存在しません。縁起が悪いと言われる金額や枚数を包んでもマナー違反にはなりませんが、相手に余計な手間を取らせないよう切りの良い数字を心がけることが大切です。

菩提寺がなくてもお布施は必要

菩提寺とは、先祖から代々続くお墓があるお寺のこと。菩提寺がないときでも仏式で葬儀をする場合はお布施が必要です。心当たりのお寺がなかったり、知っている僧侶がいなかったりしても、葬儀社に紹介してもらったお寺へ読経や戒名の授与を依頼することが可能です。葬儀社を通して依頼する場合は、お布施の額が定められているケースもあります。

家族葬のお布施の内訳

お布施は、故人への読経や戒名を授かったお礼という名目で、ひとまとめにしたものを僧侶やお寺に渡すのが一般的です。ただし、お布施には内訳があり、各名目に分けて渡す場合もあります。そこで、ここからはお布施の内訳とそのほかの費用について紹介します。

①読経料

読経料は、故人のためにお経を読んだ僧侶に対するお礼です。僧侶に足を運んでもらう日数や人数によっても変わりますが、15~30万円が平均的な金額。枕経や通夜など、お経を読むタイミングは宗派や葬儀の内容で異なります。
葬儀内容を比較的自由に選べる家族葬では、お経を読まない無宗教形式も選択できます。その際は、故人や遺族の意向に合わせて親しい間柄だった身内のみを集め、僧侶を呼ばずにお別れの会とします。
しかし、家族葬は儀礼儀式を「簡素」や「質素」にするものではないため、僧侶へ依頼するのが一般的です。愛知など地域によっては、主に菩提寺の導師のほかに脇僧と呼ばれるお供の僧侶が複数名で来られる場合が今でもあります。その場合には一人ずつお布施を渡します。金額の目安は一人約5~10万円で、脇僧は導師の読経料の1/3くらいを目安としますが、依頼時に導師に確認しておくと安心です。

②戒名料

戒名料は、故人に戒名を授けてもらったお礼として渡します。戒名の位は、先祖と合わせるのが基本で、菩提寺との付き合いや故人が生きていたときの社会的地位などによっても変わります。戒名の位によって金額が変わるため、戒名料に定額はありません。
地域によっても戒名の金額は変動し、札幌市周辺では10万円~が多く、上位でも20~30万円ほどと言われます。関東エリアでは20~50万円が平均で、上位になると100万円以上になることも珍しくありません。また、お通夜や葬儀式の読経などを含めたお布施としてひとまとめにするのではなく、戒名料として別に払うケースもあるため、分からないときは菩提寺や葬儀社に相談すると安心です。

③お車代(お布施と別に用意)

お車代は、自宅や葬儀場まで僧侶が移動するための交通費を指し、お布施とは別に渡します。5,000円~1万円が平均と言われていますが、想定される費用をあらかじめ計算しておくとスムーズです。また、遠方から来た僧侶には、交通費や宿泊費として1万円ほど上乗せして渡します。

④御膳料(お布施と別に用意)

通夜・告別式後の通夜振る舞いなどの会食へ僧侶が参加しないときに渡すお金のことを御膳料と呼びます。食事内容に合わせて、5,000円~2万円ほどが金額の目安です。僧侶が会食に参加するときには用意する必要はありません。

⑤葬儀以外のお布施

お布施は故人を供養してくれた僧侶に対して感謝の気持ちを表すものなので、通夜や葬儀以外でお経を読んでもらった場合にも渡す必要があります。例えば、納骨や四十九日法要、一周忌などで僧侶を呼び、お経を読んでもらったときはお布施を渡してください。
■金額の目安
  • 納骨:3万~5万円
  • 四十九日法要:3万~5万円(葬式で渡したお布施の10パーセントが目安)
  • 一周忌法要:3万~5万円
  • 三回忌法要:3万円~5万円

宗派別でみる家族葬のお布施相場の違い

お布施は、お寺や宗派によっても金額が異なります。また、キリスト教や神道でも献金や御祭祀料を渡すのが通例です。ここでは、宗派別の家族葬でのお布施の相場を紹介します。

【宗派別】お布施の相場

宗派によって異なるお布施の額の目安は以下の通りです。
  • 浄土宗:30~50万円
  • 日蓮宗:30~50万円前後
  • 曹洞宗:30~60万円
  • 真言宗:30万円以上
  • 天台宗:40万円以上
  • 臨済宗:30万円以上
  • 浄土真宗:20万円前後
  • キリスト教:10~20万円
  • 神道:15~35万円
上記はお葬式に対するお布施で、いわゆる読経料と戒名料を含めたものです。庶民を中心に広がった浄土真宗は平均金額が低めで、複数の僧侶で儀式をおこなう禅宗は金額が高くなる傾向があります。位の高い戒名を授けてもらった時には100万円を超えることもあります。
キリスト教では献金、神道では御祭祀料(おさいしりょう)として払うのが一般的です。なお、金額はあくまでも目安であり寺院や地域によって変わります。

【宗派別】戒名の相場

宗派によって戒名の構成は異なるため、ここでは一般的に使われる戒名の種類と値段の目安を紹介します。戒名の位によって、お布施の額も異なります。
■浄土宗
  • 信士・信女:30~40万円
  • 居士・大姉:50~60万円
  • 院信士・院信女:70万円~
■日蓮宗
  • 院信士・院信女:30~50万円
  • 院居士・院大姉:100万円~
■曹洞宗
  • 信士・信女:30万円~
  • 居士・大姉:50~70万円
  • 院信士・院信女:100万円~
  • 院居士・院大姉:100万円~
■真言宗・天台宗
  • 信士・信女:30~50万円
  • 居士・大姉:50~70万円
  • 院信士・院信女:80万円~
  • 院居士・院大姉:100万円~
■臨済宗
  • 信士・信女:30~50万円
  • 居士・大姉:50〜80万円
  • 院居士・院大姉:100万円〜
■浄土真宗(生前授与の場合)
    本願寺派
  • 釋〇〇(18歳〜):1万円
  • 釋〇〇(未成年):5,000円
  • 大谷派
  • 【普通法名】釋(尼)〇〇:2万円
  • 【院号法名】〇〇院釋(尼)〇〇:8万円
浄土真宗は戒名ではなく法名を用います。法名はお葬式のお布施に含まれるものなので、ここでは生前に受ける帰敬式で法名を授かった時の金額を紹介しています。なお、本願寺派でも院号法名「〇〇院釋(尼)〇〇」を希望する場合には別途料金が必要です。
また、前述の通り戒名料は原則お葬式で渡すお布施に含まれるものです。しかし、場合によっては別に用意することもあります。先祖代々の慣習やお寺の考えを事前に理解しておくことが大切です。

家族葬でのお布施の渡し方

お布施を渡す機会は多くありませんが、いざというときに失敗しないよう正しいお布施の渡し方を把握しておくと安心です。最後に、お布施を渡すタイミングや渡し方のマナーを紹介します。

お布施を渡すタイミングと渡し方

お布施は、葬儀の前後に渡すのが通常です。葬儀社への支払いとは別に、僧侶へ直接渡してください。「本日は故人のためにお勤めいただきありがとうございます」「本日はどうぞよろしくお願いいたします」など、感謝の言葉を伝えます。
ただし、菩提寺や格式の高い寺院は葬儀前後に、日を改めて寺院に直接赴きお布施を渡す場合もあります。そのため当日は感謝の言葉と同時に『葬儀後に改めてお寺へお伺いさせていただきます』とお伝えします。このように葬儀中にお布施など高額な金銭を僧侶へ渡すことを避ける配慮をする地域も少なくありません。

お布施の正しいマナー

香典には新札を使わないのがマナーですが、お布施は僧侶への感謝の気持ちを表すものなので、新札を用いても問題はありません。無地の白封筒を使い、表書きとして上部にお布施や御礼、下部に喪主の名前を記します。
僧侶へ渡すときは、小さな切手盆を使うのが昔からの習わしです。切手盆を持っていない場合は袱紗(ふくさ)に乗せ、封筒の正面を僧侶側に向けて渡してください。

お布施相場を知り僧侶へ家族葬のお礼を渡そう

お布施は、故人を供養してくれた僧侶へのお礼として渡すものです。金額に明確な決まりはなく、地域や宗派、お寺によって異なります。どのくらいの金額を用意するか迷ったときは、まず家族や親戚などに前例を確かめます。それでも不明な時には葬儀社に相談することも可能です。金額のみならずお布施の渡し方やマナーも確認し、心を込めて僧侶に感謝を伝えてくださいね。

この記事の監修者

瀬戸隆史 1級葬祭ディレクター(厚生労働省認定・葬祭ディレクター技能審査制度)
家族葬のファミーユをはじめとするきずなホールディングスグループで、新入社員にお葬式のマナー、業界知識などをレクチャーする葬祭基礎研修などを担当。