「枕経」とは?タイミングや流れを知り故人の成仏を願う

ご家族の通夜・葬式準備
「枕経」とは?タイミングや流れを知り故人の成仏を願う

この記事はこんな方におすすめです

はじめて喪主をする
枕経の流れや費用を知りたい
枕経とは、臨終時もしくは亡くなった後すぐに、僧侶が枕元で上げるお経のことです。通夜や葬儀の一環とみなされることが多く、葬儀社とも相談し、親交のあるお寺に依頼するのが一般的です。この記事では、枕経とはどんなお経か、おこなうタイミングや宗派ごとの特徴とお勤めの流れ、依頼から見送りまでの一連の流れ、当日のマナーを紹介します。

枕経の意味とおこなうタイミング

その名の通り故人の枕元で上げる枕経ですが、昔と今では少し意味合いやタイミングが異なります。まずは枕経とはどういったお経か、上げる意味とタイミングを紹介します。

枕経とは臨終の際に僧侶が枕元で上げるお経

枕経は「まくらぎょう」または「まくらきょう」と読みます。限られた身内だけでおこなう仏教儀式の1つで、親族の死の間際や亡くなった後すぐに、僧侶が枕元で上げるお経を指します。宗派によって呼び方や内容に違いがあるものの、あの世へ旅立とうとしている人を安心させ、往生してもらうために執りおこなうのが基本的な意味合いです。
依頼先は、菩提寺と呼ばれる先祖代々の供養をお願いしているお寺が一般的です。菩提寺がない家は、葬儀社に頼んで紹介してもらうか、枕経をおこなわない場合もあります。菩提寺が遠方などで頼むのが難しい場合は、僧侶や葬儀社と相談して対応を検討してください。

枕経をおこなうタイミング

自宅で亡くなる人が多かった時代は、危篤時に僧侶を呼び、臨終に向かう人の枕元で僧侶にお経を上げてもらっていました。病院で臨終を迎える人が増えた現代では、自宅や葬儀社などに遺体が安置された後、僧侶を招いて読経してもらうのが通例です。地域の習慣などによっても異なるので、タイミングについても僧侶や葬儀社と相談して決めるのが良いでしょう。

枕経の費用や服装・持ち物のマナー

通夜や葬儀・告別式に比べると決まりごとが少ない枕経ですが、基本的なマナーは押さえておくことをおすすめします。枕経の費用と、当日の服装・持ち物など、知っておくべきマナーを紹介します。

枕経の費用と尋ね方

枕経を葬儀の一環として考えるお寺では、枕経についてのお布施は通夜葬儀のお布施に含めてお渡しするため別でお渡しすることは少ないです。ただし、別途5,000円〜10,000円ほどのお車代を渡すのがマナーです。枕経だけを葬儀と異なる僧侶に頼む場合は、お布施も別に用意する必要があります。なお、地域やお寺によっては枕経に対しての金額を決めていることもあるので、悩んだら葬儀社や直接お寺に問い合わせるのが確実です。
僧侶にお布施を尋ねるときは、以下の例文を参考にしてください。
「初めてのことで何もわからず、誠に失礼とは存じますがお布施はいかほどご用意すればよろしいでしょうか。」
お葬式の費用相場については、こちらの記事で紹介しています。

当日の服装

もともと枕経は臨終の床でおこなう儀式だったので、「平服」で良いとされています。とは言えカジュアルすぎる服装は避け、黒やグレー・ブラウンなどの落ち着いた色の服や靴を選ぶのがマナーです。迷ったらスーツ・ワンピース、子どもは学生服などにするのが無難でしょう。華美にならないよう、アクセサリーも必要のないものは外しておいてください。
ちなみに、喪服は通夜までに用意すれば問題ありません。

参列者の持ち物とマナー

枕経に参列する際に必要な持ち物は数珠です。子どもであっても、持参するのが望ましいとされています。通夜や葬儀でも使用するので、カバンに忍ばせおくと良いでしょう。
なお参列者の香典は、通夜や葬儀の受付で渡すのが基本なので、枕経では必要ありません。

【宗派別】枕経の特徴

枕経は仏教儀式であり、神式やキリスト教式の葬儀ではおこないません。ここでは仏教の宗派ごとの特徴や上げるお経の種類を紹介します。
枕経の流れの中では、戒名・法名を授かることがあります。ただし同じ宗派でも地域やご住職のお考えによって、お経のどの部分を読経されるか戒名授与がどのタイミングで行われるかは異なる場合があるので、基本を踏まえた上でお寺に確認すると間違いありません。

浄土宗

お経の種類
四誓偈・阿弥陀経・仏身観文など
浄土宗では生前に仏様と出会えたことや、臨終後に極楽浄土で生まれ変われることに対する感謝の気持ちを伝えるために、故人ではなく仏壇または掛け軸の本尊に向かって読経します。

浄土真宗

お経の種類 正信偈・阿弥陀経など
浄土真宗では、枕経を臨終勤行(りんじゅうごんぎょう)と呼びます。仏様と接する機会をくれた阿弥陀様に感謝を伝えるため、仏壇や本尊の掛け軸などに向かって読経します。

日蓮宗

お経の種類 法華経など
日蓮宗の枕経では、読経の際にカンカンと甲高い音がする木柾(もくしょう)という仏具を使用することがあります。

曹洞宗

お経の種類 舎利礼文・遺教経など
曹洞宗では、お経をあげることを諷経といいます。「臨終諷経」という言い方をする場合もあります。「遺教」はお釈迦さまが亡くなる直前に弟子たちにといた仏教徒としての心得が説かれています。

臨済宗

お経の種類 観音経・大悲呪など
臨済宗では、枕経を枕経諷経(ふぎん)と呼んでいます。臨済宗でも、お経をあげることを諷経といいます。「大悲呪」は千手観世音を賛える32句から構成されています。

真言宗

お経の種類 般若理趣経・陀羅尼・光明真言など
真言宗の枕経では、読経の後に、開祖である空海の名を呼ぶ念仏「南無大師遍照金剛(なむだいしへんじょうこんごう)」を唱えます。

【依頼~お見送り】枕経の流れと挨拶例

現代では、臨終が確認されてから枕経を僧侶に依頼して上げてもらうことがほとんどです。枕経の前後には参加者に連絡したり、通夜や葬儀の相談をしたり、僧侶をお見送りしたりなど、ほかにもおこなうべきことが多いです。ここからは枕経の開始前からの流れと、それぞれのポイントや依頼・挨拶の例文を紹介します。

1.遺体を安置する

病院で臨終が確認された後、自宅や葬儀社などの施設に遺体を移します。安置場所は、葬儀社のスタッフが整えてくれることが多いので、家族は以下のような準備を見守り、焼香をします。
【安置の一例】
  1. 故人を北枕で布団に寝かせる
  2. 神棚に白い紙を貼って封じる
  3. ご本尊をお供えする
  4. 故人の枕元に枕飾りを揃える
  5. 焼香する
枕飾りについても葬儀社が用意してくれることがほとんどです。主に香炉・線香・ろうそく・花などが、故人の枕元に並べられます。
自宅で安置する場合の安置の際の仏壇の開閉については、ご住職に相談するとよいでしょう。
詳しい安置方法については、こちらの記事で紹介しています。

2.お寺と近親者に連絡する

なるべく準備の時間が取れるよう、枕経を頼みたいお寺と、参列してほしい人には、できるだけ早めに連絡します。安置場所が決まった後すぐや、枕経の準備の合間を見て電話で連絡すると良いでしょう。
お寺へ電話で依頼するときの例文は、以下を参考にしてください。
「お世話になっております。◯◯町の◯◯です。実は先ほど父が亡くなり、ただいま自宅(〇〇会館)に連れ戻りました。枕経をお願いしたいのですが、ご住職様のご都合はいかがでしょうか。」
故人の臨終が確認されたのが深夜だった場合など、すぐに電話するのが憚られるときは、電話する時間帯は葬儀社のスタッフと相談してください。できれば危篤に陥ったときに先にお寺に一報を入れておき、連絡がつく時間帯を聞いておくのがベストです。

3.僧侶をお迎えし枕経を上げる

僧侶が到着し、着替えが必要ならまず更衣室に案内します。そして僧侶が故人の枕元に着いたら、すぐに枕経が始まります。
僧侶を迎えるときの挨拶例が以下です。
「お忙しい中、ご足労いただきましてありがとうございます。父もさぞ安心することでしょう。何分不慣れなため、ご指導いただきますようお願いいたします。」

4.葬儀の日程を相談する

通夜や葬儀も同じ僧侶にお願いする場合、枕経の後に僧侶や葬儀社のスタッフとともに、葬儀スケジュールや戒名の相談などをおこないます。その際は、お茶とお茶菓子を出すなどの気配りも忘れないでください。さらに僧侶が帰る際には、車に乗って発車するまでしっかり見送ると礼を尽くせます。

内容と流れを把握して、落ち着いて枕経の手配を

葬儀における喪主の始めの務めとなりうる枕経。臨終から通夜までの間に執りおこなうので、開始前の準備時間は少ないですが、開始後は葬儀社や僧侶が大半を進めてくれます。大切な人を亡くした後で、とっさに言葉がでてこないこともあるため、挨拶例なども参考にしてみてください。

この記事の監修者

政田礼美 1級葬祭ディレクター(厚生労働省認定・葬祭ディレクター技能審査制度)
家族葬のファミーユ初の女性葬祭ディレクター。葬儀スタッフ歴は10年以上。オンライン葬儀相談セミナーなどを担当。