「喪失感」が表す感情と立ち直る方法。死別時にもできる6つのこと

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「喪失感」が表す感情と立ち直る方法。死別時にもできる6つのこと

この記事はこんな方におすすめです

大切な人を失って喪失感を抱いている
喪失感から立ち直りたい
喪失感とは、家族や恋人、ペットなど、大切な存在を失ったときに覚える空虚な気持ちのこと。悲しみや寂しさだけでなく、怒りや不安などさまざまな感情が押し寄せてつらい状態が続きますが、喪失感から立ち直ることは可能です。本記事では喪失感によって心身に現れる変化や続く期間をはじめ、喪失感を抱きやすい場面と、立ち直る6つの方法を紹介します。

「喪失感」が表す感情とは?心身に現れる変化・続く期間

どんな人であっても、大切な存在を失った後は現実を受け止めきれず、どうしたら良いのか分からなくなってしまうものです。まずは今の状態を脱却するヒントとして、“喪失感”とはいったい何なのか、意味や感情、悲しみを感じる期間を紹介します。

喪失感は大切なものを失ったときに抱く感情

喪失感とは家族やペット、友人など、大切なものを失ったときに抱く感情です。「喪失感」という言葉の意味は「空虚な気持ち」です。「心に穴が開いたようだ」などと表現されます。言葉の使い方は「喪失感を抱く」「喪失感に襲われる」「喪失感がある」などがあります。

喪失感を抱いている最中は感情が不安定になりやすい

喪失感に襲われるとき、実際に抱く感情や心身に現れる変化は人それぞれです。寂しさ、悲しみのほかに不安や怒り、無気力感など、感情がジェットコースターのように揺れ動きやすいでしょう。
ときには、自然と涙が流れるようなこともあるかもしれません。それは、失ったものが自分にとってそれほど大切だった、あるいは大切にしてきた証拠です。誰にでも起こり得る心身の変化であり、決して悪いことではありません。感情が安定しないときも、自分を責めることはしないでください。

喪失感を抱く期間は人それぞれ

一般的に、喪失感に襲われているときも時間が経つほど気持ちが楽になると言われています。ですが、いつまで喪失感を抱くのか、その期間は人によって異なります。
例えば厚労省「がん患者白書2016」によると、がん患者さんが亡くなられたときの喪失感が1年以上続く人は33%、3年以上続く人は20%存在しています。これはひとつのデータなので、もっとずっと寂しい気持ちが抜けなくてもおかしくありません。
大切な人やものを失ってしまった現実や喪失感を理解し、受け入れたと自分では思っていても、ふとした瞬間に再び悲しみに襲われることもあるでしょう。それは、喪失感から抜け出すために必要な階段を上っている最中であり、おかしなことではありません。喪失感に襲われたとき、人は「衝撃」「否定」「怒り」「抑うつ」など、複数の段階を経て現実を受け入れると言われています。

【具体例】喪失感を抱きやすい主な場面

人が喪失感を抱く場面は、大切な人との死別とは限りません。生きている相手との別れや身体機能の喪失なども該当します。ここでは、喪失感を抱きやすい場面を5つ紹介します。

家族・友人と死別したとき

親や配偶者、子どもなどの家族、仲の良かった友人など、自分にとって大切な人と死別したとき、多くの人が喪失感に襲われます。近くにいて当たり前と思っていた存在がいなくなり、二度と会えないことを頭では理解していても、心がなかなか受け入れられないかもしれません。人によっては、喪失感を乗り越えるのに時間を要すこともあるでしょう。

ペットを失ったとき

大切なペットを失い、喪失感に襲われることをペットロス症候群と呼びます。人間と違って動物は言葉を話せないため、「もっと早く病気に気づいてあげれば良かった」「治療方法は正しかったのだろうか」などと後悔しやすいのかもしれません。ペットロス症候群になると、自分だけでなく獣医師のことまで責めてしまうこともあります。

会社を退職したとき

男女を問わず、仕事を辞めた後も喪失感を覚えやすいです。例えば、辛かったはずの通勤が懐かしく感じる、仲の良かった同僚の顔が浮かぶ、退職後にやることがない、など。仕事仲間とばかり交流していた、もしくは転勤が多かった人の場合、退職後に遊べる友人が身近におらず、寂しい気持ちになることもあるでしょう。同じ会社に長く勤めた人ほど、喪失感を覚えるかもしれません。

楽しい時間を過ごした後

友人と遊んだときや何かのイベントに参加したときなど、楽しい時間を過ごした後に一人になると、虚しさを覚えて喪失感に襲われることもあります。すぐに別の楽しみがあれば気が紛れるかもしれませんが、特に予定がない、もしくは翌日から仕事が始まる場合は、喪失感が続くかもしれません。

手術・治療によってボディイメージが変わったとき

病気やケガによって手術・治療を受け、それによって身体機能・ボディイメージに変化が現れたとき、人によっては喪失感を抱くかもしれません。例えば、抗がん剤治療による脱毛や乳がんでの胸部の切除は喪失が目に見える分、衝撃も大きくなりえます。また、子宮・卵巣・喉頭の摘出などは、自分ではなくなるような感覚、恐怖に襲われることも。治療中よりも、日常生活に戻ってからの方が現実に直面し、絶望感に襲われることもあります。

【自分と向き合う】喪失感から立ち直る4つの方法

喪失感に襲われているときは、何もする気が起きないかもしれません。しかし、その一方で「現状から脱却したい」「つらい気持ちを手放したい」という願いもあるはず。そんな人に向けて、喪失感から立ち直る手助けとなる4つの方法を紹介します。

我慢せずに気持ちを表に出す

悲しみ、怒りなど、そのときに感じたありのままの感情を表に出してみませんか。悲しいときは涙を流し、怒りを感じるときは迷惑にならない範囲で声に出す、クッションを軽く叩くなど。自分の内から湧き出る感情から目を背けずに、そして我慢せずに解放することで、気持ちが徐々に落ち着いてくるかもしれません。

喪失感を共有する

喪失感に襲われたときは、友人や周囲の人と会ったり電話をしたりして話を聞いてもらうことで心が軽くなることもあります。そのほか、自分と同じ境遇の人と出会い、互いの気持ちを共有することで「つらいのは自分だけではないんだ」と感じられるでしょう。もしくは、喪失感から脱却した人の体験談を聞くことで「自分もいつかは乗り越えられる」と希望を持てるかもしれません。

仕事や趣味に集中して取り組む

一人でいると悲しみや寂しさに押しつぶされそうになってしまう場合は、何かに没頭すると気が紛れるでしょう。仕事で成果を出して達成感を味わう、スポーツで体を動かしてリフレッシュする、小説の世界観に自分を投影するなど。
没頭するものは仕事や趣味など自分の好きなもので良いのです。心の内にある喪失感を認めつつ、そして無理のない範囲で何かに没頭しているうちに、つらい感情が和らぐかもしれません。

好きなアロマや音楽で心をほぐす

喪失感から立ち直りたいときは、聴覚や嗅覚に働きかける音楽やアロマテラピーも効果的です。リラックスできる時間を過ごすことで、緊張している心がほぐれるでしょう。自分の好きな音楽、心地よいと感じる香りで満たされた部屋で過ごしてみてはいかがでしょうか。

【人の助けを借りる】喪失感から立ち直る2つの方法

強い喪失感は、うつの引き金になることもあります。なかなか気持ちが軽くならないとき、つらい気持ちが続く場合は無理をせず、人に助けを求めることも考えてみてください。ここでは喪失感から立ち直る方法として、カウンセリングとグリーフケアを紹介します。

1. カウンセリングを受ける

自分の気持ちを周囲の人に打ち明けられない場合は、カウンセラーに相談する方法があります。カウンセラーは専門的な知識を持った、いわば「話を聞くプロ」です。カウンセリングを受ける中で、解決の糸口が見えてくるかもしれません。カウンセリングは精神科や心療内科などで受けられるので、検討してみてはいかがでしょうか。

2. グリーフケアを受ける

喪失感を解消するもう一つの方法として、グリーフケアもあります。グリーフは「悲嘆、悲痛」、ケアは「世話」という意味で、グリーフケアは、悲嘆ケア、遺族ケアなどとも呼ばれます。
グリーフケアは、悲嘆のプロセス(=グリーフワーク)に従って、自分自身の気持ちを整理したり、周囲から継続的なサポートを受けたりするもの。病院の「グリーフケア外来」や「グリーフケア体験会」に参加する方法があります。なお、葬儀やお別れ会に参加し、大切な人の死に向き合うこともグリーフケアの一環です。
グリーフケアについて、詳しくは以下の記事で紹介しています。

喪失感に襲われたときは否定せず、自分の気持ちを受け入れよう

大切な人との別れは、心が壊れそうになるほどつらいものです。さまざまな感情が押し寄せ、心身の状態が安定しないのはおかしなことではありません。感情を表に出す、何かに没頭して気を紛らわす、リラックスできる空間で過ごす、友人や専門家を頼るなど、今の自分にできそうなことから始めてみてください。