上座と下座の基本を解説。席次の決め方やマナーを知ろう

お葬式のマナー・基礎知識
上座と下座の基本を解説。席次の決め方やマナーを知ろう

この記事はこんな方におすすめです

上座・下座の基本を知りたい
冠婚葬祭に出席する予定がある
上座(かみざ)・下座(しもざ)とは、座る順番や立ち位置を表す言葉。おもてなしの心に根付いた日本独自の文化として、古くから伝えられてきました。この記事では、上座・下座の基本的な考え方やシチュエーション別の決め方などを解説します。上座・下座への知識を深めるための参考にしてください。

上座・下座の基本

まずは、読み方や具体的な位置など上座・下座の基本について解説します。日本独自のマナーを知るために役立ててください。

上座・下座とは席や立ち位置のマナーのこと

上座・下座は席順や立ち位置を表す言葉であり、古くから日本で育まれてきた文化です。上座は、地位の高い人や年長者、あるいは、客の立場にある人が座る席です。室内で、最も快適に過ごせるところを選びます。また、下座は、地位の低い人や客を接待する人の席を表します。

上座の判断基準は、状況に応じて変わります。職場で上座を選ぶ判断基準は、以下の順番です。
  1. 役職
  2. 勤続年数
  3. 年齢
上司が部下を家に招いたときには、上座に招かれた部下が座ります。

上座は部屋の奥側、下座は入口近くが一般的

一般的には、室内の最も奥にある位置が上座、出入口付近の位置が下座です。日本の伝統礼法である左上位を元に、左を上座、右を下座と捉えます。ただし、国際的な儀礼や欧米文化では右上位が基本のため、外国人の席次を決める際には気を付けてください。
また、室内はもちろんのことエレベーター内や車内など、さまざまな場所で上座・下座が用いられるほか、葬儀や結婚式などのシチュエーションによっても捉え方が異なるため、次章以降でさらに詳しく解説します。

シチュエーション別での上座・下座

上座や下座は、シチュエーションによって異なる場合があります。ここではチュエーションごとの上座・下座を解説します。

和室

和室では、床の間の位置が重要です。床の間の前方が上座、次に床脇の前方、最も出入口付近にある位置が下座です。床の間を設けていない和室は、出入口から最も遠い位置が上座とされています。複数の出入口がある場合は、もてなす側が接待のために出たり入ったりするところに近い位置が下座です。

洋室

和室と同様に、出入口から最も遠い位置が上座、近い位置が下座です。椅子の形状によっても格が異なるため、格の高い椅子が上座になるように配置してください。格が高い順に、長椅子・一人用肘掛椅子・背もたれのみの椅子・背もたれなしの椅子です。

会議室

会議室では、議長席の位置や机の置き方によって上座・下座が変わります。出入口から最も距離のある位置に議長が座り、議長に近い位置が上座、議長から遠くなるほど下座になるのが基本。また、議長に近い席のなかでも出入口に最も遠い席が上座に位置づけられます。
【議長の視点から見て左手に出入口があるケース】
机の置き方が口の字の場合は次の順になります。
  1. 議長の右手側に最も近い位置
  2. 1番手に対面する位置
  3. 1番手の隣
  4. 出入口に最も近い位置
机の置き方がコの字の場合は次のようになります。
  1. 議長の右隣
  2. 議長の左隣
  3. 1番手の右隣
  4. 2番手の左隣
以降は右・左と交互に下座へ近づきます。

車中

乗車する車の種類によって、上座・下座の考え方が変わります。タクシーの場合、最も安全と言われる運転席の真うしろが上座、2番手が助手席の真うしろ、3番手が後部座席の中央に座ります。料金を払ったり、運転手に道の指示を出したりする助手席が下座です。
同行者のうち誰かが運転手を務める場合、上座の位置は助手席になり、2番手は運転席のうしろ、3番手は助手席のうしろ、後部座席の中央部分が下座とされています。
貸切バスでは、自由に過ごせるか否かを考慮に入れて決めるのが基本。上座は車内で最も良好な眺望を楽しめる運転席のうしろ側、下座は通路の中央もしくは出入口に最も近い前方の席です。3人掛けシートであれば、中央の席が下座です。

エレベーター

エレベーターは、出入口に最も遠い場所が上座、出入口から近い操作パネルの前方が下座です。左右どちらにも操作パネルがあるエレベーターは、入口に向かって右手が下座です。
下座に立つ際は、真うしろに来る上座の人に尻を向けないよう、なるべく壁側に背中を向けるのがポイント。乗降時は、客や目上の人を優先的に通します。ただし混みあっている場合は先に降りるなど状況に応じた配慮が必要です。

冠婚葬祭での上座・下座

結婚式を始めとしたお祝いの席では招待客を最優先に考え、上座に通します。葬儀や法事は、亡くなった人と深い関係にあった人から順に上座へ案内するのが一般的です。ここでは結婚式や葬儀・法事における上座・下座について解説するので、参考にしてみてください。

結婚式披露宴

結婚式披露宴では、高砂やメインテーブルに設置された新郎新婦の席を正面に見て、縦半分に区分けします。新郎が座る側・左半分に新郎のゲスト、新婦が座る側・右半分に新婦のゲストを配置するのが通常。新郎新婦の席に近い座席・テーブルほど上座、新郎新婦から最も遠い位置が下座です。
基本は、主賓・職場関係者・友人・親族の順に上座の席を用意し、家族の席は下座に配置します。職場関係者は、役職の高い人から順に上座へ案内するのがマナーです。同じ役職の招待客がいる場合は、勤続年数や年齢で判断します。

葬儀

葬儀では、祭壇に近い位置が上座です。読経の際には、喪主や遺族を始めとした故人と深い関係にある人が祭壇付近に座ります。祭壇に向かって右手が喪主、遺族、近親者となるのが一般的です。
喪主は、1番前の中央右手側、喪主の父母(故人の配偶者)が存命なら喪主の横、兄弟がいるときは年齢順に座ります。血縁が濃い順番に座るのが基本で、喪主の配偶者や子どもは喪主の父母や兄弟の次に座ることも。ただし、喪主の家族以外は家族単位で座ることが多いです。
祭壇に向かって左手は、祭壇に最も近い上座に世話役代表もしくは葬儀委員長、続いて友人、知人、職場関係者という順です。職場関係者は、役職のある人や故人の上司が上座に座ります。
なお、こうした座り順はあくまでも1つの事例です。地域や宗派によって変わることもあるため、事前に確認しておくと安心です。

法事

基本は、葬儀と同様です。祭壇に近い位置が上座となり、読経をおこなうときは喪主や遺族など故人と深い関係にあった人が祭壇付近に座ります。
法事は葬儀と比較して参列者が減り、職場関係者がいないことも珍しくありません。職場関係者がいない場合は、祭壇に向かって左手にも遺族や近親者が座ります。職場関係者が参列する場合は左手に座り、役職のある人や故人の上司が上座です。

お斎

お斎とは、葬儀後や法事で催される会食のことです。最も上の立場にある僧侶を上座にするのがマナーです。僧侶の隣には施主が座り、おもてなしの役割を果たします。
次に、親族の年長者や故人と親しい間柄にあった友人の順番で上座から下座へ座るのが一般的ですが、親族の年長者が住職の隣に座り、遺族は下座に座るケースもあります。僧侶が参加しないなら親族が下座に座り、それ以外の人は自由に座ってかまいません。この場合、施主は進行役を務めるので親族の中で最も上座に近い位置に座ります。
なお席次に明確な決まりはなく、宗教や宗派、地域性、参列者同士の関係で変化するため臨機応変に対応することが大切です。迷ったら、親族の年長者に確認するのがおすすめです。

席次はおもてなしの心の表れ。上座・下座が大切な理由

上座・下座の席次は、客や目上の人に対するおもてなしの心によるもの。相手に敬意を払い、尊重する気持ちを表すために用いられます。上座は出入口から最も遠い位置にあり、人の出入りに煩わされずにゆっくりしてもらえる場所です。一方で、下座の場所は相手をもてなすのに適しています。
一説では、敵が攻めてきた際に地位の高い大将が撃たれないよう、出入口から遠い位置に座ったことが上座・下座の由来とされています。最も安全かつ快適な場所で相手にくつろいでもらうため、部屋や乗り物の中では上座に案内することが大切です。

上座・下座は人間関係を良好にするためのコミュニケーション

上座・下座を始めとした席次に関するマナーは、良好な人間関係を育むためにおこなわれるコミュニケーションの一環です。葬儀では、故人と深い関係にあった人の順に上座へ案内するのが基本ですが、地域や親族関係、健康状況などにより変化します。上座・下座の基本を知ったうえで、状況に応じて臨機応変に対応してください。

この記事の監修者

政田礼美 1級葬祭ディレクター(厚生労働省認定・葬祭ディレクター技能審査制度)
家族葬のファミーユ初の女性葬祭ディレクター。葬儀スタッフ歴は10年以上。オンライン葬儀相談セミナーの講師も務める。東京・神奈川・埼玉を中心に都市部の葬儀相談をおこなっている。