忌中の過ごし方と避けるべきことを解説。 喪中との違いも

お葬式のマナー・基礎知識
忌中の過ごし方と避けるべきことを解説。 喪中との違いも

この記事はこんな方にオススメです

いつまでが忌中かを知りたい
喪中と忌中の違いを調べている
親族が亡くなった後の約50日間、故人のために冥福を祈る期間を忌中と呼びます。忌中期間は、おめでたいことを控えて慎ましく静かに過ごします。この記事では、忌中と喪中との違いや、忌中の期間について説明します。忌中の過ごし方や期間中にやっておきたいことも確認してみてください。

忌中とは? 忌中の期間と習わし

忌中の期間と習わしについて解説します。

忌中の期間は約50日間

親族が亡くなった日から、約50日間を忌中と呼びます。「約」としているのは、仏教では49日、神道では50日など、喪に服す期間が宗教宗派によって変わることがあるからです。また、忌中の期間が過ぎることを「忌明け」と言います。
仏教形式のお葬式を終えたご遺族にとっては、49日間の四十九日法要までが忌中です。故人のあの世での行き先が決まる最終裁判が四十九日とされているため、忌中もこの日が目安になっています。ただし、すべての宗派が同じ考えではなく、例えば、浄土真宗では亡くなった後すぐに仏になるという教えから忌中の概念もありません。
例外はありますが、仏教徒の忌中と喪中の目安は下表の通りです。
忌中 期間 四十九日まで
対象 故人の血族、配偶者、婚姻で生じた親族
喪中 期間 一周忌まで
対象 故人の2親等内
また、神道では五十日祭までの50日間を忌中とします。この期間は穢れがつくと考えられており、世間に出ることを慎むべきとされています。悲しみを癒し、自宅で故人を思って祈り続ける期間です。

忌中札の習わし

忌中の間、忌中札を貼る習わしが以前はよくみられました。忌中札とは、親族が逝去した際の穢れを他に移さないよう、玄関に付ける張り紙のことです。半紙の縁に黒色の太枠を描き、真ん中に忌中と記します。令和の今では、どの地域でもほとんど見かけなくなりました。
忌中札を貼ると、葬儀などで留守が多くなることが周囲にわかってしまうため、近年は防犯を目的として札を貼らない家庭が増えています。また近所との関わりが減り、忌中を知らせる必要がないことも忌中札が減っている理由です。

忌中と喪中との違い

忌中と喪中の最も大きな違いは、期間です。忌中は故人が亡くなってから四十九日法要までが目安とされていますが、喪中に厳格な定めはありません。一般的に、一周忌までとする場合がほとんどです。そのため家族が逝去してから1年間は、喪中として過ごすのが望ましいとされています。

また、喪に服す対象になる人も忌中と喪中でわずかに違います。忌中は広く血族・親族に渡りますが、喪中は故人の二親等内とされます。


忌中と忌引きの違い

忌中とも喪中とも似た言葉に、忌引きがあります。忌引きは、親族が逝去した後、葬儀に参列するために取る休暇のこと。福利厚生の1つとして定められています。忌引き休暇の目安は、以下の通りです。
配偶者 10日
父母 7日
子ども
5日
兄弟姉妹・祖父母・義父母 3日

宗教別に見る、忌中の考え方の違い

仏教

死に対する考え方は宗教・宗派よって異なり、忌中や喪中の在り方にも影響を及ぼします。宗教別の忌中について紹介します。
死によって、存命中の苦痛から解き放たれて仏になる、あるいは、他の世界に転生するというのが、仏教の基本の考え方です。忌中は、その通過点であり、四十九日の法要までの期間とされています。
故人のあの世での幸せ(冥福)を祈る「追善供養」として、死後7日ごとの法要を四十九日まで続けます。ただし近年は初七日法要と四十九日法要のみをおこなう場合がほとんど。また、初七日法要は「繰り上げ初七日法要」として、葬儀と同じ日に済ませるようになってきています。
ただし、この忌中の考え方について、すべての仏教宗派が同じではありません。前述の通り浄土真宗ではあの世に旅立った人はすぐに仏になると信じられているので、忌中自体がありません。

神道

神道において、死は穢れと捉えられています。死そのものだけではなく、遺族が悲しみに暮れて落ち込んでしまうことも穢れに含まれるようです。
忌中の期間は、50日間。死後50日は霊として留まり、五十日祭を終えてから遺族の守護神に変わると考えられています。昔は五十日祭の翌日におこなう清祓いの儀までが忌中でしたが、現在は五十日祭とともにこの儀をおこなうようになりました。清祓いの儀とは、故人が逝去した際に貼った神棚の白紙を取ることを指します。

キリスト教

キリスト教は「死は一時的な別れであり、亡くなった後は天国で再会できる」と信じ、忌という考え方はありません。日本の習わしに沿い、カトリックは死後30日目におこなう追悼ミサ、プロテスタントは死後1ヵ月目に迎える召天記念日までを忌中と捉えています。

忌中の間の過ごし方とやっておくべきこと

忌中は、故人の安らかな眠りを願うだけでなく、遺族の気持ちを整理する期間でもあります。また、葬儀後の手続きや法要の準備など、やらなければならないこともたくさんあります。ここでは、忌中の過ごし方とやっておくことについて紹介します。

忌中の間は忙しい

故人の死後約50日間は、行政などの各種手続きをしなければなりません。特に遺族の確認が必要なものや平日対応の役所などの手続きは、忌引き休暇中に完了させておくことをおすすめします。
その後の忌中の過ごし方は、普段と変わりない日々を送ることが何より大切です。ただし、お祝いごとは避けるのが一般的とされています。結婚式なども避けるように言われていますが、こちらは親戚などと相談の上でいい方法を模索すべきかと思います。
昔は死を縁起が悪いものとみなしていたため、自宅に留まって他人との交流を絶ったり、喪服を着用して精進料理をいただいたりして過ごすのが基本でした。現在に取り入れるとすれば、精進料理のような体に良いものを食べて、心穏やかに故人のあの世での幸せを願うくらいでしょうか。

やっておくべきこと①神棚封じ

家の中に神棚がある場合は、半紙やお札を貼り付けて神棚封じをおこないます。これは、死の穢れを神様に近づかせないための習わしです。忌中が終わるまでは、神棚のお参りは避けてください。
仏壇に関しては、宗派や地域によって扉の扱い方が変わります。扉を開けるか閉めるか、親族や菩提寺に相談して決めると安心です。ちなみに、仏壇の扉を閉めるのは「近くにいる仏に心を惹かれて、故人が成仏できないから」などの理由があります。

やっておくべきこと②四十九日法要、五十日祭などの準備

忌中は、仏教では四十九日の法要、神道では五十日祭で終わりを迎えます。これらの法事類をおこなうにあたって、会場を決めたり、僧侶・宮司を手配したり、やるべきことは多くあります。しかし、ある程度の準備は葬儀の担当者に任せることも可能です。
実際に計画する際には、下記の記事もご参考にしてください。
葬儀当日に香典返しを渡していない場合は、四十九日の法要を終えた頃に贈るのが一般的なので、お返しの準備も必要です。

やっておくべきこと③遺品の整理

忌中の間で最も大変になりそうなのが、遺品の整理です。故人が愛用していた物の整理は、残された人の心の整理にもつながる大切な行為ですが、かなりの重労働でもあります。故人との思い出を振り返りながら、自分たちで整理できればいいですが、物量が多すぎる時には業者への依頼も検討しましょう。

やっておくべきこと④喪中はがきの準備

年賀状を送り合っている人には、辞退するために喪中はがきの手配をおこないます。11月中旬〜12月上旬、相手が年賀状を作る前に送るようにしてください。
ただし、場合によっては準備が間に合わない可能性もあります。そのときは、寒中はがきとして「喪に服していること」と「年賀状を出せなかったことのおわび」をすると良いでしょう。

忌中の間に避けるべきこと

忌中は、お祝いごとは避けて故人を偲んで家で過ごす期間というのが一般的です。しかし子どもの節句など、晴れの行事と忌中が被ることもあるでしょう。ここでは忌中にやってはいけないことや、どうしても行事をおこないたいときの対処法を紹介します。

慶事や祭典

忌中に入ったら、おめでたい行事はできるだけ避ける、とされています。招待された結婚式や忘年会、新年会に行くことや家の新築などのお祝いごとは自粛するというものです。ただし、結婚式に招待されて断りづらい、または、祝ってあげたい場合には、相手の親族に相談してみてください。自分の結婚式は、忌明けになるまで延ばすのが一般的です。

神社への参拝

神道では死は穢れと捉えられており、神様が住う神社に持ち込むのは避けるべきと考えられています。忌明けまでは、神社へ行くのを控えるようにします。お祭りや七五三など、神社でおこなわれる行事も同様です。
ただし子どもに関連した神社の行事は、成功を願う意味が込められていて、その年を逃すとできないこともあり、やってあげたい気持ちが強いでしょう。宮司さんに事情を相談してみると良いかもしれません。
ちなみに先祖のためにお寺でお盆の墓参りをおこなうことは、まったく問題ありません。

お正月のお祝い

忌中は、新年を祝うための飾りや料理は控えます。具体的には、しめ縄を始めとしたお正月飾りやおせちのようなお正月料理です。「紅白色の蒲鉾など、お祝いを象徴する料理以外なら良い」「重箱を使わず、大皿を使えば良い」など宗派や地域によって風習が変わることもありますが、基本的には避けた方が無難です。
年越しそばはおめでたい料理には当てはまらないので、いただいても構いません。

時代とともに変化する忌中の過ごし方

時代の移り変わりとともに、忌中の過ごし方も変化しています。故人が待ち望んでいた行事や、家族にとって大切なことなら「亡くなった人も許してくれる」と捉える場合も少なくありません。
ただしマナーを守るため、他の親族への相談は忘れないでください。故人が安らかに眠れるよう、家族らしく過ごすのが現代に合った方法と考えられます。

忌明けにすること

忌明けは、忌中の期間を終えることです。ここでは、法要以外に忌明けにおこなうことを紹介します。

香典返しを贈る

葬儀の際に香典をもらった場合、香典返しを贈ります。香典や香典返しの風習は本来仏教のものですが、神道やキリスト教でも葬儀後50日前後でお返しすることが多いようです。
香典をもらった際に会葬礼状と香典返しを一緒に渡す場合があります。このように既に香典返しを終えているなら、忌明けにおこなう必要はありません。しかし、香典が想定額よりも高額だった場合や自分も追加での返礼品をいただいていた時には、追加のお返しを用意することもあります。

神棚封じを解く

神棚を封じるために使った半紙やお札を剥がし、お参りをします。仏壇の扉を閉めた場合は、開けてください。

故人を偲び、マナーを守って忌中を過ごしましょう

故人のことを思い、安らかな眠りを願う忌中は、大切な人を失った遺族の心を整理する期間でもあります。また、忌中のお祝いごとをどう扱うかは身内でも意見が分かれるもの。悩んだときは周りに相談して、柔軟な対応を心がけてみてはいかがでしょうか。

この記事の監修者

政田礼美 1級葬祭ディレクター(厚生労働省認定・葬祭ディレクター技能審査制度)
家族葬のファミーユ初の女性葬祭ディレクター。葬儀スタッフ歴は10年以上。オンライン葬儀相談セミナーなどを担当