「自業自得」は悪い意味だけではない。正しい使い方を解説
お葬式のマナー・基礎知識
自業自得とは「自分がしたおこないの報いを受ける」という意味です。現代では悪い場面で使われますが、本来は良い意味も併せ持ちます。言葉に秘められた真の意味を知ることで、もしかしたら言葉のイメージが変わるかもしれません。本記事では自業自得の意味と使い方、似ている言葉、今日から実践したい“善いおこない”の具体例を紹介します。
目次
良い意味もある「自業自得」を詳しく知る
何か悪い出来事があったときに使われる、自業自得という言葉。由来を知ることで、今までとは違うイメージを抱くかもしれません。まずは自業自得の意味と、使うときの注意点を紹介します。
現代における意味
自業自得とは「自分がおこなったことの報いを受ける」という意味を持つ四字熟語です。現代においては、主に悪いことをして悪い結果が生じた場面、または自己責任を問われる場面などで用いられます。
自業自得の由来と本来の意味
自業自得は、もともと仏教で使われていた言葉です。仏教において「業」は「ごう」と呼ばれ、「おこない」の意味を持ちます。インドで「業」は「カルマ」と呼ばれており、それが中国に渡って翻訳された際に「業」の漢字が充てられたそうです。
「自業」は自分がおこなったこと、「自得」は自分自身で受けること、といった意味を持ちます。つまり、自業自得とは「自分のおこないが自分の運命を生む」という意味。本来は、悪い場面だけでなく良い意味でも使える、柔軟性のある言葉なのです。
良い意味で使うときの注意点
仏教では、良いも悪いも関係なく、すべての運命が自業自得と教えられています。その教えに従えば、良い結果が生じたときも「自業自得」という言葉を使えます。例えば「お孫さんの大学受験の合格は自業自得ですね。」という使い方も、間違ってはいません。
とはいえ、先述したように現代において自業自得は、悪い場面で用いられる言葉として浸透しています。そのため、めでたい場面や良い場面で使うと、相手に意図が伝わらずに不快な思いをさせてしまうかもしれません。相手と気持ちよく会話をするためには、良い場面では「一生懸命勉強したからですね。」や「日頃のおこないが素晴らしいからですね。」など、自業自得を言い換えた表現にするのが無難です。
とはいえ、先述したように現代において自業自得は、悪い場面で用いられる言葉として浸透しています。そのため、めでたい場面や良い場面で使うと、相手に意図が伝わらずに不快な思いをさせてしまうかもしれません。相手と気持ちよく会話をするためには、良い場面では「一生懸命勉強したからですね。」や「日頃のおこないが素晴らしいからですね。」など、自業自得を言い換えた表現にするのが無難です。
生活の中で「自業自得」を使う主な場面と例文
自業自得は悪い結果になったときだけでなく、相手に助言するときも使える言葉です。ここでは、生活の中で自業自得を使う2つの場面と、それぞれの例文を紹介します。
悪い結果の原因が自分にあるとき
悪い出来事の原因が、明らかに自分にある場合に、反省の意を込めて自業自得を使います。
＜例文＞
- 電車に間に合わなかったのは、のんびりテレビを観ていたからで自業自得だ。
- 寝不足で遅刻したのは、自業自得だ。
悪いおこないをしている人に助言するとき
自業自得は、他の人に対しても使えます。例を挙げると、相手を諌める時です。次は悪い結果にならないように強めの助言として使えます。
＜例文＞
- 彼女に振られたのは、定職につかないあなたの自業自得です。
- 模試の結果が悪いのは自業自得。次は、一緒に頑張ろう。
例えば、子どもや孫が勉強せずに遊んでばかりいる際に自業自得を使って嗜めれば、「自分が頑張れば良い結果がついてくるはず」と自発的な行動を促せるかもしれません。
しかし、自業自得と人から指摘されると、誰でも心が落ち込むものです。反発心もわくかもしれません。余程の信頼関係がなければ、他人に自業自得は使わない方が無難です。もし使う場合も「実は良い意味もあるんだよ」と真意を伝えてフォローすることを忘れないようにしてください。
しかし、自業自得と人から指摘されると、誰でも心が落ち込むものです。反発心もわくかもしれません。余程の信頼関係がなければ、他人に自業自得は使わない方が無難です。もし使う場合も「実は良い意味もあるんだよ」と真意を伝えてフォローすることを忘れないようにしてください。
「自業自得」と似た意味を持つ言葉
日本語の中には、自業自得と似た意味を持つ言葉があります。有名な「因果応報」や「身から出た錆」を始め、「自縄自縛（じじょうじばく）」、「獣（しし）食った報い」といった聞き慣れない言葉も。それぞれの意味を紹介します。
因果応報（いんがおうほう）
因果応報とは「良い行動・悪い行動がそのまま自分に返ってくる」という意味を持つ四字熟語です。言葉を読み解くと「因果」は「原因と結果」を、「応報」は「おこないに対する報いや結果」という意味を持ちます。因果応報の由来は「良いことをすれば良いことが、悪いことをすれば悪いことが返ってくる」という仏教の教えですので、本来は自業自得と同義と言えます。
身から出た錆（さび）
刀の錆は刀身から生じることから転じたことわざが、身から出た錆です。「自分のした悪いおこないによって、自分自身が苦しむこと」を意味します。主に悪い場面で使われる、自業自得とほぼ同じように使える言葉です。自業自得よりも、他人に使う頻度が多いように感じます。
自縄自縛（じじょうじばく）
自縄自縛とは「自分の言動が原因で身動きが取れなくなり、苦しむこと」を意味する言葉。「自分の縄で自分自身を縛る」といった意味から転じた四字熟語です。自縄自縛が使われるのは、自分が放った言葉で自分自身が不利な状況になったときです。
自業自得と自縄自縛は言葉の響きは似ていますが、ニュアンスがそれなりに違います。自縄自縛の注意であればまだ結果が出ていないので、自らの呪縛さえ解けば挽回できそうです。
自業自得と自縄自縛は言葉の響きは似ていますが、ニュアンスがそれなりに違います。自縄自縛の注意であればまだ結果が出ていないので、自らの呪縛さえ解けば挽回できそうです。
獣（しし）食った報い
獣食った報いとは「良い思いをした代わりに、当然受けなければならない悪い報い」または「悪いおこないをしたことで、当然受けなければならない報い」を意味することわざです。意味から察する通り、この言葉は悪い場面で使われますので、自業自得よりもネガティブな印象が強いかもしれません。
なお、獣食った報いの「獣」は「鹿」や「猪」と表記されることはありますが、同じ読み方でも「獅子」は誤りなので、この言葉を使うときは注意が必要です。
「自業自得」を意識した、善いおこないの具体例
本来、自業自得には「善いおこないも自分に返ってくる」という良い意味もありますので、その教えに沿って善いおこないをすることで、この先の考え方や生き方に変化が出てくるかもしれません。ここでは、取り組みやすい善いおこないを具体的に紹介します。1日に1つの善いおこないをする“一日一善”を意識しつつ、無理のない範囲で取り組んでみてください。
人に笑顔で接し、優しい言葉をかける
人にやすらぎを与えるのも、善いおこないの1つです。仏教には、見返りを求めずに善いことをすれば、自分に幸福が返ってくるという教え、「無財の七施」があります。これには7つ善行が書かれています。その中で今回紹介したいのが、「眼施」（げんせ）と「和顔施」（わがんせ）です。
「眼施」は優しい眼差しで人に接すること、「和顔施」は笑顔で人に接することです。
誰しも、優しい眼差しや笑顔に安心感を覚えます。優しく笑顔で接することで、相手にも笑顔が生まれる、仲が縮まるなど、巡り巡って自分にとっても良いことが返ってくるでしょう。笑顔も優しい言葉選びも、自分の心がけ次第で今すぐできることです。さっそく、少し意識してみても良いかもしれませんね。
「眼施」は優しい眼差しで人に接すること、「和顔施」は笑顔で人に接することです。
誰しも、優しい眼差しや笑顔に安心感を覚えます。優しく笑顔で接することで、相手にも笑顔が生まれる、仲が縮まるなど、巡り巡って自分にとっても良いことが返ってくるでしょう。笑顔も優しい言葉選びも、自分の心がけ次第で今すぐできることです。さっそく、少し意識してみても良いかもしれませんね。
ボランティア活動をする
ボランティアを始めとする社会奉仕も、善いおこないに数えられます。最近は、ボランティアに積極的に取り組む人を応援する市町村が増加中です。「シニアボランティア」または「シルバーボランティア」として活動してみると、段々と奉仕活動が生きがいになってくるかもしれません。また、積極的に行動することで生活にハリが出て、生き生きとした毎日を送れそうです。
興味がある人は、公園の清掃など気軽に挑戦できる活動から始めてみてはいかがでしょうか。
興味がある人は、公園の清掃など気軽に挑戦できる活動から始めてみてはいかがでしょうか。
先祖の供養をする
お墓参りをする、仏壇に手を合わせる、お供え物をするといった先祖の供養も、実は善いおこないの1つです。お墓参りは命日・お彼岸・お盆・年末年始にすることが多いですが、お参りするタイミングに決まりはないので、好きなときにして問題ありません。
何らかの理由でお墓に行けないときは、仏壇に線香や供花を供えてはいかがでしょうか。線香は「故人の食事」、供花は「故人を想う気持ち」を表すものと考えられている、大切なものです。供養をする中で故人との思い出を振り返りつつ、自分の人生も見直すことで、前向きに生きるきっかけを得られるかもしれません。
何らかの理由でお墓に行けないときは、仏壇に線香や供花を供えてはいかがでしょうか。線香は「故人の食事」、供花は「故人を想う気持ち」を表すものと考えられている、大切なものです。供養をする中で故人との思い出を振り返りつつ、自分の人生も見直すことで、前向きに生きるきっかけを得られるかもしれません。
供養について詳しくはこちらの記事で解説しています。
供養の意味や種類とは？～大切な人を偲ぶために～ - 家族葬のファミーユ【Coeurlien】
供養とはあの世へ行った故人の幸せを願い、祈りをささげることや、仏様にお供え物をすることを指します。また物に魂が宿るとする国では、大切な物と別れるときに供養をおこなうことも。本記事では供養の意味や目的、やり方、種類、対象などを詳しく解説します。大切な人や物を偲ぶ際に役立ててください。
「良い意味で自業自得だ」と思える生き方を
本来、自業自得は「善いおこないをすれば良いことが返ってくる」といった、良い意味も持つ言葉です。ただし、現代では悪い場面で使われることが多いため、口にする際は使い方に気を付けてください。本来の意味も理解した上で善いおこないを意識すれば、昨日よりも前向きな今日が始まりそうですね。
