死んだらどうなる?宗教別の教えと死への向き合い方
終活
この記事はこんな方におすすめです
人は死んだらどうなるのか知りたい
死への向き合い方を知りたい
人が死んだらどうなるかは、誰も経験したことがないため、事実は明らかになっていません。死後の世界はさまざまな観点で考えられていますが、今回はそれぞれの宗教の考えに着目し、いつか来る死をむやみに恐れないですむための知識をお伝えします。人は死んだらどうなるのか、宗教ごとの考え、死の不安との向き合い方、人生の最後を考えるときに取り組みたいエンディングノートについて紹介します。
目次
人は死んだらどうなるの?
人が死んだら、現実世界においては「死体」となるということまでしか言い切れません。「天国/地獄に行く」など死後の世界について語る人もいますが、実際にあるのかないのかを証明するのは困難です。「死んだら無になるのか」「自分の意識はどうなるのか」というさまざまな疑問については、研究が進められているものの確証を得るような答えはなく、各々の価値観に委ねられています。
なお現実的な動きとしては、心肺停止後に医師が死亡診断をして「死亡」が確定されます。死亡確認から24時間以上経って、通夜・葬儀・火葬などを経て亡くなった人の肉体とは永遠の別れとなります。
死んだらどうなるかの考え方|仏教
まずは浄土へ行く、成仏する、輪廻転生するといった仏教の死生観から解説します。
仏教①:浄土へ行く
浄土宗や浄土真宗など浄土系の宗派を始めとする多くの宗旨宗派では、人は死んだら浄土に行くと考えられています。浄土のことを「極楽浄土」とする宗旨宗派もあります。
極楽浄土とは、西方十万憶土(さいほうじゅうまんおくど)をすぎたところにある、阿弥陀仏がいる場所のことです。もろもろの苦しみがなく楽しみだけがあり、阿弥陀仏が説法をする理想的な世界といわれています。極楽浄土に行くには、ただひたすらに仏に帰依し、阿弥陀如来の力を信じて日々「南無阿弥陀仏」を唱えることが大切だとされています。
仏教②:成仏する
仏教の中に広くある考えが、死んだら仏に成る=成仏するという考えです。仏とは、世の中の真理に目覚めて苦しみから解放され、智慧(ちえ)を活かして人々を救おうとする人のことを言います。宗派によって違いはありますが、日々修行に励んだり、お題目を唱えたりすることで成仏できるとされています。
仏教③:輪廻転生する
死んだ後に輪廻転生を繰り返し、極楽浄土を目指すとする考えもあります。輪廻転生とは「魂が生まれ変わる」ことを意味する仏教用語です。
輪廻思想のある仏教宗派では、逝去の49日後に生前のおこないにより「六道」と呼ばれる6つの世界のどこに生まれ変わるかが決まると伝えられています。「六道」は天道・人間道・修羅道・畜生道・餓鬼道・地獄道からなり、生まれ変わった先で功徳を積み、また新たな生まれ変わりを目指します。
なお、浄土真宗などの一部宗派では輪廻転生は否定されていて、仏教のなかでも考えの分かれるところです。
「六道」について詳しくは、こちらの記事を参考にしてください。
六道を詳しく知る
輪廻転生の中で、魂が行き着く場所とされる六道。天上道、人間道、修羅道、畜生道、餓鬼道、地獄道、それぞれの世界について解説します。
死んだらどうなるかの考え方|神道
神道では、死後も祖先とともに家にとどまり、家族を守る氏神になると考えます。
江戸時代の豊受大神宮(とようけだいじんぐう)の祠官(しかん)中西直方(なかにしなおかた)の「死道百首」の中には、「日の本に生まれ出にし益人(ますひと)は神より出でて神に入るなり」と詠んでいます。
日本に生まれた人々は亡くなると祖先の神々の所へ帰っていくという死生観をあらわしており、生命が代々受け継がれていくと考えられています。
江戸時代の豊受大神宮(とようけだいじんぐう)の祠官(しかん)中西直方(なかにしなおかた)の「死道百首」の中には、「日の本に生まれ出にし益人(ますひと)は神より出でて神に入るなり」と詠んでいます。
日本に生まれた人々は亡くなると祖先の神々の所へ帰っていくという死生観をあらわしており、生命が代々受け継がれていくと考えられています。
死んだらどうなるかの考え方|キリスト教
キリスト教では、死んだら天国もしくは地獄に行くと信じられています。なお、カトリックとプロテスタントで少し違いがあります。
■カトリック
天国と地獄のほかに、煉獄(れんごく)という場所があるのがカトリックの考えです。カトリックでは死の直後、私審判(ししんぱん)によって裁かれ行く場所が決定するとされています。煉獄とは地獄に行くほどではないが完全に清められない罪を抱えた魂が償いを果たすための苦しみを受ける場所。死を迎えた者は、すぐに天国に行けるわけではなく、罪を清めるためにまずは煉獄に送られます。
■プロテスタント
人は生まれながらに罪を背負っていて、キリストを信じた者だけが天国へ行けると考えるのがプロテスタントです。信仰を持つ者は、死後は神の元で安らかに過ごせると捉えられています。
死んだらどうなるかの考え方|イスラム教
イスラム教の教徒にとって死とは、アラーによって決められるもので、いつか復活するまでの一時的なお別れにすぎません。死によって魂は一度肉体から離れるものの裁きの日に魂は再度肉体と結び付いて復活すると信じられています。
この復活の日を「五体満足」で迎えるため、イスラム教では火葬ではなく土葬にするのが基本とされています。
宗教に学ぶ、死んだらどうなるかの不安と向き合う方法
死を過剰に恐れる心配がある人は今後の人生を考えるきっかけくらいに捉えるのがおすすめです。宗教の死生観から見えてくる死との向き合い方を紹介します。
死は誰もに平等に訪れるものだと理解する
老いや死は誰しも逃れられないもの。過剰に恐れて萎縮してしまったり抗ったりするよりも、受け入れる方が心穏やかに過ごせるかもしれません。
キリスト教の経典である新約聖書の中には、「死は人間の最後の敵」との記述があり、「死はすべての人に恐怖をもたらす」と読み取れます。しかしイエス・キリストは死の恐怖から人々を救います。
加齢や病気以外にも、天災や不慮の事故などの予測不可能な死も、誰にでも起こり得るものです。まずは「平等に訪れる死」という現実を受け入れることで、1日1日が貴重であることを知り、日々の暮らしを充実させることで、満たされた人生が送れるのではないでしょうか。
加齢や病気以外にも、天災や不慮の事故などの予測不可能な死も、誰にでも起こり得るものです。まずは「平等に訪れる死」という現実を受け入れることで、1日1日が貴重であることを知り、日々の暮らしを充実させることで、満たされた人生が送れるのではないでしょうか。
人生を振り返り後悔を残さない
ゆっくり目を閉じて過去を振り返る時間を持つことも大切です。死に直面したときに、深い後悔の念で心が締め付けられる人は少なくありません。キリスト教の教えでは後悔が残らないように自分への問いかけをおすすめしています。自分らしく生きられているか、あるいは、その反対として自己中心的になって周りの人を苦しめていないか、一度自分に問いかけてみてください。
悟りを開いて苦しみから解放される
仏教では、死せずして現世で成仏する=悟りを開くことも可能とする考えもあります。仏の道を究めるための修行をし世の真理に目覚めることで、生きている悩みや苦しみから解放されます。普通の人には達しがたいとても難しい道ですが、何事も挑戦してみる価値はあります。まずは、写経などから始めてみてはいかがでしょうか?
【初心者向け】写経の意味とやり方。用具&作法も紹介
邪念を払うとされている「写経」。ここでは「写経」の意味や効果、必要な準備、道具など初心者向けにおすすめのやり方などを紹介します。
死を恐れず希望を見出す
人生100年時代と言われる現代、老後の時間をいかに充実させるかに着目する人が増えています。死んだら終わりだと自暴自棄になるのではなく、これからの人生を見つめ直し、それぞれが思い描く死後の世界にも希望を見出せれば、限られた時間をより有意義に使うことができそうです。
残された時間を有意義にする方法として、「バケットリスト(自分のやりたいことの一覧)」作りがおすすめです。やりたいことを明確にし、できることから実行していくことで大きな達成感が味わえます。リストの作成には、こちらの記事を参考にしてください。
死ぬまでにしたいことリストの作り方。全力で人生を楽しもう
心の中に閉じ込めていた夢や望みに向き合うきっかけをくれる、死ぬまでにしたいことリスト。この記事では、死ぬまでにしたいことリストを作る目的やメリット、詳しい作り方、「したいこと」の具体例と注意点を紹介します。
また、「周りの人に死んだら忘れられてしまうかも」と不安になる人もいますが、周囲に深い愛情を注いでいれば残された人の心にも思い出が刻まれているはずです。死後にも法要や追悼式など各宗教の弔いがあるので、思い出してもらえる機会はたくさんあります。
死んだらどうなるか向き合うためのエンディングノート
自分の死と向き合うにあたりおすすめなのがエンディングノートの作成です。これまでの自分の人生の振り返りや、家族に伝えたいことを書き留めておくのに役立ちます。最後に、エンディングノートの目的や書く内容について紹介します。
エンディングノートとは
エンディングノートとは自分の死に備えて、相続や葬儀の希望や各種手続きなどについて書き留めておくためのノートです。自分の気持ちを残された家族に伝えたり、終末期医療や葬儀といった選択肢の多い局面で家族の考える負担を減らしたりもできます。また、これまでの人生を見つめ直し、今後の人生をより充実させるきっかけにもなります。さらに残された家族にとっては大切な形見として持っておくことも可能です。
ちなみに遺言とは違って法的拘束力はありません。何度書き直しても問題ないので気軽に取り組んでみてください。
エンディングノートに書く内容
エンディングノートの書き方や書く内容は自由ですが、余命宣告時や死亡時に備えて、届出書類に必要な情報や、家族に伝えておきたいことを書くのがおすすめです。主な内容は以下を参考にしてください。
<おすすめの内容>
- 生年月日/本籍地などの個人情報
- 運転免許証/健康保険証/クレジットカードなどの番号・保管場所
- 預貯金/有価証券などの資産情報
- かかりつけの病院/持病など医療に関すること
- 葬儀の希望の形式/誰を呼びたいかなど
- 親しい友人の連絡先
- ペットの世話について
- 家族に伝えたいメッセージ
ただし個人情報や暗証番号を記載する場合は、保管に注意が必要です。万が一、盗難に遭わないよう鍵付きの引き出しや金庫に入れておくと良いでしょう。あまりに分かりにくい場所では見つけられず活用されないため、家族にだけはエンディングノートの存在と保存場所を伝えておくことをおすすめします。
エンディングノートについては、こちらの記事で詳しく紹介しています。
エンディングノートとはどんなもの?
エンディングノートは、いつか来る死に備えるための終活ツールの1つ。ここでは、エンディングノートとはどんなものかを具体的にご紹介します。
死んだらどうなるかは誰にも分からないからこそ備えを
死んだらどうなるかは、心臓が止まること以外、現状ではよく分かっていません。宗教ごとに死後の世界の考え方はありますが、それぞれ今の人生を充実させ、安らかに最後を迎えるためのアドバイスとも受け取れます。頭の中を整理したいときは、エンディングノートに取り組むのもひとつの方法です。死への不安にとらわれ過ぎずに自分らしい人生を送るためにも、亡くなった時への備えができているといいですね。