「ご冥福」の意味や使い方を解説。宗教によっては使用できない?

お葬式のマナー・基礎知識
「ご冥福」の意味や使い方を解説。宗教によっては使用できない?
葬儀でよく耳にする「ご冥福(めいふく)をお祈りいたします」というフレーズ。これは亡くなった人のあの世での幸せを想う言葉です。この記事では、「ご冥福」の意味や正しい使い方を解説しています。宗教・宗派の違いによる注意点も要チェックです。

ご冥福とは?

お悔やみ言葉としてよく使われる「ご冥福」。故人を慕う人々の気持ちが込められた言葉ですが、使用が適さない場面もあります。ここではまず、「ご冥福」の意味について紹介します。

ご冥福の意味

「冥」は、冥土(死後の世界・あの世)、「福」は文字通り幸福のこと。つまり「冥福」は、アニメなどで見るおどろおどろしい地獄のような世界に陥ることなく、あの世でも幸せであることを意味しています。

「ご冥福を祈る」とは、「死後の世界でも幸福に暮らしてほしい」との想いが込められた温かい一言なのです。この冥福には、使用に適したシーン、適さないシーンがあります。

「ご冥福をお祈りいたします」の使い方

冥福は故人に向けた言葉です。最愛の人の死を受け入れきれていない人は、あまり聞きたくない言葉かもしれません。ここからは、できる限り失礼に当たらない使い方を紹介します。

対面での使用例

「ご冥福をお祈りいたします」は挨拶ではないため、遺族と直接話す時にはあまり使わないかもしれません。お悔やみの言葉として使う際は、「~様には日ごろからお世話になり、心からご冥福をお祈り申し上げます」のようになるでしょう。

遺族は大切な人を失ったショックにより、いつも通りの対応が難しいことが考えられます。簡単な挨拶にとどめる時には、使用を控えましょう。

メール・手紙・電報での使用例

「ご冥福」が多く使われるのが、文面です。葬儀に行けない時に、遺族に宛ててメールや電報などの文書を送る場合の使用例を紹介します。


・メール
「~様の突然の訃報に大変驚いております。略儀ながらメールにてお悔やみ申し上げます。お世話になったにもかかわらず、ご葬儀に伺えずに申し訳ございません。○○より、~様のご冥福をお祈りいたします。」

上記のように、メールでのみでのお悔やみになるときは謝罪の一文は添えるのがマナー。また、まだ葬儀が済んでいない段階であれば、遺族は忙しいので、できるだけ短文を心がけると親切です。


・手紙
「〜様の突然のご逝去の報に接し、大変驚いております。本来であればご葬儀へ伺うべきところ、お手紙でのご連絡をどうかお許しください。(中略)~様のご冥福を心よりお祈りいたします。」

手紙はじっくりと読み、保管・確認しやすいため少々長くなっても問題はありません。お悔やみの挨拶はもちろん、故人の死に対して自分の気持ちを丁寧に綴ることが大切です。


・電報
「ご逝去の報に接し、謹んでお悔やみ申し上げます。遠方によりお別れもできず残念です。故人のご冥福をお祈りいたします。」
「ご遺族の悲しみはいかばかりかと拝察します」など、遺族を労わる一文もよく使われます。訃報に接したときに急いで送るものなので、時間をかけて考えた長文ではなく、簡潔な文章が望ましいです。

「ご冥福をお祈りいたします」はいつまで使える?

葬儀や亡くなってあまり日が経たない期間での使用が一般的ですが、明確な期限は決められていません。
四十九日までとする人もいれば、時間の経過に関係なく使用できると考える人もいます。
いずれにせよ、「いつまでも死後の世界で故人が幸福に過ごせるように」と祈りを込めて使われます。

「ご冥福」を使わないほうがよいケース

仏教であればみな、「ご冥福をお祈りいたします」と使ってよいわけではありません。宗教上の思想によって決まりに違いがあるため、「冥福」が適さない場合もあるのです。それでは「ご冥福」を使わない宗派・宗教、それらの決まりに適した挨拶を紹介します。

浄土真宗

仏教の中で唯一、「冥福」の使用が適さない宗派です。

浄土真宗は、「往生即成仏(おうじょうそくしんぶつ)」という考え方に基づき、亡くなった後はすぐに極楽浄土へ行けると考えられています。「極楽浄土」へ行くのは決定付いているようなものであるため、改めて冥土での幸せを祈る習慣がないのです。

浄土真宗の葬儀で遺族に言葉をかける場面では、「お悔やみ申し上げます」などの心境を伝える言葉がいいでしょう。

神道

「人間は神から命を任せられている」とする神道では、「命」はあくまで預かりものです。亡くなった後は神へ返されるものです。つまり、故人(の霊魂)が過ごす「冥界」が存在しないため、「冥福」も適さないのです。

また、神道の葬儀は、故人をその後、家の守り神にする儀式と考えられています。そんな神道では、「御霊のご平安をお祈りいたします」、「御安霊のやすらかならんことをお祈りします」と言葉をかけるのが一般的です。

キリスト教

これもまた死生観の違いによるもので、キリスト教の葬儀ではお悔やみの言葉が使われません。

キリスト教では、人が亡くなるのは「地上で起こしてきた罪が許されたから」と捉えられています。天に召されることを冥福を祈るに似たような言葉で祝福するかもしれませんが、“お悔やみ”ではありません。

どうしても何か故人に対する想いを言葉にしたい場合は、「やすらかな眠りにつかれますよう、お祈りいたします」などが使われています。

「ご冥福をお祈りいたします」が適さない場合の挨拶

特によく使われるのは、「ご愁傷様です」という言葉です。「愁傷」は故人の死を嘆き悲しむことを表現しています。

他にも以下のような挨拶があります。
・哀悼の意を表します
・心中お察しいたします
これらのフレーズは、葬儀の宗旨を問わず使用可能です。「心から」「謹んで」をつけるとより丁寧に気持ちが伝えられます。

英語では「I’m sorry for your loss.」「I pray his(her) soul may rest in peace.」といったメッセージがふさわしいです。

ご冥福の意味を理解して故人へ祈りを伝えよう

ご冥福を使用しない宗教・宗派もあると知れば、正しく使えているかを気にし過ぎてしまうかもしれません。しかし、故人を見送るときに大切なのは、故人を偲び、遺族を労る気持ちです。相手を思いやるマナーをふまえて、自分の心境を最も表せる言葉を捧げてください。