いくらもらえる? 私の年金|いつから始まる? 年金受給
終活
年金は、老後を過ごす上で重要なものです。その年金を自分が受給者となる頃、いくらもらえるか知っていますか。近年、老齢厚生年金の受給年齢が段階的に引き上がっていることもあり、もらえる年金額に不安を抱く人は多いはず。本記事では、基本的な知識から実際に年金をいくらもらえるのかを算出する方法や目安、年金を増やす方法などを紹介します。
年金の種類
身近にありながら、意外と詳細を把握していない人も多い年金。ここでは、年金の基本的な種類を解説します。
公的年金は、国民年金と厚生年金の2種類
日本で定められている公的年金は、国民年金と厚生年金の2つです。職業によって加入する年金が異なります。
分かりやすく説明する際に2階建ての建物に例えられることが多いです。1階部分は20~60歳未満のすべての人が加入し、保険料を納める国民年金(基礎年金)にあたります。2階部分は、国民年金に加えて公務員や企業サラリーマンが加入する厚生年金です。
もらえる年金の金額
将来のことを考えると、自分が年金をいくらもらえるかは、とても気になるところ。ここでは、年金の受給額の平均と国民年金受給額の算出方法、厚生年金受給額の目安を紹介します。
年金受給額の平均は人により異なる
専業主婦や自営業など、国民年金だけに加入してきた人の場合、月あたり約5万6,000円が平均的な受給額。国民年金の受給額に2階部分の厚生年金の保険料納入分が付加される会社員や公務員の場合の平均受給額は、月あたり約14万6,000円です。
ただし、国民年金の金額は、保険料を納めた月の数によって定められます。20歳から40年間、保険料を納付した人は、約6万5,000円の受給が見込めます。また、厚生年金は、収入と納付月数から算出されるのが特徴です。
受け取れる国民年金の計算方法
自分が受け取れる年金額は、以下の計算式で求められます。
年間の国民年金満額支給額×保険料納付月数÷480=年間の国民年金受給額
計算式に出てくる480は、国民年金に加入した年数40年×12ヵ月を表します。年金の原則に沿うと、満額を受け取れる場合は、月あたり約6万5,000円、年間で約78万円支給されると考えられます。
もらえる厚生年金の目安
厚生年金は複雑な計算式になるため、年収別の目安を紹介します。年収の平均額は、就職してから退職まで、すべての期間を入れて算出するのが基本です。なお、年収の平均額が750万円以上の場合は、750万円の事例と同等になります。
平均年収 | 厚生年金額(月) |
---|---|
250万円 | 約3万7,000円 |
350万円 | 約5万2,000円 |
450万円 | 約6万9,000円 |
550万円 | 約8万6,000円 |
650万円 | 約9万6,000円 |
750万円 | 約11万3,000円 |
年金受給のシミュレーション
個人の年金額はもちろんのこと、世帯全体で年金がいくらもらえるのかも今後のために把握しておくことが大切です。ここからは、老後に必要な生活費の目安や、ケース別の世帯年金受給額シミュレーションを紹介します。
老後に必要な生活費の目安
夫婦2人の場合、生活に必要な費用の平均額は約26万円。必要最低限の生活は月あたり約22万1,000円、余裕を持って生活を楽しむためには、月あたり36万1,000円あると良いとするリサーチ結果が出ています。
共働き夫婦のケース
まずは、夫の平均年収550万円、妻の平均年収350万円の共働きの場合を見てみましょう。
- 夫の年金月額内訳:国民6万5,000円+厚生8万6,000円=15万1,000円
- 妻の年金月額内訳:国民6万5,000円+厚生5万2,000円=11万7,000円
- 合計:26万8,000円
会社員と専業主婦のケース
次に、平均年収550万円の会社員の夫と、会社員経験のない専業主婦の妻のケースをシミュレーションします。
- 夫の年金月額内訳:国民6万5,000円+厚生8万6,000円=15万1,000円
- 妻の年金月額内訳:国民6万5,000円+厚生0円=6万5,000円
- 合計:21万6,000円
自営業夫婦のケース
最後に、厚生年金に入っていない自営業の夫・妻のケースでいくらもらえるのかをチェックします。
- 夫の年金月額内訳:国民6万5,000円+厚生0円=6万5,000円
- 妻の年金月額内訳:国民6万5,000円+厚生0円=6万5,000円
- 夫婦月額合計:13万円
年金を受給できる年齢
社会情勢などの影響で、年金を受け取れる年齢が徐々に引き上げられています。老後の計画を立てるためには、現在の制度を知ることが大切。ここでは、年金の受け取りがスタートする時期について紹介します。
受給開始は原則65歳から
基本的に、年金の受け取りは65歳からです。以前は、老齢厚生年金の受給開始が55歳だったこともありましたが、社会的な背景により、段階的に年齢が引き上げられることになりました。男性は1961年(昭和36年)4月2日、女性は1966年(昭和41年)4月2日以降に生まれた人は、原則通り65歳からの受給に当てはまります。ただし、当面は特別支給の老齢厚生年金を65歳まで受給できることになっています。
受給年齢は変更できる
原則では公的年金は65歳から受け取れますが、早めにもらい始めたいので60歳からに変更することもできます。反対に遅らせて68歳からの受け取りにするなど、受給開始時期の繰り上げ・繰り下げを自分で選ぶことができます。
繰り上げの場合は、60~64歳であれば受給可能です。繰り下げの場合、2021年(令和3年)現在では66~70歳に受け取り開始の変更が可能です。繰り上げて年金がもらえる時期を早めれば受け取れる金額は減り、繰り下げればその分だけ金額は増えます。
繰り上げの場合は、60~64歳であれば受給可能です。繰り下げの場合、2021年(令和3年)現在では66~70歳に受け取り開始の変更が可能です。繰り上げて年金がもらえる時期を早めれば受け取れる金額は減り、繰り下げればその分だけ金額は増えます。
なお、繰り上げ支給は取り消すことができません。老齢基礎年金のみの繰り上げ支給はできないことにも注意が必要です。老後の生活に必要な費用や貯蓄を照らし合わせ、じっくり検討してください。
年金の繰り上げ受給と繰り下げ受給
先に紹介したように、現在の年金制度には、年金の受給開始時期を選べる、繰り上げ受給と繰り下げ受給があります。年金の額に影響を与えるため、受給の時期はとても重要です。
繰り上げ受給とは?
申請をおこなうことで、60~64歳の間に年金を受け取れるのが、繰り上げ受給です。受給が開始された年齢に応じて、繰り上げ分の金額が減ります。繰り上げ受給がおこなわれた場合、生涯を通して減額率が変わることはありません。
繰り上げの方法は、「全部繰り上げ」と「一部繰り上げ」があります。60歳0ヶ月の基礎年金受給開始で受給率70%となるなど、繰り上げした場合の減額率の幅は、0.5~30%です。2020年(令和2年)6月に公布された年金制度の改正により、2022年(令和4年)4月1日以降に60歳になる人からはひと月あたりの減額幅が0.1%ほど緩和される予定です。
ただし、年金の増額(満額支給)を目的に60歳以降も任意で国民年金に加入している人は、繰り上げ申請ができません。
また、繰り上げ申請により、障害年金を受給できない可能性があります。繰り上げを申請した場合と、申請しない場合できちんと比較し、納得のいく結論を出すことが大切です。
繰り下げ受給とは?
年金を受け取る時期を66歳以降に遅らせることを、繰り下げ受給と呼びます。繰り下げの上限は70歳ですが、2020年6月の年金制度の改正により75歳まで受給開始を遅らせられるようになりました。この改正の適用は2022年(令和4年)4月からで、対象者は同年4月1日以降に70歳に到達する人(昭和27年4月2日以降に生まれた人)です。今回の年金制度の改正では、繰り上げ・繰り下げを希望しない人の年金支給開始年齢は現行の65歳のままで変わりません。
繰り下げ申請をした場合、年齢に応じて受給金額が増額されます。現行制度における増減率は8.4〜42パーセントで、制度改正後は年齢が引き上がることに比例して84パーセントが上限になります。因みに2021年時点では基礎年金の受給開始年齢を66歳0ヶ月への変更で108.4%、68歳0ヶ月への変更で125.2%の受給率となっています。増減率が変わることは生涯ありません。
年金を増やす方法
年金についていろいろな知識を得ると、「現在のままでは老後の生活が不安」と感じることがあるかもしれません。ここでは、年金を増やすために役立つ方法を紹介します。
1.付加年金
公的に運営される年金の1つに数えられる、付加年金。定められた保険料に追加して、月あたり400円を納付すれば、受け取る年金を増やせます。ただし、国民年金基金とは併用できません。
2.国民年金基金
厚生年金加入者と、自営業などで厚生年金に加入できない人との受給額の差をなくすために誕生した公的年金です。国民年金に追加して加入でき、自由にプランを選択して掛金を納付するスタイルです。掛金は、すべて社会保険料における控除対象とされます。
3.個人型確定拠出年金
個人型確定拠出年金は、別名でiDeCo(イデコ)とも呼ばれます。自分で掛金を決め、運用によって得られた実績額を受け取れる制度です。掛金は1,000円ごとに設定でき、最低設定金額は5,000円。ただし、運用によっては実績額が掛金を下回る可能性があるため、プラン設定は慎重におこなってください。
4.小規模企業共済
小規模企業共済は、経営者が職を退いたときの生活費のために積み立てができる制度です。いわば小規模企業経営者の退職金を用意しておくようなもの。現役の間は、掛金の納付期間に応じて事業資金などの借入れができるほか、支払いをする本人の分だけ、すべての掛金が所得税控除の対象になります。
5.個人年金保険
個人年金は、必要に応じて加入し、納めた保険料が年金として受け取れる民間運営の貯蓄型保険です。最初に設定した年齢になると一定額を受け取れます。一定期間だけ受給できるものと、生涯を通して受給できるものがあり、自分の老後の生活を考慮に入れて決めることが重要です。
年金がいくらもらえるか試算して豊かな老後を
年金は基本的な枠組みがあるものの、受給年齢の繰り上げ・繰り下げの仕組みや、追加で活用できる年金制度もあります。まずは、自分が年金をいくらもらえるのか確かめ、老後にどれくらいの費用がかかるのか、どれだけ備えが必要かシミュレーションするのがおすすめです。その上で、豊かな老後を送るための対策を立ててはいかがでしょうか。