葬儀での炉前とは。火葬場で故人とできる最後のお別れ

ご家族の通夜・葬式準備
葬儀での炉前とは。火葬場で故人とできる最後のお別れ
葬儀の場における炉前(ろぜん、ろまえ)は、火葬炉の前にあるスペースを意味します。故人と生前の姿でお別れできる最後の場所であり、炉前読経という儀式がおこなわれます。この記事では、炉前読経、通称・炉前の内容とやり方を中心に説明します。また、関連性の高い火葬式(直葬)についても紹介します。

炉前の意味

亡くなった人とお別れをする場所である炉前。最初に、この言葉にはどのような意味があるのかを紹介します。

火葬炉の前

高温でものを燃やす装置・機械を炉(ろ)と呼びます。そして炉前は、装置の前に設けられたスペースのことです。お葬式の場合には、ご遺体を焼く火葬炉の前のことを指します。火葬場には「炉前室」という部屋が用意され、故人と遺族の最後の時間のために使用されます。

炉前室(火葬炉の前)で読経すること

火葬場で火葬前にお経をあげることを炉前読経と呼び、これをよく炉前と略します。ただし炉前読経をしない、もしくはできない場合もあります。

多くは火葬場の事情によるものです。時間などの制約の多い火葬場では、最後のお別れをする時間や棺を開けて顔を見る時間が設けられないことがあります。ドラマや映画のように炉に入る最後の瞬間まで故人の顔を見て、名前を呼ぶようなお別れができるとは限りません。

最後にお顔が見られる場所はどこか、葬儀社や火葬場に事前の確認をおすすめします。

地域による炉前状況の違い

僧侶が火葬場に行く習慣がない場合は、炉前読経をしない可能性が高いです。地域によってはそのような習慣自体がないこともあります。

火葬場によっても対応が異なります。具体例として、家族葬のファミーユ宮崎支社に市内の「炉前事情」を確認しました。

「宮崎市のお葬式では、炉前読経をするのが一般的です。読経の時間は15分ほどあり、十分に手を合わせる時間があると思います。しかし、長時間の読経はできないので、別に葬儀・告別式をしない“直葬”の場合は注意が必要です。また、炉に入る前に棺の蓋をあけることは原則できません。どうしても開けたいときには職員の方へ事前に相談しておく必要があります」。

「宮崎市葬祭センター(宮崎市の火葬場)」を利用しようと思っている人は、次のことにも留意しておきましょう。火葬時間は約2時間です。点火時間の1時間前から受け入れが可能で、30分前には到着している必要があります。
センターの控室での法要は出来ません。通常は炉前への入室制限などはありませんでしたが、このコロナ禍により10名までとされているようです(2021年1月現在)。

緊急事態下では刻々と状況が変わりますので、葬儀社などに直前での再確認をお願いしましょう。

炉前読経

故人と会葬者がお別れをする大切な儀式である炉前読経。ここでは、炉前読経の基本内容や手順について紹介します。

炉前で納めの式

炉前読経は、故人と遺族や参列者がお別れをする最後の儀式です。僧侶を招き、火葬の前に読経します。大切な人を亡くした悲しみは大きなものですが、厳かなお別れの儀式が少し気持ちを落ち着けることにつながるでしょう。

故人と共有したさまざまな思い出を振り返り、最後のひとときを心穏やかに過ごしてください。

炉前の費用

僧侶を招いて読経などをおこなう場合は、お布施を準備してください。一般的なお礼の目安は3万円~10万円程度とされています。ただし地域やお寺などによって金額が変わることもあるため、心配な場合はお寺に直接たずねてみるか、地元の親族に相談するのがおすすめです。

葬儀社で僧侶を頼むときは、2日葬、1日葬、直葬といったお葬式プランに含まれています。必ずとは言い切れませんので、不安がある場合はプランの内容を確認しておくと良いかもしれません。

炉前の手順

ここでは炉前(読経)の基本的な手順について紹介します。

①葬儀社との打ち合わせ

葬儀社との打ち合わせでは、通夜や葬儀告別式の内容だけでなく、火葬についても質問をしてみてください。

・火葬炉で読経やお別れができるのか
・どのくらいの時間が取れるのか
・人数の制限はあるのか

葬儀社と火葬場は運営母体が違うので、すぐには答えられないかもしれませんが、きちんとした葬儀社であれば調べて教えてくれます。特に通夜や葬儀告別式をしない直葬の場合は炉前読経をしないと故人と過ごす時間が想像以上に短いことが予想されます。菩提寺(ぼだいじ)のある場合は、お寺の僧侶の考え方やスケジュールによって対応の有無が変わります。事前に都合を聞いてください。

②棺に入れる時に注意するもの

当日は忘れないように火葬許可証を持参してください。
棺の中に納めたい洋服や旅支度に持たせてあげたいものなどがあれば、事前に葬儀社の担当に相談しておくとよいでしょう。

棺に入れてはいけないものがあるため、こちらも事前に確認をしておきましょう。眼鏡や腕時計などガラスや金属を含むものは、溶けて遺骨を損傷させる危険性があります。また、プラスチックやゴムなど、燃やすと環境に影響を与える可能性がある素材は入れられないことがあります。

棺に入れる「副葬品」に関しては下記の記事でさらに詳しく説明しています。参考にしてください。

③ 火葬場についたら

遺族や近しい親戚などがそろったら、炉前で故人と最後のお別れの儀式をおこないます。前述の通り、読経などの時間がとれることが前提ですが、火葬場によっては思い出の品やお花を故人に手向けることも可能です。炉の火をつけるボタンを押す人は、喪主が一般的です。

大切な人とのお別れです。悲しみから冷静になれないこともあるかもしれません。喪主が押すのを躊躇したり、辛くて押せなかったりするときは、他の人に代理を頼んでも問題ありません。また葬儀社によっては、スタッフがボタンを押す係を担う場合があります。スムーズに済ませられるように事前に確認しておいてください。

滞りなく点火を終えたら、収骨までの時間をスタッフに知らせてもらいます。点火から骨上げまでには、40分~2時間程度です。この間は、控室で待機するか、どこかで会食をします。

④収骨

指定時刻になったら、骨上げです。故人と縁の深い順に喪主・遺族から親戚と、二人一組で足から頭の骨までを拾って骨壺に収めていきます。最後に喪主が喉仏の骨を収めます。
続いて埋葬許可書を受け取り、帰路につきます。

火葬式とは

ここでは火葬式、別名直葬の概要や費用、メリットについて解説します。

火葬式とは

通夜や葬儀を省いて火葬のみをおこなう式のことを指します。「直葬」や「炉前式(炉前葬)」と呼ばれることも。基本的には弔問客を受けつけず家族だけでおこないますが、近しい親族が参列する場合もあります。故人を24時間安置後、火葬や収骨をおこないます。

火葬式の費用

15万円~30万円程度が目安です。搬送時の距離や受けるサービスによって変動します。葬儀社に依頼する際にはプラン内に、寝台車や霊柩車、棺、ドライアイス、骨壺、手続き代行など、必要なものが含まれているかを確認しましょう。

また、火葬場には公営と民営があり、料金は施設によって異なります。
僧侶に読経をしてもらったり、ご遺体を自宅ではなく施設に保管したりすることなどでも費用が増えます。

火葬式のメリット

火葬のみというコンパクトな形でおこなわれる葬儀です。祭壇や会葬者への香典返しや精進落としなどの負担がなく、費用が抑えられます。参列するのは親族だけの場合がほとんどですので、会葬者への特別な対応はありません。式の内容がシンプルな分、一般的な葬儀と比較すると短時間で済ませられます。

大切な人を亡くした後は心の余裕がなく、会葬者への対応が負担になることがあります。親しい人だけで静かに見送りたいときにもメリットがあると言えるでしょう。ただし、想像以上にあっけなく終わってしまうかもしれません。急に決めることが多いかもしれませんが、お見送りの形のメリットとデメリットについてはよく理解しておいてください。詳細は、下記の記事を参考にしてください。

炉前は故人との最後のお別れの場所

最後に故人と過ごした時間を振り返り、お別れをする大切な場所が炉前です。この場所の印象は思いのほか強く残ります。こんなはずではなかった、は避けたいものです。できればお別れの内容までよく確認することをおすすめします。

この記事の監修者

瀬戸隆史 1級葬祭ディレクター(厚生労働省認定・葬祭ディレクター技能審査制度)
家族葬のファミーユをはじめとするきずなホールディングスグループで、新入社員にお葬式のマナー、業界知識などをレクチャーする葬祭基礎研修などを担当。