夜通し故人に寄り添う「寝ずの番」。意味や過ごし方を解説

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夜通し故人に寄り添う「寝ずの番」。意味や過ごし方を解説
寝ずの番とは、お通夜の後に遺族がご遺体を見守ることです。昔は朝まで見守るのが一般的でしたが、現在ではほとんどおこなわれていません。寝ずの番をする場合は、やり方を事前に把握しておくことをおすすめします。本記事では、寝ずの番の意味と由来、基本的な過ごし方、マナーを紹介します。

寝ずの番の意味と由来

日本で執りおこなわれるお葬式には、古くからさまざまな慣習や儀式が盛り込まれてきました。その1つが寝ずの番です。まずは意味と由来、同義語から紹介します。

意味

寝ずの番とは、お通夜の後に遺族がご遺体を夜通し見守ることです。一説によると“お通夜”という言葉は、寝ずの番の“夜通し”が由来とされています。

見守っている間は、線香やろうそくの火を灯し続けます。一般的にはお通夜の翌日が葬儀・告別式なので、寝ずの番をする時間は故人とゆっくり過ごせる最後の夜です。

由来

医療が未発達だった頃は、本当にその人が亡くなったのか確認する術が未熟でした。臨終を告げられても、まだ実際には亡くなっていない可能性もあったのです。息を吹き返すことはないか、出棺をするまで様子を見守る風習が、寝ずの番の由来と考えられています。

寝ずの番には「故人が極楽浄土に行けますように」といった願いが込められています。線香の火を絶やさないのは、悪霊が故人に憑かないようにするためです。その他、「火」は「故人の旅路の足元を照らす」と考えられているという説もあります。

同義語

お葬式に関連する言葉として「棺守り」「線香番」「夜伽(よとぎ)」などを見聞きしたことがあるかもしれません。文字通り、「棺守り」は故人が納められた棺を斎場で見守ることを意味します。「線香番」も読んで字のごとく、線香を絶やさないように見守ることを指します。

「夜伽」にはいろいろな意味がありますが、お葬式の場ではお通夜などで遺族が故人と添い寝をしたり、起きたまま近くで過ごしたりする様子を指す言葉です。これらは、お通夜の晩に近親者が寝ないで灯や線香を絶やさないようにする点が共通しています。つまり「棺守り」「線香番」「夜伽」は、寝ずの番と同義語と考えられるのです。

寝ずの番の基本的な過ごし方

時代の変化とともに、おこなわれる機会が減少している寝ずの番。慣例にならう場合は、基本的なやり方を押さえつつ、無理のない範囲での実施をおすすめします。こちらでは基本的な過ごし方とともに、文明が発達した現代だからこそ取り入れられる方法を紹介します。

①寝ずの番をする人を決める

誰がご遺体を見守るのか、その選び方に決まりごとはありません。とはいえ、故人と近い関係にあった遺族や親族が一般的です。人数制限もありませんので、故人に別れを告げるため少しの時間だけ参加する人もいます。遺族や親族間で話し合って、誰が寝ずの番をするのか、時間交代制にするのかなどを決めてください。

②線香とろうそくの火を灯し続ける

寝ずの番では線香とろうそくを用意します。何本も供えると故人が道に迷うと考えられているため、供えるのはそれぞれ1本だけです。ろうそくを交換する際には、短くなったろうそくの火を新しいろうそくに灯してから付け替えます。イメージはオリンピックの聖火リレーです。

火を絶やしてはいけないとはよく耳にしますが、どの宗派においても「火が絶えたら極楽浄土に行けない」とは言われていないため、あまり心配する必要はありません。

心配な人には、燃焼時間が長いタイプの線香や渦巻線香がおすすめです。線香やろうそくの着火には、マッチや大型の着火ライター、仏壇用の火つけがあります。タバコなどに使う小型のライターよりも使いやすくなっています。

寝ずの番をする際は、火事にならないように周囲に燃えやすいものを置かない、また、子どもが火に触れないように注意します。火の番に不安がある人には、ろうそく型のライトがあります。ずっと朝まで誰かが起きていなくとも、故人を明かりで導けるので安心してください。

③朝まで故人と過ごす

寝ずの番という言葉から徹夜のイメージがあるかもしれません。しかし先述のように、ライトなどの便利グッズがあるので無理に徹夜する必要はありません。家族や親族と交代しながら寝ずの番をすることも多いでしょう。負担が減るだけでなく、各々が故人と最後の夜を過ごせます。

家族や親族が少ない、または心身が辛い場合は途中で寝ても問題ありません。大切な家族が亡くなった後は、心身ともに辛い上に何かとやることが多く疲労がたまるものです。寝ずの番をしなければ、と無理をしすぎないようにしてください。

寝ずの番におけるマナー

お葬式に関連する慣習にはマナーがある場合がほとんどです。それは寝ずの番も例外ではありません。こちらでは、服装・線香・電気に関するマナーをそれぞれ紹介します。

服装

寝ずの番をするときの服装に関する決まりはありません。基本的に弔問客が帰宅後におこなうため、ジャージやパジャマなどのラフな服装で構いません。

ただし、お寺や斎場で寝ずの番をおこなう場合は、派手な色やデザインの服は避けるなど、マナーを考える必要はあります。自宅以外でするのであれば、事前に確認した方が無難かもしれません。

線香

寝ずの番の必需品と言える線香は、1本ずつ供えるため途中で交換する必要が出てきます。交換するとき、ライターやマッチを使用するのはマナー違反です。必ず、ろうそくを使って新しい線香に火をつけてください。

もしも線香にろうそくの火が移って燃えてしまっても、息を吹きかけて消すのはマナー違反です。その理由は、仏教において「息は穢れ」と考えられているから。同じ理由で、ろうそくの火もあおいで消すか、仏壇用の火消しを被せて消すのがマナーです。

電気

寝ずの番の最中は基本的には誰かが起きているため、電気はつけたままにしておきます。交代制にしていて、部屋が明るくて寝られない場合は、アイマスクなどの使用を検討してみてはいかがでしょうか。ろうそく型のライトなどを使用して途中で就寝するときは、故人が安置されている部屋の電気を消して問題ありません。

寝ずの番の時間が短縮されるケース

基本的に寝ずの番は朝までご遺体を見守り続けるものですが、なかには時間が短縮されるケースがあります。こちらでは、代表的な例を2つ紹介します。

半通夜の場合

本来、お通夜は故人と一晩中過ごすものですが、近年は“半通夜”が主流になっています。半通夜は1~2時間ほどで閉式する通夜式のことで、18時頃から始まるのが一般的です。

半通夜が終わり、弔問客が帰宅後に遺族や親族で数時間だけ故人に寄り添うケースも増えています。その後は遺族や親族も帰宅し、睡眠をとって翌日の告別式・葬儀式に備えます。

お通夜から納骨までの流れに関しては、以下の記事をぜひ参考にしてください。

斎場に宿泊できない場合

利用する斎場に遺族や親族が宿泊できる場合は、朝まで故人に寄り添えます。しかし、斎場によっては宿泊ができないことも。そのようなときは、通夜式の後に数時間だけ故人と一緒に過ごし、遺族や親族は帰宅します。

寝ずの番で最後の夜を

現在の日本に受け継がれている、寝ずの番という慣習。半通夜が増えていることで、朝まで寄り添い続けることは減っていますが、数時間でも少しでも長く故人のそばにいたいという人も多いことでしょう。とはいえ、お葬式の最中は遺族の心と身体に負担がかかっているものです。決して無理はせずに、故人と過ごせる最後の夜を迎えてください。

この記事の監修者

政田礼美 1級葬祭ディレクター(厚生労働省認定・葬祭ディレクター技能審査制度)
家族葬のファミーユ初の女性葬祭ディレクター。葬儀スタッフ歴は10年以上。オンライン葬儀相談セミナーなどを担当。