知っておきたい弔辞のマナーや注意点とは?役立つ例文も紹介

お葬式のマナー・基礎知識
知っておきたい弔辞のマナーや注意点とは?役立つ例文も紹介
親交が深かった故人の葬儀のときには、お別れの言葉にあたる弔辞(ちょうじ)を依頼されることがあります。弔辞を依頼されるのは突然なので、書き方やルールがわからず慌ててしまう人も多いようです。

この記事では弔辞の基本事項を解説します。また、弔辞の流れや具体的な例文もあわせて紹介していきます。

弔辞とは?

お葬式で読み上げられるということはわかっていても、弔辞とはどういったものなのか、何を求められているのかなど、きちんと理解できている人は意外と少ないかもしれません。

まずは、弔辞についての基礎知識を確認しておきましょう。

故人との永遠の別れを惜しむ挨拶

弔辞とは亡くなった人へ贈る別れの言葉。故人の死を悼む気持ちや悲しみを伝えるものです。

日本の葬儀では、宗教や宗派の違いを問わず、弔辞を読むのが一般的です。生前に故人と親交の深かった友人や会社の同僚など3~5人ほどが遺族から依頼を受け、弔辞を作成し、読む役目を果たします。

弔辞という言葉の字面や、葬儀という厳かな場で読まれることを考えると、かしこまった固い表現を想像してしまうかもしれません。しかし、弔辞で語られるのは、故人との思い出や故人の生前の活躍など、親しい関係だからこそ話せる内容ばかり。そのため、自分らしい素直な言葉で表現することが望ましいとされています。

弔辞の基本ルールとマナー

自分なりの言葉や表現を使うのが良しとされているとはいえ、弔辞にも守るべきルールやマナーは存在しています。葬儀の場で読み上げる挨拶である以上、ルールやマナーに則って執りおこなわなければ、遺族にも参列者にも、そして故人にも失礼に当たります。

そこで、依頼される前にぜひ知っておきたい弔辞のルールやマナーをわかりやすくお伝えします。

弔辞の長さ(時間)

弔辞は3分程度の時間に収めるのが目安です。長くても5分くらいまでになるよう、長さを調整しましょう。ほとんどの場合、弔辞は3~5人など複数人が読むことになります。一人だけ長々と読み続けるのはあまり望ましくありません。

弔辞は亡くなった人への別れの言葉であるとともに、遺族や参列者にとっては、故人への追悼の気持ちを共有する大切な機会となります。早口にならないように気をつけ、はっきりとした口調で話すように心がけましょう。

弔辞の構成

弔辞を3分程度の長さに収めるには、400字詰め原稿用紙2枚ほどの文字数が目安になります。

原稿用紙2枚分といっても文章を書きなれていない人であれば、約800文字を書くのは大変だと思われるかもしれません。反対に、故人を悼む気持ちや思い出などが多すぎて、800文字では足りないという人もいるでしょう。

そんなときは、次の5つの要素や順番を意識して文章を構成してみてください。そうすれば、まとまりのある弔辞に仕上がります。

1.導入部分(故人への呼びかけは名前もしくはいつも呼んでいた愛称で)
2.訃報を知ったときの哀しみや驚き
3.故人の人柄やエピソード
4.今の心境や今後への想い
5.故人への別れと冥福を祈る言葉

文末には葬儀の日付(年月日)と署名を忘れないように記しましょう。また、故人の名前や経歴、日付などを間違えないように注意します。

弔辞の書式

弔辞を書くときには、大判の奉書紙か巻紙を使うのが正式です。
奉書紙は、古くは室町時代から公文書を記す用紙として使われてきたもので、しっかりとした質感の白い和紙が一般的です。巻紙は半切りの紙を横に継ぎ足していくもので、毛筆の手紙などに使われてきました。

弔辞はこれらの用紙に薄墨で書くのが基本ですが、万年筆やペンを使っても問題ないとされています。さらに最近では、推敲しやすいパソコンを使う人も増えてきています。そのため、プリンターに対応する弔辞用の用紙が選ばれることも多いようです。

使ってはいけない言葉に注意

弔辞を作成する際は、避ける言葉があります。

代表的なのが「忌み言葉」です。不幸を繰り返すことを思わせたり、縁起の悪いことや不吉なことを連想させたりする言葉で、主に次のような表現があります。

・繰り返し言葉(重ね言葉):重ねる、再三、くれぐれも、たびたび、重ね重ね、ますます、いよいよ
・縁起が悪い言葉:切る、離れる、浮かばれない、とんでもない、九(苦しいを連想)、四(死を連想)

その他、「死んだ」や「死去」など、故人の「死」を直接的に表す言葉も選ばないようにしましょう。このような言葉を使用したいときには「お亡くなりになった」や「逝去」などに言い換えます。さらに、「生きているうち」といった表現は遺族の哀しみを強めてしまう可能性があります。こちらも「ご生前」や「お元気な頃」といった表現に言い換えるのが望ましいとされています。

弔辞の包み方

書き上げられた弔辞は、大きめの奉書紙で包むのが正式なスタイルです。

奉書紙の弔辞は、半分に折ったものをさらに三つ折りし、表包みのサイズに合わせて上下を裏側に折ります。表包みに使う奉書紙の中央やや右よりに置き、左前となるように左右をたたみ、上下を裏に折り返します。表面の中央に「弔辞」と書き、その下に名前を記名すれば完成です。

巻紙の弔辞は、少しずつ開きながら読めるように後ろから折りたたんでいきます。表包みは奉書紙の場合と同じです。

この他、最近では白い封筒に入れる略式スタイルも珍しくありません。こちらでも問題ありませんが、二重封筒は「不幸を繰り返す」縁起の悪いものとされます。そのため、封筒は必ず一重のものを選んでください。封筒にも「弔辞」の表書きと記名を忘れないようにしましょう。

弔辞当日の流れ

弔辞をおこなう人は座席が決められている場合があります。事前に葬儀社に確認しておくといでしょう。

その時がきたら、霊前(祭壇の前)へと進み遺族と僧侶に一礼し、その後、故人に向かって一礼します。

弔辞の紙を広げ、両手で持ちます。そして、葬儀に集まった参列者全員に聞こえるように、ゆったりと感情を込めて読みます。早口や棒読みに気をつけて、故人に語り掛けるような気持ちで読むとよいでしょう。

読み終えたら、弔辞を元通りに折りたたみます。そして表書きを霊前に向け、檀上に置きます。最後に故人に一礼し、次に遺族と僧侶に一礼を終えてから席に戻ります。

弔辞を作成する際の例文

決まり切った定型文ではなく、故人に語りかけるような文章が求められる弔辞。「決まり文句」がないために、思うように筆が進まないということもあるでしょう。

ここでは、そんなときに参考になる、弔辞を考える際の例文を紹介します。

友達など親しい人への弔辞

冒頭は「〇〇さんのご霊前に謹んでお別れの言葉を捧げます。」などが基本です。しかし、友達など親しい人に向けて弔辞を書くときは、2人の関係性を示すためにややくだけた表現を使っても問題ありません。例えば、冒頭部の呼びかけでは「〇〇、私は今あなたに別れを告げようとしています。」などと、話し言葉のように伝えるのも良いでしょう。

故人と親しい仲の場合、エピソード部分が大きなポイントになります。以下のように、親しいからこそ知る具体的なストーリーを入れると、より想いが伝わる弔辞になるでしょう。

・故人との関係がわかる出会いの思い出を入れる。
<例文>
「○○さんと初めて出会ったのは、××年4月、△△大学のテニスサークルでのことでした。」

・故人の人柄がわかるエピソードを盛り込む。
<例文>
「知り合いもなくテニスも初めての私に、気さくに話しかけてくれたあなたの笑顔は今もはっきりと覚えています。」

・故人とどんな交流があったかを具体的に語る。
<例文>
「大学卒業後も銀座や新橋でお酒を飲みながら、仕事や将来のことを語り合いました。」
「奥さんの作るビーフシチューが美味しい、息子さんが小学校のリレー選手に選ばれたなど、家族の自慢話も2人の定番の話題でしたね。」

ラストは「どうか安らかにお眠りください。」「どうぞ静かにお休みください。」などの言葉で締めくくります。

恩師や上司などお世話になった人への弔辞

お世話になった恩師や上司に向けて弔辞を書くときには、敬意を示すことが何より大切です。さらに、故人との縁が自分にとっていかに素晴らしいものであったか、きちんと伝わるよう心がけましょう。そのためにも、故人との出会いが自らの今後にどう影響したかを伝える部分が重要になります。

・故人との出会いから得られたことを伝える。
<例文>
「○○先生がいらしたからこそ、私たちはかけがえのない高校生活を過ごし、卒業後もそれぞれの進路で充実した日々を過ごせました。」

・故人が安らかに旅立てるよう、今後への決意を言葉にする。
<例文>
「私たち教え子は先生のご遺志や教えをしっかりと受け継いで、人に優しく、笑顔の絶えない人生を過ごせるよう努力していくつもりです。」

また、上司の場合は「社員一同を代表して」などと明記し、他の参列者に配慮するとよいでしょう。

自分らしい弔辞で最後の別れを伝えて

お葬式で読まれる弔辞は、亡くなった人へお別れの言葉を伝えるとともに、故人との思い出を参列者と共有できる貴重な機会。基本的なマナーを押さえながらも、素直な気持ちを表現することが大切です。

弔辞という大役を依頼されると不安を感じるかもしれませんが、特別な理由がなければぜひ引き受けてください。気負うことなく、自分らしい言葉で故人を送りましょう。