「奉書紙」は大切なことを伝える紙。購入場所や使い方は?
お葬式のマナー・基礎知識
奉書紙とは弔辞を書くときなどに使われる和紙。古くは公文書を作成するときに使われていたそうですが、現代では弔辞だけでなく、さまざまなことに使われています。こちらの記事では、奉書紙の由来や特徴、販売場所、価格とともに、弔辞の書き方やマナーを解説します。
目次
弔辞を書く奉書紙の由来
奉書紙(ほうしょし、ほうしょがみ)とは和紙の種類の1つ。命令などを伝える文書である「奉書」に使われていたことから、奉書紙とよばれるようになったと考えられています。室町時代には幕府が公文書用として使っていたそうです。
半紙などの和紙と比較して厚く、しっかりしているのが特徴です。現代でも弔辞、祝詞や結婚式の祝辞、香典やお布施を包むとき、経本や御朱印帳、日本画や浮世絵、色紙などに使われています。
現代における奉書紙の使用例
古くは原料に楮(こうぞ)という植物が使われ、手すきで作られていました。現代の奉書紙の原料はパルプが使われることがほとんどです。現代における奉書紙の使用例を紹介します。
祝儀袋と不祝儀袋
不祝儀袋や祝儀袋には中包み(封筒の時には中袋という)と上包みがあって、どちらにも奉書紙や半紙などが使われます。中包みはお金を包むもの、上包みは中包みをくるむ、いわゆる外袋です。どちらの包みも不祝儀と祝儀では折り方に違いがあるので解説します。
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【不祝儀の場合】
- 中包みの折り方:お金を包んだ紙の折り返し(包み残しの部分)が右下に来るようにする
- 上包みの奉書紙の枚数:1枚
- 上包みの折り方:「悲しみで頭をうなだれる」、「涙をためないように」、「不幸が上から下へ流れるように」と、下の折り返しの上に上の折り返しがくるように重ねる。
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【祝儀の場合】
- 中包みの折り方:お金を包んだ紙の折り返し(包み残しの部分)が左上に来るようにする
- 上包みの奉書紙の枚数:2枚
- 上包みの折り方:幸せを逃がさないという意味を込め、上の折り返しに下の折り返しを重ねる。
- 僧侶に渡すお布施の上包みは不祝儀ではなく、次に解説する祝儀の包み方になるので注意する。
会葬礼状と挨拶状
会葬礼状とはお葬式に来ていただいた方にお渡しするお礼状です。参列していただいたお礼や香典・供物を受けたお礼の文章を書き、当日、またはなるべく早いタイミングでお渡しします。
忌明けには、香典返しとともに法要を無事に終えたお礼の挨拶を書き入れて送るとよいでしょう。
忌明けには、香典返しとともに法要を無事に終えたお礼の挨拶を書き入れて送るとよいでしょう。
料理
弔事や慶事以外では、料理にも使われます。島根県の郷土料理に奉書紙を酒と水で塗らし、スズキを蒸し焼きにした「奉書焼き」と呼ばれる料理があります。奉書紙が油を吸い取ってくれるためヘルシーな仕上がりに。スズキ以外にも、ほかの魚や野菜も包めます。
奉書紙の特徴
奉書紙の特徴を知っておけば、自分の好みに合わせて洋紙などと使い分けも可能です。こちらでは奉書紙の特徴を紹介します。
高級感や和の雰囲気を演出できる
奉書紙は和の雰囲気や高級感を出す演出をしたい場面に適しています。奉書紙の使い方に決まりはないため、気持ちを込めたい文章に使うのにもおすすめです。
表面と裏面どちらにも印刷ができる
洋紙と違って、奉書紙を含む和紙には裏表があります。表面はツルツル、裏面はザラザラしているのが特徴です。奉書紙は両面に印刷が可能ですが、インクがにじみにくい表面に印刷するのが一般的です。しかしどちらに印刷するのが正しいという決まりはなく、最近では和紙の質感を出すために、あえて裏面に印刷することもあります。
用途に合わせてサイズを選べる
奉書紙のサイズは一般的に横が約25センチ、縦が約35センチ。ハガキやA4サイズのほか、巻紙などのタイプがあります。弔辞を書くときは大きめ、現金を包むには小さめのサイズが適しています。厚みもさまざまで、一般的に弔辞を書くときは0.13ミリ、御朱印帳には0.18ミリというように使い分けられているようです。
どこで買える?奉書紙の販売場所と価格
弔辞を依頼されたら、まず奉書紙を購入する必要があります。いざというとき困らないためにも、奉書紙の販売場所や価格を知っておくと安心です。
文房具店などで販売されている
奉書紙が販売されている場所は以下のとおりです。
- 文房具店 奉書紙を取り扱っているところが多く、薄墨の筆ペンなども一緒に購入できる。
- ネットショップ(通信販売) 手軽に購入でき、取り扱われている数も豊富。ただし、注文してから商品が到着するまで時間がかかるため、前もって注文する必要がある。
- 書道用品店 毛筆に用いられる紙は基本的に置いてあるため、奉書紙も取り扱われているところが多い。
- 和紙専門店 高級な和紙を希望する場合におすすめ。
価格は販売場所によって異なる
販売場所によって取り扱っている奉書紙のサイズなどはさまざまで、価格も異なります。参考として、A4サイズ(100枚入り)で1,000円から3,000円程度で販売されています。いざというときに奉書紙が必要になるため、販売場所や価格を事前に確認しておくと良いかもしれません。
【奉書紙】弔辞の書き方
弔辞の書き方にもマナーがあります。初めて弔辞を依頼されて、全く書き方が分からずに困ってしまう場合もあるかもしれません。奉書紙に弔辞を書く際は、以下の手順を参考にしてみてください。
1.右端から10cm程度余白をとり、行間を広めに開けて書く
弔辞は奉書紙の右端から10cm程度余白をとってから書き始めます。書く方向は縦書きです。行間を広めにとって書くと読みやすくなります。葬儀の本番は緊張する場合があるので、弔辞の読み間違いを防ぐのにおすすめです。
また弔辞は1枚に収めるのが望ましいとされています。余白や行間を広めにとっても1枚で足りなかった…ということがないように、奉書紙に書く前に文章を考えておくと安心です。
2.年月日と署名を記載し、奉書紙を折りたたむ
弔辞を書き終えたら、本文より少し下に年月日を書きます。改行して年月日より下に署名をします。その後、弔辞を書いた奉書紙を横長に置き、左右を合わせて半分に折り、さらに三つ折りにして、最後に上下を合わせて半分に折りたたんでください。
3.折りたたんだ奉書紙を包む
弔辞をそのまま持参するのは良くありません。そのため弔辞を書いたものと同じ奉書紙で包み、持参するのがマナーです。もし同じものがなければ、白い紙で包んでも問題ありません。
包むときは、弔辞を包み紙の真ん中よりもやや右側に置きます。包み紙は右、左の順番に折って必ず左側を前にしてください。表面に「弔辞」と記載し、最後に包み紙の上と下の部分を裏面に向かって折ります。
弔辞の基本的な構成
弔辞は以下の基本的な構成に沿って書くと、文章が苦手な人でも安心です。
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【弔辞の基本構成】
- 導入 訃報を聞いたときの自分の心情。
- 故人とのエピソード 故人との思い出を中心とした内容。仕事上の関係であれば、故人の功績を含めても良い。
- 故人へのお別れの言葉 最後に故人へ感謝を伝え、お別れの言葉で締めくくるのが一般的。
弔辞を書くときに気を付けるべき3つのポイント
先述したように弔辞には書き方のマナーがありますが、その中でさらに気を付けるべきポイントがいくつかあります。大事な場面で失礼のないよう、マナーに則って念入りに準備をすることが大切です。
1.薄墨を使って書く
奉書紙に限らず、弔辞は薄墨で書くのが正しいマナーです。薄墨であれば筆ペンで代用しても問題ありません。ちなみに弔辞をパソコンで作成し、プリンタで印刷するのはマナー違反にはなりません。
2.文章は1000文字程度に収める
弔辞は5分以内程で読み上げるのが望ましいとされています。3分で文字数の目安は、1000文字程度です。弔辞を読む人が複数人いることも考慮して適切な長さで気持ちを伝えてみてください。
3.忌み言葉や生死の直接的な表現に気を付ける
弔辞では忌み言葉や、生死の直接的な表現を使ってはいけません。忌み言葉とは「たびたび」のような重ね言葉や、死を連想させる「四」のような文字のこと。
生死の直接的な表現となる「死亡」は「逝去」や「永眠」、「生きている」は「ご生前」、「お元気な頃」など言い換えると丁寧です。
知っておきたい弔辞のマナーや注意点とは?役立つ例文も紹介 - 家族葬のファミーユ【Coeurlien】
親交が深かった故人の葬儀のときには、お別れの言葉にあたる弔辞(ちょうじ)を依頼されることがあります。弔辞を依頼されるのは突然なので、書き方やルールがわからず慌ててしまう人も多いようです。この記事では弔辞の基本事項を解説します。また、弔辞の流れや具体的な例文もあわせて紹介していきます。
故人への感謝の気持ちを込めて
大切なことを伝えるための紙とも言われる奉書紙。弔辞を依頼された際も、奉書紙を選ぶことで故人への感謝の気持ちをよりよく表現できると言えるかもしれません。自分の気持ちを丁寧にしっかり伝えたいときには奉書紙を使用してみてはいかがでしょうか。
この記事の監修者
政田礼美 1級葬祭ディレクター(厚生労働省認定・葬祭ディレクター技能審査制度)
家族葬のファミーユ初の女性葬祭ディレクター。葬儀スタッフ歴は10年以上。オンライン葬儀相談セミナーなどを担当。
家族葬のファミーユ初の女性葬祭ディレクター。葬儀スタッフ歴は10年以上。オンライン葬儀相談セミナーなどを担当。