精霊馬とは?ナスとキュウリの由来や作り方・飾り方・処分方法を解説
お葬式のマナー・基礎知識
この記事はこんな方におすすめです
精霊馬とは何かを知りたい
精霊馬の作り方や飾り方を知りたい
精霊馬(しょうりょううま)とは、お盆に先祖の霊を送り迎えするために作られるお供え物です。ナスやキュウリなどの夏野菜を使って作り、お盆の期間に飾られますが、地域によって使う野菜が違うなど習慣が異なります。本記事では精霊馬の意味や由来、飾り方・作り方・処分方法を解説します。
精霊馬とは?
お盆のお供え物のひとつとして思い浮かぶのが「精霊馬」。まずはその読み方や意味、ナスやキュウリを使う由来について解説します。
精霊馬の読み方と意味
精霊馬(しょうりょううま)とは、ナスとキュウリで作ったお盆に飾るお供え物のこと。キュウリは馬、ナスは牛を表し、先祖の霊があの世と現世をスムーズに往来するために作られるお供え物です。ナスの方を精霊牛(しょうりょううし)と呼ぶこともあり、まとめて「牛馬(うしうま)」とも呼びます。
精霊馬には、先祖の霊が現世に帰ってくる時は速く走る馬に乗り、帰りは牛に乗ってゆっくりあの世へ戻ってほしいという意味があるとされています。
ただし地域によってはその逆もあり、牛に乗ってもらいゆっくり丁寧にお迎えしたい、帰りは馬に乗ってもらい早くあの世で休んでもらいたいという意味もあるようです。
ただし地域によってはその逆もあり、牛に乗ってもらいゆっくり丁寧にお迎えしたい、帰りは馬に乗ってもらい早くあの世で休んでもらいたいという意味もあるようです。
ナスとキュウリが使われる由来
ナスとキュウリが使われるようになったのは諸説ありますが、季節がら夏野菜が入手しやすいことが由来のようです。平安時代には、貴族の間で瓢(ひさご)や麦わらを用いて作られていました。その後、江戸時代に一般庶民にもその風習が広まり、入手しやすいナスやキュウリが使われるようになったとされます。
ただし、ナスとキュウリを使うのは江戸を中心に広まった習慣であり、関東以外の地域では別の野菜も使われます。例えば沖縄では、先祖の霊があの世へ戻る時に使う杖として、サトウキビを供える習慣があります。
精霊馬の飾る期間と飾り方
精霊馬は盆入りから盆明けにかけて飾られます。お盆のお供え物を置く棚を用意し、置く場所や向きにも注意して飾りますが、地域や宗派によって習慣が違うため、確認しておくと良いでしょう。ここでは、精霊馬の飾る期間と飾り方について詳しく説明します。
精霊馬を飾る期間
一般的に精霊馬をお供えする期間はお盆の時期です。東京など一部地域では7月13日の夕方に先祖を迎えてから(迎え盆)、16日に送り出すまで(送り盆)の期間に飾りますが、全国的には8月13日から16日に飾ります。
西日本ではそもそも精霊馬は飾らずに、明かりを灯した精霊舟を川に流す「精霊流し」をする習慣があります。また浄土真宗では先祖が返ってくるという考えがないため、お盆の飾り物をする習慣はありません。
精霊馬の飾り方
一般的には精霊棚(しょうりょうだな)、または盆棚とも呼ばれる棚に飾ります。精霊棚とは、先祖の霊をお迎えするためにお供え物を飾る棚のことです。精霊棚は仏壇の前に置かれ、棚の上には位牌やロウソク、花立てなどさまざまなものが置かれます。精霊馬は向かって右側に飾ります。
精霊棚を使わずにお盆に載せて、門や玄関に飾る地域もあるようです。飾る向きも地域によって異なるので確認しましょう。例としては、迎え盆の時は内向きに、送り盆の時には外向きに飾る方法があります。
地域によっては、13日の迎え盆は馬と牛のどちらも頭を自宅の中の方へ向け、16日の送り盆では頭を外側に向けて飾るところもあります。また先祖は東から来るとされキュウリは西向き、ナスは東向きに飾る地域もあるようです。
初盆の際に飾られる提灯の選び方や飾り方については、こちらの記事を参考にしてください。
初盆提灯(はつぼんちょうちん)とは。選び方や飾り方も解説
故人が亡くなって四十九日の忌明け後に、はじめて迎えるお盆を初盆(はつぼん)、またの名を新盆(にいぼん)といいます。お盆には通常、盆提灯を飾りますが、初盆には専用の提灯を使う習わしがあります。しかし、初めての経験なので、選び方や飾り方に迷うこともあるでしょう。そこで今回は、初盆に飾る「初盆提灯」について解説します。
精霊馬の材料と作り方
続いて、精霊馬の作り方を解説します。材料をそろえればすぐにできるので、家族で一緒に楽しみながら作ってみてください。
精霊馬の材料
- ナス:1本
ナスを牛に見立てるため、あまり丸すぎず、かつ太くて力強く見える形を選びます。まっすぐのものよりも少し曲がったものを使うと、頭をもたげている感じや胴回りが牛らしいものに仕上がります。 - キュウリ:1本
キュウリを馬に見立てるため、早く走れそうな細いものがおすすめです。キュウリも曲がっている方が首から頭にかけてのシルエットが馬のように見えます。 - 割り箸:2膳
牛と馬の足の部分は割り箸を使います。割り箸の代わりに爪楊枝を利用しても良いでしょう。昔は足用の素材としてオガラという麻の皮を剥いだ茎を使用していました。現在もお盆の時期には、スーパーなどで売られている地域もあります。
精霊馬の作り方
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馬と牛の足の長さに割り箸に印をつけます(4本×2=8本)。馬の足は長めに、牛の足は短めにするとそれぞれの動物らしい仕上がりになります。
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一度に切るとけがをする恐れがあるので、カッターの刃で切り込みを入れ、割り箸を回しながら少しずつ切っていきましょう。
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ナスとキュウリのヘタの部分を頭に見立てて、切った割り箸を挿します。4つ足を開き気味にすると安定して立ちます。
精霊馬を処分する際の注意点と処分方法
お役目を果たした精霊馬の処分方法に迷う人もいるかもしれません。昔ながらの方法や他のお供え物とは異なる方法で処分する必要があります。最後に、精霊馬を処分する際の注意点と処分方法を紹介します。
精霊馬を処分する際の注意点
昔はお盆が終わると精霊馬を川へ流していましたが、今は条例違反や環境破壊につながるので控えましょう。お盆の食べ物のお供え物は、お盆が終わったら食べて供養しますが、精霊馬に使われる野菜は食べない方が良いとされています。その理由として、運んできた役目に感謝して処分する風習があること、また熱い期間中にお供えし割り箸などを挿したところから傷んで腐りやすいということなどが挙げられます。
また、他のお供え物と一緒に送り火で燃やして処分する風習もありましたが、火の用心もありこの方法で処分することも少なくなりました。現在よくおこなわれている精霊馬の処分方法を次に紹介します。
処分方法①塩で清めて白い紙で包み可燃ごみに出す
近年は、可燃ごみに出して処分する方法がよくとられています。ナスとキュウリに塩をふりかけて清め、白い紙で包んで可燃ごみに出します。紙は半紙が望ましいですが、なければキッチンペーパーなど他の白い紙を代用しましょう。ごみに出して処分することに抵抗があるかもしれませんが、感謝の気持ちを込めて処分すれば問題ありません。食べ物を粗末にするのが気になる場合は、生ごみ処理機で肥料にします。
処分方法②土に埋める
割り箸は可燃ごみで出し、ナスとキュウリは土へ還す方法もあります。自宅の庭の土や、マンションならプランターの土に埋めて処分します。公園などの公有地や他人の私有地に埋めるのは避けましょう。
処分方法③お寺で処分してもらう
お寺によってはお盆に使ったお供え物を焚き上げしているところもあります。お盆が始まる前に、菩提寺や近くのお寺に処分が可能か確認してみてください。お寺で処分してもらう際には、お盆で他に使ったお供え物を一緒に処分してもらうと良いでしょう。
お盆には精霊馬を作って先祖の霊を送り迎えしよう
精霊馬は、先祖がこの世とあの世を行き来するための乗り物として飾られるお供え物です。夏野菜であるナスやキュウリが使われますが、地域によっては別の野菜や、精霊馬を飾る習慣がないところもあります。お盆が終わったら、感謝の気持ちを込めて正しい方法で処分することが大切です。精霊馬の意味を理解したうえで、先祖がゆっくりとお盆を過ごせるよう心を込めて準備をしましょう。
お盆の風習や過ごし方については、こちらの記事でも紹介しています。
お盆とはどんな風習?|期間、過ごし方、タブーな行為など - 家族葬のファミーユ【Coeurlien】
日本に古くから伝わる風習のお盆。全国的には8月13日から16日におこなわれる先祖供養のための夏の恒例行事です。東京などの都市部では7月13日から16日になるなど、居住地域などによっても時期が異なります。この記事では、お盆の持つ本来の意味や過ごし方、お盆にまつわる疑問について紹介します。