流鏑馬の意味と歴史、楽しみ方~日本に伝わる神事を知る~

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流鏑馬の意味と歴史、楽しみ方~日本に伝わる神事を知る~

この記事はこんな方におすすめです

テレビなどで流鏑馬を見かけた
流鏑馬の意味や歴史を知りたい
流鏑馬(やぶさめ)とは古くから日本に伝わる伝統武術であり、願いを込めておこなう神事でもあります。平安時代から現在に至るまで脈々と受け継がれてきた流鏑馬は、今や日本だけでなく世界でもおこなわれるほど人気です。今回は流鏑馬の意味や魅力、誕生から現在までの歴史をはじめ、現代における楽しみ方を紹介します。

古くから伝わる「流鏑馬」について

神社でおこなわれ、テレビで放送されることもある流鏑馬(やぶさめ)。颯爽と駆ける馬の上から放たれる矢が的に当たる様子は、見ている者の心を揺さぶります。そんな流鏑馬は、数々の願いを込めて古くからおこなわれてきました。まずは流鏑馬の意味や語源、込められた願いと魅力を紹介します。

流鏑馬は日本の伝統武術であり、神事でもある

流鏑馬とは、疾走する馬上から鏑矢(かぶらや)と呼ばれる弓矢を打ち、3つの的に当てる日本の伝統武術です。武士の鍛錬かつ、神の前でおこなう儀式でもある神聖なものです。
流鏑馬の語源は定かではありませんが、「矢馳馬(やばせめ)」が訛ったものという説や、読みは同じで漢字が異なる「矢伏射馬(やぶさめ)」という説があります。なお、“やぶさめ”を“流鏑馬”と書くのは、馬を駆けさせながら鏑矢を射る意味を文字化したものと言われています。

流鏑馬には病気平癒などの願いが込められている

神事である流鏑馬には、天下泰平や五穀豊穣、万民息災、病気平癒を祈念する意味があります。願い事がある人は神社に足を運び、世の中の平和、自分や身近な人の健康などを願いながら流鏑馬を見てみてはいかがでしょうか。

流鏑馬の魅力はスピード感と、馬や騎手の装束にある

乗馬では、スピードが速い順に駈歩(かけあし)、速歩(はやあし)、常歩(なみあし)という3つの歩様を使い分けます。それに対し流鏑馬は、駈歩よりもさらに速い襲歩(しゅうほ)で走るのが特徴です。
襲歩は競馬で言うところのギャロップ(全速力)であり、その速度は1分間で1,000メートル以上になるとも言われるほど。流鏑馬は、最高速度で走る馬を間近で見るだけでも十分に迫力があります。馬が駆ける姿、馬上から放たれる勢いのある矢、そして的に当たる様子を見ると、心が元気になってくるでしょう。
また、流鏑馬は古くから伝わる武芸であるため、儀式や所作にも厳然とした作法があります。頭には立烏帽子(たてえぼし)と綾藺笠(あやいがさ)を被り、動きやすい着物と袴である直垂(ひたたれ)か水干(すいかん)を着用します。このような、凛として古式ゆかしい騎手の装束も、流鏑馬の魅力の一つです。

【誕生~現在まで】流鏑馬の歴史と遷移

流鏑馬は日本の伝統武術ではありますが、これまでに衰退と復興、そして開催の危機を経験しています。歴史を知ることで、今日におこなわれている流鏑馬の素晴らしさがより理解できるかもしれません。誕生から現在に至るまで、流鏑馬の歴史を紹介します。

平安時代:流鏑馬の誕生

流鏑馬の歴史は古く、“流鏑馬”という言葉が初めて登場したのは、平安時代後期に藤原明衡(ふじわらのあきひら)が記した『新猿楽記(しんさるがくき)』とされます。当時の流鏑馬は、公家の催しである騎射(きしゃ)として盛んにおこなわれていたそうです。

鎌倉時代:流鏑馬が各地に広がる

1187年(文治3年)、源頼朝が鶴岡八幡宮で開催したことをきっかけに、流鏑馬は神事・儀式の一環として盛んにおこなわれるように。鎌倉時代以後、流鏑馬は武士にとって欠かせない武術の一つになり、各地の神社で流鏑馬がおこなわれていました。

戦国~江戸時代:流鏑馬の衰退と復興

戦国時代に入ると、鉄砲や集団戦が合戦の主役として扱われるようになります。それに伴い、個人武芸である流鏑馬は衰退。しかしその後、江戸時代に入るとその扱いが大きく変わります。1724年(享保9年)、八代将軍・徳川吉宗の命によって、武士たちが再び流鏑馬の稽古をするようになったのです。
4年後の1728年(享保13年)には、吉宗が子どもの病気平癒を祈願して高田馬場流鏑馬を穴八幡宮に奉納しました。これ以降、徳川家の厄除けや祈願のため、流鏑馬は神事として頻繁におこなわれるように。そして、武家社会の中に流鏑馬が再び根付いていきました。

明治時代~戦後:開催の危機に陥る

1887年(明治20年)には、徳川邸に訪れた明治天皇の前で披露されるなど、明治以降も流鏑馬は重用されました。流鏑馬は日本に根付き、大切にされてきましたが、戦後になると開催の危機が訪れます。武道に関する行事が、GHQの指示によって禁止されてしまったのです。しかし流鏑馬は武道ではなく、古くから伝わる日本文化を伝える神事であると判断され、次第に全国各所で催行されるようになりました。

現在:日本のみならず世界に広がる流鏑馬

現在、流鏑馬は海外でもおこなわれるなど、活躍の場が広がっています。フランスでの開催をきっかけに、イギリスやニュージーランドのイベントなどでもおこなわれるようになりました。2001年にはイギリスで「JAPAN2001」が開催され日本とイギリス両国の皇太子殿下の前で流鏑馬が披露されています。
また、2014年には国賓として来日していた米国のオバマ大統領(当時)の前で披露されるなど、流鏑馬は日本の伝統武術として訪日外国人へのおもてなしという一面も持っています。

現代における流鏑馬の楽しみ方

古くから武術や神事として扱われてきた流鏑馬。現代では「見る」以外に「体験する」ことも可能です。ここでは現代における流鏑馬の楽しみ方として、神社などで見る方法、体験コースに参加する方法、スポーツ流鏑馬に挑戦する方法の3つを紹介します。

神社などで流鏑馬を見る

流鏑馬は、神社などのお祭りやイベントで開催されます。特に有名なのは、毎年9月に神奈川県鎌倉市の「鶴岡八幡宮」の例大祭で奉仕されるものです。関東では、そのほかに東京都渋谷区の「明治神宮」の秋の大祭や、台東区立隅田公園の「浅草流鏑馬」などもあります。
それ以外の地域でも、滋賀県の「近江神宮」や京都府の「下鴨神社 」、三重県の「多度大社」など、各地でおこなわれているので、流鏑馬に興味がある人は、ぜひ一度見に行ってはいかがでしょうか。ただし、新型コロナウイルスの流行により流鏑馬が中止になる可能性もあるので、事前にホームページなどで確認をしてください。

乗馬クラブなどの流鏑馬体験に参加する

乗馬クラブの中には、初心者向けの流鏑馬体験をおこなっているところがあります。弓の練習や馬の動かし方を教わった後に、弓矢を持って馬に騎乗するのが基本です。用意される馬はしっかりと調教されているので、乗馬をしたことがなくても問題ありません。
また、流鏑馬体験は弓矢や服のレンタルもあるなど、気軽に参加できるのが魅力です。流鏑馬は年齢や性別を問わないので、興味のある人は体験コースに参加してみてはいかがでしょうか。

スポーツ流鏑馬に挑戦してみる

乗馬経験がある人、体験コースへの参加で流鏑馬に慣れた人は、スポーツ流鏑馬に挑戦する楽しみ方もあります。2002年、全国の流鏑馬愛好者が集まり「流鏑馬競技連盟」を創設。初めての流鏑馬競技会が北海道で開催されました。
スポーツ流鏑馬は、流鏑馬の普及を第一の目的としています。そのため、射法や儀式的な部分は重視せず、純粋に的中率を競うのが特徴です。例を挙げると、馬具や騎手の装束に関して細かな規定はありません。大会の開催場所はその年によって異なりますが、年に数回ほど開催されるので、腕に自信のある人は参加を検討してみても良いかもしれません。

自分に合う方法で流鏑馬に触れてみては

古くから日本に伝わり、開催の危機を乗り越え世界に広がっている流鏑馬。正に、日本の宝とも言える存在です。観戦しながら願い事を祈ったり、体験コースやスポーツ流鏑馬に挑戦してみたり、流鏑馬の楽しみ方はいろいろ。無理のない範囲で、趣味の一環として流鏑馬に触れてみてはいかがでしょうか。