正月の風物詩「破魔矢」とは|飾る向きや処分方法も紹介

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正月の風物詩「破魔矢」とは|飾る向きや処分方法も紹介
破魔矢とは矢の形をした縁起物のことで、神社やお寺で授与されます。自宅や事務所などに破魔矢を飾ることで魔を祓い、幸福を願います。この記事では、破魔矢に込められた意味や由来をはじめ、飾るタイミングや場所、正しい飾り方とともに、処分方法まで詳しく紹介します。

縁起物・破魔矢に込められた意味と由来

初詣や七五三で神社に訪れると、お守りなどと一緒に見かける破魔矢。古くから縁起物として親しまれてきた破魔矢には、幸福を願う気持ちが込められています。まずは意味と由来から紹介します。

破魔矢は幸福を願う縁起物

「破魔」という漢字からも分かるように、破魔矢は災いや不幸などの悪い「魔」を破り、幸福を手に入れることを願う縁起物です。矢の形をしていることから的を射る、つまり幸福を射止められますように、といった意味も持ちます。

破魔矢は弓と一対だった

弓射(きゅうしゃ)という行事が簡略化されて残ったものが、破魔矢の起源として伝えられています。弓射の代表的なものとして、弓術の流派による武芸の奉納や、氏子地域の地区ごとに弓の技術を競い、年始にその年の作況を占う年初の年占(としうら)神事などがあります。
江戸時代以降になると、弓射の行事で使われていた弓矢が子どもの成長を願う縁起物に。初正月に男児には破魔弓(装飾を施した弓と矢)を、女児には羽子板を贈る風習は、この頃にできたものだと言われています。
その後、時代とともに弓射の行事は簡略化されていき、矢だけが魔除けの“破魔矢”として神社で授与されるようになったとされています。
破魔矢という呼び名は、弓矢で射る的を「ハマ」、矢を「ハマヤ」、弓を「ハマユミ」と呼んでいたことから来ていると言われています。

破魔矢を飾るタイミングと場所

破魔矢と言えばお正月にのみ授与されるもの、というイメージがあるかもしれませんが、実は授与される時期に決まりはありません。ここでは、破魔矢を飾るタイミングと適した場所を紹介します。

基本的にはお正月に授けてもらう

基本的に、破魔矢はお正月の初詣の際に神社でいただくものです。とはいえ、絶対にお正月でないといけないわけではなく、ほかにも授与してもらう場面はいくつかあります。
例えば、最近では見かける機会が減っているものの、家を新築するときの上棟式(じょうとうしき)でも破魔弓(はまゆみ)とともに破魔矢を授けてもらうことがあります。七五三のお祓いのときに授けてもらうこともあります。どんなときも将来の幸せを願い、魔を祓うために破魔矢を用います。

神棚・床の間へ優先的に飾る

破魔矢の祀り方や飾り方は、宗教や宗派によって微妙な違いがあります。自宅に神棚があれば、そこに飾るのが望ましいでしょう。神棚がなく床の間がある家は、家族が集まる場所であり「みんなを守る、幸せを願う」という意味を持つ床の間に破魔矢を飾ります。
もし神棚も床の間もなければ、人間の目線よりもやや高い場所、かつ空気が清らかな場所であればどこに飾っても良いとされています。その場合は、外から悪いものが入ってこないようにと、玄関に破魔矢を飾る人が多いようです。

正しい破魔矢の飾り方

神棚や床の間、玄関など、破魔矢を飾る場所がどこであっても、矢の向きに注意するのが大切です。ここでは、破魔矢を飾る向きや方角の決め方といった、正しい飾り方を紹介します。

飾るときは矢が神様へ向かないよう注意を

破魔矢を飾る際は、天の神様に矢が向かないよう注意します。破魔矢には上下があり、矢羽根が付いている方が上です。つまり、羽を上にして立てて飾る、もしくは寝かせた状態で飾れば問題ありません。
しっかり立てて飾りたい場合は、破魔矢立てを使う方法もあります。破魔矢立ては仏具店やホームセンター、インターネット通販で購入可能ですので、気になる人は探してみてはいかがでしょうか。

矢じりの向きに関する決まりはない

家の上棟式では、破魔矢の先「矢じり」を鬼門の方角に向けますが、室内に飾る際は特に決まりはありません。先ほどお伝えしたように、天に向けてさえいなければ、どの方角に向けても問題ありません。飾り方に悩む場合は、その年の凶とされる方角へ破魔矢の矢じりを向けて飾るのはいかがでしょうか。凶の方角には占いによっていろいろな考え方がありますが、そのひとつはその年の干支と正反対の方角です。
<2021年・2022年の凶の方角>
  • 2021年(丑年):未の方角=南南西
  • 2022年(寅年):申の方角=西南西

破魔矢・破魔弓の処分方法とタイミング

破魔矢は同じものを飾り続けるのではなく、1年で新しいものと交換するのが望ましいそうです。ここでは、破魔矢の処分方法とタイミングと併せて、破魔弓についても紹介します。

基本的には授与された寺社へお返しする

古くなった破魔矢は授けてもらった寺社にある納札所(おさめふだどころ、のうさつじょ)、もしくは古神札納所(こしんさつおさめじょ)へお返しするのが基本です。このとき、破魔矢と一緒にお札やお守りも一緒にお返しします。納札所や古神札納所がなく、社務所や寺務所に声をかけて受け取ってもらうところもあります。
破魔矢は、神社ならばお焚き上げ、寺院ならば焼納という方法で処分されます。初詣のときに授与された破魔矢は、年末や翌年の1月15日(小正月)の頃までに処分する人が多いようです。とはいえ、寺社は基本的に1年中受けつけているので、処分するタイミングに関して心配はいりません。

同じ寺社へ行けないときは、違う場所でも問題はない

引っ越しなどの事情で、破魔矢を授与された寺社に行けないこともありますよね。そんなときは、近所の寺社に納めても問題ありません。しかし、中にはほかの寺社の破魔矢などを受け付けていないところもありますので、事前に確認しておくと確実です。
また、同じ寺社に行けない場合も、神社で授与されたものは神社に、お寺で授与されたものはお寺にお返しするという基本マナーは守りたいところです。

郵送でお返しできる場合もある

寺社の中には、破魔矢やお守りなどの返納を郵送で受け付けているところもあります。有名なところで言えば、明治神宮などが該当します。ほかの寺社でも受け付けている可能性があるので、お返ししたい寺社に問い合わせてみると良いでしょう。
郵送でお返しするときは、返納料を同封するのが一般的とされます。ただし、現金を送る場合は、郵便局で現金書留を利用してくださいね。

破魔矢の交換は1年を目安とする

新年を迎える際は破魔矢やお札、お守りなどは新しいものと交換すると良いと言われます。初詣の際、もしくは自宅などに祀り始めて1年が経過した頃に、新しいものを授けてもらうのが一般的です。

破魔弓は寺社で人形供養をする

男児の初正月に贈る破魔弓は、もともとは元服する15・16歳頃まで飾るものでした。しかし、現代は20歳で成人となりますので、16歳~20歳くらいまでは飾ると良いと言われています。
もちろん、その後も破魔弓を飾っていても問題ありません。しかし、破魔弓の処分に困っている人もいるのではないでしょうか。破魔弓は五月人形などと同じく、子供の成長を見守り、ときに身代わりとなってきたと考えられているため、供養をしてから手放すのが理想です。
人形供養は、寺社のほかに葬儀社がおこなっていることも。全国のファミーユホールでも不定期に「人形供養祭」を開催しています。人形供養について、詳しくは以下の記事で解説しています。

家族の幸福を願う、破魔矢を飾ろう

正月の風物詩とも言える、破魔矢。今までなんとなく飾っていた人も、意味や由来を知ることで、破魔矢の存在をより大きく感じるのではないでしょうか。次の初詣には新しい破魔矢を授与してもらい、これからの1年がより良いものとなるよう、そして家族に幸福が訪れるよう、願いを込めて飾りたいですね。