玉串の意味とは|捧げ方の作法や玉串料の相場も解説

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玉串の意味とは|捧げ方の作法や玉串料の相場も解説

この記事はこんな方におすすめです

初めて玉串を捧げる
玉串の意味や相場を知りたい
玉串とは、紙垂(しで)という紙や麻紐などを榊に付けたもので、神道の儀式で使われます。神道では慶事だけではなく弔事でも玉串を使いますが、詳しい作法を把握している人は少ないかもしれません。この記事では、玉串の意味や由来、作法に加え、玉串料の相場とのし袋の種類などを紹介します。

神道の儀式で使われる玉串の意味や由来とは

玉串は、紙垂(しで)と呼ばれる紙や麻を榊などの枝に結びつけたもので、神前に供える酒や米と同様に重要な意味があります。最初に、玉串の意味や由来、作り方について紹介します。

玉串は神道のさまざまな儀式で使われる

さまざまな儀式で用いられる玉串は、神道において大切な役目を担っています。また、人は自分の願いを込めて玉串を捧げるため、祀る人と神様の間を仲立ちするという意味があるのも特徴です。
神様が宿ると言い伝えられる榊で玉串を作るのが一般的ですが、地域によっては異なる木を用いることもあります。榊に付ける紙垂は、ギザギザとした形に折られた紙で、雷を表現するものです。雷には「雨が降りたくさんの作物が実るように」「穢れたものを祓ってほしい」という願いが込められています。

神話において神が捧げた榊に由来する

玉串の由来は、古事記の「天岩戸(あまのいわと)隠れ」神話にあります。古事記によると、太陽神・天照大御神(あまてらすおおみかみ)が岩戸に隠れ、世界が闇に閉ざされた際に神々は祀りをおこないました。そこで、布刀玉命(ふとだまのみこと)という神が榊に鏡や玉などを付けて岩戸の前に捧げ、天照大御神が出てくるよう祈ったと記されています。
語源に関しては「神様の前に手向けることから手向串(たむけぐし)となった」「本来は木の串に玉を付けたので玉串と呼んだ」「榊には神が宿るという言い伝えから霊(たま)串と名付けられた」など、複数の説があります。

榊の枝に紙垂を麻紐でくくりつけて作る

通常は神社などが玉串を用意しますが、自作も可能です。鏡餅やしめ縄を飾る際にも使えるため、作り方を覚えておくと便利ではないでしょうか。今回は、何種類かある紙垂の作り方のなかでも現在の主流「吉田流」を紹介します。

■準備品

  • ハサミ
  • 半紙
  • 榊の枝
  • 麻紐

■作り方

  1. 適当な長さ(20cmくらい)に麻紐をカットする
  2. 紙垂を榊の枝に括る

■紙垂の作り方

  1. 半紙の表を外側にした状態で半分に折る
  2. 山を左側に向け、さらに2つに折った後に広げる
  3. 半紙に折り目が3本現れる
  4. ハサミで、左右両側の線の上から2/3くらいまで切る。中央の線は下から2/3くらいまで切る。
  5. 折り目を左側に向け、左の切れ込み部分から手前に向かって3回折り返す
  6. 左側の頭が三角になるように折る

玉串奉奠(玉串拝礼)とは

玉串奉奠(たまぐしほうてん)は、神道における神事の1つです。奉奠には「謹んでお供えする」という意味があり、神様に玉串を供える儀礼であることを示します。また、玉串拝礼(たまぐしはいれい)と呼ばれることもあります。
神事であれば、慶事・弔事を問わずおこなわれるのが玉串奉奠の特徴です。神道の定めに則った通夜・葬儀では、仏式葬儀での焼香にあたるものです。

知っておきたい玉串奉奠の作法

葬儀や告別式では、仏式の焼香と同様に参列者が玉串奉奠をおこなうのが昔からの風習です。仏式の葬儀が多い日本では神式の葬儀に参列する機会は少ないかもしれませんが、作法を知っておくといざというときに慌てずに済みます。そこで、ここからは基本的な作法を詳しく紹介します。

1. 神職から玉串を受け取り、神前に進む

  • 喪主と遺族に一礼した後、神職の前に移動して再び一礼し、玉串を受け取る
  • 玉串の根元を上から右手で持ち、左手は葉先の下側に添える
  • 玉串の根元を胸の高さに、葉先はそれよりも少し高い位置で持つ
  • 正しい姿勢を意識しながら背筋を伸ばす
  • 神前にある玉串を供える台「玉串案(たまぐしあん)」の1歩手前まで移動してから一礼する

2.祭壇に玉串を捧げる

  • 玉串を右回りに90度回転させて縦の状態にした後、左手で根元を持ち、右手は葉先の下側へ移す
  • 瞼を閉じ、故人へのお礼の気持ちや冥福を祈る思いを込める
  • 右手で玉串の中央辺りを下から持つ
  • 右回りに玉串を回転させ、根元を神前に向けてから左足で一歩前に出る
  • 右足を左足に揃え、正しい姿勢を意識する
  • 神前の玉串案に玉串を供える

3.二礼二拍手一礼をして席に戻る

  • 右足からうしろに向かって1歩下がり、深く礼を2回、しのび手を2回、最後に深く一礼する
  • 2歩うしろへ下がり、神職と遺族の方へ向きを変えてから軽く頭を下げ、席に戻る
しのび手とは、神式の葬儀でおこなう音のない拍手のことです。通常の参拝時は音を立てて手を打ち、神様を拝むのが礼儀ですが、葬儀では音を出さず手を打ちます。また、地域や宗派によっては二礼二拍手一礼とは異なる作法を取り入れている場合もあるため、事前に葬儀社のスタッフなどに確認しておくと安心です。

玉串料の相場・金額によって変わるのし袋の種類

玉串料とは、神様への供え物の代わりに奉納するお金のこと。また、ご祈祷の謝礼という意味も込められています。神社へのお礼や参列した弔事で遺族へ渡す、慶事の祈祷へのお礼など、シーンによって金額も変わるので注意が必要です。そこで、ここからはシーン別の相場を紹介します。

通夜・葬儀を喪主としておこなう場合の相場

通夜・葬儀の喪主となった場合に神職に支払うのは15万円~30万円が相場です。ただし、神社によっては祈祷や神事の種類で一定の金額を設定していることもあるため、事前に確認してください。
金額が決まっているのであれば、それに合わせた額をのし袋に入れて渡します。「お気持ちでだけで構いません」と言われたときは、相場に見合った額をのし袋に入れて渡すのが一般的です。

通夜・葬儀に参列する場合の相場

参列者の玉串料は、仏式における香典の相場と同様です。なお、故人と関わりや地域の風習で金額が変動します。
  • 親、兄弟、親族:3万円~10万円
  • 知人、友人:5,000円~1万円
  • 勤め先の同僚・部下、家の隣人:3,000円~5,000円

七五三や地鎮祭など慶事での相場

あらかじめ神社側で金額が設定されていたり、地域によって金額の目安が変わったりするため、参拝予定の神社に確認しておくのがおすすめです。特に明確な基準がないときは、下記の相場を参考にしてください。なお、七五三など兄弟で祈祷を受けるシーンでは人数分の額を用意します。
  • お宮参り、七五三:5,000円~1万円
  • 結婚式:5万円~10万円
  • 地鎮祭など:2万円~3万円

玉串料の金額別・袋の種類

のし袋は、玉串料の額やシーンによって変わります。弔事の場合、5,000円以下は水引が印刷された不祝儀袋、5,000円~3万円以下は双銀か黒白の水引、3万円以上は高級和紙の包みで双銀の水引を用いたものを選んでください。慶事であれば、赤白ののし袋を使うのが基本です。表書きには、上段に「玉串料」や「御玉串料」、下段に名前を書きます。
仏教を象徴する蓮の花が描かれた不祝儀袋は神式では用いないため、選ばないよう注意が必要です。十字架やユリの花が描かれたものも神式には適しません。デザインに気を付けて選ぶことが大切です。

慶事なら「初穂料」と記載しても良い

神道には、玉串料と同様に神事で用いられる初穂料も存在します。初穂はその年に初めて獲れた稲を指し、初穂の代わりに初穂料として相応の金額を納めます。
初穂料は慶事のみで用いますが、玉串料は慶事・弔事双方で使えるのが両者の違いです。お守りや祈祷、お札を受けるときなどには、初穂料を使います。そのため、お宮参りや七五三といった儀式では玉串料と初穂料のどちらを用いても問題はありません。

玉串は気持ちを込めて神様へ奉納しよう

神様の魂が宿るとされる玉串は、神事において重要な役割を担うものです。玉串を神様に捧げる玉串奉奠は、慶事・弔事を問わずおこなわれるため、もしものときに備えて作法を把握しておくと安心です。儀式に臨む際には、神様や大切な人への気持ちを込めて玉串を捧げてはいかがでしょうか。