榊には2種類ある。見分け方と神事や神棚に欠かせない訳

お葬式のマナー・基礎知識
榊には2種類ある。見分け方と神事や神棚に欠かせない訳
古くから神事に欠かせない榊(さかき)は、常緑樹の一種です。自宅や職場などで神棚に供えられることも多く縁起の良い木ですが、実は2種類あります。葉がつるつるな本榊とギザギザのヒサカキです。どちらを飾ればよいか、交換方法は?など、榊の種類や名前の由来も交えて解説します。

榊の種類と見分け方

神棚にはどんな榊を供えればいいのでしょうか。まずは榊(さかき)の種類と見分け方、生態を紹介します。

榊には本榊とヒサカキがあり、葉の形が違う

国産の榊には、本榊とヒサカキがあります。両方とも神事に使えますが、葉の形に違いがあるので確認しておくのがおすすめです。

本榊は、関東より西の比較的暖かい地域に生育しています。葉は濃い緑色で、表面が平らなのが特徴。縁の部分は曲線を描いています。

ヒサカキは、本榊が生息しない関東以北の寒冷地方で代用されることが多いです。本榊と比べて葉がひと回り小さく、縁にはノコギリのような細かい刻み目が入っています。本榊と異なる植物だと示すために非榊と呼ばれるほか、本榊と比べて小ぶりな形から姫榊と表されることもあります。

サカキ科の常緑樹で、小さな白い花を咲かせる

本榊は、サカキ科サカキ属の植物です。ツバキ科で分類されることもあります。1年を通して落葉せず、緑の葉が茂る小高木で、神道では枝や葉が玉串として使われます。左右対称に生える葉は、光沢と厚みがあるのが特徴です。

ヒサカキはサカキ科ヒサカキ属の常緑樹です。葉は楕円形でツヤがありフチがギザギザしています。
榊は初夏にかけて、ヒサカキは春になると葉の裏側に白い小花を咲かせた後、秋には丸みを帯びた黒い実がなります。

神棚に榊が供えられる理由

神棚などに供える榊は、神とつながりがある植物と考えられてきました。ここではその理由と、榊の名前の由来をお伝えします。

神棚に榊を供えるのはなぜ?

大きな岩や木など、神様が宿ると考えられていた所には、昔から常緑樹を植えることが良くありました。神道では、葉の先端が尖った植物に神様が宿りやすいという考えがあり、葉先の鋭い榊が依り代になったとされています。

名前の由来は諸説あるが、神道では神聖な植物とされる

榊という漢字は木へんに神と書き、昔から神様とつながりのある植物と捉えられてきました。名前の由来はさまざまですが、人と神の境にある植物ということから境木(さかき)と呼ばれるようになった、との説が有名です。また1年を通して緑の葉を茂らせるため「栄える木」「神聖な賢木」が由来になった、という説もあります。

榊の購入で参考になること

身近な山に榊が自生していた時代と異なり、現在は国産の榊を見る機会が少なくなりました。ここでは、国産と輸入品の違い、造花や長持ちするプリザーブドタイプについて紹介します。それぞれに特徴があるので、購入の際の参考にしてください。

価格重視なら輸入品、日持ちの良さなら国産榊が良い

昔の日本は、山々に本榊やヒサカキが自然と生えることが多かったため、国産の榊も多く流通していました。現在は、販売されている榊のほとんどが外国産です。国産と外国産に、外見の違いはほとんどありません。そのため、リーズナブルな値段の外国産が喜ばれることが多いものの、厚みのある葉をつけた国産の方が長持ちします。

水やり不要で長持ちするプリザーブドタイプの榊もある

榊は水を好む植物のため、気温が上がる夏場などはすぐに弱る可能性が高いです。専用の液に浸して水分を抜いてあるプリザーブドタイプの榊なら、高温多湿や太陽光が直接当たる場所を避ければ、本来の質感を保ちながら長期間使用できます。水やりの必要がなく、水が腐る心配をせずに済むのも嬉しいポイントです。
プリザーブドタイプや造花を神棚に飾るか否かは気持ちの問題であり、決まりはありません。気になる場合は行事の際に本物を、普段はプリザーブド榊を、と言ったように使い分けるのがおすすめです。

榊を交換する時期と交換方法

ここでは、榊の交換方法と長持ちさせる方法を紹介するので、神棚に供える際に役立ててください。

交換の目安は1日と15日の月2回

神棚などへのお供えの榊は、毎月1日と15日に取り替えるのが通例です。これは神事に関係があります。
1年を通しておこなわれる神事は、神社によって時期や内容が変わります。なかでも多くの神社に共通しているのが、毎月の月次祭です。月次祭とは、神に謝意を表し、国の安泰・繁栄を祈る神事で、1日と15日におこなわれるのが一般的。お祀りしている神様による違いは、ほとんどありません。
月に2回が難しい場合は、毎月1日に交換します。きちんと管理した榊は、1ヶ月ほど元気な状態を維持できます。手入れが行き届かず落葉したり、弱ったりした場合は、日に囚われずに取り替えてください。なお、プリザーブド榊を用いるときは、年明けに交換します。

榊の交換方法

通常は1本の榊を供えますが、居住地によっては2本以上用いることもあります。気になるときは身近な人に本数を確認してください。
榊を活ける容器は、上に向かって細くなるタイプが多いため洗いづらく、菌が増えやすいと言われています。特に夏は、容器の中にたくさん水を入れると菌が増えやすくなるだけでなく、水の温度が上昇して榊が弱る可能性も。水を変えるときは、漂白剤などを使って容器を殺菌すると安心です。
また容器だけでなく、榊の手入れもおこなうと衛生面を保ちやすくなります。束になった榊をほぐし、茎のぬめりを洗い流すのが基本です。

榊を長持ちさせる方法

榊は良く水を吸うので、毎日水替えが必要です。茎を斜めに切れば、水を吸い上げやすくなります。切れ味の悪いハサミを使うと、水を吸うための道管が潰れる原因になるため、良く切れるハサミを使ってください。
また、榊は乾いた環境が苦手なので、エアコンや暖房の風が当たりにくい場所に置いてください。葉が乾いてしんなりとした状態にならないよう、霧吹きで葉に水を吹きかけたり、榊に元気を与える活力剤を取り入れたりするのもおすすめです。

榊の処分方法

神棚に供えるものだけに、榊の処分方法に迷うこともありますよね。以前は、お焚き上げを神社に依頼する、土に埋める、河川や海に流す、などの方法が一般的でした。
最近は榊のお焚き上げを受けつけていない神社もあるほか、近隣に河川や海がなかったり、榊を流すことに抵抗を感じたりする場合も考えられます。そのため、榊の水気を拭いた後にお清め塩を使い、白紙に包んでから燃えるゴミとして出すのが通例となりました。

神道で榊が使われる場面

神道で使われる榊は、神棚へのお供えや神事に使う玉串など、さまざまな場面で登場します。そこで、ここでは神道の中で榊が使われる主な場面を紹介します。

この時使用するのは榊でもヒサカキでもどちらでも構いません。

神棚に榊を供える

榊には榊立てと呼ばれる神具を用い、水や米、塩などと一緒に神棚に供えます。神棚の左右両端に1本ずつ榊を供えるのが通常ですが、住んでいる場所によっては本数が変わる場合もあります。

葉の表側が見える向きに榊を置き、常に生き生きとした状態を維持することも大切です。

玉串にする

玉串とは、榊の枝に紙垂をつけた神への捧げものです。水や酒、米といったお供え物と同様の意味合いを持つと捉えられています。

拝礼のために神に捧げる玉串は、祈る人の気持ちが込もった特別なもの。神道のお葬式「神葬祭」だけでなく、七五三やお宮参りにおける儀式「玉串奉奠(たまぐしほうてん)」でも用いられます。

地鎮祭や起工式で使う

榊は、起工式や地鎮祭の祭壇横に設置される真榊(まさかき)台にも用いられます。真榊台とは、2メートルを超える柱の先に2本の榊を入れ、5色の布をフックから垂らしたもの。向かって右に勾玉と鏡、左に剣を掛けます。

ちなみに、地鎮祭は土地に宿った神を祝い鎮め許しを得ることで、工事や建築の安全を祈願する行事です。起工式は地鎮祭後、工事の安全とスムーズな進捗を祈る式を指します。

きれいな榊を神棚にお供えしよう

神道において神聖な存在とされる榊は、神棚や玉串などに使われるのが一般的。本榊とヒサカキがあり、地域によって手に入りやすい品種は違いますが、輸入品やプリザーブドタイプを含めてどの榊を使っても問題はありません。お手入れや水替えに気を配り、神棚には常にいきいきとした榊を飾りたいですね。