「氏子」って何?「氏神」との関係、現代における考え方

お葬式のマナー・基礎知識
「氏子」って何?「氏神」との関係、現代における考え方
氏子(うじこ)とは、自分の住む土地を守る氏神(うじがみ)を信仰する人のこと。氏神を祀る神社は氏神神社と呼ばれ、氏子によって維持されてきました。本記事では氏子と氏神の意味と関係性から、氏子になる方法や“氏子総代”について、そして多くの神社が抱える問題点まで幅広くお伝えします。

「氏神」と深い関係にある「氏子」

今回のテーマである氏子について知るには、氏神の意味や関係性を把握することが欠かせません。また、なかには氏子と檀家(だんか・だんけ)の違いが、いまいち分からない人もいるのではないでしょうか。そこでまずは、氏子と氏神についての詳細と、氏子と檀家との違いを説明します。

氏子は氏神を信仰する人のこと

氏子とは、同じ氏神を信仰する人たちのことです。氏子は氏神を祀っている神社(氏神神社)のお祭りの手伝いや寄付をすることがあります。
氏神とは、自分の居住地にある神社、もしくはその神様のことで、地域の人々を守ってくれる存在です。辞書には「同じ氏族の神様」「同じ氏族が信じる神様」「土地を守る神様」の3種がある、と書かれています。

氏子と氏神の歴史は古い

古代には、氏人(うじびと)と呼ばれる人々が存在しました。氏人とは、同じ神様を信じる「氏神信仰」に基づいて結束した氏族のことです。この時の氏神は、氏族の信じる神であったり、彼らの先祖神(血縁のある神)であったりしています。
中世以降になると、氏人が氏子という存在に変化。この頃から鎮守神(ちんじゅがみ=特定の神社や建造物を守る神)も、産土神(うぶすながみ=生まれた土地の守り神)もすべて氏神として扱われるようになったと言われています。
氏子は「氏神が育てている子」という意味も持ちます。その他に「産土神の子」という意味から、産子(うぶこ)と呼ばれることもあります。

氏子と檀家は違うもの

氏子と似たものとして檀家がありますが、次のような違いがあります。
信仰するもの
該当者 内容
氏子 氏神に仕える人 氏神神社の手伝い、寄付など
檀家 特定の寺院の信徒 お布施などの経済的支援
このように、氏子は氏神に仕え、自ら寄付をしたり氏神神社の維持などに関わったりする人です。一方の檀家は信仰する寺院に属してお布施などで、そのお寺を支援している人のことです。檀家はそのお寺にお墓を持っている場合が多いです。氏子と檀家は信仰するものはもちろん、お墓との関わり方などに大きな違いがあります。

自分の住む地域の「氏子」になる方法

氏子入りの機会は複数あります。ここでは、氏子入りの一般的な方法を紹介。ただし、地域や神社によって考え方が異なることがあります。気になる場合は、近所に住む人や近くの神社などに問い合わせてみてくださいね。

まずは氏神神社を探す

氏子入りをする前に、まずは自分が住むエリアの氏神神社を調べる必要があります。調べる方法はいくつかあり、代表的なものは次の通りです。
①神社本庁や神社庁に問い合わせる
氏神神社を知りたいときは、居住地の神社庁に電話をするのが手っ取り早いかもしれません。各都道府県にある神社庁の電話番号は、神社本庁のホームページに記載されていますので、確認をして電話してみてはいかがでしょうか。
②自宅近くの神社に聞いてみる
自宅近くに神社があれば、氏子区域を直接聞いてみる方法もあります。自分の住んでいるエリアの名前が出れば、そこが氏神神社ということです。

子どもが誕生したときはお宮参りをする

多くは、新生児が生後1ヵ月前後に初めてお宮参りすることで氏子と認められます。このとき、赤飯などを携えて神社に訪れ、子どもを泣かせたり、額に墨をつけたりするのが一般的です。あえて泣かせるのは、氏子となる子どもの声を氏神に聞かせるためです。
なお、土地によっては7歳や15歳で改めて氏子入りするところもあります。これは、7歳までは神の子と考えられ、この年から一人の人間と認めて氏子とする、という考え方。明治初期には、7歳になると神主が氏子札を出す制度もあったそうです。15歳でおこなうのは、江戸時代はこの年で成人だったため、その名残と考えられています。

引っ越しをしたときは氏神神社を参拝する

結婚や転職など、何かしらの理由で引っ越しをする際は、転居先の氏子になります。氏子入りには「その土地に住む」「お祭りに参加する」ことが大切です。氏子入りをするには、転居先エリアの氏神を祀っている氏神神社の参拝から始めてください。
神道の神様を信心するには、氏子になる以外に、崇敬神社の信徒になるという方法もあります。崇敬神社とは、地縁や血縁によらず、個人が特別に信仰する神社(の神様)のことです。日本の神様は懐が深く、氏神神社と崇敬神社の両方を信じても構わないとされています。

氏神神社に仕える「氏子総代」という存在

“氏子”の他に、“氏子総代”や“氏子総代会”という言葉も存在します。氏子入りを考えているのならば、これらの意味も知っておきたいところです。ここでは、氏子総代と氏子総代会について紹介します。

氏子総代は氏子の代表者

氏神神社に仕える氏子の中から、代表者として氏子総代が選出されます。氏子総代は神社の宮司に協力し、祭祀(さいし)や保持振興に努める役割を担う人物です。基本的には徳が高く、周囲の人から信頼されている人々のうちから選任されます。
ただし、地域によっては氏子寄合などで氏子総代が選出されることも。氏子総代は、一定の任期を持つ輪番制であることが多いそうです。

氏子総代会も存在する

氏子総代は、氏子総代会を組織します。氏子総代会は、神社によっては会則が設けられるなど、しっかりとしたルールに則って動く組織。祭りの準備や開催、会議への参加だけでなく、神社やその周辺の植木剪定、氏子へ寄付を募るなど、氏子総代・総代会のやることは多岐に渡ります。普段何気なく訪れている神社も、実はこのような氏子総代会によって維持されているのです。ただし、氏子を持たない神社もあります。

氏子の減少に伴って生じる現代の問題と解決策

現代は氏子が減少しつつあり、社会問題化される傾向にあります。ここではその詳細と各神社が取り組んでいる解決策を紹介します。

運営に苦しむ神社が増加している

氏子の減少によって、運営に苦しむ神社が増えています。神社の主な収入源は、お葬式を含めた祈祷料やお賽銭、氏子からの寄付なので、氏子の減少は収入減にもつながりかねません。
運営に苦しむ神社の中には、敷地を貸すところも出てきました。敷地内に高層マンションが建つ神社も存在します。そういった神社は、借地料を神社の維持・管理・建替えなどに充てています。

収入源の工夫をして運営難からの脱却を図る神社も多い

氏子の減少に手をこまねいている神社だけではありません。中には、敷地を貸して収入増を図る神社が出てきました。敷地内に高層マンションを建てて、借地料を神社の維持・管理・建替えなどに充てているところも。
また、フリーマーケットやイベント誘致、合コンの企画、クラウドファンディングで資金を調達する等々、さまざまな工夫で経済力を上げています。地域住民が楽しめる公共性も備えている企画が多く、このような神社が近くにあると楽しい暮らしができそうです。

大人の教養として「氏神」「氏子」を知ってみては

その土地の神様である氏神を信仰している氏子は、神社をサポートする存在です。しかし、高齢化社会や時代の流れ、人々の意識の変化などで、氏神や氏子を取り巻く状況は変化しつつあります。大人の教養として、また、地域の話題として、氏子や氏神について詳しくなっておいても損はなさそうです。