六文銭は三途の川の渡し賃。今の貨幣価値はどれくらい?
お葬式のマナー・基礎知識
六文銭(ろくもんせん)とは、故人とともに棺に納める副葬品の1つです。三途の川を渡るために必要と考えられています。また、六文銭はNHK大河ドラマ『真田丸』でおなじみの真田家の家紋としても有名です。この記事では、葬儀に六文銭が用いられる理由や、現代における貨幣価値、六文銭と真田家の関係、六文銭にまつわるトリビアを紹介します。
葬儀で六文銭を使う理由と、現代における貨幣価値
六文銭とは、江戸時代に使用されていた貨幣の“一文銭”が6枚揃った状態を表したものです。普段は目にする機会は少ないかもしれませんが、葬儀の場において欠かせない存在です。まずは葬儀で六文銭を使う理由と、込められた意味を紹介します。
六文銭は副葬品の1つ
葬儀における六文銭は、副葬品(ふくそうひん)の1つです。死装束で用いられる、頭陀袋(ずだぶくろ)の中に入れた状態で棺に納めます。本物のお金を用いていた時代もあったようですが、現代社会では使用されていない貨幣であり、火葬をしても燃え残るため、実際の硬貨を棺に入れることはありません。
六文銭を現代の貨幣価値に換算すると
一文銭や六文銭の「文」は、江戸時代などで使われたお金の単位です。一文銭は当時の最小単位の貨幣で、今でいうと一円玉のようなものです。現代の価値に当てはめて考えれば「六文銭=6円」となりますが、江戸時代と現代では貨幣価値が異なります。
江戸時代は260年ほど続いたため、貨幣価値はその時々で変動していました。そのため一概には言えませんが、一文は現代の貨幣価値に換算すると30円~50円ほどと言われます。それをもとに六文銭を換算してみると、180円~300円くらいだと考えられます。
2.六文銭は仏教の「六道銭」が由来とされる
六文銭は、三途の川の渡し賃というのがよく知られていますが、仏教の「六道銭(ろくどうせん)」が由来とされます。
六道とは、地獄道・餓鬼道・畜生道・修羅道・人間道・天道といった6つの世界です。仏教の世界では、人は六道の中で生まれ変わりを繰り返していると信じられています。
どの世界でも救いの手を差し伸べてくれる「六地蔵」のへのお賽銭が六道銭です。後にこれが、三途の川の渡し賃になったと言われます。さらに、六道銭から六文銭へと呼び方も変化していったと考えられています。
六道とは、地獄道・餓鬼道・畜生道・修羅道・人間道・天道といった6つの世界です。仏教の世界では、人は六道の中で生まれ変わりを繰り返していると信じられています。
どの世界でも救いの手を差し伸べてくれる「六地蔵」のへのお賽銭が六道銭です。後にこれが、三途の川の渡し賃になったと言われます。さらに、六道銭から六文銭へと呼び方も変化していったと考えられています。
現代の葬儀における六文銭の扱い方と注意点
現代社会においては、葬儀における六文銭の扱い方に変化が表れています。ここでは、葬儀における六文銭の扱い方とともに、注意点を紹介します。
本物の貨幣を棺に納めてはいけない
日本には「貨幣損傷等取締法」という法律があることをご存知でしょうか。紙幣や硬貨を変形、破損させる行為は、その法律によって禁止されています。「違反した者は、一年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する」ともあり、財務省のホームページではお金を大切にというメッセージを出しています。
本物の貨幣を棺に納めると法律違反になってしまいます。六文銭を三途の川の渡り賃として、どうしても故人に持たせたい場合は、棺ではなく火葬後に骨壺へ納める方法を検討してください。
六文銭やお金がプリントされた紙を納める
「大切な人が三途の川を無事に渡れるように」と、六文銭を火葬前に渡したいときは、代用品を使用する方法があります。例えば、紙に六文銭が印刷されたものなら副葬品として使用可能です。それ以外に、おもちゃのお札や「〇〇円」と書かれた紙を棺に納める方法も。
葬儀社によっては、六文銭の代わりに使えるものを用意しているので、スタッフに相談してみてください。
木製の六文銭を用意する方法もある
紙に印刷された六文銭や、おもちゃのお札などを棺に入れるのではなく、できる限り本物の六文銭に近いものを故人に持たせたい、と考える人もいるのではないでしょうか。そんな人のために、木製の六文銭が販売されています。木製のレプリカならば法律違反になる心配も、燃え残る恐れもないので、副葬品にして問題ありません。
副葬品に適さない品物は意外と多い
棺に納める副葬品に適さないものは、本物の貨幣以外にも数多く存在します。例えば、ガラスや金属などで作られたアクセサリーや腕時計、CDです。これらのような、不燃材料で作られた製品は燃え残る上に、溶けてご遺骨を損傷させる恐れがあるため、副葬品にはできません。
そのほか、燃やすとCO2やダイオキシンなどの有害物質が発生し、環境に悪影響を与えるプラスチックやゴム、革製品、燃え残るリスクがある布団や分厚い本なども同様です。
写真はよく棺に納められるもののひとつで、副葬品にしても問題ありません。しかし、江戸時代には写真を撮ると魂が抜かれると信じる人もいましたし、一昔前までは存命中の人の写真を棺に入れることに抵抗があったとも言われています。ですから、副葬品にする際は周りの方への配慮も必要です。これら副葬品に関するマナーなどは、以下の記事で詳しく解説しています。
副葬品は何を選べばいい?家族の想いとともに故人を見送る - 家族葬のファミーユ【Coeurlien】
副葬品とは、亡くなった人と一緒に埋葬する品物のことです。火葬する際に棺に入れるものも副葬品と言います。火葬をする棺の中には何を入れても良いわけではありません。こちらの記事では、副葬品にできるものとできないもの、どういうものを入れたらいいのかを具体的にご提案します。
六文銭と真田家の深い関係性
「日ノ本一の兵」と名高い武将だった、真田幸村(さなだゆきむら)。六文銭は、そんな幸村を輩出した真田家の家紋として知られています。ここでは、六文銭が真田家の家紋になった経緯と歴史を簡単に紹介します。
六文銭は真田家の家紋
諸説あるものの、真田家が家紋を六文銭とした理由は、真田幸村の祖父である真田幸隆(さなだゆきたか)が採用した説が濃厚のようです。真田家の家紋は「六連銭(むつれんせん、ろくれんせん)」や「六紋連銭(ろくもんれんせん)」とも呼ばれます。
真田家の家紋に秘めた決意
先述したように、六文銭は死後の世界で使われるものです。真田幸隆は「戦場ならば、いつ死んでも構わない」という決意を家紋に込めたと考えられています。仏道のために命を惜しまないという意味の「不惜身命(ふしゃくしんみょう)」を武士道になぞらえたというのが有名なエピソードです。ドラマ『真田丸』で話題になった真田幸村もまた、祖父から受け継いだ六文銭を背負って戦に出ていました。
真田幸村とともに語り継がれる六文銭
彼の最後の戦となったのは、真田軍と徳川軍がぶつかった「大坂夏の陣」です。真田軍は徳川家康を追い詰めるほど奮闘したものの、真田幸村は神社で討ち死に。このとき、真田幸村は命を落とす前に自分の首を敵兵に差し出した、という逸話が残っています。真田家の家紋だった六文銭も、彼の歴史とともに現世に語り継がれているのです。
六文銭にまつわる2つのトリビア
葬儀の副葬品であり、真田家の家紋でもある六文銭。実は、六文銭をイメージして造られた観光列車が存在します。ここでは、観光列車と六文銭の由来といった、トリビアを2つ紹介します。
1.観光列車「ろくもん」が信濃路を走り抜ける
しなの鉄道には、長野から軽井沢までの約75キロを走る「ろくもん」という観光列車があります。「ろくもん」の由来は、真田家の家紋である六文銭。真田幸村は「大坂冬の陣」などにおいて、甲冑や武具を赤で統一する「赤備え」にしました。観光列車「ろくもん」の色はそれをイメージしており、濃い赤がベースとなっています。
また、列車には真田家の家紋である「六文銭」「結び雁金(むすびかりがね)」「州浜(すはま)」を金色で配置し、車内には長野県産の木材を贅沢に使用。その中で、豪華な食事や車窓から見える風景を楽しめます。
そのほか、列車が駅を発つ際は、乗務員が法螺貝(ほらがい)で発車の合図をする瞬間も見逃せません。これは、武将の出陣をイメージしたものであり、非日常感を味わえると評判です。
2.最も有名な用途は、三途の川の渡し賃
死者に持たせる六文銭は仏教の説話に基づくとされ、三途の川の渡し賃、六地蔵へのお賽銭、死出の旅の路銀など、いろいろな説があります。
最も有名なエピソードが、三途の川の渡し賃です。人は亡くなると、あの世との境目である三途の川を渡ると考えられています。しかし、三途の川は泳げず、船に乗って渡るしか方法がありません。その船に乗るために必要な渡し賃が六文銭です。ちなみに、六文銭はあの世で使うお金であることから「冥銭(めいせん)」とも呼ばれます。
また、六文銭を所持していないのに三途の川を渡ろうとする人は、懸衣翁(けんえおう)と奪衣婆(だつえば)と呼ばれる夫婦の番人によって、故人の衣服がはぎ取られると、日本では古くから信じられてきました。つまり、六文銭は「このお金を持っていれば、故人が三途の川を無事に渡れる」という、お守りのような存在なのです。
最も有名なエピソードが、三途の川の渡し賃です。人は亡くなると、あの世との境目である三途の川を渡ると考えられています。しかし、三途の川は泳げず、船に乗って渡るしか方法がありません。その船に乗るために必要な渡し賃が六文銭です。ちなみに、六文銭はあの世で使うお金であることから「冥銭(めいせん)」とも呼ばれます。
また、六文銭を所持していないのに三途の川を渡ろうとする人は、懸衣翁(けんえおう)と奪衣婆(だつえば)と呼ばれる夫婦の番人によって、故人の衣服がはぎ取られると、日本では古くから信じられてきました。つまり、六文銭は「このお金を持っていれば、故人が三途の川を無事に渡れる」という、お守りのような存在なのです。
六文銭は故人に渡すお守りのような存在
六文銭の葬儀での扱い方をほかの副葬品と併せて理解しておくと、いざというときに役立つでしょう。大切な人を見送るときは、三途の川を何事もなく渡れることを願いつつ、故人の眠る棺に六文銭を納めてはいかがでしょうか。
この記事の監修者
瀬戸隆史 1級葬祭ディレクター(厚生労働省認定・葬祭ディレクター技能審査制度)
家族葬のファミーユをはじめとするきずなホールディングスグループで、新入社員にお葬式のマナー、業界知識などをレクチャーする葬祭基礎研修などを担当。
家族葬のファミーユをはじめとするきずなホールディングスグループで、新入社員にお葬式のマナー、業界知識などをレクチャーする葬祭基礎研修などを担当。