大往生の意味と正しい使い方。遺族に言ってはいけない?

お葬式のマナー・基礎知識
大往生の意味と正しい使い方。遺族に言ってはいけない?
大往生(だいおうじょう)とは天命を全うして安らかに死ぬことです。高齢の人が亡くなったとき、「大往生だった」という言葉を耳にすることがありますが、身内以外に対して使うのは失礼に当たるので注意が必要です。葬儀の場でマナー違反をしないために知っておきたい、大往生の意味や正しい使い方を紹介します。

大往生の意味と由来

大往生はお葬式の場で聞くことが多い言葉です。しかし正しい意味を知らずに使うと、マナー違反となる可能性があるため気を付けてください。ここでは学んでおきたい大往生の意味と由来について紹介します。

意味

「苦しまず、安らかに死を迎えること」を大往生と言います。病気やケガではなく、老衰や自然死のような死を指します。また「後悔のない立派な死に方」という意味もあります。

由来

「往生」は、仏教用語の1つである「極楽往生(ごくらくおうじょう)」が由来とされています。「往」の意味は、故人の魂が極楽浄土に向かう旅へ出ること。一方の「生」は、到着した極楽浄土で死後の人生を歩むことを意味します。その往生に「大」が加わって、現代では“大往生”という言葉になり、「安らかに亡くなる」という意味で世間一般に広く使われています。

正しい大往生の使い方と例文

大往生は使い方を間違えやすい言葉です。ここでは大往生の正しい使い方と対応の仕方を紹介します。

遺族以外が使うのはマナー違反

大往生は、遺族が使う言葉です。大切な家族を亡くして悲しんでいる遺族に、他人が「大往生を迎えた」と言うのはマナー違反です。「亡くなっても良い年齢だった」と遺族が捉える可能性があります。

寿命を全うしたか否かは遺族が判断することです。遺族は「大切な家族にはもっと長生きしてほしかった」と思っているのに、「大往生だ」と他人が言うのは相手を傷つけることにつながります。身内に使う分には問題ありませんが、他人に使うのは失礼に当たることを忘れないでください。

遺族が大往生を使う場面

葬儀を執りおこなった際のお礼状のような文章で大往生を使うことは、ほとんどありません。葬儀などの場で参列者からお悔やみの言葉をかけられた際、故人が長寿であったときのみ、謙遜の意味を含めて大往生を使います。「故人が寿命を全うできて幸いでした」という遺族の気持ちが込められています。

遺族が大往生を使うときの例文

遺族が身内の最期を表現するときは「大往生を迎えた」「大往生を遂げた」などの言い回しが考えられます。例えば身内の死を告げる際に、「祖父は96歳で苦しむことなく眠りにつき、大往生を迎えました」「父は大きな病気を患うことなく大往生を遂げ、今は天国で旧友と久々の再会を楽しんでいると思います」といった使い方があります。

また、参列者からお悔やみの言葉を告げられたときの返し方も確認しておくと安心です。弔問客から「まだお元気な姿を見たかったです」と言われたら「ええ、しかし大往生でしたので本人は満足していると思います」と返すことが考えられます。

大往生に関するよくある疑問

ここでは大往生に該当する年齢と、遺族への返答を紹介します。

大往生に該当する年齢とは

平均とされる寿命より長生きしたときに大往生を使用します。長寿大国である日本においては、80歳半ばを過ぎたら大往生と捉えることが多いようです。ただし病気や事故が原因で亡くなった場合は、平均寿命より長生きでも大往生とは言いません。

遺族から大往生と言われたら

遺族側が「大往生でした」と言う場合は同調を求めていることも考えられます。「そんなことないです。もっと長生きして欲しかった」と伝えるべきか、「そうですね」と気持ちを込めて相槌を打つべきかは難しいところです。他にも「安らかに旅立たれたのなら、ご家族の皆様も救われますね」など、その遺族の気持ちに寄り添った声かけを心掛けます。

一般的なお悔やみの言葉

ここからは大人のマナーとして覚えておきたい、一般的なお悔やみの言葉と例文を紹介します。遺族に失礼がないよう、言葉を選んでください。

お悔やみで使う言葉のマナー

冠婚葬祭で避けたい言葉を、忌み言葉と呼びます。葬儀の場合、例えばストレートに死を表現した言葉は、忌み言葉に当てはまります。「益々」「くれぐれも」を始めとした重ね言葉や、「追って」「再び」といった言葉は何度も不幸が起きることを想起させるため、お悔やみの場では避けてください。
また注意しておきたいのが、「元気を出して」「頑張って」などの励ましの言葉です。自分は励ましたいと思って声をかけたとしても、遺族はプレッシャーに感じることがあります。身近な人の不幸があった遺族に対しては無理に励ますのではなく、そっと寄り添う優しさが求められます。

心からお悔やみ申し上げます

亡くなったことを弔うために使う言葉が「お悔やみ」です。死を悲しみ、遺族に対して慰めの気持ちを表すために用います。話し言葉に使える他、手紙などの文章にも使えます。
例えば「この度は突然のことで、私どももたいへん驚いております。心からお悔やみ申し上げます」といった使い方です。故人に対する思いや、遺族への配慮の気持ちを言葉にして伝えてください。

ご冥福をお祈りいたします

亡くなった人の死後の幸せを祈る気持ちを表す言葉です。故人が冥土に旅立ってから、幸福な場所へ行き着くように願う思いを伝えたいときに適しています。

この言葉は遺族に使うのではなく、故人に使う言葉とされています。「故人様のご冥福をお祈りいたします」や「心より〇〇様のご冥福をお祈りいたします」と、故人に心を寄せながら遺族に声をかけましょう。だた「冥福」という概念のない宗教・宗派もありますので、不明な場合は使わない方が無難です。

心中お察しします

「察する」には、同情の意味が含まれています。「遺族の気持ちを推し量る」「悲しい気持ちに共感する」といった意味合いで使えます。ただし同じ経験をしたことのない人に言われると「この気持ちが本当にわかるの?」と不快に思う人もいるため、使い方を間違えないように注意が必要です。
「突然のお別れとなったご遺族様の心中をお察しするだけで胸が痛みます」と相手の気持ちを考えた上で声をかけてください。

類語と言い換え表現、対義語

大往生とは別の言い回しで故人の最期を表すときに役立つ類語や、言い換えを紹介します。対義語もご参考にしてください。

類語

類語として1つ目に挙げられるのが「死去」です。これは、家族や身内の死を表すために用います。2つ目は死の尊敬語である「逝去(せいきょ)」が挙げられます。身内以外が亡くなった際に敬意をこめて使うのが特徴です。さらに詳しい使い方は下記の記事をご覧ください。

言い換え表現

大往生を言い換えたいときに使えるのが「天寿を全うする」です。「天から授かった寿命を生き尽くした」という意味があります。病気や事故に見舞われず、自然死に至った場合に使います。「私の祖父は大病を患うことなく、天寿を全うできた」などの使い方が一般的です。
また「天に召される」も言い換え表現の1つです。これはキリスト教において「死ぬ」「亡くなる」ことを表し、「天」は「天国」を意味します。例えば「今朝、父が天に召されました」と用います。

対義語

寿命を全うすることを意味する大往生の対義語は、早く亡くなることを表します。その1つが、30代~40代くらいの年齢で平均的な寿命よりも早く亡くなることを示す「早世(そうせい)」です。

例えば「兄は不慮の事故により早世してしまった」などと使います。ちなみに同じ読み方の「早逝(そうせい)」は基本的な意味は同じですが、故人への尊敬の念がより強く込められている言葉です。
また「夭逝(ようせい)」は、一般的に10代~40代の若い世代が亡くなったときに使います。秀でた才能を持った人に対して使う傾向があり、使用シーンが限定されることが多いです。「中学時代から神童と呼ばれ、アメリカの名門大学へ入学した親友が19歳で夭逝した」といったように使います。

大往生の意味と使い方を覚えて、お悔やみのマナーを身につける

寿命を全うしたか否かは、故人を失った遺族にしかわかりません。大往生の意味を理解し、その場に合わせた言葉を使うことが大切です。本記事で紹介したことを参考に、遺族に寄り添ったお悔やみの言葉を伝えてください。