真言宗の葬儀について解説。参列の際に知っておくべきマナーとは?

お葬式のマナー・基礎知識
真言宗の葬儀について解説。参列の際に知っておくべきマナーとは?

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真言宗の葬儀マナーが知りたい
仏教の葬儀は宗派によって内容が異なり、真言宗にも独自の流れやマナーがあります。こちらの記事では、真言宗の葬儀について”基本的な知識”や”参列する際のマナー”をまとめました。真言宗の葬儀について不安のある方はぜひ参考にしてください。

真言宗について

まずは真言宗の現状や基礎知識、葬儀の特徴を紹介します。

真言宗の基礎知識

真言宗は中国で伝えられていた仏教の一派で、平安時代の高僧「空海」によって日本で開かれるようになりました。

その教えは教義や儀礼が一般に公開される「顕教」ではなく、師から弟子への口伝によって伝授されていく「密教」にあたります。そして、真言宗は京都東寺を根本道場としたことから「東密」とも呼ばれています。

本尊は”万物全てに存在する”とされている「大日如来」です。

真言宗の開祖を知る▶弘法大師・空海の生涯

真言宗の現状

文化庁の「宗教年鑑(令和5年版)」によれば、全国にある真言系寺院の数は12,347。仏教系寺院全体の数が76,563なので、日本にある寺院の16%ほどが真言宗といえます。

信者は全国におよそ538万人いるそうで、日本で仏教を信仰している人の7.6%ほどにあたります。特に信者の多い地域には四国、岡山県、北関東が挙げられます。

真言宗の葬儀の特徴

真言宗の葬儀には「この世で身につけた悪習を清め、故人を大日如来のいる密厳浄土(みつごんじょうど)へ送り出す」という意味があります。そして納棺やお葬式の際には、「土砂加持(どしゃかじ)」、「灌頂(かんじょう)」という独自の儀式をおこなうのが特徴です。

「土砂加持」は、土砂を故人にかけて納棺する儀式です。苦悩を取り除くとされる水で清められた土砂を使います。災いを払うとされる光明真言(こうみょうしんごん)を唱えながらおこないます。この儀式には、罪を滅して成仏するための善を生む「滅罪生善(めつざいしょうぜん)」の意味があります。

「灌頂」は、葬儀中に、故人の頭部に水をそそぎかける儀式です。故人が仏の位に達したことを示します。

真言宗の葬儀の流れ

教えの内容が他の宗派と違う真言宗は、葬儀の手順も独特です。真言宗の葬儀に参列する前に、基本的な流れを把握しておきましょう。

納棺式と通夜の流れ

故人が亡くなった際は、通夜の前に僧侶が枕経をあげます。真言宗の枕経は「般若理趣経(はんにゃりしゅきょう)→慈救呪(じくじゅ)→陀羅尼(だらに)→光明真言→御宝号(ごほうごう)」の順で唱えるのが一般的です。

納棺式のときには土砂加持がおこなわれ、棺が祭壇に設置されます。そのあと通夜が始まり、通夜振舞いで遺族や参列者が故人を偲ぶ時間を過ごします。

葬儀の流れ

真言宗の葬儀は下記のような流れで進みます。焼香と出棺以外の基本的な動作は僧侶がおこないます。

1.僧侶の入堂

2.塗香(ずこう)、三密観(さんみつかん)、護身法(ごしんぼう)、加持香水(かじこうずい)の法

塗香:故人の体に香を塗ること。これでけがれを払います。
三密観:即身成仏させるための儀式です。「吽(うん)」の字を身・口・意で念じます。
護身法:5つの印を結び、心身を整える儀式です。
加持香水の法:祈りによって浄化した香水を故人へかけること。煩悩やけがれを取り除きます。

3.三礼(さんらい)、表白(ひょうびゃく)、神分(じんぶん)

三礼:仏法僧へ帰依を表すため、周礼・儀礼・礼記を唱えます。
表白:故人が浄土へ往生するよう、大日如来へささげる祈りです。
神分:降臨してくる大日如来への感謝やお礼はこのときおこないます。

4.剃髪(ていはつ)、授戒(じゅかい)

剃髪:仏門へ入る儀式。偈文(げもん)を唱えながら故人の髪を剃ります。剃るフリだけをする場合もあるそうです。
授戒:故人へ戒名を授けます。故人が大日如来の弟子として帰依する誓いになります。

5.引導(いんどう)、破地獄(はじごく)

引導:もう一度表白・神分をおこない灌頂をへて、地獄への道に行くことのないようにと弥勒三種の印明を授けます。この一連で、故人を即身成仏へと導くのです。
破地獄:故人の心にある苦しみを取り除く儀式ですが、時代の変化により近年では簡略化されるようになりました。

6.焼香、諷誦文(ふじゅもん)

焼香:次の章で紹介します。

諷誦文:参列者が焼香をあげている間に僧侶が唱えるお経のこと。故人の功績を称える内容が読まれます。

7.出棺

棺に花を入れ、遺族や参列者が故人とのお別れをします。そのあと、僧侶が導師最極秘印(どうしさいごくひいん)という印を結び、故人を送り出すという流れです。

8.僧侶の退堂

基本はこのような流れをへて、葬儀は終了します。作法や流れは地域や寺院によって異なる場合もあるため、疑問点があれば寺院や葬儀社に確認しておく方が安心です。

真言宗の葬儀の参列マナー

真言宗の葬儀に参列する際のマナーやルールを詳しく解説していきます。焼香の仕方や数珠の使い方、香典の包み方、さらには参列時の服装などもご参考にしてください。

焼香の仕方

通夜や葬式でおこなわれる「焼香」の正式な動作は以下の通りです。


1.祭壇の前に進み、僧侶・遺族の順に一礼

2.焼香台の前に進み、遺影へ一礼

3.中指・人差し指・親指で抹香(まっこう)をつまむ→抹香を目の高さまで持ち上げる(「おしいただく」とも言う)→この動作を3回おこなう

4.遺影へ合掌し一礼

5.僧侶・遺族の順に一礼


これで一連の流れが終了します。場合によって焼香を1回に短縮するよう指示が出ることもありますが、そのときは指示に従ってください。

数珠の使い方

真言宗では、108個の主玉(おもだま)が連なった振分数珠(ふりわけじゅず)が本式です。男女で数の違いはありませんが、玉のサイズは変わります。

また、喪主や遺族は本式数珠を用意する必要がありますが、それ以外の人は略式数珠を利用してもいいそうです。

数珠は親玉が上になるよう二重にし、左手にかけて房を握るのが基本。合掌では房が手の甲へと垂れるよう、両手の中指に数珠をかけたまま手を合わせます。ただ、同じ真言宗でも宗派・団体によって使い方が異なることもあるので、都度確認しておくと安心です。

香典の包み方

香典として包む金額は、友人・会社関係であれば5,000円程度、親族であれば10,000〜100,000円程度が相場です。香典袋の表書きは「御霊前」または「御香典」とし、その下に自分のフルネームを書きます。金額や住所は中袋に記載しましょう。

こうして用意した香典袋は袱紗(ふくさ)に包むのがマナー。寒色系の落ち着いた色のものを選び、左開きになるように香典袋を入れます。右開きは慶事を意味するので注意が必要です。

参列時の服装

参列時は、主に故人との関係や葬儀の内容によって服装が変わります。

<準喪服>
広く喪服と呼ばれるのがこの準喪服。一般参列者だけでなく、喪主や遺族でも利用されることが増えています。女性の準喪服にあたるのはブラックフォーマルです。和装は一つ紋か三つ紋で、黒・茶・紫などの落ち着いた色のものから選べます。対して男性はほとんどがブラックスーツ。準喪服に相当する和装もありますが、無理に着用する必要はありません。

<略喪服>
通夜や法要などの参列者が着用するものなので、葬儀ではほとんどみかけません。参列者のほか、三回忌以降の法要では遺族も略喪服を着るのが一般的です。女性は暗めで落ち着いた色・デザインのワンピースやスーツ。男性は、黒みを帯びたダークスーツなどをよく選びます。

女性は念のため、いかなる服装のときでも結婚指輪以外のアクセサリーは外しておくと安心です。身につける場合も、一連のパールネックレスや一粒パールのイヤリングやピアスに留めておきましょう。

真言宗の葬儀に参列する際は教えやマナーを理解しておこう

真言宗には独自の教えからくる葬儀の流れやルール、マナーがあります。ルールをおさえつつ、故人を偲ぶことを第一に、葬儀をおこないましょう。また、あらかじめ基礎知識やマナーを身につけておけば比較的落ち着いて参列できるはずです。気持ちを込めて故人をお見送りしたいですね。