「老衰」で穏やかな最期を迎えるために
終活
超高齢社会といわれる今の日本。近年では、老衰で亡くなる人が増えてきており、我が国の死因の第3位となっています。この記事では、老衰の定義や現状、老衰の前兆症状などに加え、最期を迎える前に準備しておきたいことについて解説します。
老衰とは
老衰には大往生というイメージがあります。まず、その定義や現状についてみていきましょう。
老衰の意味と定義
老衰とは、老いて心身が衰えることです。全身の慢性的な炎症により細胞が減少して、臓器の機能が低下していきます。厚生労働省は老衰死の定義を「高齢者でほかに記載すべき死亡原因のない、いわゆる自然死」としています。
老衰の年齢と余命
老衰には何歳から当てはまるという定義はありません。一般的には平均寿命に近い80歳を超えていることが目安となっています。老衰と診断されてからの余命は、ある病院では平均1.9ヶ月というデータがあります。口から食事が取れなくなって、点滴のみでの余命は3ヶ月程度。点滴を全くしない場合の余命は5日〜7日程度、長くても10日間ほどと言われています。
老衰が増えている?その背景とは
老衰死は、戦後(1950年代)から2000年ごろにかけて大きく減少していきました。医療の進歩により病院で亡くなる人が増え、死因に診断名がつくようになったことが要因の一つと考えられています。ところが、2000年代初頭から近年になると、老衰死は右肩上がり。増加の一途をたどっています。
その背景には、高齢者人口の増加やさらに高度な医療の発達があげられます。また、本人に病名を突きつけて辛い治療を施すよりも、自然現象の老衰として、残された人生を穏やかに過ごすことに重きを置くようになったことも影響しています。
さらには、1980年代では老衰の過半数を70〜80歳代が占めていました。それが、再び増加した2000年以降では90歳以上が大半となっています。ここも注目すべき点でしょう。
その背景には、高齢者人口の増加やさらに高度な医療の発達があげられます。また、本人に病名を突きつけて辛い治療を施すよりも、自然現象の老衰として、残された人生を穏やかに過ごすことに重きを置くようになったことも影響しています。
さらには、1980年代では老衰の過半数を70〜80歳代が占めていました。それが、再び増加した2000年以降では90歳以上が大半となっています。ここも注目すべき点でしょう。
老衰死の前兆症状
老衰にはどんな前兆があって、どのような症状で始まるのでしょうか。個人差はあるものの経過を知っておけば、ご本人は最期を意識した過ごし方ができ、ご家族はケアがしやすくなることでしょう。
食事の量が著しく減少する
胃腸の機能も低下するため、食事を取っていても体重が減少します。食欲がなくなるとさらに体重の減少が進み、やがて体が食事や水分を受け付けなくなります。
疲れやすく一日中寝ている
疲れやすくなり、動くのが辛くなります。全身の筋力も衰え始めるため、転びやすくなったり、歩ける距離が少なくなるため行動範囲が狭くなったりします。そして、一日中寝ている状態が続くようになります。
脳機能の低下
脳の機能も低下し始めるため、考える力も衰えてきます。現実世界から離れていくため、だんだん周囲に無関心に。やがて反応が鈍くなり、ぼんやりするようになります。
老衰を迎える前に考えておくべきこと
高齢の親と死について語るのは酷なことかもしれません。しかし、本人の意志を尊重し、のちのち後悔しないためにも話し合っておきたいものです。本人の性格を踏まえつつ、「まだ先のことなんだけど元気なうちに」「いざというときにどうしていいか決断ができないから」などの言葉を添えながら、終活をすすめてみるのもよいでしょう。
看取られる側の準備、看取る側の心得
日ごろから健康に気を付けている人でも、自分が先立つ場合も考えておきたいもの。お金の管理から家族の好きなレシピまでしっかりエンディングノートに残して、残された家族が不安にならないようにします。
看取る家族側の努力も必要です。本人が安心して逝けるように、お金の管理を勉強したり、家事が苦手な場合は一通りできるようになったりなど、ある程度の準備はしておきたいものです。
看取る家族側の努力も必要です。本人が安心して逝けるように、お金の管理を勉強したり、家事が苦手な場合は一通りできるようになったりなど、ある程度の準備はしておきたいものです。
老衰で病める時の選択、延命治療か平穏死か。
いずれは食事を取れなくなるときがやってきます。そのときに慌てて考えるのではなく、あらかじめ本人はどうしたいのか、家族で話し合っておくことが大事です。
延命治療として、腹部からチューブを入れ栄養剤を胃に注入する胃ろうや、心臓近くの血管までカテーテルを入れて高カロリー輸液を入れる中心静脈栄養があります。これは、家族の希望なしで医師が選択することはありません。
また、1日に必要最低限の点滴などはおこなうものの、特別なことは何もしないという選択もあります。この場合は、本人が不安を感じないよう、在宅医や訪問看護師とよく連携を取ることが必要になるでしょう。
延命治療として、腹部からチューブを入れ栄養剤を胃に注入する胃ろうや、心臓近くの血管までカテーテルを入れて高カロリー輸液を入れる中心静脈栄養があります。これは、家族の希望なしで医師が選択することはありません。
また、1日に必要最低限の点滴などはおこなうものの、特別なことは何もしないという選択もあります。この場合は、本人が不安を感じないよう、在宅医や訪問看護師とよく連携を取ることが必要になるでしょう。
「老衰は苦しまない」は本当?
老衰死は、気管支が弱って呼吸が荒くなるときがあり、苦しいのではないか?と家族は心配になることでしょう。しかし、老衰は死を迎える前から体の機能が徐々に低下し、不快感の低い状態が最後まで続きます。また、体力だけでなく意識も低下していくことから、苦痛を感じにくいと言われています。
家族と長い余生を楽しむために
肉親が老いていき最期を看取るのは悲しいことです。しかし、老衰は痛みや苦しみを感じることがほとんどないとされていることを考えれば、家族の気持ちも少しは救われた気持ちになるでしょう。老衰と診断されるのは、長く生きた証です。大往生といわれるくらい頑張る、または頑張ってもらって、長い余生を家族で楽しみたいですね。