老老介護の現状と注意点。認認介護も合わせて対策を紹介
終活
老老介護とは高齢者が高齢者を介護することです。出生率の低下や平均寿命の伸長などから、介護の現場で多く見られようになりました。老老介護には、世帯の孤立や介護者の負担増大、重大事故など可能性といった問題点が潜みます。本記事では老老介護の注意点、利用できるサービス、認知症患者同士による認認介護についても紹介します。
目次
老老介護とは高齢者が高齢者を介護すること
老老介護とは、介護者と要介護者(介護される人)のどちらともが65歳以上の高齢である状態を言います。また、両者が75歳以上の場合は超老老介護、双方が認知症を患っている場合は、認認介護と呼ばれるようになりました。
老老介護・認認介護で起こりうること
老老介護・認認介護になると、介護者の負担が増えたり社会的に孤立したりといった懸念があります。老老介護・認認介護世帯で気をつけたいことを紹介します。
介護者にかかる負担が増大する
介護者と要介護者のどちらも高齢だと、介護の難易度が著しく上がります。介護者に体力がさほどない場合、少し体を起こしたり寝かしたりするだけでも、多大な時間を要することがあるでしょう。また、介護者が無理を続けると腰を傷めるなど体を悪くすることも少なくありません。最悪のケースだと介護者が寝込んだり入院したりすることになり、要介護者の世話をする人が誰もいなくなってしまうリスクが高くなります。
介護世帯が孤立化しやすい
高齢者世帯で介護の必要性が発生すると、社会とのつながりが希薄になりやすいと言われます。日本では「介護は自宅ですべき」といった社会的風潮があり、「自分の介護を他人に頼りたくない」と考える人もいます。仕事や趣味、テレビ番組を見ることなど、介護者は介護労働以外に使う時間が減り、家という密室で世間から離れ、孤独な状態が長く続くことになりがちです。
生活全般の管理が困難になる
介護者・要介護者ともに認知症の認認介護状態になると、もっと深刻です。生活に関するあらゆる管理が困難になります。体調管理・食事管理はもちろん、服薬管理も難しいでしょう。要介護される人が栄養不足になったり、必要な薬が飲めずに危険な状態に陥ったりするおそれがあります。また生活環境に対する配慮も行き届かなくなり、夏は熱中症、冬は流行性感冒などを発症するリスクも高くなります。両者の認知症の進行具合によっては、体調が悪くなっていることにすら気付かないかもしれません。
セキュリティリスクが高くなる
高齢者だけの世帯で片方が要介護者だと、緊急事態に対して十分な備えをするのが難しくなります。突然何らかの災害が起こってもスムーズに対応できなかったり、気付かなかったりするかもしれません。また世間から隔絶されていると、十分な情報を得るのが困難です。危険を周知されている詐欺を見抜けなかったり、悪徳商法の被害者になったりするリスクも高くなります。
6割に迫る老老介護の実態
少子高齢化が進む日本では、老老介護・認認介護の割合が年々増加しています。老老介護・認認介護の割合や増加の原因などを紹介します。
要介護者がいる世帯の半数以上が老老介護
厚生労働省の「2019年 国民生活基礎調査の概況」によると、要介護者と同居している主な介護者の年齢の組み合わせは、「65歳以上同士」が2019年は59.7%となっています。2001年は40.6%、2010年は45.9%ですので、年々増加していることが分かります。これは平均寿命が伸びている一方で、介護不要で暮らせる健康寿命が短いことが一因です。
また、平均寿命が延びたことで、高齢となった子どもがさらに高齢の親の面倒を見るケースも少なくありません。
また、平均寿命が延びたことで、高齢となった子どもがさらに高齢の親の面倒を見るケースも少なくありません。
参考:2019年 国民生活基礎調査の概況「V 介護の状況 」|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/dl/05.pdf
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/dl/05.pdf
老老介護のうち3割以上が超老老介護
先の厚生労働省の調査によると、要介護者と同居する主な介護者の年齢の組み合わせでは、「75歳以上同士」が33.1%を占めることが分かっています。また、在宅介護の世帯状況を見ると、「核家族世帯」が40.3%で最多です。このうちの22.2%が「夫婦のみ」の世帯ですから、単独世帯の次に2人きりの世帯で妻が夫をあるいは夫が妻を介護するケースが多いことになります。
2025年には認知症で見守りが必要な人は470万人にも
先の厚生労働省「2019年 国民生活基礎調査の概況」によると、介護が必要になった原因のトップは、要介護1~3までが認知症でした。認知症を発症する高齢者の割合は年々増加していくと見られています。
また、厚生労働省の推計によれば2025年には65歳以上人口比で12.8%の470万人が認知症で見守りが必要な「日常生活自立度Ⅱ」以上になる見込みです。
また、厚生労働省の推計によれば2025年には65歳以上人口比で12.8%の470万人が認知症で見守りが必要な「日常生活自立度Ⅱ」以上になる見込みです。
また、80~84歳の認知症出現率は21.8%と算出されています。これを夫婦2人とも80歳くらいの老老介護世帯に当てはめると、「21.8%×21.8%×2=9.5%」と計算できます。つまり約11組に1組は認認介護世帯と考えられるわけです。
参考:地域包括ケアシステムと認知症施策「年齢階級別の認知症有病率」|厚生労働省
https://www.ncgg.go.jp/hospital/kenshu/kenshu/documents/2018-1-sesaku.pdf
https://www.ncgg.go.jp/hospital/kenshu/kenshu/documents/2018-1-sesaku.pdf
老老介護・認認介護で取るべき対策
老老介護・認認介護になりそうなときは、先を見越して対策を立てる必要があります。早めにしたい準備や心構えを紹介します。
血縁者を頼る
体力的・金銭的負担が大きくなると感じたら、兄弟姉妹・子どもなどを頼ることをおすすめします。自分で何とかなるうちは、ついつい1人で頑張ろうとしてしまうものです。しかし、深刻な状況になる前に相談した方がお互いに負担が少なく、打つ手も多くなります。
利用できるサービスを調べる
要介護認定の区分は7段階あり、要介護の度合いによって適用される保険の限度額が異なります。まずは自分の世帯がどのような介護サービスを受けられるのか調べてみてはいかがでしょうか。受けられる支援は最大限利用するのがおすすめです。
状態悪化の防止に努める
家族が介護が必要になりそうな危険信号を察知したら、なるべく運動したり脳トレをしたりできる範囲の防止策を習慣付けられるように検討します。要介護度が低いうちに取り組めば、症状が進むのを抑え込みやすくなるはずです。介護度がさほど上がらなければ、介護者の負担は少なくて済むと考えられます。
老老介護・認認介護で利用できるサポート
老老介護・認認介護の世帯では、介護保険を利用した援助を受けられます。またそれ以外のサービスについても知っておくと便利です。ここからは老老介護・認認介護で受けられるサービスについて紹介します。
訪問型サービス
介護保険が適用されるサービスです。主に次のようなサービスがあります。
- ホームヘルパー:身体介護や生活援助。要介護1~5なら夜間対応の利用も可
- 訪問入浴介護
- 訪問看護、訪問リハビリテーション:要介護1~5および要支援1・2が使用可
いずれのサービスも、受けられる範囲は法律により定められています。
通所型サービス
こちらも介護保険が適用されます。主に次のようなサービスがあります。
- デイサービス:デイサービスセンターなどに日帰りで通って生活援助を受ける(要介護1~5)
- デイケア:介護老人保健施設などに日帰りで通いリハビリテーションを受ける(要介護1~5および要支援1・2)
- ショートステイ:数日から1週間程度老人福祉施設に入所して生活援助を受ける(要介護1~5および要支援1・2)
なお、デイサービスは認知症限定のものもあります。
訪問+通所複合型サービス
訪問とデイサービスなどを組み合わせた複合型のサービスで、介護保険が適用されます。
- デイサービスを中心に、訪問介護・ショートステイを組み合わせる(要介護1~5と要支援1・2)
- デイサービスに訪問介護、宿泊、訪問看護を組み合わせる(要介護1~5)
訪問介護や方も看護の組み合わせは、医療と介護のニーズが高い人向けのサービスです。同じ施設スタッフがサービスに取り組むことで、利用者のニーズに合わせて柔軟に対応できます。
介護保険外サービス
介護保険範囲外で利用できるサービスには、次のようなものがあります。
- 全国の各市区町村が独自におこなうサービス:訪問理美容サービス、オムツサービスなど
- 介護サービス事業者によるサービス:掃除などの家事全般、手間のかかる料理など
- 民間企業のサービス:配食サービス、家事代行サービスなど
保険適用外のサービスなら、介護保険でカバーできない範囲まで対応してもらえます。料金は自己負担ですが、いざいうときのためサービスの種類や内容について調べておくのがおすすめです。
老老介護の現状を知って将来に備えよう
少子高齢化が進む日本では、高齢者の人口比率が年々増加しています。それに伴い老老介護・認認介護世帯も増加し、今や深刻な社会問題のひとつになっています。まだまだ先のことでも老後を不安なく過ごせるよう、介護現場の現状やいざというとき使えるサービスについて知識を蓄えておくのがおすすめです。