【天理教】お葬式の特徴と流れ。喪主が知っておきたい内容は?
わたしのお葬式
この記事はこんな方にオススメです
はじめて葬儀の計画をする
葬儀マナーに関心がある
天理教とは、江戸時代に創設された奈良県天理市に本部のある宗教団体です。本記事では天理教のお葬式を中心に、その特徴と流れ、マナーなど、喪主・参列者両方の立場で知っておきたいことを紹介します。また、天理教の歴史と教えも簡単にご紹介します。
目次
お葬式に関する、天理教ならではの特徴
明治時代に教派神道であった天理教。そのお葬式は神道の形式に似ているところがあり、大きく分けて3つの特徴があります。
お葬式に対する考え方
天理教では、身体は神から借りていたものと考えられています。そのため、天理教のお葬式は「古い身体を神に返し、新しい身体が見つかるまで魂を預かってもらうための儀式」という考え方に則っています。
お通夜の名称
天理教のお通夜は「みたまうつし(御霊移し)」と呼ばれます。これは、古い身体からみたま(魂)を移すことが由来です。告別式より優先されることもあるなど、天理教徒にとって「みたまうつし」は重要な儀式として捉えられています。
「死」の概念
天理教は、死の概念に独自の特徴があります。それは「亡くなる」という言葉を使わないところです。「亡くなる」ではなく「出直す」とする、「命日」という言葉を使わずに「出直し当日」とするなど、葬儀そのものは神式と似ているとは言われますが、異なる点も少なくありません。
人々が助け合うことを目指す天理教について
日本に根付く、数ある宗教の一つに数えられる天理教。その始まりは、今から200年近く前まで遡ります。ここでは、天理教の歴史と教えを簡単に紹介していきます。
天理教の歴史
天理教は江戸時代の1838年に、教祖・中山みきが始めた宗教です。きっかけは、この世を創造した神である親神(おやがみ)「天理王命(てんりおうのみこと)」からお告げを受けたこととされます。天理教の現在の教会数は、日本国内を中心に約16,000あります。信者数は200万人以上で、その教えは日本のみならず海外80ヵ国にも伝わっているそうです。
天理教の教え
人間は仲良く陽気に暮らすために作られたもので、人生の目的はこの「陽気ぐらし」をすること、というのが天理教の教えです。これは、親神・天理王命から教祖・中山みきを通して伝えられています。その教えは「おふでさき」「みかぐらうた」「おさしづ」に記されており、同教の三原典となっています。3つの原典に基づいて、教義の大綱を教会本部がまとめた「天理教教典」もあります。
【お通夜・葬儀・告別式】天理教のお葬式の流れ
お通夜に当たるみたまうつしや、お焼香に代わる玉串奉献(たまぐしほうてん)など、天理教のお葬式には神道のお葬式に見られる特徴的な儀式があります。ここではお通夜と告別式の流れ、玉串奉献の作法を紹介します。
みたまうつし(お通夜)の流れ
入場から退場まで、お通夜の基本的な流れは次の通りです。
- 入場 祭官や楽人を始め、参列者が入場・着席する
- 祓詞奏上(はらえことばそうじょう) お祓いの言葉が唱えられる
- うつしの詞奏上および「みたまうつし」の儀 祭官や楽人によって、故人の身体から魂を移す儀式がおこなわれ、「うつしの詞」という言葉が捧げられる
- 献饌(けんせん) 神にお供え物をする
- 斎主玉串奉献、しずめの詞奏上 仏教の焼香にあたる儀式をおこない、「しずめの詞」が唱えられる
- 斎員列拝 斎主の助手として働く人々を斎員といいますが、ここではお葬式関係者が御礼をする
- 玉串奉献および列拝 喪主→遺族→一般参列者の順に、玉串奉献および列拝をする
- 退場 参列した人々が退場する
発葬儀(葬儀)・告別式の流れ
天理教の告別式は、発葬儀(はっそうぎ)とも呼ばれます。一般的な流れは次の通りです。
- 入場 参列者が入場・着席する
- 献饌(けんせん) 神にお供え物をする
- しのび詞奏上 「しのびの詞」が唱えられる
- 斎主玉串奉献、告別詞奏上 玉串奉献の後に「告別詞奏上」が唱えられる
- 斎員列拝 斎主の助手として働く人々が御礼をする
- 玉串奉献および列拝 喪主→遺族→一般参列者の順に、玉串奉献および列拝をする
- 撤饌(てっせん) 神に供えたものを下げる
- 退場 参列した人々が退場する
お通夜と告別式の流れはあまり変わりません。なお、葬儀・告別式では弔電や弔辞が披露されることもあります。その際は、一般参列者がおこなう玉串奉献、および列拝の後に披露されるのが一般的です。
玉串奉献の作法
玉串とは、神式のお葬式で用いられる榊(さかき)のこと。玉串を祭壇に捧げるのが玉串奉献です。仏式葬儀のお焼香に代わるものです。
<やり方>
- 斎員から玉串を受け取る
- 左手に葉側がくるように両手で持って、祭壇の前へ進む
- 玉串の葉側が祭壇に、枝側が自分に向いた状態で一礼する
- 玉串の左右を逆にして持ち、玉串を時計回りに回し、枝側を祭壇に向けて、玉串台に捧げる
列拝(参拝)の作法
玉串奉献の後におこなう列拝(参拝)では、「二礼四拍手一拝四拍手一礼」という決まりがあります。
<やり方>
- 祭壇の前で2回礼をする
- 拍手を4回する
- 一拝する
- 拍手を4回する
- 一礼をする
一般的な神道では「しのび手」といって音を立てないようにしますが、天理教では音を立てても良いとされます。とはいえ、あくまでもお葬式の場であることを念頭に置き、大きな音ではなく控えめに拍手するよう意識してください。
【喪主向け】天理教のお葬式をおこなう前に知っておきたいこと
喪主として天理教のお葬式を執りおこなう際は、事前に知っておきたいポイントが主に2つあります。それは、教会長と五十日祭の存在です。ここでは、それぞれ詳しく紹介していきます。
日程などを決める前に教会長と相談する
天理教において、喪主は教会長と相談しながらお葬式の日取りを決めていきます。仏式のお葬式では僧侶を呼びますが、天理教のお葬式では祭官や楽人を依頼する必要があります。所属する教会によっては、楽人を依頼せずにテープを流す場合もあるので、教会長に確認することをお忘れなく。
また、葬儀社に依頼する際は、天理教であることを必ず伝えてください。
また、葬儀社に依頼する際は、天理教であることを必ず伝えてください。
天理教は四十九日ではなく「五十日祭」がある
天理教の五十日祭は、仏教で言うところの四十九日です。亡くなってから50日間、魂はその人の家に残ります。そして、五十日祭を迎えると魂が神様のところへ向かっていく、というのが神道の考え方で、天理教にも同じような慣習があります。喪主は、五十日祭をおこなう前に教会と相談して日程を決めます。
五十日祭の儀式が終わったら、お供えしたものをみんなで食べ、故人を偲ぶ「直会(なおらい)」という時間を過ごすのが通例です。当日は参列者が「玉串料」と呼ぶ香典を持参するため、喪主はそれに対するお返しを用意する必要があります。その際ののし紙は、上側に「偲び草」または「しのび草」、もしくは「志」を、下側には「喪主の名字」を書きます。
【参列者向け】天理教のお葬式における服装・香典マナー
天理教のお葬式に参列する際の服装や香典といったマナーも気になるところ。ここでは、それぞれのマナーを紹介します。
服装は仏式と同じ
天理教のお葬式に参列する際の服装は、仏教のお葬式と同じ喪服で問題ありません。アクセサリーに関するマナーも同じです。唯一、天理教のお葬式では数珠を持たないところが異なります。
喪服に関しては以下の記事で詳しく紹介しています。
失敗しない!覚えておきたい喪服の着こなしとマナー - 家族葬のファミーユ【Coeurlien】
亡くなった人への悲しみの気持ちを表すのが喪服です。喪服はお通夜、葬儀・告別式のほか、法事・法要などでも着用します。この記事では、喪服のマナーと、注意したいポイントを紹介します。
香典は袋や表書きに注意
天理教のお葬式に持参する香典は、神道のものと同じく市販の香典袋や封筒に包みます。ただし、蓮の花はお釈迦様、つまり仏教を表しているため、蓮の花が描かれている香典袋は避けます。水引の色は白黒、白黄、または銀色です。表書きは「御玉串料」「御榊料」「御霊前」などで、仏式で用いられる「御仏前」は避けてください。
なお、香典の金額は仏式とほぼ同じです。詳しくは以下の記事で詳しく紹介しています。
香典の金額は年齢で変わる!年齢と故人との関係性からみる相場 - 家族葬のファミーユ【Coeurlien】
葬儀に参列するときに持参する香典。自分の年齢や故人との関係性によって香典の金額は変動します。この記事では、香典金額の目安について詳しく紹介します。知っておきたい香典のマナーについても合わせて確認しましょう。
天理教の流れやマナーを把握した上で葬儀の計画を
お通夜を「みたまうつし」と呼ぶ、五十日祭があるなど、天理教のお葬式にはさまざまな特徴があります。喪主としてお葬式を執りおこなう際は、教会長に相談する必要があるので、気になることがある人は今のうちから相談してみてはいかがでしょうか。計画を立てるときは、全体の流れやマナーなどをしっかり把握しておくとスムーズに進められます。何か困ったことがあれば、葬儀社にも相談してくださいね。
この記事の監修者
瀬戸隆史 1級葬祭ディレクター(厚生労働省認定・葬祭ディレクター技能審査制度)
家族葬のファミーユをはじめとするきずなホールディングスグループで、新入社員にお葬式のマナー、業界知識などをレクチャーする葬祭基礎研修などを担当。
家族葬のファミーユをはじめとするきずなホールディングスグループで、新入社員にお葬式のマナー、業界知識などをレクチャーする葬祭基礎研修などを担当。