散骨のメリット・デメリットとは?自然に還るという選択肢

わたしのお葬式
散骨のメリット・デメリットとは?自然に還るという選択肢

この記事はこんな方にオススメです

お墓以外の納骨方法が知りたい
遺骨を粉のように細かくして海などに撒く散骨は、最後は自然に還りたいという故人の願いを叶える遺骨の取り扱い方法のひとつです。しかし、適切なやり方を把握しておかないと、知らないうちに周囲の人に迷惑をかけるだけでなく法律に違反してしまうことにもなりかねません。この記事では、散骨の基本や種類と特徴・注意点などを解説します。

散骨とはなにか

はじめに散骨とはどのようなものか、意味や関連する法律・条例などについて説明します。

散骨とは粉末化した遺骨を自然に撒く葬法

散骨とは、遺骨を粉末状にして撒くことを言います。散骨する場所は海や山など自然のなかであることが多く、故人の希望を尊重して、思い入れのある場所でおこなうことが多いです。また、粉末化した遺骨のすべてを撒く「全散骨」、もしくは一部を撒く「部分散骨」などが選べます(撒ける遺骨の量は場所や条例によって異なり、部分散骨しか選べない場合もあります)。遺骨を埋めないことが、他の弔い方と大きく異なります。
なお、混同されやすい樹木葬については下記の記事で解説してますので、併せて確認してみてください。

法的には未整備

2021年現在、散骨自体を取り締まる法律はありません。『墓地、埋葬等に関する法律』(墓埋法)では、遺体を墓地以外に埋葬することは禁じられていますが、散骨は対象外です。
さらに、散骨は法務省より「葬送を目的とし、節度を持っておこなう限り、死体遺棄には当たらない」との見解が出されています。ただし、粉末化が不十分で遺骨と分かる状態で放置した場合は、刑法190条(死体損壊等)に抵触する恐れもあります。また自治体によっては、条例で散骨許可が必要であったり、散骨できる場所が定められたりしているので注意が必要です。

なぜ選ばれるのか、散骨のメリット・デメリット

近年、散骨を希望する人や葬法の1つとして検討する人が増えています。散骨を選ぶ人はどんな点に着目しているのか、散骨をするメリットとデメリットについて紹介します。

メリット①故人の希望を叶えられる

生前に思い入れのある場所や、自然に還りたいといった自然回帰志向など、故人の意思を尊重できることは散骨が選ばれる大きな理由です。

メリット②費用が抑えられる

埋葬をしない時にはお墓は不要です。そのため、墓地や墓石の購入費や管理費が発生しない分、通常の埋葬方法より安く抑えられます。

メリット③次の世代への負担が少ない

お墓のように、管理や維持の必要がありません。特に子ども世代に負担をかけたくない人、墓を継ぐ後継者がいない人には安心です。

デメリット①周囲の理解が得られないこともある

比較的新しい供養の仕方なので、今ではまだ抵抗を感じる人も少なくありません。そのため、なかなか他の家族や親戚の理解が得られない場合があります。

デメリット②生きた証を残しにくい

散骨は証明書などがもらえますが、ほかに形に残るものがほとんどありません。故人をしのぶには、散骨した場所や時間を残された人が記憶しておく必要があります。お墓や墓誌であれば、そこに刻まれた戒名や命日を見れば、直接会ったことのない子孫も先祖の生きた証が確かめられます。

デメリット③お墓参りができない

残される側の心情もいいことばかりとは限りません。お墓参りのように故人に思いをはせる固有の場所がなく、寂しく感じる人もいます。しかし一部の遺骨を撒いて、残りを手元に残しておくことも可能なので、事前にお参りの方法についても家族で話し合っておくと良いでしょう。

海以外にも。散骨の種類と費用相場

散骨といえば海というイメージが強いかもしれませんが、陸・海・空にも遺骨を撒く方法があります。代表的な海や山でおこなう散骨の特徴と費用相場、最近増えてきた空への散骨方法を紹介します。

海洋散骨

海に遺骨を撒く海洋散骨では、トラブル防止や環境保全の観点から、沖合から数キロ離れた海洋でおこないます。自然に還らない副葬品などは撒かないのがマナーです。
海洋散骨には、主に3つの方法があります。
特徴 費用相場
個別散骨 1家族のみでおこなう。落ち着いてお見送りできるが、船を貸し切るため1番費用がかかる。 15〜30万円ほど
合同散骨 複数の遺族が船に乗り合わせておこなう。船代が分担できるので費用は抑えられるが、乗船できる人数や日程に制限がある。 10万円前後
委託散骨 遺族は乗船せず、業者が代理で散骨する。散骨実施証明書の発行や散骨時の証明写真を送付するサービスが付いている場合が多い。 5万円前後

山岳散骨

陸地の中でも特に山の中に遺骨を撒く方法を、山岳散骨と呼びます。山岳散骨では、土地所有者の許可が必要なため条件が厳しく、海洋散骨と比べ取り扱っている業者は少ないです。さらに自治体によっては条例で禁止している場合もあるので、希望通りには実現しにくいのが現状です。
業者に委託する場合の費用は、撒く場所の距離や山道の険しさなどを含めた散骨の難易度によって幅があります。大体15〜25万円ほどかかる場合が多いです。

自宅の庭への散骨

散骨そのものは法律で禁止されていませんが、少子化で無縁墓が生じるなど、お骨のゆくえは社会問題化しています。このご時世に自宅の庭へ散骨することは、後のトラブルも含めて大変危険です。例えば、自宅を更地にした際にパウダー化されていない人骨が出てきた、となってはその土地の資産価値を下げる可能性もあります。

空への散骨

上記2つ以外にも、近年、さまざまな散骨をおこなう業者が現れています。主な例が以下です。
宇宙葬 ロケットや人工衛星などに遺骨を乗せて宇宙空間に打ち上げる。
空中葬 小型飛行機やヘリコプターから遺骨を撒く。
バルーン葬 バルーンに遺骨を乗せて空に飛ばす。

申し込みから散骨当日までの流れ

業者に依頼する場合の申し込みから当日の流れを、順を追って説明します。事前に用意が必要な書類の提出を求められることがありますので、早めの確認がおすすめです。

申し込みの前に

申し込みの前に家族・親族に意思を伝え、事前に十分な理解を得ておくことが大切です。その際に散骨場所の希望があれば、一緒に話し合っておくと良いでしょう。
理解を得られたら、散骨を依頼する業者と事前相談しておくとスムーズに準備が始められます。なかには生前申し込みができる業者もあります。

業者への申し込み

散骨場所や料金プラン・日時などの確認をした上で、業者に依頼します。申し込みの際には、同意書や依頼者の身分証明書の提出を求める業者が多いです。他にも法律で定められた書類が必要となるので、事前相談の際に確認しておいてください。
主に必要となる書類は、火葬済みであることを証明する「埋葬許可証」、既にお墓に埋葬している遺骨を散骨する場合には「改葬許可証」です。地域によっては「改葬許可証」を発行していないので、代わりに墓地管理者が発行する「納骨証明書」や「遺骨引渡証」などの提出を求められることもあります。

遺骨の受け渡しと粉末化

遺骨は粉末化するために、いったん骨壺ごと業者に引き渡します。受け渡し方法は業者が直接引き取りに来る場合と、遠方の場合には郵送する場合があります。引き渡した骨壷は、そのまま業者が引き取り、適切に処理されることが多いです。

散骨当日

散骨当日の流れとして、海洋散骨に参加する場合を説明します。
当日指定の集合場所に集まり、チャーター船などに乗って散骨ポイントまで移動します。散骨ポイントに着いたら、献花・黙祷そして散骨をおこなう「散骨式」をして、故人の冥福を祈ります。終了後、指定場所に戻り、散骨証明書などを受け取って解散となります。
散骨式に参加しない「委託散骨」の場合は、粉末化後の遺骨をそのまま業者が保管し、指定の日時が来たら代理で散骨をおこないます。後日、業者から散骨証明書や散骨の様子を写した写真などが送られてきます。

散骨をおこなう際の注意点

最後に、散骨をする場合に気を付けるべきポイントをまとめます。条例違反や思わぬトラブルに発展しないよう、確認しておいてください

業者に依頼するのが無難

散骨は業者を通さず、個人でおこなうことも不可能ではありません。しかし遺骨の粉末化を個人でするのは難しく、あまり現実的とは言えないでしょう。また粉末化までを業者に頼み個人で撒くといった方法もありますが、周囲の人に迷惑をかけてしまう可能性や、間違った方法で条例や法律に違反する危険性も高いです。そのため安易に個人でおこなわず、業者に依頼することをおすすめします。

法令を遵守する

散骨する際は、法律に従い、自治体の条例を順守することが第一です。多くの自治体で、遺骨は必ず2ミリ以下のパウダー状にする、散骨禁止エリアは避けるなどの基準が設けられています。他にも、独自のルールが定められていることもあります。個人で実施する場合は言うまでもありませんが、業者に依頼する際も実績と法令順守について事前確認をしておきましょう。

周囲の人に気を配る

散骨は公共の桟橋を利用する場合などもあり、周囲の人の目をひく場面が多々あります。散骨当日は周囲の人に配慮して、喪服は着ないのがマナーとなっています。

環境への配慮を忘れない

献花や副葬品を遺骨と一緒に撒きたい場合、基本的に撒けるのは、お花や少量のお酒のみです。自然に還らない包装紙などは外して、必ず持ち帰るようにしてください。

【悪天候】について

散骨は海洋散骨なども含めてあくまで『自然への埋葬』方法のひとつです。悪天候も想定されます。例えば散骨の当日、悪天候で決行できない場合、順延なのか?中止なのか?、次回はいつなのか?などを事前に確認しておく事をお勧めいたします。

自然に還る散骨という選択肢

遺骨の納め先はお墓が一般的ですが、広々とした自然に還りたいと願う人に散骨は選ばれています。散骨にして欲しいと思ったら、具体的に計画を固めて、家族との話し合いの場を設けることをおすすめします。

この記事の監修者

瀬戸隆史 1級葬祭ディレクター(厚生労働省認定・葬祭ディレクター技能審査制度)
家族葬のファミーユをはじめとするきずなホールディングスグループで、新入社員にお葬式のマナー、業界知識などをレクチャーする葬祭基礎研修などを担当。