「衷心より」の「衷心」とは?正しい使い方や例文を紹介

お葬式のマナー・基礎知識
「衷心より」の「衷心」とは?正しい使い方や例文を紹介

この記事はこんな方におすすめです

訃報を受けた
弔電などを送る際に「衷心」を正しく使いたい
衷心とは「まごころ」など、真実の心を意味する言葉です。葬儀だけでなく、結婚のお祝いや何かのおわびなど、複数の場面で使われるため、意味や使い方を知っておくと役に立ちます。今回は衷心の読み方や意味をはじめ、正しい使い方とシーン別の例文、衷心の類語や言い換え表現などを紹介します。

「衷心」の読み方と意味、語源

日常生活ではあまり見かけない、衷心という言葉。しかし、お礼状など特別な場面で見かけることがあるので、知っておくといざというときに役に立つはずです。まずは衷心の読み方と意味、語源から紹介していきます。

「衷心」は真実の心を表す重みのある言葉

漢字を見たときに「衷」が「哀」と似ているため、衷心は一見すると「あいしん」などと読めるかもしれません。しかし、正しい読み方は「ちゅうしん」です。
衷心は「心の底」「心の中」「本心」のほかに、「まごころ」という意味を持ちます。つまり、衷心は真実の心を意味する、重みのある言葉と言えます。

語源は「衷」の成り立ちにある

衷心の語源には、「衷」という漢字の成り立ちが深く関係しています。「衷」は分解してみると分かるように、「衣」と「中」の組み合わせによって成り立っている漢字です。元より、衣の中に着るもの、つまり肌着を意味します。
心臓にも密着する肌着から一転して、「衷」は「まこと」「まごころ」という意味も表すようになったとされます。そんな意味を持つ「衷」に「心」という漢字を重ねることで、心の中の心、「心の奥底」という意味に強められているのです。

知っておきたい「衷心」の正しい使い方と、使用する場面

言葉を正しく使うには、意味だけでなく使い方や使用する場面もしっかり把握しておくことが大切です。そこでここでは、使用前に知っておきたい衷心の正しい使い方と、使用する主な場面を紹介します。

基本は書き言葉として使われる

基本的に、衷心は話し言葉では使われません。主に「衷心より」という言い回しで、書き言葉で使用されることがほとんどです。文書などで読む以外に、口頭で「衷心より」と言う機会はほぼないと言えます。

特別な場面で使われることが多い

冠婚葬祭やお祝い事など、衷心は特別な場面で使われます。使用される主な場面は次の通りです。
<衷心が使用される主な場面>
  • 訃報
  • 弔電
  • お祝い
  • お礼状
  • 特別なことがあった相手に送るメール
衷心は悲しみの場面で使うもの、というイメージを抱く人が多いかもしれませんが、例えば新規開店を祝うために送るお祝い状など、おめでたい場面でも使える言葉です。“衷心”という、かしこまった言葉を使うことで、お祝いやおわびの気持ちを強められます。

【シーン別】「衷心」を使った例文

衷心にはシーン別で基本的な言い回しが存在します。それを把握しておけば、状況に応じて正しく使うことができるはず。ここでは衷心の基本の言い回しと、シーン別の例文を紹介していきます。

例文①お悔やみを伝える

衷心をお悔やみの言葉として使う主な場面は、葬儀での挨拶や弔電、訃報の知らせを聞いたときなどです。
<基本の使い方>
  • 衷心よりお悔やみ申し上げます。
  • 衷心よりご冥福をお祈り申し上げます。
  • 衷心より哀悼の意を表します。
<例文>
  • ご尊父様のご逝去の報に接し、衷心よりお悔やみ申し上げます。
  • 故人を偲び、衷心よりご冥福をお祈り申し上げます。
  • ご母堂様のご逝去に際し、衷心より哀悼の意を表します。

例文②おわびを伝える

衷心をおわびの言葉として使う主な場面は、取引先や第三者に迷惑をかけたときなどです。
<基本の使い方>
  • 衷心よりおわび申し上げます。
<例文>
  • この度の不始末に際して、衷心よりおわび申し上げます。
  • 多大なるご迷惑をおかけしましたこと、衷心よりおわび申し上げます。

例文③祝福や喜びを伝える

衷心を祝福や喜びの言葉として使うのは、新規開店や結婚を祝福するときなどです。
<基本の使い方>
  • 衷心よりお祝い申し上げます。
  • 衷心よりお慶び申し上げます。
<例文>
  • おふたりの輝かしい門出に際し、衷心よりお祝い申し上げます。
  • この度貴社が47都道府県への出店を果たされたこと、衷心よりお慶び申し上げます。

例文④感謝を伝える

衷心を使って感謝の気持ちを伝えるのは、取引先の常日頃からの支援、恩師や上司へお礼の気持ちを表すときなどです。
<基本の使い方>
  • 衷心より感謝申し上げます。
  • 衷心よりお礼申し上げます。
<例文>
  • 長年にわたり弊社をご愛願いただき、衷心より感謝申し上げます。
  • 在学中はご恩情を頂戴し、衷心よりお礼申し上げます。

知って役立つ「衷心」の類語と言い換え表現

日常生活やビジネスシーンでは、“衷心”や“衷心より”を別の言葉や表現に置き換えた方が良い場合もあります。ここでは、語彙力を高めることにもつながるであろう“衷心”と“衷心より”の類語・言い換え表現を紹介します。

「衷心」の類語

意味から連想できるように、衷心の類語は数多く存在します。類語の一例は次の通りです。
<衷心の類語>
  • 本心
  • まごころ
  • 心の底
  • 腹の底
  • 誠に
  • 切実に
上記の類語は、どれも日常生活やビジネスシーンで使われる言葉ばかりです。衷心の類語を知って語彙力を高めると、ふとした瞬間に大人の対応をできるのではないでしょうか。

「衷心より」の類語・言い換え表現

「衷心より」の一般的な類語は「心より」や「心から」です。普段はあまり目にしない「衷」の漢字を取った方が、世間一般的になじみのある言葉になります。
例を挙げると、おわび状やお祝い状、弔電などを親しい人に送るとき、“衷心”だと文面が堅苦しい雰囲気になるかもしれません。そのような場合は、衷心の類語である「心より」や「心から」を使うと、口語的でやわらかい表現になります。
なお、「心より」や「心から」は話し言葉としても使えます。これらは親しみのある表現のため、相手に意味も伝わりやすいですが、「衷心より」と比べるとやや重みに欠ける印象です。おわび状やお祝い状、弔電などで「衷心より」の言い換え表現を使用するか否かは、状況に応じて判断することをおすすめします。

【Q&A】葬儀と「衷心」に関する疑問を解決

葬儀へ参列する際に迷いやすいのが、遺族に対して使用する言葉です。重ね言葉や不吉な言葉が適さないことは知っている人でも、お悔やみの言葉で“衷心”を使って良いのか迷うこともあるでしょう。ここでは、そんな疑問の答えを紹介します。

お悔やみの言葉を伝えるときに「衷心」を使っても良い?

衷心は「まごころ」など、相手の心に寄り添う意味を持つ言葉のため、葬儀の場で使うこと自体はマナー違反にあたりません。しかし、先述したように「衷心より」は書き言葉であり、口頭で使われる機会が少ない言葉です。
そのため、葬儀の場で遺族に対して「衷心より…」とお悔やみの言葉を伝えても、耳に入る“ちゅうしん”が“衷心”だと伝わらないかもしれません。大切な人を亡くし、深い悲しみの中にいる遺族の気持ちに寄り添うため、そしてお悔やみの気持ちを正確に伝えるためにも、聞き慣れている「心より」や「心から」に言い換えた方が無難と言えます。

葬儀マナーや語彙力をつけて「衷心」を正しく使おう

あまりなじみのない言葉かもしれませんが、衷心は冠婚葬祭など大切な場面で使用するので、しっかり理解しておきたいところです。使うシーン別の基本の言い回しを把握しておくだけでも、いざというときに正しく使えるはず。衷心を正しく使えるようになれば、葬儀マナーが身につくだけでなく、語彙力も高まることでしょう。