葬儀でご尊顔を拝見する流れは?故人と対面する際のマナー

お葬式のマナー・基礎知識
葬儀でご尊顔を拝見する流れは?故人と対面する際のマナー
"ご尊顔"とは相手を敬って顔を表現する言葉で、故人に対して使われることもあります。日常生活で頻繁に見聞きする言葉ではありませんが、意味を知っておくと役に立つかもしれません。本記事では"ご尊顔"の意味や使い方を始め、お通夜や弔問で故人と対面する際の流れとマナーを紹介します。

知っておきたい「ご尊顔」の意味と使い方

普段の生活の中では見聞きする機会が少ない、“ご尊顔”という言葉。まずは“ご尊顔”の意味や使い方、使う際の注意点から紹介していきます。

意味

“ご尊顔”とは、相手を敬って顔を表現する言葉です。敬意を表す接頭語である「ご(御)」を付けることで、「尊顔」を丁寧に修飾しています。日常生活で使う“ご尊顔”は、天皇などの身分が高い人、滅多にお目にかかれない人物が対象となるのが基本です。
その他、“ご尊顔”は人間だけでなく神様や仏様、仏像のお顔に対しても使われます。

使い方・注意点

“ご尊顔”は「見る」の謙譲語を用いて「ご尊顔を拝する」などと使います。なお、会社の上司や社長など、自分より上の立場の人間であっても、一般人に対して“ご尊顔”は使いません。例えば、以下のような使い方は決して間違いではありませんが、やや過剰であると感じる人もいるので注意が必要です。
<例文>
  • 1年ぶりに会長のご尊顔を拝した
  • 恩師のご尊顔を拝見し、嬉しかった

故人への使い方

基本的に、“ご尊顔”は一般人に対して使わないものの、故人に対して使う分には問題ないと考えられます。その理由は「人は亡くなると仏様の弟子になる」、「神様の元に行く」と考えられているからです。故人も神仏のように尊いと考えられるため、“ご尊顔”を使う条件を十分に満たしていると言えます。
状況にはよりますが、お葬式の際に司会者などが故人に対して“ご尊顔”という言葉を使用する場合もあります。
家族葬のファミーユでは、亡くなった方の尊厳を守るのはもちろんのこと、ご先祖様を敬う気持ちも大切にしています。いずれも『崇高な場所へ向かわれる(た)方』のため、このようなご尊顔の使い方も間違いではないと考えています。

【状況別】お通夜や弔問で「ご尊顔」を拝見する流れ

ご尊顔を耳にするかもしれないのは、故人と対面する時です。お通夜や弔問時が多いことでしょう。遺族に余計な気を使わせないように、対面する時の流れを2つの状況別で紹介します。

布団に安置されている場合

<対面の流れ>
  1. 故人の枕元より少し下がった位置で正座をする
  2. 両手をついて深々と一礼する
  3. 故人の顔にかかっている白布を遺族が外したら、両手を膝の上において対面する
  4. 故人へ向かって一礼をし、合掌する
  5. 枕元から少し下がり、遺族へ向かって一礼する
病院などでベッドの故人と対面する場合は立ったままおこないますので、丁重な立礼を意識します。なお、故人の顔にかかっている白布は遺族が外すのを待ちます。弔問客が外すのはマナー違反です。

棺に納められている場合

<対面の流れ>
  1. 故人の枕元の、少し下のあたりで一礼する
  2. 遺族が棺の扉を開けたら静かに近づき、故人と対面する
  3. 故人へ向かって一礼をし、合掌する
  4. 棺から少し下がり、遺族へ向かって一礼してからその場を離れる
故人と対面する際は、棺に触れないよう注意してください。

故人と対面する際のマナー

お通夜や通夜前の弔問時に故人と対面する際は、いくつかのマナーを意識することが大切です。どれも遺族の気持ちに寄り添って行動すれば自然と守れるものばかりで、難しいことはありません。ここでは、故人と対面する際に意識したいマナーを紹介します。

遺族から声をかけられたら対面する

故人との対面は、誰でもできるわけではありません。基本的には、遺族から「顔を見てやってください」と声をかけられた人のみが対面します。自分から申し出るのは基本的にはマナー違反ですが、関係性や状況によります。

遺族から対面をすすめられ、受ける際は「失礼します」「では、お別れさせていただきます」などと伝えてから行動に移します。

参列者からの申し出は控えるのが理想

遺族から声をかけられていないけれど、最後にどうしても“ご尊顔”を拝したいと思うかもしれません。そのような場合は「お顔を拝見してもよろしいですか」と遺族に一声かけ、了承を得てから対面します。
ただし、故人との対面を弔問客から申し出ない方が良い場合もあります。例えば、急死や事故などで遺族が非常に動揺している、ご遺体の状態があまり良くないなど。このような場合は遺族の気持ちを考えて、自分から申し出るのは控えた方が無難と言えます。

遺族の気持ちに寄り添う

故人と対面する際は、ご遺体や棺に触れないのはもちろん、遺族の気持ちに寄り添うことが重要です。以下のような言動は遺族の心を傷付ける恐れがあるので控えてください。
<故人の死因や病名などを質問する>
遺族は大切な人が亡くなって、ただでさえ気持ちが落ち込んでいる状態です。また、死因や病名を人に明かしたくないこともあるため、気になったとしても遺族に質問をしてはいけません。
<対面の時間を長くとる、長居をする>
お通夜や弔問時、遺族はやることに追われ忙しく過ごしています。また、他の弔問客や参列者が故人との対面を待っている可能性もあります。そのため対面の時間は短く切り上げることを意識してください。
<不謹慎な冗談を言う>
仮に遺族を励ますつもりであっても、その場にそぐわない発言や冗談は慎みます。相手の立場になって考えることが大切です。

「ご尊顔」を拝する前に知っておきたいこと

「故人と対面するのが辛い」「遺族になんて声をかければ良いのか」など、対面前から心配になってしまう人もいるのではないでしょうか。そのような疑問や心配事は、事前に解消しておく方が安心です。そんな人のために、ここでは対面の辞退やお悔やみの言葉、弔問時の服装などを紹介します。

対面がどうしても辛いときは丁寧に辞退する

遺族から「顔を見てやってください」と声をかけられたとしても、対面が辛いこともあります。遺族からの声かけを断るのはマナー違反とされますが、対面によって精神的にダメージを負いそうなとき、取り乱してしまいそうなときは辞退を申し出ることは可能です。
その際は「お会いするのが辛すぎますので」「まだ悲しみに耐えません」「取り乱すと申しわけないので」「生前の元気な姿を思い出として大切にしたいので」などと、理由を伝えた上で遺族を傷付けないよう丁寧にお断りをしてください。

対面を終えたら遺族へお悔やみの言葉をかける

故人との対面を終えたら、遺族へお悔やみの気持ちを伝えます。基本とされる「この度は、誠にご愁傷様です」の他に「きれいなお顔ですね」や「穏やかなお顔で眠られていますね」など、遺族をいたわるような良いイメージの言葉を選びます。
このときも長々と話すのではなく、短い言葉で切り上げるのがマナーです。最後は「ありがとうございました」と、遺族へお礼の言葉を伝えます。

通夜前に弔問する場合は平服を着用する

通夜前の弔問では、喪服ではなく暗いトーンの平服が一般的です。弔事の場における平服とは「略喪服」のことで、普段着ではありません。平服は以下のようなものが基本です。
<平服の例>
  • 女性:ワンピースやセットアップスーツなど
  • 男性:ダークスーツなど
弔問や平服について、詳しくは以下の記事で紹介しています。

対面時はお線香も意識する

通夜前に弔問、そして故人と対面する場合は、枕飾りが整えられていることがあります。枕飾りとは、ご遺体の枕元に置く祭壇のこと。その中の香炉には、火がついたお線香が1本立てられています。
弔問時は、香炉にあるお線香を確認するのが理想です。火がついたお線香が立っている場合は、何もせずそのままにしておいて構いません。お線香が小さくなっている、もしくは火が消えている場合は、新しいお線香に火をつけます。なお、宗派によってはお線香を寝かせる場合があるので、交換する際は先に入れられているお線香を確認しておくと確実です。
お線香に込められた意味など、詳しくは以下の記事で紹介しています。

故人と対面するときは、遺族の気持ちに寄り添うことが大切

お通夜や弔問時に故人と対面する際のマナーはいくつかありますが、何よりも大切なのは故人を敬う気持ちと、遺族の気持ちに寄り添うことです。最後にお顔が見られる機会と思うと名残惜しい気持ちも湧きますが、悲しみに包まれている遺族に負担をかけないよう配慮してください。

この記事の監修者

瀬戸隆史 1級葬祭ディレクター(厚生労働省認定・葬祭ディレクター技能審査制度)
家族葬のファミーユをはじめとするきずなホールディングスグループで、新入社員にお葬式のマナー、業界知識などをレクチャーする葬祭基礎研修などを担当。