焼香をあげる意味とは。額に近付ける動作、回数ごとに込められた想いがあった

お葬式のマナー・基礎知識
焼香をあげる意味とは。額に近付ける動作、回数ごとに込められた想いがあった
焼香は、葬式や法事の際に香を焚いて故人や仏に対して拝む行為です。焼香する人の心と体を清める意味もあります。焼香の回数やささげ方は宗派によって変わりますが、基本の作法は共通します。この記事では、焼香の意味や由来、基本の作法を紹介します。

焼香の意味と由来

焼香という言葉は聞いたことがあっても、どのような意味があるのかは知らない人も多いのではないでしょうか。ここでは、焼香の意味や由来を紹介します。

焼香とは

焼香とは、葬式や法要で香を焚き、故人や仏を拝む行為です。仏教には、焼香の香りは仏の食物であるという考えがあります。故人や仏にお食事を楽しんでもらい、また、あの世での幸せを祈るために焼香します。

焼香はする側の邪気を祓って精神と肉体の穢れを取り除くともいわれます。心と体を清めて、お参りをするための作法とも考えられています。

香には、香木を刻み混ぜ合わせて粉末にした抹香や香料を棒状にした線香があります。葬式では抹香を使って焼香をします。

焼香の作法は宗派によって変わりますが、どの宗派でも回数は1〜3回です。1回の宗派は、死を「一に帰る」と捉えた仏教の教えから。2回は、主香(しゅこう)と従香(じゅうこう)という考えによります。主香では仏様や故人の冥福を祈りながら香をたき、従香はその火が消えないように続けます。3回は、仏教で数字の「3」を重視することに由来します。

抹香をつまみ額に近づけて目の位置より高くかかげる行為を「押しいただく」といいます。押しいただかない宗派は、香そのものが有難いものではなく、香の煙と香りが仏を招来するという思想です。

葬式のときだけでなく、仏壇に線香をあげることも焼香です。

焼香の意味

日本には、6世紀半ば仏教伝来と同じ頃に香も伝わったといわれています。焼香は、仏や故人のためにおこないますが、参列する人の精神や肉体の不浄を祓う意味もあります。

焼香により参列者の心を清め、弔いに専念できます。焼香は、通夜や葬式に臨む準備においても、心を整える大切な儀式です。

仏教では、極楽浄土は良い香りに満ちているとされています。仏は極楽浄土から、よい香りを運びつつ故人を迎えに来ます。つまり香りや煙により故人が迷わず極楽へ旅立てるように、葬式で焼香をあげるのです。

香りは隅々まで広がり、すべての人に平等に行き渡ることから、焼香は仏の慈悲が隅々まで広がることを表します。時間が経過すると香りは消え、灰になっていきます。これは、人は誰でも皆、命を終えて消えゆく存在であることを表します。万物はうつりかわっていくという無常観、仏の悟りを教えているとも言われています。

焼香の由来

焼香はインドに由来します。インドでは、仏教が始まる以前から部屋の匂い消しとして香が用いられてきました。

インドは、白檀(びゃくだん)などの香木の産地です。日本でも強い香りを放つ香木として様々な製品に利用されてきました。特に古くから香を焚く際に使用され、お線香などで広く普及しています。

また、インドでは酷暑のため、遺体の腐敗臭が生じやすく、腐敗臭を抑える臭い消しとしても香が焚かれるようになりました。

一説には、お釈迦様が仏教を普及し始めた頃に、説法に集中するために香を焚き始めたと言われています。当時、多くの労働者が説法を聞きに集まりましたが、日中の仕事でたくさん汗をかいている人が多く、その体臭が気になったそうです。本当だとしたら、なかなかユーモラスで人間らしい逸話ですね。

焼香の一般的な作法と回数について

焼香の回数や、ささげ方は宗派によってさまざまですが、基本的な作法は同じです。ここでは、一般的な焼香の作法と回数を解説します。

一般的な焼香の作法

焼香は、3種類の方法があります。立って焼香をおこなう「立礼焼香」、座ったままでおこなう「座礼焼香」、お盆にのせた焼香台を参列者に順番に回していく「回し焼香」の3種類です。

斎場でおこなう通夜や告別式の場合、立礼焼香が一般的。参列者は順番に焼香台と香炉の前まで行き、立ったままで焼香をおこないます。一般的な作法は、次の通りです。

1.順番が来たら祭壇の前まで移動する
2.祭壇の手前で遺族と僧侶に一礼
3.焼香台の前で遺影に一礼
4.左手に数珠を掛ける
5.右手の親指・人差し指・中指の3本で軽く抹香を摘まむ
6.香炉の上に落とす
7.遺影に合掌をして一礼

焼香は故人と関係が深い人から、順におこないます。最初に喪主、次いで座席順に親族、その後に葬式参列者が座っている順番におこないます。葬儀スタッフから指示がある場合はそちらに従います。座席順は配偶者や親子など、故人との関係が深い人から順番に決められますが、参列者には決まりはありません。

焼香の手順や種類・宗派による違いなどの焼香についての詳細は、以下の記事で解説しています。自身の宗派の作法を確認したい人は、ぜひご覧ください。

参列者が多い場合は1回だけのことも

通常の焼香の回数は宗派の作法に合わせますが、参列者の数が多い場合は、時間調節のために1回だけにすることも。事前にアナウンスがある場合もありますが、アナウンスがないこともあるので周りの状況を見て判断し、おこなってください。

宗派を問わず、焼香を1回にしてもマナー違反にはなりません。回数ではなく、故人を想い弔う気持ちが大切です。

お焼香で気になる疑問

ここまでは焼香の意味や作法について紹介しました。ここでは、焼香に関する疑問をあげて解説します。

焼香は自分の宗派の作法に従ってもいい?

焼香の作法は、故人の宗派に合わせるか、自分の宗派に合わせてください。
相手の宗派に合わせることは、敬意を表すことになります。故人の宗派がわからない場合は、僧侶や喪主のまねをしてください。自分の宗教への信仰心が厚い人は、自分の宗派の作法で焼香をあげても大丈夫です。

忙しい場合は焼香のみ済ませて帰ってもいい?

通夜は急におこなわれることが多いので、焼香のみで帰っても失礼にあたりませんが、告別式ではできる限り途中退席を避けるようにしてください。
急用が入るなど、どうしても式の最後まで参列することが難しくなった場合は、必ず事前に遺族に告げましょう。退席するときに目立たずに抜け出せるように、座る席は立ち上がっても目立ちにくい末席の角など、スムーズに立てる席を選びましょう。

参列の時間があまり取れないときは、欠席も手段のひとつです。故人に別れを告げたいという思いは尊重されるものですが、無理は禁物です。遺族に断りを入れた上で、後日弔問することも検討しましょう。

焼香の意味を理解して、故人を送り出そう

焼香は仏や故人のためのものですが、おこなう人自身の心と体を落ち着かせる意味もあります。焼香の意味や作法を理解することは、故人の冥福を祈り、遺族への哀悼の意を強く表すことにつながるかもしれません。最後まで心を込めて焼香し、故人への感謝とお別れの気持ちを伝えてください。