「除籍謄本」とは?誰もいない戸籍だけど相続には必要

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「除籍謄本」とは?誰もいない戸籍だけど相続には必要
「除籍」とは、戸籍に名前のあった人が死去や結婚などで抜けていき、在籍する人が誰もいなくなった状態のことです。「除籍謄本」とはその写しのことを言います。今は誰も所属していない戸籍ですが、遺産相続などの手続きには必要です。除籍謄本の概要、取得方法などについてお伝えします。

除籍謄本とはどんなもの?

親族が亡くなって相続の手続きを進めていくと、さまざまな書類が必要になってきます。こちらの記事では、除籍謄本とはどのようなものかを解説します。

除籍謄本とは

除籍謄本とは「その戸籍に誰もいない」ことを証明する書類です。除籍全部事項証明書とも言います。戸籍は、在籍者が死去や結婚、離婚などで抜けていったり、本籍を移したりして、所属者がゼロになることがあります。これを除籍といいます。

役所の戸籍窓口で発行され、書かれている内容は戸籍と同じく「出生」「養子縁組」「婚姻」「離婚」「分籍」などの事実についてです。故人の家族が相続の手続きをおこなう際に使用することが多い書類です。

除籍謄本が必要とされるとき

除籍謄本は「故人の遺産を相続」または「相続放棄」などをする際に必要です。ただし相続の手続きをする際に、戸籍の在籍者がゼロとは限らないため、実際には「故人が抜けた戸籍謄本または除籍謄本」を用意することになります。

もしも遺産の相続を放棄するときは、放棄の申請ができる熟慮期間(相続の開始があったことを知ったときから3か月以内)を過ぎないように注意が必要です。

除籍謄本の保管期間

除籍の記録は「除籍の日から150年」もの間、保管されます。ただし平成22年8月1日より前の保管期間は80年と短くなっています。

また、火災や戦争、津波や地震などで戸籍、除籍ともに消失してしまっていることもあります。その場合には消失証明書を発行してもらって代用します。

除籍謄本と他の戸籍書類との違いについて

相続の手続きをする際は、他の戸籍に関する書類が必要になることも。ここでは、除籍謄本と戸籍に関する他の書類との違いを解説していきます。

戸籍謄本との違い

「在籍している人が一人も存在しないことを証明する書類」である除籍謄本と違い、戸籍謄本は「在籍している全員についての事柄が書かれているもの」です。全部事項証明書とも言います。

戸籍に関する書類の中で、最も耳にすることが多いです。書かれている内容は、出生や離婚歴などといった親族関係について。また戸籍には「抄本」もあり、これには一人の事柄のみが書かれています。

改製原戸籍との違い

改製原戸籍は「改正される前の戸籍」です。戸籍は法改正で何度か文書の形式が変わっています。例えば、昭和23年の戸籍法改正では、親子、孫、兄弟の書かれた3親等表記から、親子のみの2親等表記になりました。このように、改正前の戸籍と改正後の戸籍では内容が違っている可能性があります。

相続の手続きでは、故人(被相続人)の「出生から亡くなるまで」すべての戸籍類が必要になることがあります。特に改製原戸籍は、故人に離婚歴がある場合などに必要とされます。子どもが財産を相続するときに、現在の戸籍や除籍謄本だけでは相続人である事実が証明できない場合があるからです。

除籍謄本を取得する際のポイント

除籍謄本は戸籍同様、誰でも取得できるわけではありません。続いては取得できる場所や人物など、取得するときのポイントについて解説します。

除籍謄本を取得できる場所

除籍謄本は「本籍地の役所」で取得することができます。引っ越しなどで本籍地を移して生じた除籍謄本(前の戸籍)は、かつての本籍地で取得申請します。申請先にはご注意ください。

発行窓口は、役所の戸籍係(市民課など)です。自治体によって手続き方法が少し違うこともありますので、事前に必要事項などを確認しておきましょう。

除籍謄本を取得できる人物

除籍謄本を取得できる人物は、戸籍に名前のある人です。もしも夫婦のうちの夫が亡くなった場合は、妻が本人として請求できます。

また亡くなった人より上の世代である父母などの「直系尊属」、下の世代である子どもや孫などの「直系卑属」は、親族であると確認できる証明書を提出すると受け取ることが可能です。ただしこれには、兄弟、姉妹、叔父、叔母など直系以外の親族は該当しません。

また第三者が取得することも可能です。その場合は、委任状と正当な請求の理由が必要です。請求する理由は「不動産の相続を手続きするときに除籍謄本が必要であるため」などです。

除籍謄本の請求手続きと必要なもの

除籍謄本の取得にはどのような手続きが必要なのでしょうか? 具体的な方法や必要なものについてお伝えします。

窓口で取得する

直接窓口で取得する場合は「除籍謄本の請求書」「本人確認書類」「手数料の750円」が必要です。もし戸籍に在籍している人の妻または夫、父母、子や孫が受け取るのであれば「親族関係が証明できる書類」を持って行く必要があります。

それ以外の第三者が受け取る際は、委任状を持参して請求する理由を詳しく記載してください。請求する理由がハッキリしないときには、資料の提出を求められることもあります。

郵送で受け取る

除籍謄本は、郵送でも受け取ることができます。郵送の場合は「除籍謄本の請求書」「現在の住所が書かれている本人確認書類の写し」「返信用封筒(切手と住所氏名を記入してあるもの)」「手数料の750円」を現金書留で担当する役所に送付します。

定額小為替を利用して手数料を支払うこともできますが、お釣りが出ないようにすることと「発行日から6か月以上たっていないもの」を使用してください。定額小為替であれば、普通の郵便で送付することが可能です。

戸籍に在籍している人の配偶者が取得するときは「親族関係が証明できる書類」が要ります。代理人の場合は委任状が必要です。

専門家に依頼する

除籍となった本籍地が遠方であるときなど、手続きに手間取ることも十分あり得ます。そのときは弁護士や司法書士などの専門家に依頼するのがおすすめです。

相続の手続きには、故人の「出生から亡くなるまで」の戸籍をすべて集めることになります。前述の通り、改正原戸籍も必要なケースもあり、煩雑です。費用はかかりますが、専門家に頼めば、適切な書類の取得をすべて任せられます。

弁護士や司法書士などの第三者にお願いする場合には、委任状を用意します。委任状に記載する主な項目は、一番上に「委任状」のタイトル、委任者の氏名・認印・生年月日・住所、代理人の氏名・生年月日・住所、除籍謄本を請求・取得・受領する権限を代理人に委任する旨です。委任状は本人が消えないように油性ペンで書く必要があります。

除籍謄本を取得するときは早めの対応が必要なことも

相続の手続きには、さまざまな書類が必要ですが、除籍謄本もそのひとつです。相続をするにしても放棄するにしても、手続きや納税にはタイムリミットがあります。戸籍や除籍謄本の取得は、できるだけ早めにするのが大切です。