仏壇へのお供え物は何が良い?基本の「五供(ごくう)」とマナー
法事・お墓
この記事はこんな方にオススメです
仏壇へのお供え物に関するマナーを知りたい
毎日のお供え物や、適さないものが知りたい
仏壇へのお供え物は、五供(ごくう)が基本です。五供とは「香」「花」「灯燭(とうしょく)」「浄水」「飲食(おんじき)」の5つ。それぞれに意味が込められていて、選び方や供える手順があります。今回は五供の内容や供える手順をはじめ、お供え物の具体例、注意点、マナーなどを紹介します。
目次
【基本】仏壇にお供えする「五供」について
仏壇には“五供(ごくう)”を毎日供えます。五供とは「香」「花」「灯燭(とうしょく)」「浄水」「飲食(おんじき)」の5つ。それぞれに意味があり、お供えの順番は決まっています。まずは五供とお供えの手順を紹介します。
①香:お線香をあげる
五供の「香」は、お線香やお香のこと。仏様はお線香の香りを食べるため、仏壇に手を合わせる際に焚くと供養になると言われています。
そのほかに、「お線香の香りは手を合わせている人や周囲の人の心を浄化させる」「煙がこの世と極楽浄土をつなぐ」とも考えられています。仏壇にお線香をお供えすると、香りや煙によって心が落ち着くかもしれません。
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②花:水・お花を交換する
「花」は生花や造花のことです。花立(はなたて)を仏壇の両脇に一つずつ置き、お花の香りや彩りを仏様に楽しんでもらいます。お水は毎朝入れ替え、お花は枯れる前に交換します。
<仏壇に供えるお花として適したもの>
- 日持ちのするもの
- 香りが強すぎないもの
- トゲがないもの
- 故人が好きだったもの
仏壇に飾るお花の選び方や切り花を長持ちさせる方法について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
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③灯燭:ロウソクに火を灯し手を合わせる
「灯燭」はロウソクを指します。ロウソクのともしびは、「仏様の心を照らす」「手を合わせる人の心の迷いをなくす」と言われる尊いものです。時間をかけてゆっくりと燃える様子は命に例えられ、人生の儚さを表すこともあります。
なお、お線香をあげるときはロウソクの火を使うため、仏壇にお参りする際は必ず火をつけます。
④浄水:水・お茶を供える
「浄水」は、お水やお茶といった飲み物のこと。仏壇にお供えする飲み物には、「仏様の喉を潤す」「お参りする人の心を洗う」といった意味が込められています。供える際に大切なのは、新鮮な飲み物を茶器に注ぐことです。故人が好きだったコーヒーやお酒を供えても良いですし、用意できない日は水道水でも構わないので、毎朝新しいものと入れ替えてください。
なお、浄土真宗では飲み物を供えません。「浄土では、8種類の功徳を持った八功徳水(はっくどくすい)という水が池に満ちているため、お水を供えなくても仏様は喉が渇かない」と考えられているためです。
⑤飲食:ご飯を供える
「飲食」は炊きたてのご飯(お米)をはじめ、お菓子や果物などが該当します。ご飯は炊きたてのものを用意し、自分たちが食べる前に仏壇へ供えるのが基本的な作法です。ご飯を仏壇に供える行為には、複数の考え方があります。
<ご飯をお供えする理由>
- 私たちの主食であるご飯を供えることで仏様とつながれる
- 仏様がご飯の香りを食べる
- 仏壇の飾りとして供える
仏壇へお供えする際に大切なのは、ご先祖様を想う気持ちです。毎朝、ご飯をお供えしながら「今日も1日見守っていてくださいね」などと心の中で話しかけてみてはいかがでしょうか。
五供を供える順番
五供は供える順番が決まっています。
<お供えの手順>
- 浄水(お水・お茶)、飲食(ご飯)を供える
- お花を供える、または水を交換する
- ロウソクに火を灯す
- お線香をあげ、手を合わせる
- ロウソクの火を消す
ロウソクの火を消す際は、息を吹きかけるのではなく、手で仰いで消すかロウソク消しを使うのがマナーです。お線香は線香立てに立て、燃え尽きるまでそのままにしておいて構いません。
【シチュエーション別】仏壇に置くお供え物の具体例
五供の大切さは分かっても、実際に何をお供えすれば良いのか、いまいちピンとこないかもしれません。そこで続いては、毎日のお供え物と特別な日にぴったりなお供え物の例を紹介します。
毎日のお供え物
「飲食」として、ご飯のほかに故人が好きだったお菓子や果物もお供えします。お供え物は日持ちの良いもの、傷みにくいものを選びます。詳しくは後述しますが、仏壇に供えた「飲食」は下げた後に自分たちで食べるのがマナーです。個包装のお菓子や切り分けやすい果物を選ぶと、みんなで分け合えます。
<お供え物の例>
- 和菓子:どら焼き、最中、落雁(らくがん)
- 水菓子:ゼリー、水ようかん
- 洋菓子:クッキー、ビスケット
- フルーツ:りんご、ぶどう、メロン、スイカ
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特別な日のお供え物
上で紹介したものを基本としつつ、命日や母の日、父の日、誕生日などの特別な日は、いつもとは違うお供え物をしてみてはいかがでしょうか。例えば、命日なら故人が好きだった飲み物や食べ物を供えると、きっと喜んでもらえます。法事や命日では、故人が好きだった色を加えた豪華な花束を供えると、より気持ちが伝わるはず。
また、母の日はカーネーション、父の日はバラを供えるのも良いのではないでしょうか。「日本ファーザーズ・デイ委員会」が黄色をテーマとしていることから、父の日に贈るバラは黄色が多く選ばれています。ただし、バラはトゲがある花なので、供える前にトゲを抜いておくのがマナーです。
そのほか、故人の誕生日に少し豪華なお花や、生前に好んでいた食べ物・飲み物をお供えすると、「ずっと忘れないよ」「今でも大切に想っているよ」という気持ちが伝わるでしょう。お供え物をする際に故人が好きだった曲や映画を流したり、生前の動画を一緒に眺めたりすると、自分自身の心もふっと軽くなるかもしれません。
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【注意】仏壇へのお供えに適さないもの
仏壇へのお供え物は選び方に関するマナーもあります。香りが強いもの、殺生を連想させるものは適さないので注意が必要です。仏壇へのお供え物に適さない食べ物・お花について紹介します。
五辛(ごしん)
仏壇へのお供え物に適さない“五辛(ごしん)”というものがあります。具体的には、次のような辛みのあるもの、ニオイの強いものが該当します。ただ、宗派や寺院などによって若干の違いがあるようです。
<五辛>
- ニラ
- ニンニク
- ネギ
- らっきょう
- はじかみ(ショウガやサンショウの古名)または宗派や寺院によっては玉ねぎなど
これらの五辛は、怒りや性欲を刺激すると言われているため、仏教の修行で避けられてきました。その考え方から、仏壇へのお供え物にも適さないと言われています。
肉・魚
仏教では殺生を禁じているため、肉や魚は仏壇へのお供え物に適さないと言われています。傷みやすい生ものだけではなく、缶詰などの加工品も避けた方が無難です。
とはいえ、「故人が肉や魚が好きで、どうしてもお供えしたい」「土用の丑の日にウナギを食べてほしい」などと考えるときもあるでしょう。そのような場合は、肉や魚をお供えしても構いません。ただし、長時間置きっぱなしにせず、すぐに下げるといった工夫をしてみてください。
香りが強い・トゲのある花
香りが強い、またはトゲがある花も、次のような理由から仏壇へのお供え物としては適しません。
<香りが強い花>
- お線香の香りが消えてしまうため
- 五辛と同じく、怒りや性欲を刺激すると考えられるため
<トゲがある花>
- トゲが殺生を連想させるため
- 刺さってケガをする恐れがあるため
【マナー】仏壇にお供え物を置くときの作法
仏壇へのお供え物は、選び方のほかに置き方や下げた後の対応など、いくつかのマナーがあります。最後に、お供え物に関する3つの作法を紹介します。
置き方:お供え物は仏壇の中段に置く
仏壇は1番上の「上段」、真ん中の「中段」、1番下の「下段」と3つに分かれています。このうち、お供え物は中段に置きます。また、お菓子や果物などのお供え物をお皿に載せる場合は、直接ではなく半紙の上に置くのがマナーです。
下げた後:お供え物は家族で食べる
ご飯(お米)は、湯気が出ている間は仏壇に置いておきます。ただ、置きっぱなしは衛生上良くないので、湯気が出なくなったら下げてください。お菓子や果物もいつまでも置いておくのではなく、賞味期限が来る前、もしくは傷む前に下げます。
また、下げたお供え物は家族で食べるのがマナーです。食べることには「仏様のおさがりをもらう」という意味があります。
お供え物:食品サンプルを使っても良い
五供の「飲食」は炊きたてのご飯が最適とはいえ、お米を毎日炊かない家庭もあるでしょう。そのほか、果物が傷む前に下げるのが難しいことも考えられます。そのような場合は、食品サンプルを供えても問題ありません。ご飯や果物、和菓子、お料理セットなど、仏壇用の食品サンプルは豊富です。上手に活用して、無理のない範囲でお参りしてください。
マナーを守り、心を込めたお供え物を仏壇に
仏壇には五供を毎日供えるのが基本的なマナーとされます。しかし、何よりも大切なのは故人を想う気持ちなので、無理は禁物です。お花や食べ物の交換が難しい場合は、造花や食品サンプルの活用を検討してみてはいかがでしょうか。香りの強いもの、殺生を連想させるものは避けるなど、基本のマナーを押さえつつ、心を込めたお供え物を仏壇に置いて手を合わせてください。
この記事の監修者
政田礼美 1級葬祭ディレクター(厚生労働省認定・葬祭ディレクター技能審査制度)
家族葬のファミーユ初の女性葬祭ディレクター。葬儀スタッフ歴は10年以上。オンライン葬儀相談セミナーの講師も務める。東京・神奈川・埼玉を中心に都市部の葬儀相談をおこなっている。
家族葬のファミーユ初の女性葬祭ディレクター。葬儀スタッフ歴は10年以上。オンライン葬儀相談セミナーの講師も務める。東京・神奈川・埼玉を中心に都市部の葬儀相談をおこなっている。