仏壇に置く「香炉」の種類や選び方とは。宗派による違いも
法事・お墓
この記事はこんな方におすすめです
仏壇の購入を考えている
香炉の種類や選び方を知りたい
香炉はお線香やお香を焚くときに用いる器のことで、ご先祖様の供養に欠かせない三具足(さんぐそく・みつぐそく)の一つでもあります。自宅では主に仏壇に置きますが、配置には決まりがあります。本記事では香炉の必要性や置き方、種類をはじめ、宗派ごとの選び方を紹介。併せて、香炉を使う際に必要な物やお手入れ方法も紹介します。
目次
香炉とは?意味と置き方、焼香専用の特徴
香炉は、仏壇に飾ったり焼香をしたりする三具足(さんぐそく・みつぐそく)の一つです。まずは香炉の意味や置き方、焼香専用香炉の特徴から紹介します。
香炉とは三具足の一つ
お線香やお香を焚く際に使う器を香炉と呼びます。香炉と花立、燭台(しょくだい)の3つの仏具は三具足と呼ばれ、供養には欠かせないアイテムです。それぞれの仏具には次のような意味があります。
<三具足に込められた意味>
- 香炉:礼拝する者の身を清める
- 花立:仏の慈悲
- 燭台:ロウソクの光によって心の闇を払う
香炉は置き方が決まっている
三具足の仏壇への置き方は「本尊に向かって左側に花立を、真ん中に香炉を、右側に燭台を置く」という決まりがあります。なお、三具足のほかに花立と燭台を対にする五具足(ごぐそく)もあります。この場合は左右の外側に花立を2つ、その内側に燭台を2つ置き、中央に香炉を一つ置くのが基本です。
仏壇の飾り方については、以下の記事で詳しく紹介しています。
仏壇の飾り方の基本。宗派による違い、特別な日の装飾も
仏壇の飾り方は宗派によって異なります。まずは、基本の飾り方をおさえていきます。
焼香専用香炉はお香と灰を入れる容器がセットになっている
焼香専用の代表的な香炉は、「焼香用角香炉(しょうこうようかくこうろ)」です。「焼香用角香炉」は長方形の器が内側で2つに分かれており、使用する際は抹香を右に、火種となる香炭(こうたん)を左に入れます。
そのほか、墓地で法要をおこなう場合は、取手付きの「手提げ香炉」や、蓋がついた「携帯用箱型香炉」があると便利です。
なお、浄土真宗の寺院で焼香をする時には真鍮製の「火舎香炉(かしゃこうろ)」や「金香炉(きんこうろ)」を使います。「火舎香炉」は3本脚でずんぐりとした円柱型のものが多く、煙の逃げ道となる穴が蓋にあいているのが特徴です。在家用の火舎香炉もありますが、小さいので実用には適していません。
そのほか、墓地で法要をおこなう場合は、取手付きの「手提げ香炉」や、蓋がついた「携帯用箱型香炉」があると便利です。
なお、浄土真宗の寺院で焼香をする時には真鍮製の「火舎香炉(かしゃこうろ)」や「金香炉(きんこうろ)」を使います。「火舎香炉」は3本脚でずんぐりとした円柱型のものが多く、煙の逃げ道となる穴が蓋にあいているのが特徴です。在家用の火舎香炉もありますが、小さいので実用には適していません。
仏壇に飾る香炉の種類と特徴
インターネット通販や仏具店などを見ても分かるように、仏壇に飾る香炉の種類は豊富です。今回はよく使われる前香炉(まえこうろ)と土香炉(どこうろ)、長香炉(ながこうろ)の特徴を種類別に紹介します。
最もベーシックな「前香炉(まえこうろ)」
最も多く使われるのが、こちらの前香炉です。ほかに「線香炉」や「机用香炉」とも呼ばれます。前香炉は口が広く、丸い形をした金属製のものが一般的です。マッチ消しや線香立て、経本、ロウソク消しとともに経机の上に置きます。
唐草模様が入った「土香炉(どこうろ)」
土香炉は、青磁色の陶器製で蓋のない円柱形の香炉です。透かし模様が施された「透かし香炉」と、丸みを帯びた形の「玉香炉」の2つが代表的なデザインです。
お線香を寝かせて焚く「長香炉(ながこうろ)」
細長い四角形の長香炉は、お線香を寝かせた状態で焚けるのが特徴です。存在感があるので、サイズの大きな仏壇に置くとバランスが取れます。また、黒檀調や紫檀調など高級感のある色味が多く、落ち着いたデザインのため、本格的な仏壇からモダン仏壇までどんなタイプにも合います。
【宗派別】仏壇に置く香炉の選び方と使い方
仏教の宗派によって適する香炉は異なります。こちらでは、浄土真宗とそのほかに分けて、適した香炉の選び方と使い方を紹介します。
浄土真宗は「土香炉」を選ぶ
一般的に、浄土真宗では土香炉を用います。その場合、真宗大谷派は「透かし香炉」を、本願寺派は「玉香炉」を選ぶのが基本です。なお、どちらの宗派であっても、浄土真宗では数本に折ったお線香を寝かせて供えます。真宗大谷派と本願寺派、それぞれの折り方は次の通りです。
<お線香の折り方>
- 真宗大谷派:1~2本のお線香を2つか3つに折る
- 本願寺派:1本のお線香を短く数本に折る
そのほかの宗派は「前香炉」をベースに選ぶ
基本的に、浄土真宗以外の宗派はお線香を立てるため、ベーシックな前香炉を選ぶと良いでしょう。前香炉は中に香炉灰を敷き詰めてから使用します。
そのほか、宗派の考えとは別に「お線香を寝かせたい」と考えたとき、または仏壇に合わせたいときは長香炉を選ぶのも一つの手です。
【豆知識】香炉灰の必要性とお手入れ方法
香炉を使う際は、香炉灰と呼ばれる灰が必要です。使い続けるとお線香などの燃えカスが溜まっていくので、定期的な掃除が欠かせません。ここでは、香炉灰の必要性とお手入れ方法、別の選択肢を紹介します。
香炉を使う際は香炉灰の準備を
中に何も敷いていないと線香が立たないため、香炉を使う際は香炉灰が欠かせません。香炉灰を敷き詰めることでお線香が安定するだけでなく、お線香が倒れたり燃え残りのカスが散ったりするのを防げます。
なお、香炉灰にはいくつかの種類があります。
<主な種類>
- 珪藻土灰:珪藻土を使ったもの
- 藁灰(わらばい):藁を燃やした灰で作ったもの
- 菱灰(ひしばい):菱の実の殻を焼いたもの
上記3種類の価格は、菱灰→藁灰→珪藻土灰の順で高価です。これら天然素材のほかに、鉱物から作られた香炉灰もあります。
香炉は定期的なお手入れが必要
香炉は使用を続けるうちに、香炉灰の中にお線香の燃えカスが溜まっていくので、定期的な掃除が必要です。
<お手入れ方法>
- 箸などを使い、お線香の燃え残りやカスを取り除く
- 灰ふるいなどの網を新聞紙の上で使い、灰をこしてから香炉に戻す
- 灰ならしなどで灰をきれいに整える
なお、燃えカスを減らしたい場合は、お線香が最後まで燃え尽きる藁灰がおすすめです。
香炉灰の代わりになる香炉石
香炉灰の飛び散りが気になる、お手入れが面倒という人は、香炉石を使う方法があります。香炉石は細かく砕かれた天然石のチップです。大粒ビーズくらいのサイズで適度に重さもあり、香炉灰のように飛び散らないため周辺の掃除をする手間が省けます。お線香の燃えカスなどで汚れたら洗って乾かせば繰り返し使え、経済的なのも嬉しいポイントです。
また、ローズやクリスタルなど、カラフルな色合いのものが多く、見た目が美しいのも香炉石の魅力と言えます。なかには、モダン仏壇のデザインに香炉石を合わせて使う人もいるようです。
また、ローズやクリスタルなど、カラフルな色合いのものが多く、見た目が美しいのも香炉石の魅力と言えます。なかには、モダン仏壇のデザインに香炉石を合わせて使う人もいるようです。
【歴史】香炉とお香文化の軌跡
現在、お香文化と香炉は広く浸透していますが、もともとは海外から伝わり日本に根付いたものです。最後に、香炉とお香文化の歴史を紹介します。
①お香の起源
お香の起源は、仏教の起源地である古代インドとされます。当時のインドには、悪臭を防ぐために複数の香料をブレンドしたお香を焚く、または体に塗る風習があったそうです。いつしかその風習が仏教でも取り入れられ、仏前で香りを焚いて周囲を清めるようになったと伝えられています。
②香炉の日本への伝来
仏教でお香を焚く文化は、古代中国や朝鮮を経て日本にも伝わり、香炉は重要な仏具の一つになりました。
日本最古の持ち手のついた香炉として現存するのは、東京国立博物館所蔵の国宝「鵲尾形柄香炉(じゃくびがたえごうろ)」です。飛鳥時代の作品とされ、聖徳太子に仏教哲学を教えた慧慈法師(えじほうし)が使用していたものと伝えられています。
鵲(カササギ)の尾に似ているため「鵲尾形」の名が付き、それ以降の時代の柄香炉とは異なる形をしています。
日本最古の持ち手のついた香炉として現存するのは、東京国立博物館所蔵の国宝「鵲尾形柄香炉(じゃくびがたえごうろ)」です。飛鳥時代の作品とされ、聖徳太子に仏教哲学を教えた慧慈法師(えじほうし)が使用していたものと伝えられています。
鵲(カササギ)の尾に似ているため「鵲尾形」の名が付き、それ以降の時代の柄香炉とは異なる形をしています。
③お香文化の浸透
香炉を含むお香文化と人々の関係性は、時代とともに変化していきます。
平安時代の朝廷では、香料をブレンドして香りの優劣を競う「薫物合せ(たきものあわせ)」という遊戯がおこなわれていました。また、戦国時代には茶道とともに香の作法が整備され、江戸時代にはお香文化が庶民にも浸透しました。
日本に伝来当時、香炉は仏具の一つとして扱われていましたが、お香文化の浸透とともになじみのあるものとなったのです。
自分の宗派などに合う香炉を選ぼう
古代インドから伝わり、日本に根付いた香炉やお香の文化。紹介してきたように、仏壇に飾る香炉には複数の種類があります。宗派によって考え方やお線香の供え方が異なるため、香炉を購入する際は自分の宗派に合うものを選ぶことが大切です。その上で、香炉を正しく置いてご先祖様を偲んでください。