老老介護が心配!? 子世代ができるもしもの備え
「老老介護」とは、高齢者が高齢者を介護することを言います。高齢者の定義はさまざまですが、たとえばWHO(世界保健機関)では65歳以上を高齢者としています。
かねてより高齢化が進んでいる日本では高齢の夫婦、兄弟姉妹、そして親と子の「老老介護」の可能性も高いでしょう。今回は、親御様の介護予備軍の方々が、「知っていて良かった」と思える、もしものときのための情報をお届けします。
介護相談の総合窓口「地域包括支援センター」とは
「うちの親、少し忘れっぽくなったかな?」─最初はその程度でも、高齢者の状態は日々変わるものです。そう感じたら可能な限り会う回数を増やし、遠方であれば電話やメールなどのやりとりを頻繁にして、親御様の変化に注意を払いましょう。ただし、ちょっとした変化で認知症とはなから決めてかかるのは早計です。
そんな時、まず知っておいてほしいのが「地域包括支援センター」です。地域によっては「高齢者総合相談センター」「高齢者相談センター」などとも呼ばれています。
「地域包括支援センター」は、高齢者の困りごとに関して総合的に相談できる窓口的な存在で、2005年の介護保険法改正により全国の市区町村に設置されました。社会福祉士や保健師、主任ケアマネジャーといった専門職員が配置され、相談者の手助けをします。
<各々の専門分野>
・社会福祉士:介護の総合相談窓口
・保健師:医療や健康、介護予防
・主任ケアマネージャー:地域のケアマネージャーへの助言やサポート要介護者も住み慣れた土地で生活できるように、地域で高齢者を支える拠点となるのが「地域包括支援センター」なのです。「高齢の親が人付き合いをしなくなって心配」「認知症予防のケアはどうしたらよいか」など、今は介護という段階でなくても相談できます。離れて暮らす親御様が心配、という方は「地域包括支援センター 市区町村名」で検索し、ご実家の近くの「地域包括支援センター」を探してみましょう。
「成年後見制度」は親子で取り組む終活の一つ!?
高齢になり、判断力が低下してくると、お金にまつわるトラブルも少なからず浮上してくるものです。特にオレオレ詐欺、還付金詐欺などの振込み詐欺は後を絶たず、その手口は年々巧妙化しています。
「まさかうちの親が」という思い込みは危険です。万一起こってしまった場合に備え、対策を講じておきましょう。たとえば、電話の応対時の「合言葉」を決めておく、未登録の番号からかかってきた場合は出ない、など家族で集まった際に話し合っておくことです。何より、日ごろから頻繁に連絡を取り合うことが一番の回避法ともいえます。そもそも預貯金や不動産などを含めた“お金”全体の管理が不安、というのであれば、「成年後見制度」を考えるのもよいでしょう。これは、病気や認知症などで自己判断能力が不十分になったとしても、ご本人様の財産や権利を守り、「自分らしく生きる」ことを支援する制度です。具体的には財産となる預貯金や不動産、年金などの管理、税金や公共料金などの支払い、介護サービス・施設入所契約などの手配を、成年後見人となった方がご本人様に代わりに行います。また、ご本人様が高額商品を買わされる被害に遭った場合も、成年後見人による取り消しが可能です。
「成年後見制度」には「任意後見制度」と「法定後見制度」の二つがあり、前者はご本人様の判断能力が低下する前から、後者はその後からとそれぞれ利用するタイミングが分かれます。後見人の条件に特別な規定はなく、血縁者に限らず、弁護士や税理士、介護関係者の場合も見受けられます。ただ、「法定後見制度」では、家庭裁判所により後見人が決まります。終活の認識が高まった近年では、ご自身が元気なうちに信頼できる後見人を指名する「任意後見制度」のニーズも高まっているようです。
「成年後見制度」については、先の「地域包括支援センター」で相談できます。権利擁護の観点から、悪質な訪問販売、消費者金融などの被害に関しても行政と連携して対処してくれます。
いざというとき、速やかに。介護保険の利用手続きを知っておく
介護が必要になった原因を見ると「認知症」「脳血管疾患」「高齢による衰弱」が上位を占めておりますが、その次に多い「骨折・転倒」も見逃せません(厚生労働省『平成28年 国民生活基礎調査』表 20 要介護度別にみた介護が必要となった主な原因)。高齢で足腰が弱くなると転倒が多くなり、骨折してそのまま手術・入院というケースが大半です。
親御様が倒れて手術や入院となった場合、親御様が70~74歳の公的医療保険加入者であれば全額の2割、75歳以上なら1割の自己負担額で済みます(所得・費目による例外もあり)。また、親御様が生命保険に加入していれば生命保険会社に問い合わせ、給付金を確認しましょう。被保険者の手術や入院については被保険者側が連絡しない限り、生命保険会社へは通知されません。親御様が加入している保険の状況を事前に知っておくことがスムーズな手続きにつながります。
退院後もなお、親御様の日常生活に支障をきたすような状況が見られたら、「介護保険」の利用の検討を。介護保険制度は、要介護者を社会全体で支える公的なしくみです。介護が必要と認定された方は、安価で介護サービスを利用できます。申請は、市区町村の介護窓口で行えます。申請には「介護保険申請書(市区町村のホームページからダウンロードできます)」「健康保険被保険者証」「介護保険被保険者証」の提出が必要です。「介護保険被保険者証」は、65歳以上の方に交付されていますので、親御様に確認しましょう。
<介護保険サービスの手続き>
【1】 要介護認定の申請
市区町村の介護窓口に被保険者かご家族様が「介護保険申請書」「健康保険被保険者証」「介護保険被保険者証」を提出して申請する
【2】 訪問調査・主治医意見書
認定調査員がご自宅などに訪問し、状況の調査を行う。別途、主治医または市区町村指定医に心身状態の意見書を作成してもらう
【3】 介護認定審査会
【2】をもとに介護の必要性や程度を審査する
【4】 要介護・支援の認定
【3】の結果をもとに「自立(非該当)」「要支援1・2」「要介護1~5」の8区分で該当レベルが通知される
【5】 介護サービス計画(ケアプラン)作成
【4】の結果をもとに、地域包括支援センターまたは介護支援専門員(ケアマネージャー)が「要支援1・2」「要介護1~5」の該当者の介護(予防)サービス計画書を作成する
【6】 介護サービスの利用開始
【5】に基づいて、利用手続きを行い、利用する。認定の有効期限満了の60日前になったら更新する要支援とは、日常生活で支援を必要とし、将来介護となる恐れがある状態です。要支援と要介護では受けられるサービスが異なります。ケアプランも要支援では「介護予防ケアプラン」に基づき、市区町村の介護予防サービスを利用できます。
「自立(非該当)」の場合でも、介護保険外のサービスが受けられます。役所の窓口や地域包括支援センターに問い合わせしてみましょう。再度、判定を乞う場合も同所に相談できます。
超高齢化社会を迎えた日本では、介護する側の介護うつや介護離職の問題が深刻です。そうなる前に「介護休暇」「介護休業」を活用しましょう。「介護休暇」は、要介護のご家族様1人につき年間5日、「介護休業」は通算93日まで取得できます(「育児・介護休業法」より/2018年11月現在)。その他、所定外労働の制限や所定労働時間の短縮なども含まれます。また、休職により著しく給与額が低下した場合は、ハローワークへの申請で「介護休業給付金」の支給も可能です。これらは、会社に勤務する方々が仕事を辞めずにご家族様の介護に専念できるよう制定された「育児・介護休業法」がもととなっていますが、企業独自の福利厚生もあるかもしれません。いざというときのために、会社に確認しておくことをおすすめします。
親の終活には、子ども目線も必要です。子どもに迷惑をかけたくないという親の想いは、子どもの協力があって実現できるものです。家族葬のファミーユは、ご自身だけでなく親御様の終活を考える喪主世代も支援いたします。どんな些細なことでも、家族葬のファミーユのフリーダイヤルまでご連絡いただければ、専門のスタッフが状況に合わせてサポートいたしますのでご安心ください。
日々摘花(ひびてきか)
~まいにちを、たいせつに~
「日々摘花(ひびてきか)」は、様々な分野の第一線で活躍する方々に、大切な人との別れやその後の日々について自らの体験に基づいたヒントをいただくインタビュー記事です。
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