喪主と参列者で異なる喪服の格式─ご葬儀の女性の服装について
喪服には正式礼装や準礼装など格式があり、さらに和装・洋装と分かれます。正式な礼装は、主に故人様のご家族やご親族様など近親者の方が着用するもので、喪主や世話役代表、葬儀委員長などの主催者は特に一般会葬者側より格下にならないような装いを心がけます。
一方、参列者側は、準礼装もしくは略礼装の着用がほとんどといえます。それぞれどのようなスタイルなのか、詳しく見ていきましょう。
正式礼装と準礼装は何が違うの? 洋装の場合をチェック!
- 女性の喪服は洋装の場合、肌の露出を控えた黒のワンピースやアンサンブル、スーツなどのフォーマルウェアが基本です。そのなかでも正式な喪服というと、光沢や透け感のない黒一色の無地または綾織りのもので、色に関しては黒のなかでもより濃い黒の印象です。また、襟ぐりの開きが狭く、ひじ・ひざが完全に隠れるなど、露出を控えた形になります。特にスカートはロング丈が正式に近いでしょう。
これに比べ、準喪服は部分的にレースやサテンを取り入れるなど、素材やデザインも柔軟です。さらに略礼装になると、濃い紺色やグレーなど色の範疇も広がります。ジャケットに合わせるのはスカートに限らず、パンツスーツでもかまわないでしょう。
スーツの場合、合わせるブラウスやシャツに白のものを選ぶのは禁物です。基本的には黒となり、ジャケットが濃いグレーや紺であれば、その色に合わせてもかまいません。
マナーが問われる小物も抜かりなく
弔事ともなると、小物にも配慮が必要です。バッグ・靴はブラックで金具や光沢のないもの、布製が正式です。靴はピンヒールやフラットシューズは避け、中くらいのヒール高のプレーンなパンプスを選びましょう。おじぎの機会が多いご葬儀では足元が目立つものです。ストッキングも、肌がうっすら透ける30デニール以下のブラックを。タイツだとカジュアルな印象を与えてしまうので、避けましょう。
真珠(白か黒)や黒曜石、オニキス(黒)のネックレスであれば、結婚・婚約指輪以外のアクセサリーも許容範囲です。むしろ、最近ではアクセサリー着用でフォーマルとなる傾向もあります。ただし、ネックレスは一連のものを身につけること。二連以上となると、不幸が重なるイメージにつながります。イヤリングをつけるのであれば、ネックレスに合わせた小ぶりのタイプを選びましょう。肩より長い髪は、すっきりまとめるのが基本ですが、髪飾りは極力使用しないか、光沢のない黒色のものを用います(注:参考の動画はわかりやすいように黒以外の髪飾りを使用しています)。メイクに関して言うと、ノーメイクはかえって失礼にあたります。片化粧(かたげしょう)といわれるようなナチュラルメイクを意識しましょう。マニキュアも落とすか色を抑えたカラーに、ジェルネイルの場合はベージュなど肌色に近いネイルを重ねづけするのも手です。
和装の正式喪服は○の数が五つ
- 和装の場合は、五つ紋付きの黒無地の着物が弔事の正式礼装です。準礼装・略礼装では、一つ紋か三つ紋となり、黒に限らず紫や茶、灰色などの地味な色無地が着用されます。紋に関しては地域にもよりますが、実家の女紋もしくは婚家(こんか)の家紋が入ります。なお、慶事のような既婚・未婚の区別は明確ではありません。
どの格式でも半襟・足袋は白色となります。それ以外の帯や草履、バッグなどの小物は黒で統一します。洋装と同様、バッグ・草履は黒の布製が好ましいでしょう。
かつては白装束が喪服という時代がありました。現代でもその名残をとどめている土地があるかもしれません。ご葬儀の女性の服装・この髪型大丈夫?急な場合でも慌てずに!今ではカラーリングをしている女性はめずらしくありませんが、普段の服装では気にならない明るめの髪色も喪服を着用すると黒との差がついて目立ってしまいます。とはいえ、急なご葬儀では染め直す時間はそうそうないもの。
そこで役に立つのが、ドラッグストア等で販売されている黒染めスプレーです。これを使用すれば、一時的に色を抑えることができ、市販されているシャンプーでも落とせます。
また髪の毛先の方が明るい場合は、お団子ネットなどでまとめるのも手です。お団子など髪をまとめるときは、耳より上に束ねると華やかな印象を与えてしまいますので避けましょう。耳より下でまとめると落ち着いた印象になります。
髪にパーマをかけていて、喪服を着たときに違和感がある場合は、ヘアスタイリング剤で広がりやカールを抑えるようにしましょう。
また、ハーフアップは派手になりがちな際は避けた方が無難です。特にお辞儀をする場面が多い喪家様の立場の方は、髪を耳に掛けるしぐさはあまり良い印象を与えません。髪が邪魔にならないようにスッキリまとめましょう。シチュエーションによって装いの使い分けが必要なことも。一般的には、お通夜よりご葬儀・告別式のほうが格式の高い装いとなるでしょう。しかし、近年ではお通夜から告別式を通じて参列者側は準礼装、喪家側も家族葬など身内だけで済ませる場合は略礼装など、これまでの慣習が変化しつつあります。そのような変化のなかでも、基本のマナーを身につけていれば、慌てず失礼のない対応ができるものです。ご葬儀や法要の際の服装に関しては、よくある質問も参考にしていただければ幸いです。
日々摘花(ひびてきか)
~まいにちを、たいせつに~
「日々摘花(ひびてきか)」は、様々な分野の第一線で活躍する方々に、大切な人との別れやその後の日々について自らの体験に基づいたヒントをいただくインタビュー記事です。
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