遺族に寄り添う葬祭ディレクター。葬儀のプロの仕事を解説
ご家族の通夜・葬式準備
葬祭ディレクターとは、「葬儀社で儀礼儀式に携わるスタッフ」と「葬儀に関する専門的な知識や技能を証明する資格」の2つの意味があります。本記事では葬祭ディレクターへの相談を検討している人に向けて、仕事内容から利用方法まで詳しく解説します。合わせてスムーズに葬儀をおこなうために決めておくことも解説しているので、参考にしてください。
目次
葬祭ディレクターとは?
葬祭ディレクターは、お葬式を計画・進行する上で欠かせないスタッフです。葬儀ディレクターと呼ぶ葬儀社もあります。
葬祭ディレクターの仕事内容
まずは、葬祭ディレクターがお客様のために、どのような仕事をするのかご紹介します。
葬式前 | 葬儀の生前相談、遺族との打ち合わせ、ご遺体の運搬、葬儀会場・火葬場の手配など |
葬式中 | 葬儀会場の設営、納棺、通夜・葬儀の司会進行、宗教者・参列者への対応など |
葬儀後 | 四十九日法要・香典返しの手配、仏壇や墓地の相談 |
そのほか | 手続きの代行 |
事務的な手続きのほか、故人との別れに悲しむ遺族の気持ちに寄り添うのも葬祭ディレクターの大切な仕事です。納棺や司会進行、葬儀後の手続きなどの一部の業務は、葬祭ディレクターとは別の専門スタッフが担当することもあります。
葬祭ディレクターの倫理観
葬祭ディレクターは、社会の信用が必要な職業です。そのために持つべき倫理観があります。ひとつは、「遺体に対する尊厳」です。遺体に対しては尊敬の念を持ち、かつ、礼をもって対処することが、「葬儀概論」に定められています。
また、故人や遺族の個人情報についても明確な「守秘義務」があります。具体的には遺族が公開を認める場合を例外として、葬儀費用についても公開してはいけません。
お葬式には様々な公的手続きが関わってきます。これを安心して任せられるように、葬祭ディレクターには確かな倫理観が求められます。
葬祭ディレクターの資格紹介
葬祭ディレクターは、職業名ですが、同名の民間資格もあります。葬儀に関して一定以上の知識や経験があることを証明できる資格です。ここでは、その資格の概要を解説します。
葬儀に必要な知識・技能を証明する資格を持つ人
葬祭ディレクターは葬祭ディレクター技能審査協会が実施している試験に合格して得られる民間資格です。これを「葬祭ディレクター技能審査」と言います。制度自体は1996年より厚生労働省(当時は労働省)から認定を受けていますが、国家資格ではありません。
この資格は葬儀の運営や進行に関わる知識、技能があることを証明するものです。専門的な知識を持つスタッフかどうかのひとつの物差しになっています。
葬儀社スタッフになるための必須資格ではないため、資格者のいない葬儀社もあります。
葬祭ディレクターの資格には級区分がある
葬祭ディレクターの資格には1級と2級があります。試験を受けるには1級は5年以上、2級は2年以上の実務経験が必要です。技能範囲は1級がすべての葬儀、2級が個人葬に関する葬祭サービスの知識と技能になります。
試験に合格すると1級はゴールド、2級はシルバーのIDカードを胸につけて業務をおこなえるため、相談者は資格を持った担当者か確認できます。
試験に合格すると1級はゴールド、2級はシルバーのIDカードを胸につけて業務をおこなえるため、相談者は資格を持った担当者か確認できます。
葬祭ディレクターに相談するタイミング
葬儀に関する相談はいつでも可能です。家族が逝去した後では、時間的にも精神的にも余裕がなくなるため、葬祭ディレクターへの相談は危篤になったら、または、それよりも早い段階が良いと言えます。家族が入院や余命宣告を受けた際には、生前・事前相談も検討すべきタイミングになります。
また、自分のことは最後まで自分でやりたいという意識の高い人は、元気なうちに終活の一環として、葬儀社選びを始めています。自宅の近くから資料請求などをして、条件にかなった葬儀社に相談してみてください。
また、自分のことは最後まで自分でやりたいという意識の高い人は、元気なうちに終活の一環として、葬儀社選びを始めています。自宅の近くから資料請求などをして、条件にかなった葬儀社に相談してみてください。
葬祭ディレクターへの生前・事前相談のメリット
元気なうちから葬儀の相談をするのは縁起が悪いと思う人もいるかもしれません。しかし、生前に葬祭ディレクターに相談しておくと気持ちの面で大きなメリットとなります。そのメリットについて解説します。
葬儀について家族内で相談するキッカケとなる
生前相談をおこなうことで、家族で葬儀について話し合うキッカケとなり、考え方やお金のかけ方、呼ぶべき人など、相互理解につながります。
現地に赴いての相談では、葬儀内容や費用の相談のほか、会場の見学も可能です。駐車場の地形、周辺環境、館内の雰囲気などはインターネットやパンフレットだけではつかめないところも多いです。しっかり事前相談をすると、希望が具体的になり、家族みんなの望みが叶いやすくなるでしょう。
希望に近い形の葬儀プランを選べる
葬儀プランは、一般葬、家族葬、密葬、一日葬など、さまざまな形式があります。本人が元気なうちの生前・事前相談であれば、より希望に近い形の葬儀プランを選ぶことが可能です。また音楽を流したい、思い出の写真を飾るコーナーを設置したいといった演出の相談にも時間をかけられます。
葬儀に関する疑問を解決できる
喪主になることは人生の中で何度もあることではないので、いざ任されたら何をすれば良いか分からないもの。葬祭ディレクターは葬儀に関する疑問の相談を何度でも、どんなことでも答えてくれるので、安心できます。葬儀前や葬儀中に遺族がすべき手続きなどを教えてもらえるほか、葬儀後も法要や遺品整理、仏具などに関する相談もできます。一度に解決できることは限られているので、何度でも相談して構いません。
生前・事前相談のデメリット
葬祭ディレクターへの生前相談・事前相談はたくさんのメリットがありますが、反面、注意点もあります。ここでは、葬祭ディレクターへの事前相談のデメリットについて紹介します。
事前相談で決めた内容が必ずしも履行されるとは限らない
事前に相談したディレクターがとても良い人で気に入ったとしても、もしもの時に同じ人が担当するとは限りません。希望は伝えられますが、そのディレクターが別の方のお葬式を担当している場合や、休暇の可能性もあります。
また、故人のした葬儀の事前相談を遺族が把握していない、把握していても遺族と本人の意向が異なるときには、相談内容通りにならない可能性があります。
故人と遺族の意見が異なると混乱を招くため、事前相談で決めたことは家族にも伝えておいた方が良いでしょう。また生前にお金を払い込む形で予約をしていた場合、親族が知らずに他の葬儀社に依頼してしまうと、納めたお金が戻ってこなかったり、手数料を取られたりする場合もあります。できれば家族と一緒に事前相談へ行くか、きちんと相談内容を共有するのがおすすめです。
見積時と金額が異なる場合もある
事前相談の見積もりは、有効期限に注意が必要です。時期や季節によって価格やプランが改訂になることもあります。有効期限やプラン改訂時の対応を事前に確認しておきましょう。
葬儀社側もなるべく見積もりとかけ離れることがないように、詳しくヒアリングした上で、内容を明示したセットプランなどを用意しています。しかし、様々な事情で増額の可能性はあります。
【追加費用が発生しやすい条件】
①会葬人数の変更(例:参列者の増加による飲食費など)
②日延びに伴う雑費(例:猛暑によるドライアイス代の追加など)
③葬儀社以外に支払う費用(例:お布施、食事代、お花代など)
①会葬人数の変更(例:参列者の増加による飲食費など)
②日延びに伴う雑費(例:猛暑によるドライアイス代の追加など)
③葬儀社以外に支払う費用(例:お布施、食事代、お花代など)
きちんとした葬儀社であれば、このような「追加費用」についてきちんと説明してくれるはずです。予想できる内容は自ら尋ねておくと、見積もりとの差異を少なくできます。
事前相談する方法
葬祭ディレクターとの事前相談の方法は、電話・メール・オンライン・対面で可能です。それぞれの方法について解説します。
電話
電話での相談は自分の良いタイミングで連絡可能です。24時間365日対応の葬儀社もあり、緊急時の利便性はナンバーワンです。個別の情報にも対応しやすいため、電話で事前相談する人も多くいます。葬祭ディレクターやオペレーターに直接相談できるので、疑問や不安をその場で解決できます。
メール
電話は緊張するという人や、声を出せない場所にいる人には、メール相談がおすすめです。対面せずに、いつでも相談内容を送れるので便利な方法です。また、自分が問い合わせた内容や葬祭ディレクターからの回答の履歴が残るのも便利です。
しかし、顔が見えないため担当者がどんな人なのか分かりづらい、返信が遅い、やりとりが複数回になるといったことも考えられます。メールで相談する場合は、緊急時は避けて、質問の要点をしぼり、「はい、いいえ」で答えられる内容にしておくと良さそうです。
オンライン
コロナ禍になる少し前から、パソコンやスマホを使ったリモート相談をおこなう葬儀社が増えてきました。棺や祭壇、葬儀場の地図などの資料を共有しながら説明してもらえるので、電話よりも視覚的に情報収集ができます。また、感染症の流行時などは対面接触を避けながら、遠方に住む家族もみんなで参加できるため、事前相談に適した相談方法です。ただし、オンライン相談は対応できない葬儀社もありますので事前に確認してみましょう。
対面
葬祭ディレクターに直接会ってパンフレットなどの資料を見ながら、具体的な相談ができます。対面であれば葬祭ディレクターの対応や葬儀社の雰囲気も確認できます。病院や自宅での相談、また、実際の葬祭ホールで見学を兼ねた相談も可能です。
気軽に対面相談をしたいときには、ホールのイベントや相談会の活用がおすすめです。葬祭ホールを直接見る事はその会社の衛生面への取り組みや接客サービスそのものを体験できる良い機会にもなります。
事前相談は、必ずしも有資格者の葬祭ディレクターが対応するとは限りません。もちろん、「有資格者による相談を希望している」と伝えることは可能なので、相談内容によっては確認してみてください。
スムーズに葬儀をおこなうために決めておくこと
悔いなくスムーズに葬儀をおこなうために事前準備はとても大切なことです。葬祭ディレクターへの事前相談もその1つと言えます。そのほかに、葬儀に関することで事前に決めておいた方が良いことをいくつか紹介します。
喪主
葬儀をおこなう際は誰が喪主をするか決めなければいけません。優先順位が高いのは故人の配偶者。次に故人の長男が喪主を務めるのが一般的です。もし故人に配偶者や子どもがいない場合は、親族で話し合って決めます。
誰が喪主になるべき?葬儀での喪主の役割や注意点を解説 - 家族葬のファミーユ【Coeurlien】
親族が亡くなった際、葬儀の中心となるのが「喪主」です。一旦喪主となれば、葬儀の前、最中、後までさまざまな役割を果たさねばなりません。故人を送る上で非常に重要な存在である喪主は、誰が務めるべきなのでしょうか。一般的な喪主の選び方や、喪主が果たすべき役割、注意点などを紹介します。
訃報を連絡する人
訃報の連絡をする人を決めて連絡先リストを作成します。遺族が故人の会社関係や、友人の連絡先を把握していない場合もあることでしょう。緊急時はその年(前年)の年賀状、暑中見舞いなどが役に立ちます。身内への訃報の連絡は病院などの出先から連絡する場合が多いです。日頃は連絡をとらない親戚でも電話番号やメールアドレス、LINEアカウントなどの連絡先を登録しておくと安心です。
訃報の意味を解説。その手段や内容・連絡するべき人とは? - 家族葬のファミーユ【Coeurlien】
テレビやインターネットのニュースなどで目や耳にする「訃報(ふほう)」という言葉。自分が遺族となった場合、訃報を流す必要がでてきます。この記事では、訃報の意味に加え連絡をするべき人やその手段、訃報を伝えるときの内容や注意点などについて解説します。
遺影写真
遺影写真は生前に2~3枚選んでおくと、いざというときに困りません。また、遺影写真はずっと残してもおけるため、なるべく綺麗で故人の人柄が分かる写真がおすすめです。納得のいく写真をプロのスタジオなどで撮ってもらうのも良いかもしれません。
遺影は自分で準備する時代。サイズや年代に注意する - 家族葬のファミーユ【Coeurlien】
遺影とは故人の生前の姿を映した写真のことです。葬儀はもちろん、その後も遺族の大切な思い出の品になります。最近では生前から自分で遺影を選ぶ人も多くなってきました。エンディングプロデュースの一環として、遺影の意味、生前に準備しておく方法、選び方のポイントなどを押さえておきましょう。
葬儀の疑問は葬祭ディレクターに相談を
葬儀はすべきことが多く分からないことばかりで不安も多いものです。葬祭ディレクターは葬儀のプロとして、故人や遺族の意向に沿った提案や対応で、疑問や不安を解決してくれます。葬儀に関するちょっとした疑問でも、一度葬祭ディレクターに相談してみてはいかがでしょうか。
この記事の監修者
瀬戸隆史 1級葬祭ディレクター(厚生労働省認定・葬祭ディレクター技能審査制度)
家族葬のファミーユをはじめとするきずなホールディングスグループで、新入社員にお葬式のマナー、業界知識などをレクチャーする葬祭基礎研修などを担当。
家族葬のファミーユをはじめとするきずなホールディングスグループで、新入社員にお葬式のマナー、業界知識などをレクチャーする葬祭基礎研修などを担当。