お盆におこなわれる施餓鬼とは?意味やお布施の相場、マナーを解説

お葬式のマナー・基礎知識
お盆におこなわれる施餓鬼とは?意味やお布施の相場、マナーを解説

この記事はこんな方におすすめです

施餓鬼とはどんな法要か知りたい
施餓鬼に参加する際のマナーを知りたい
施餓鬼(せがき)とは、お盆の時期に先祖供養とともにおこなわれることの多い仏教行事のひとつです。死後に餓鬼道に堕ちて苦しんでいる人や動物などに施しを与えて供養をし、霊を鎮めて自分の徳も積めるという意味があります。そのほかの法要と同様、お経を上げてもらった僧侶へはお布施を包みます。施餓鬼の概要や宗旨宗派による違い、主な流れと内容、お布施の相場と包み方、服装マナーについて紹介します。

餓鬼に食べ物を与えて供養する仏教行事「施餓鬼」

文字通り、餓鬼(がき)に施しを与えるためにおこなう法要が施餓鬼(せがき)です。まずは施餓鬼の概要と由来、おこなわれる時期について紹介します

施餓鬼の概要

施餓鬼は、施餓鬼会(せがきえ)の略称で、お盆の時期(東京と一部の地域では7月の新盆、その他地域は旧盆の8月)に先祖供養を兼ねてよくおこなわれる仏教行事です。餓鬼道(がきどう)に落ちて飢餓に苦しむ無縁仏や新たに亡くなった生きものなどに飲食を施すことで供養をする法会(お経を読む集会)のひとつです。
餓鬼とは仏教用語で、生前に飲食に対して強い欲を持っていた生き物が、死後、餓鬼道と呼ばれる苦しみに満ちた世界に落とされて、鬼に変わり果てた姿を指します。餓鬼は常に飢えと渇きに苦しめられると言われており、施餓鬼供養として水や食べ物などの施しを与えることで、災いをもたらす鬼を鎮めて自らの徳も積めると考えられています。

施餓鬼の由来

施餓鬼の由来は、「救抜焔口餓鬼陀羅尼経(くばつえんくがきだらにきょう)」というお経の中で語られる下記の説話とされています。
ある日、お釈迦様の弟子の1人である阿難(あなん)が、瞑想の際に現れた餓鬼に3日後の死を予告され、死後は同じ餓鬼になると言われました。しかしお釈迦様の教えのもと、陀羅尼(だらに)というお経を唱えながら餓鬼に食べ物を施したところ、餓鬼の空腹は満たされ救われました。その功徳により阿難の寿命が延びました。この阿難のエピソードを元に、施餓鬼がおこなわれるようになったと言われています。

施餓鬼のおこなわれる時期

一般的にはお盆の法要と一緒に、遺族が死者の冥福を祈る追善供養として施餓鬼をおこなうケースが多いようです。お盆の時期は「地獄の窯のフタが開いて亡者がこの世に降りてくる」と言われていて、先祖とともに餓鬼もこの世に訪れるとされるのが理由です。
とはいえお盆という決まりはなく、一年中いつおこなっても構いません。お寺によってはお彼岸や、過ごしやすい季節を選んでいるところもあるので、お寺に問い合わせるのが確実です。
お盆の時期や風習については、こちらの記事で紹介しています。

【宗派別】施餓鬼の捉え方の違い

同じ仏教でも、施餓鬼をおこなわない宗派や、反対に年に複数回おこなう宗派もあります。宗派ごとの施餓鬼の捉え方を紹介します。

浄土真宗

浄土真宗では、基本的には施餓鬼はおこないません。浄土真宗の考えでは、亡くなると仏の力により必ず極楽浄土に行けると信じられているので、そもそも餓鬼や無縁仏という概念がないのが理由です。

曹洞宗

曹洞宗のお寺では、施餓鬼のことを「施食会(せじきえ)」と呼ぶ場合があります。これは施す側の人間が施される側の餓鬼に対して、施しを与える立場という貴賤(きせん)があると、尊大な気持ちを抱きやすくなり、結果仏さまの教えに背くことになるとする考えに基づきます。

臨済宗

臨済宗では、お盆の時期などにおこなう特別な法要とは別に、日々の修行の場にも施食作法が取り入れられています。食事のたびに飯を数粒取り、屋根にまくなどして餓鬼にも施しを与えるやり方です。

施餓鬼の流れと内容

施餓鬼はお寺で大規模におこなわれる場合と、檀家などの自宅で個別におこなう場合の2種類あります。それぞれの流れや内容を紹介します。なお内容はお寺によっても変わるので、参考として目を通してください。

お寺でおこなわれる場合

お寺で大規模におこなわれる施餓鬼法要は、お墓のあるお寺などから届く案内状の内容に従い参加申し込みをします。地域の定期行事となっているところもあり、その場合は自治体やお寺からの案内や、ホームページなどを確認すると良いでしょう。
当日の主な流れや持ち物は下記を参考にしてください。
【当日の内容(一例)】
  1. 受付(お供え物やお布施などを渡す)
  2. 会食(お弁当などがふるまわれる場合がある)
  3. 僧侶による法話
  4. 法要(読経・焼香など)
  5. 卒塔婆(そとば)を受け取りお墓参り
【当日の持ち物】
  • お布施
  • 卒塔婆料
  • 数珠 など
卒塔婆とは、供養のためにお墓のうしろに立てる木の板のことです。詳しくはこちらの記事で紹介しています。

自宅でおこなう場合

宗派やお寺によっては、僧侶を家に招いて施餓鬼法要をすることも可能です。お盆の時期などに僧侶が檀家の家々を回るのが慣習となっているところもあれば、直接お願いして希望の時期に来てもらうパターンもあります。
お盆と一緒におこなう場合でも、餓鬼へのお供えと先祖へのお供えはしっかり分けて準備が必要です。そのほか、準備などで不安なことは事前にお寺に確認しておいてください。

施餓鬼のお布施の相場と包み方、表書きの書き方

施餓鬼では、法要に対するお礼として僧侶にお布施を渡します。施餓鬼でのお布施の相場と包み方、表書き・裏書きの書き方を解説します。

相場:3,000円〜1万円

施餓鬼法要に対するお布施の相場は3,000円〜1万円です。お寺によっては金額が決められている場合もあるので、ホームページや案内状等で確認してください。また、お布施とは別に下記の費用を包むのがマナーです。
  • 卒塔婆を立てる場合:3,000円〜1万円ほど
  • 自宅に僧侶を招く場合:お車代5,000円〜1万円ほど
  • お盆と一緒におこなう場合:お盆の法要に対してのお布施5,000円〜1万円ほど

包み方:新札を奉書紙または白い封筒に包む

お布施は奉書紙(ほうしょし)と呼ばれる紙に包むのが正式とされていますが、現在では白地の封筒に入れるのが一般的です。水引は基本的には不要です。お寺で大規模におこなう施餓鬼法要では、受付で裸のままお札を渡す例もあります。なお地域によって異なる場合があるので、慣習にならうようにしてください。
包むお札は新札でも旧札でも構いませんが、できれば新札が好ましいとされています。封筒に入れるときは向きを揃え、お札の顔が描かれている面が封筒の上部にくるように入れます。

表書きの書き方:「お布施」「御布施」と書く

封筒への表書きは「お布施」「御布施」と書くのが一般的です。お寺によっては「施餓鬼料」「施餓鬼供養料」と書く場合もあります。書く場所は封筒表面の中央上部です。合わせて中央下部に「〇〇家」もしくは自分のフルネームを記入します。
封筒裏面には、住所・電話番号・金額を左下部に書きます。金額は頭に金とつけ、数字は大字(だいじ)を使用するのが通例です。
(例)3,000円→金参仟圓也、1万円→金壱萬圓也
なお中袋を使用する場合は、中袋の表面中央に金額、裏面の左下部に住所・氏名を書きます。
表書きなどに使用する筆は、毛筆や筆ペンがふさわしいとされています。僧侶への感謝として渡すものなので、薄墨ではなく濃墨を使用してください。

【Q&A】施餓鬼に関するマナー

お盆の法要などと同じく、お寺やほかの参加者にも配慮するのがマナーです。最後に、施餓鬼に関するよくある疑問にお答えします。

施餓鬼は喪服で行くべき?

施餓鬼は法要のひとつではありますがお寺の年中行事のひとつなので、正喪服や準喪服ではなく略喪服(平服)で構わないとされています。普段着でも十分ですが、なるべくスーツ・シャツ・ワンピースなどを選んでください。赤や黄色のようなはっきりした色は避け、黒・グレー・ネイビーなどの落ち着いた色合いの服装が適しています。
特にお盆の時期に先祖供養と一緒に執りおこなう場合は、落ち着いたきちんとした服装を心がけるようにします。アクセサリーも控えた方が無難です。
弔事で求められる平服については、こちらの記事で紹介しています。

案内状が来たら参加は必須?

施餓鬼の参加は任意であり、義務ではありません。しかし苦しんでいる人の供養をおこなうことは、自分自身の心を洗い見つめ直すきっかけにもなるので、なるべく参加するのがおすすめです。どうしても都合がつかない場合は、早めにお寺に不参加の連絡を入れるようにしてください。

施餓鬼では先祖供養と同様に心を込めて

餓鬼に施しを与えることで功徳を積めると考えられている施餓鬼。お寺によって考えは異なりますが、初盆や先祖供養とともに大切な行事と捉えて大規模におこなわれることも少なくありません。参加する際はお布施や服装のマナーを守って失礼のないよう心がけ、心を込めて祈ってください。