灯篭流しは死者の魂を弔う儀式。正しい意味と時期・場所を知ろう

お葬式のマナー・基礎知識
灯篭流しは死者の魂を弔う儀式。正しい意味と時期・場所を知ろう

この記事はこんな方におすすめです

灯篭流しの意味や起源を知りたい
灯篭流しがおこなわれる時期や場所を知りたい
死者の魂を弔うためにおこなわれ、日本の夏の風物詩とも言える灯篭流し(とうろうながし)。毎年灯篭流しをしていても、その起源を知らない人はいるかもしれません。この記事では、灯篭流しの意味や起源について解説します。併せて、日本や海外でおこなわれている灯篭流しも紹介します。

灯篭流しの意味と起源

夏になると全国各地でおこなわれる灯篭流し。とても幻想的な行事ですが、そこには深い意味が込められています。最初に灯篭流しの意味と起源、精霊流しとの違いを解説します。

死者の魂を弔うための儀式

灯篭流し(とうろうながし)とは、死者の魂を弔うために、火を灯した灯篭を川や海に流す日本の伝統行事のです。かつて先祖の魂は灯篭に乗って川を下り、海を越えてあの世へ戻ると信じられていました。灯篭の灯りは闇を照らし、先祖の魂があの世に戻るまで、道に迷わないようにする役割があると言えます。

原爆で亡くなった人の追悼行事が始まり

灯篭流しは終戦間もない広島で始まったと言われています。火を灯して、死者を弔う「送り火」の慣習は、灯篭流しよりも前から日本各地にありました。原爆による犠牲者の供養と町の復興を願って、誰ともなく手作りの灯篭を川に流して送り火としたそうです。これが今なお続く広島の「とうろう流し」の始まりとされています。
もともと広島には、お盆の時期にお墓の周りに灯篭を立てる「盆提灯」と呼ばれる風習があり、ここにも紐づいているようです。

精霊流しとの違い

灯篭流しと響きの似ている「精霊流し(しょうりょうながし)」は、お盆の終わりにお供え物を乗せた船を海や川に流すことで、家に帰ってきていた先祖の魂を再びあの世へ送り返す儀式です。
川に流す以外にも様々な送り方があり、「灯篭流し」はそのうちのひとつと考えられています。また、長崎を始めとした九州の一部に伝わるお盆の伝統行事を「精霊流し」(しょうろうながし)といい、これも精霊流しが独自に発展したものです。
長崎市内の精霊流し(しょうろうながし)は、船を水に流す行事ではありません。花や提灯で飾った大きな精霊船を造り、担ぎ手が流し場と呼ばれる場所まで運びます。陸上を船が流れていく間、爆竹が鳴り、花火があがるなど、にぎやかなことでも有名です。

灯篭流しの実施時期とやり方

灯篭流しの実施時期は主にお盆ですが、地域によって異なります。また、やり方も地域によって差があることが多いようです。ここでは灯篭流しの実施時期とやり方を詳しく解説します。

実施時期

灯篭流しは死者や先祖の供養が目的とされるため、各地のお盆の時期におこなわれることが多いです。戦争犠牲者の慰霊の場合は終戦記念日の8月15日に、また、広島では平和を願って8月6日に、と目的によっても実施される時期が変わります。

やり方

一般的な灯篭流しのやり方は、お盆最終日の夕方に木や紙でできた灯篭に火を灯し、お盆の供え物と一緒に川や海へ流します。灯篭には名前やメッセージを書くこともできます。
ただし、最近は環境保全のため、灯篭や供え物を川や海へ流すことを禁止している自治体もあるので注意が必要です。流すことを認めている自治体でも、時期を定めて、川の下流で灯篭を回収する取り組みをしているケースもあります。
自治体や実行委員会が主催する灯篭流しでは、主催者が指定した灯篭しか流せない場合もあります。許可なく指定外の灯篭を流さないなど、自治体や実行委員会で決められたルールを守っておこなってください。

日本の代表的な灯篭流し

全国各地ではさまざまな灯篭流しがおこなわれています。灯篭流しは本来、死者を弔う儀式でありお祭りではありませんが、花火大会や夏祭りと同時におこない、観光イベントとしている自治体も増えてきました。こちらでは日本の代表的な灯篭流しをいくつか紹介します。

広島|ピースメッセージとうろう流し

「ピースメッセージとうろう流し」は、毎年8月6日の平和記念日に原爆の被災地である広島で開催。当日の夕方から、原爆ドーム対岸の元安川でとうろうを流します。この日は広島平和記念公園で、原爆死没者の追悼と、世界平和を祈るための広島平和記念式典もおこなわれます。

京都|嵐山灯篭流し

「嵐山灯篭流し」は、毎年8月16日に京都の嵐山で開催。この行事は1949年に戦没者を慰霊し、供養するために始まったとされています。同じ日には、見送りの行事である五山の送り火もおこなわれます。当日会場近くでは、灯篭流しと同時に、五山送り火を見られるチャンスも。

東京|旧中川東京大空襲犠牲者慰霊灯籠流し

「旧中川灯籠流し~東京大空襲犠牲者慰霊~」は、毎年8月15日の夜に旧中川のふれあい橋のたもとで開催。1999年に東京大空襲の犠牲者を慰霊するために始まりました。当日は白い紙で作られた船灯籠が販売され、来場者が思い思いの文字やイラストを書いて川に流します。

福井|永平寺大燈籠ながし

九頭竜フェスティバル「永平寺大燈籠ながし」は、毎年8月下旬に福井県の永平寺町で開催。約1万基の灯篭が流され、川で開催される灯篭流しでは日本最大級の規模を誇り、日本夜景遺産にも認定されています。
曹洞宗大本山永平寺の曹洞宗大本山永平寺での法要後、先人たちを供養するとともに、感謝の気持ちを込めて灯篭を流します。クライマックスには、花火の打ち上げも。水面に浮かぶ灯篭の灯りと、夜空を彩る花火を同時に鑑賞できます。

海外の灯篭流しに似たイベント

海外にも日本の灯篭流しに似た行事があります。日本とは違い、楽しむような雰囲気があるのも海外ならではです。海外で開催されている灯篭流しに似たイベントを紹介します。

ベトナム|ホイアン・ランタン祭り

「ホイアン・ランタン祭り」は、毎月満月の日(旧暦の14日)の夜にベトナムのホイアンで開催。ランタン祭りには、死者を弔う意味があります。またホイアンでは、厄除けとしてランタンを吊るす風習がありました。ランタン祭り当日は夜になると、建物や街灯の灯りが消えます。街にはろうそくとランタンの小さな灯りだけが灯り、幻想的な空間が広がります。
ホイアンは16~17世紀に西洋と東洋の貿易拠点として栄えた町です。世界中のさまざまな建築様式を取り入れた建造物が現在も残っており、その古い町並みはユネスコの世界遺産に登録されています。

タイ|ロイクラトン祭り

「ロイクラトン祭り」は、毎年10月から11月にかけてタイの全国各地で開催されます。「ロイ」は川に流す、「クラトン」は灯篭の意味です。祭りでは灯篭を川に流し、川の女神とされるプラ・メー・コンカーに感謝の気持ちを伝えます。
地域によって祭りの形式や名称が異なります。ロイクラトン祭りの中でも、特に有名なのがチェンマイで開催される「イーぺン祭り」。川を流れる幻想的な灯篭と、美しいフロート(ランタン山車)のパレードが見物です。

ハワイ|ランタンフローティング

「ランタンフローティング」は、アメリカの祝日であるメモリアル・デー(戦没将兵追悼記念日)の5月最終月曜日に毎年ハワイで開催。戦死者や故人を追悼するイベントで、世界中から多くの人が参加します。当日は7,000個ものランタンがビーチに流されます。2020年から2022年までは、コロナ禍であり3年連続で中止になりました。旅行の際は、公式ホームページで開催予定を確認しましょう。

灯篭流しは死者の魂を弔い、亡き人を偲ぶ機会でもある

灯篭流しは死者の魂を弔う儀式ですが、それと同時に亡き人を偲ぶ機会でもあります。川や海を流れていく灯篭を眺めていると、亡き人との思い出や感謝の気持ちなどが思い浮かんでくるかもしれません。
また、灯篭流しを観光イベントの一環としておこなっている自治体もあるので、コロナが収束したら参加してみてはいかがでしょうか。ただし、コロナ感染症拡大により、急遽開催中止になる場合もあります。参加を検討する場合は、こまめに自治体や実行委員会などの公式サイトを確認することをおすすめします。