お線香を供える意味とは。贈答に適したお線香の選び方も解説

お葬式のマナー・基礎知識
お線香を供える意味とは。贈答に適したお線香の選び方も解説
お仏壇がある家では、お線香は馴染み深い存在でしょう。普段、お線香を目にすることがなくても、ご実家の仏前やお墓参りでその香りに懐かしさを感じる方も多いのではないでしょうか。実はお線香にも種類があり、宗派によって取り扱いが異なります。

お線香をあげる意味

お線香を供える意味は1つではありません。ここではお線香がもつさまざまな意味合いをご紹介します。

故人に食事を供える

お線香をあげる理由の一つが「故人様のお食事」です。「人は死後、お線香の香りを食べる」という説があり、これを「食香(じきこう)」と言います。故人様が極楽浄土へ旅立たれる四十九日まで「線香の火を絶やしてはいけない」というのはそのためです。

お線香の香煙があの世に到着するまでの道案内などとも言われています。

自分の心身を清める

お線香には、お線香を上げている本人の「心身を清める」という意味合いもあります。お線香の香りで自分の匂いを消すことで、心身が清められるという考えによるものです。

仏様とのつながりを持つ

お線香の煙によって俗世で汚れた心や体の穢れをはらい、さらにはその香煙を通じて「仏様とつながることができる」とも考えられています。

仏様とゆっくり語らいたい。仏様に自分の気持ちを届けたい。

そんなときに、お線香をとおして仏様と会話できると古くから信じられてきました。

贈答のときに知っておきたい、お線香の種類とトレンド

お線香をご家庭への贈答品として購入する場合、どのような種類のお線香を用意すれば良いのか疑問に思われる方もいるでしょう。そこで、贈答品に適したお線香の種類や、お線香を選ぶ際のポイントなどを解説します。

お線香の種類

線香の種類には大きく分けて二つあります。一つが「杉線香」といわれるもので、煙の量が多く、お墓参りなどでよく使われるため、「墓線香」などとも言います。もう一つが「匂い線香」で、粘着性のあるタブの木をベースに、白檀(びゃくだん)や伽羅(きゃら)などの香料を加えることで様々な香りが楽しめます。ローズやラベンダーといった花の香りや、コーヒーや紅茶、りんごの香りなど嗜好品・食べ物を表現したものも人気です。匂い線香はお墓に供えることも可能ですし、ご自宅で使用されることも多い種類です。

お線香の形状

お線香は形状もさまざまです。最もポピュラーなのは極細の棒の形をしたスティックタイプでしょう。長さにも種類があり、燃焼時間を調節することができます。
<短寸線香>
一番ポピュラーな細長いタイプのお線香です。

<長尺線香>
お寺で用いられることが多い、短寸線香よりも長いお線香です。長尺線香の中には70cmにもなるものがあり、燃え尽きるまで数十時間かかります。

<渦巻き型>
お通夜やお葬式前にご遺体を安置する際に使われることが多いタイプのお線香です。長時間燃え続けるので、お線香を絶やしてはいけないシーンで利用されます。

<円錐型>
香りが広がるのが早く、灰が散らばりにくいというメリットがあるお線香です。

<電子線香>
火を使わず電気で熱するタイプのお線香です。通常のお線香と違って灰が落ちたり火が燃え移ったりしないため、ご家庭で利用されることが多いタイプです。

お線香を選ぶポイント

お線香を選ぶ際は、煙の量や香りの好みを加味して選びましょう。

煙の量については、お墓参りには煙の多いお線香、ご自宅用には煙の少ないお線香が一般的に適していると言われています。

また、故人やご家族の香りの好みを知っている場合は、そこも加味して選びましょう。好きな香りのお線香を上げれば、故人も喜んでくれることでしょう。好みがわからない場合は伽羅や白檀などの定番の香りを選ぶのがおすすめです。

浄土真宗はお線香を寝かせる? 宗教ごとのマナーとは

当然ながら、お線香の上げ方には正しい作法やマナーがあります。ただし、宗教ごとにマナーが異なる部分もあります。それぞれのシーンに適した所作ができるよう、お線香を上げる際の基本的な作法や、宗教ごとのマナーをご紹介します。

お線香をあげる際の基本的な作法

まずは仏壇にお線香を上げる場合の作法を確認しましょう。

仏壇の前に座り、一礼します。ろうそくの火に線香の先をかざし、火を付けます。火を手で扇いで消し、煙が出ていることを確認して香炉にさして立てます。おりんを鳴らして、合掌、一礼して終わりです。
お墓参りでお線香を上げる場合は、お線香の前にすべきことがあります。はじめに墓石に水をかけ、供花を飾ります。その後お供え物を上げて、それからお線香です。ろうそくに火を付け、ろうそくの火にお線香をかざします。火がついたら手で扇いで消し、お墓のお線香を入れるスペースに立てます。お線香入れのスペースがない場合は、お供え物を置く台と墓石の間などに立てかけることもあります。合掌し、一礼したらお墓参りの手順は終わりです。
仏壇にお線香を上げる場合の基本の作法は以下の通りです。
※3は宗教によってお線香をさす、寝かすなど方法が異なります。詳しくは本記事下部の「宗教ごとのマナーの違い」をご覧ください。

1)仏壇の前に座り一礼します。

2)ろうそくの火に線香の先をかざし火をつけます。

3)火を手で扇いで消し、煙が出ていることを確認して香炉にさして立てます。

4)おりんを鳴らして、合掌し一礼します。


なお、お墓参りでお線香を上げる場合は、上記の流れでお線香を供える前に、「墓石に水をかける」「供花を飾る」「お供え物を上げる」というステップをはさみます。お線香入れのスペースがない場合は、お供え物を置く台と墓石の間などに立てかけることもあります。

やってはいけないNGマナー

お線香に直接ライターなどで火をつけるのはマナー違反です。必ず火のついたロウソクから線香に火をともしましょう。また、消す場合は口で吹き消さないこと。神聖な仏様に向かって、息を吹きかけることは大きなマナー違反になります。火元を上にしたお線香を垂直に持ち、真下にすばやく振り下ろすと簡単に消えます。なお、手で扇いで消すのも良いでしょう。

宗教ごとのマナーの違い

仏前にお供えするお線香の数は宗派によって様々ですが、大体1~3本となっています。基本的に浄土宗、日蓮宗、臨済宗、曹洞宗の場合は香炉の中心に1本、天台宗・真言宗は3本を逆三角形になるように立てます。お線香は立てず、折って寝かせるのが浄土真宗で、折らずに寝かせるのが日蓮正宗です。実際には厳密な決まりはなく、お参りする先の宗派が分からない場合は1本で良いとされています。

大切なのはお線香に気持ちを込めること

お線香にはさまざまな意味があり、火をつける際には正しい作法があります。ただし最も大切なのは、お線香をあげながら、故人様や仏様への気持ちを込めることです。時計がなかった時代は、お線香が時間を計る道具として重宝されていました。今は燃焼時間が短いミニタイプも販売されています。故人様と語り合いたい、そんなときのために用意しておくのもよさそうですね。