「献杯」は誰がする? 乾杯とは違うマナー&挨拶文例集
お葬式のマナー・基礎知識
献杯とは、敬意を表して杯を捧げることです。葬儀や法事の場でおこなう献杯は、故人に向けての杯となります。宴会などでおなじみの乾杯とは異なる作法が多々あります。献杯の音頭をとる際の挨拶の文例などをまじえて、献杯のイロハをご紹介します。
献杯の挨拶の基礎知識
「献杯についての手順やマナー」「献杯の挨拶は誰がするものなのか」など献杯の挨拶に関する基礎知識をご紹介します。
参列者も知っておきたい献杯の手順
献杯は、葬儀や法要のあとの会食前に行われます。献杯の発声が精進落としやお斎(おとき)などの食事に箸をつける合図となります。献杯が終わるまで、食事に手をつけてはいけません。喪主の挨拶のあとに献杯の挨拶をする人から一言あり、「献杯」と発声されたら全員で復唱し、合掌または黙祷します。
【乾杯】とは違う【献杯】時の注意点 !
「乾杯」のように他の出席者と杯を鳴らせたり、飲んだ後に拍手を送ったりしてはいけません。「献杯」と静かに声に出して、軽くグラスを持ち上げる程度です。飲み会ではないのでくれぐれも杯を高くかかげて「けんぱーい」と大声を出さないように。乾杯の習慣はNGと心得ておきましょう。
また、献杯直後に一気に飲み干す行為も避けたいですましょう。献杯はあくまでも故人を偲ぶためのもの。周囲の人と思い出を語りながら少しずつ飲むのが良いでしょう。
また、献杯直後に一気に飲み干す行為も避けたいですましょう。献杯はあくまでも故人を偲ぶためのもの。周囲の人と思い出を語りながら少しずつ飲むのが良いでしょう。
献杯の発声は誰がするもの?
喪主として、献杯を誰に依頼するかは悩みどころでしょう。人選に決まりはありません。一般的には、親族の代表格となる家長、もしくは故人の兄弟などが例に挙げられます。故人と親しくしている友人や会社関係の人に頼むのもよくあることです。年長者なら経験もあり、頼みやすいでしょう。思い当たる人がいない場合は喪主自身がおこなってもかまいません。
献杯を依頼したい人が決まったら、前もってその旨を伝えておきます。葬儀の日時をお知らせする際に「献杯をお願いできますか?」なとど声をかけるのが自然でしょう。
献杯を依頼したい人が決まったら、前もってその旨を伝えておきます。葬儀の日時をお知らせする際に「献杯をお願いできますか?」なとど声をかけるのが自然でしょう。
急な依頼でも困らない献杯の挨拶3つのポイント
初めての献杯は緊張するかもしれませんが、ポイントを押さえておくと頭に入りやすいでしょう。
挨拶は短く
挨拶は1~2分くらいを目安に、手短に済ませるのがポイントです。挨拶が終わるまで食事に手をつけられないため、冗長な話は参列者が待ちくたびれてしまいます。よくスピーチは1分間で300字といわれるので、400~600字程度を心掛けるといいでしょう。
忌み言葉を使わない
挨拶で忌み言葉を使わないのも重要なポイントの一つ。忌み言葉は不幸が続く印象を与えるので、使わないのがマナーです。例えば「重ねがさね」「くれぐれも」「再び」などの重ね言葉や「死亡」「死去」などの直接的な表現は、うっかり口にしないように注意しましょう。
故人を偲んだ言葉を
挨拶では故人を偲ぶ言葉を用いるのがマナーです。簡単な自己紹介や故人との思い出、お悔やみの言葉を盛り込むと良いでしょう。
献杯の挨拶文例
献杯の挨拶は、葬儀と法事・法要で内容が少し異なります。ここでは、状況別・故人との関係別に挨拶文例を10通りご紹介します。この文例を参考にして、ご自身でアレンジしてみてください。
【葬儀】子供(親族)がおこなう場合
「〇〇(故人)の娘の△△でございます。本日はお忙しい中、お集まりいただき、誠にありがとうございます。おかげ様で葬儀も滞りなく済ませることができました。父(母)も安心していることと思います。これから少しの間、故人との思い出を聞かせていただければ幸いです。それでは、ご唱和をお願いいたします。献杯。」
【葬儀】友人がおこなう場合
「〇〇(故人)さんの友人の△△です。故人とは学生時代からの付き合いで、卒業後もよく親交がありました。ともに◇◇を同じ趣味としており、一緒に過ごしたことが思い出されます。このたびは突然のことで、本当に残念でなりません。ご家族様には心よりお悔やみ申し上げます。さぞかし無念であったと思いますが、どうか気を強くお持ちくださいませ。今日はご家族と親交のあった皆様に囲まれて、故人も喜んでいるのではないでしょうか。どうぞ安らかにお眠りください。献杯。」
【葬儀】上司がおこなう場合
「ご紹介いただきました、△△会社の◯◯でございます。彼が係長、私が課長として、一緒に仕事をしておりました。□□さんは、真摯に仕事に向き合うのはもちろん、周囲への気遣いを忘れない素晴らしい人格の持ち主でした。正直なところ、いまだに信じられない気持ちでいっぱいで、明日も元気に顔を見せてくれる気がしてなりません。それでは、ここに故人を偲び、献杯を行いたいと思います。献杯。」
【葬儀】部下がおこなう場合
「ご紹介に預かりました△△会社の○○でございます。入社以来、□□課長のもとで一緒に仕事をさせていただいておりました。□□課長には仕事のときだけでなく、プライベートでもお世話になり、感謝の念しかございません。今後は□□課長が安心して眠れるように、××課の一同で頑張っていく所存です。それでは、故人を偲び献杯のご唱和をお願いいたします。献杯。」
【葬儀】喪主がおこなう場合
「本日はお忙しい中、○○の葬儀にお越しいただきまして誠にありがとうございます。おかげさまで無事に葬儀を終えることができました。故人も今ごろ安心しているのではないかと思います。これよりは食事をしながら皆さまより故人との思い出話でも伺えればと存じます。それでは、献杯をさせていただきます。献杯。」
【法事・法要】子ども(親族)がおこなう場合
「故人の長女でございます。本日はご多用の中、お集まりいただきましてありがとうございます。おかげ様で、無事四十九日の法要を取りおこなえました。滞りなく済ませられ、父(母)も安心していることと存じます。この席では、私たち家族が知らない父(母)の思い出話でもお伺いしたく思っております。それでは献杯のご唱和をお願いいたします。献杯。」
【法事・法要】友人がおこなう場合
「この度は1周忌の法要にお招きいただき、ありがとうございます。ご紹介いただきました◯◯です。□□さんとは大学時代からの20年来の親友で、学内ではサークル活動などでいつも一緒にいました。卒業式の日『◯◯は家族も同然だよ。何かあったときはまず私に相談して』と言ってくれた日のことは今でも忘れられません。あれから◇年も経ったのですね。これより皆様とは彼女との思い出に浸りながら、偲ぶ時を共有したいと思っております。それでは献杯をさせていただきます。献杯。」
【法事・法要】上司がおこなう場合
「ご参列者の皆さま、この度はお疲れ様でございます。ご紹介に預かりました、△△会社の○○と申します。□□くんは入社以来、私の部下としていつもサポートをしてくれました。彼は同期の中でもトップクラスの優秀な人材で、まだまだこれからというときに残念でなりません。また、ご家族のことを思うと、その無念さは計り知れません。□□くんを偲び、献杯のご唱和をしたく存じます。献杯。」
【法事・法要】部下がおこなう場合
「この度は、四十九日の法要にお招きいただきありがとうございました。△△会社の○○と申します。□□部長には公私ともにお世話になり、とても感謝しております。入社したての頃、右も左も分からなかった私が、今プロジェクトマネージャーという立場で働けているのは、□□部長に厳しくも優しくご指導いただいたおかげです。今も感謝しております。本当にありがとうございました。それでは□□部長を偲び、献杯いたします。献杯。」
【法事・法要】喪主がおこなう場合
「本日はお忙しい中、亡き夫の1周忌の法要にお越しいただきましてありがとうございます。おかげさまで滞りなく済ませることができ、彼も安心していると思います。この席では皆様の近況や故人との思い出話でもお伺いできればと思っております。それでは、ご唱和お願いいたします。献杯。」
献杯の挨拶は事前準備と心構えが大切
献杯の挨拶は、押さえておくべき3つのポイントを踏まえつつ事前準備をすれば、当日は何の問題もありません。献杯の発声をするのは、故人とそれだけゆかりが深かったということ。悲しみの最中にあるかもしれませんが、心を落ち着けて臨みましょう。