家族が余命宣告されたときの心構え。準備することや接し方
ご家族の通夜・葬式準備
この記事はこんな方におすすめです
余命宣告をされた家族がいる
家族としてできることや心構えを知りたい
ある日突然、医師から伝えられる余命宣告。がん告知などが当たり前の時代とはいえ、家族の死を意識して落ち込むのは当然のことです。しかし、余命はあくまでデータや医師の経験に基づく予想値であり、実際の寿命ではありません。今回は余命宣告の意味をはじめ、病と闘う患者本人のために家族が決めることや準備すること、心構えを紹介します。
医師が伝える余命宣告とは?言葉や数値が示す意味
医師から伝えられる、余命宣告。その根拠はデータからの算出で、治療効果を判定する指標となります。家族が余命宣告を受けるとショックを受けてしまいますが、その言葉や数値が示す意味を知っておくと、少しだけ冷静に受け止められるかもしれません。そこでまずは、余命の指標や余命宣告の意味から紹介します。
余命宣告において「余命=残された寿命」ではない
余命宣告とは「どのくらい生存できるか」の目安を医師が伝えることです。伝えられるのは患者本人のこともあれば、家族のみのこともあります。
余命は、その医師がどのような指標で宣告したかによって異なります。また、必ずしも「余命=残された寿命」とは限りません。医師が告げる余命は、あくまでも過去のデータから導き出された予測値です。例えば「余命半年」と告げられた人が、それ以上生きることもあります。
余命宣告を受けたからといって寿命が決定したわけではないので、なるべく前向きに捉えたいところです。余命宣告を受けた後は「これからどうしたいか」を優先して考えることになり、後悔しない身じまいにつながります。
余命の指標は「5年生存率」「生存期間中央値」が代表的
余命の指標としては、「5年生存率」や「生存期間中央値」が代表的です。
生存率とは、診断を受けてから一定期間後に生存している確率を指します。特にがん患者においては、治療効果を判定する重要な指標とされ、がんの種類など目的に応じて1年、2年、3年、5年、10年といった生存率が用いられます。
「1年生存率」が90%、「3年生存率」が70%の場合、治療を行った1年後は90%、3年後には70%の人が生存していることになります。多くのがんは、主に「5年生存率」を治癒率の目安としていますが、乳がんを例とする予後の良いがんは、「10年生存率」のような長期的視点も必要と考えられています。
一方の「生存期間中央値(MST:Median Survival Time)」は、同じ病状である50%の患者が亡くなるまでの期間を基準とするものです。ある治療を行った患者101人を生存期間の短い順から並べて中央の位置、51人目の生存期間となります。データの合計値を人数で割った平均値だと、生存期間が長いデータに引っぱられてしまうため、中央値が用いられているのです。
また、集計方法には、死因に関係なくすべての死亡を含めて計算する「実測生存率」や、性別・年齢が同じ患者群で算出する「相対生存率」があります。
家族が余命宣告されたときに決めること・心構え
家族が余命宣告を受けた後は、今後の治療方針や本人との接し方など、考えることが押し寄せてきます。余命宣告を受けた患者本人にとって、家族の支えはとても大きいものです。自分は何をすべきなのか、家族が決めることや心構えなどを紹介します。
医師の話を聞き、治療方針を決める
余命宣告を受けるときは、今後の治療方針を決めることが多いようです。まずは医師の話を聞き、現状や今後できるであろう治療内容を理解します。その上で、完治を目指すのか、延命治療をおこなうのか、ターミナルケアを選択するのかなど、治療方針を決めます。
なお、延命治療とは人工呼吸や人工透析などを用いた、病気の回復ではなく延命を目的とした治療です。ターミナルケアとは、余命がわずかな人の人生をより良いものとするため、苦痛を緩和して生活の質(QOL)を向上する医療や看護のこと。終末期におこなわれるため、終末期医療とも呼ばれます。
治療方針は、本人の意向を大事にしながら定めることが大切です。本人が告知を受けていれば、家族で相談することも検討してください。長く生きることも、楽しく生きることも大切です。お互いの価値観を尊重することで、きっと納得のいく答えを出せるでしょう。
残った時間を有意義にするターミナルケアとは?家族が知っておくべきポイント
終末期医療を受ける人とその家族が、残された時間を有意義に過ごすためにあるターミナルケア。本人はもちろんのこと、家族もケアの意味や内容を知っておくと安心です。まずは基本事項から確認していきましょう。
余命宣告を本人に伝えるか決める
最近は患者本人に余命宣告をする医師も多いです。ただ、本人のいないところで家族が余命宣告を受けることもあります。その内容を伝えるべきかどうかは、本人のことをよく考えて判断するしかありません。人によっては自暴自棄になったり絶望したりと、病気の進行を早めてしまう恐れもあります。本人の健康状態や精神状態、性格、気持ちなどを考慮した上で、慎重に判断することをおすすめします。
声かけ時の言葉など接し方に注意する
余命宣告を受けた後、家族にどう接してもらいたいのかは個人差がありますが、本人としては、周囲には変わらずに自然体で接してもらいたいという人が多いようです。
ただし、本人にかける言葉の選び方には注意が必要です。励ますことは大事ですが「頑張ってね」「いつか治るかもしれないね」など、本人の心を傷付けてしまう恐れがある言葉は避けます。
本人は治療に対して前向きに取り組んでいるのに、「これ以上何を頑張るのか」といたたまれない気持ちになってしまうかもしれません。周囲の人ができるだけ自然体でいること、そしてただ話を頷いて聞いてくれるだけでも、患者は心が休まると言われています。
家族としての心構えを持ちつつ、無理はしない
家族の余命宣告を受けた直後は、どうしても冷静ではいられないかもしれません。本人が辛いのは当然ですが、支える家族の心身にも大きな負担がかかります。まずは自分の気持ちの整理をし、患者と同じ時を過ごしていくと、少しずつ心に平穏が訪れるはずです。
とはいえ、少しでも長く一緒に闘病生活を送るためにも無理をしすぎは禁物。ときには友人・知人と息抜きをし、専門家や専門機関を頼ることも大切です。
国立がん研究センターが運営するサイト「がん情報サービス」では「家族ががんになったとき」として、家族が「第二の患者」にならないよう、さまざまなヒントを示しています。本人はもちろん、家族も辛い気持ちや不安を担当医や支援センターに相談することを勧めています。
家族が余命宣告されたときに準備すること
家族が余命宣告を受けたときには、悲しいですがいつかやってくる「そのとき」のことも考えなくてはいけません。患者本人も家族も納得のいく余生を過ごせるよう、家族が準備することを紹介します。
保険内容の確認をする
余命宣告を受けたら、本人が契約している保険会社に連絡し、保険内容の確認をします。保険内容によっては、リビング・ニーズ特約がついているかもしれません。
リビング・ニーズ特約とは、被保険者が医師から余命半年以内の診断を受けた際に、死亡保険金の一部または全額が生前給付されるものです。請求額の上限は3,000万円(加入中の保険額が3,000万円以下の場合はその範囲内)で、使い道は自由です。
亡くなった後の死亡保険金はその分減額されますが、闘病中にまとまったお金があることで、より高度な治療を受けたり、思い出づくりをしたりと、本人が悔いなく最期を迎えるための選択肢が広がるでしょう。
お金の確認をする
本人が保険に入っていない場合でも、もしものときの資金を貯めておくことで対応できます。それでも不安な場合は、病院の専門窓口や公的機関に相談するのがおすすめです。
また、本人のお金の管理にも気を配っておきます。預貯金の印鑑や通帳の場所、引き落とし口座などを聞いておく他に、エンディングノートなどに家族だけが分かる言葉で記載してもらうのも効果的です。
相続の意向を確認する
家族・親族間の相続トラブルを防ぐため、可能であれば本人の財産を確認して「誰に何を相続させるのか」本人の意思を確認しておきます。エンディングノートに書いてもらう方法もありますが、エンディングノートには法的拘束力がありません。可能であれば、遺言書を作成してもらうのが理想です。
しかし、実際には財産調査などが難しかったり、時間や法律の制約があったりするので、相続に関してはプロに任せるのも一つの手段です。
遺言書で死後のトラブルを避けよう。種類や書き方のポイントとは
まずは遺言書の種類や効力が及ぶ範囲、さらには近年よく耳にするエンディングノートとの違いから見ていきましょう。
葬儀の希望を聞いておく
家族が余命宣告をされたら、葬儀についても考えておく必要があります。治療や日々の暮らしで精いっぱいで、葬儀を迎える頃には心身ともに疲れきってしまうことも考えられるためです。
誰とどこで最期のお見送りをするのか、事前に患者と家族の希望を含めて考えておくと、互いに思い残すことが少なくなるかもしれません。多くの葬儀社が事前相談をおこなっているので、考えられる状況になったら相談してみてはいかがでしょうか。
不安を抱える家族の心に寄り添って
余命宣告されて動揺しない人はいません。医師から余命宣告をされたときは、不安になっている本人の心に寄り添うことが第一です。家族もひとりで悩みを抱えずに、仲間と不安を分かち合ったり、専門家を頼ったりすることが大切です。
また、余命宣告後は保険やお金の確認に加え、相続や葬儀について考える必要もあります。家族の余命がわずかと知ると心が落ち着かないものですが、まだ準備ができていない人は無理のない範囲で、できることから取り組めると良いですね。
この記事の監修者
政田礼美 1級葬祭ディレクター(厚生労働省認定・葬祭ディレクター技能審査制度)
家族葬のファミーユ初の女性葬祭ディレクター。葬儀スタッフ歴は10年以上。オンライン葬儀相談セミナーなどを担当。
家族葬のファミーユ初の女性葬祭ディレクター。葬儀スタッフ歴は10年以上。オンライン葬儀相談セミナーなどを担当。