遺影とは|写真の選び方と飾る方法、処分方法を解説
ご家族の通夜・葬式準備
この記事はこんな方におすすめです
遺影の選び方を知りたい
葬儀後の遺影をどう扱うべきか知りたい
遺影とは、通夜や葬儀で祭壇に飾る故人の写真のことです。基本的に家族が準備するものですが、いざというときに写真を選ぶ基準がわからず悩んでしまうことも少なくありません。本記事では、遺影の選び方や事前に準備をしておくこと、葬儀後の遺影の取り扱い方について解説します。
遺影とは?目的と意味
通夜や葬儀の場で飾られる遺影について、まずは、遺影の目的と意味を解説します。
故人を偲ぶための写真
遺影は、故人の在りし日を思い、身近に感じるために通夜や葬儀の祭壇に飾られるもの。読み方は「いえい」です。写真を用いる場合がほとんどですが、肖像画でも問題はありません。また、葬儀を終えた後も遺影を手元に残しておく人が多いです。
遺影に宗教的な意味はない
「遺影には魂が宿る」と言われることがあるものの、宗教的な意味はなく、通夜や葬儀・告別式は遺影を準備しなくてもおこなえます。ただし、遺影には参列者が在りし日の故人の姿を眺めながら昔を振り返ったり、最後の言葉をかけたりするという役割も。そのため、葬儀会場には遺影を飾った方が良いと考えられています。
遺影の選び方のポイント
故人の生前の姿として残り続けるものだからこそ、遺影選びは遺族が悩むポイントでもあります。そこで、ここでは遺影用写真の選び方を解説します。
故人らしさが伝わる写真を選ぶ
遺影にする写真は、故人ならではの魅力を感じられるものがおすすめです。見るだけで生前の姿を思い出せる表情を浮かべていれば、いつまでも故人がそばにいてくれるように感じられるかもしれません。家族や友人といるときや、趣味を楽しんでいるときなど、自然体で撮影された写真が遺影に向いています。
また、葬儀後に自宅で飾ることを考慮に入れ、遺族が最も素敵だと思える写真を選ぶのも重要なポイント。正面から撮影した写真を使うのが基本ですが、故人の魅力を引き出すためにあえて正面以外の角度から撮った写真を用いる場合もあります。
ピントが合っている写真を選ぶ
遺影には、しっかりとピントの合った写真を選ぶのが原則です。ピントがズレていると、写真を大きく引き伸ばした際に被写体がぼやけて見えてしまいます。低解像度の写真も引き伸ばすと画質が粗くなるため、原寸大で200万画素以上を目安に選ぶのがポイント。近年のスマホであれば問題ありません。
また、通夜や葬儀では参列者が遺影を見ながら最後のお別れをすることも多いです。故人と対話している気持ちになれるよう、カメラ目線の写真を選ぶことが大切です。
なるべく直近に撮影した写真を選ぶ
亡くなる年齢まで人生を全うしたことの証にするため、遺影には亡くなる直前に撮影した写真が望ましいと考えられています。ただし、病気を患って顔の様子が変わっていたり、直近で良い写真が見つからなかったりしたときは、家族や本人の意向を踏まえて元気だった時期の写真を使っても支障はありません。
若過ぎる写真は生前の姿との差が大きくなるので、選ばないようにしてください。何年前までの写真が良いか迷ったときは、5年以内を目安に選べば参列者に違和感を与えることはないでしょう。
背景や服装はあまり気にしなくても良い
遺影用の写真を選ぶ際に、服装や背景を気にする必要はありません。昔は正装の遺影を用意する場合が多かったですが、近年はほとんど気にしなくなっています。むしろ、写真で故人が身に着けている洋服やアクセサリーを見て、生前の思い出を振り返るきっかけになることも。
なお、遺影は葬儀社に作成を依頼することが多く、写真加工にも対応しています。背景・服装の修正や集合写真から故人のみを抽出するなど、さまざまな加工が可能です。
満足度の高い遺影のために準備しておきたいこと
故人が亡くなってから遺影の手配を始めると、遺族が満足できる写真を選べない可能性があるため、生前に準備を整えておくことが大切です。ここでは、故人らしさを十分に表現し、満足度の高い遺影を手配するためには何を準備すべきか紹介します。
日常的に写真を撮っておく
故人の良さが伝わる写真を準備するには、さまざまなシーンをこまめに撮影するのがポイントです。家族との旅行や親戚が集まる食事会といった場面で、表情がわかりやすい写真を残すことを意識してください。誕生日会など、毎年おこなうイベントで撮影する習慣を作るのも良いかもしれません。
また、普段から撮影する機会が多くても、顔がはっきりと大きく写っている写真がほとんどないパターンも珍しくありません。顔に焦点を当て、魅力的な写真を撮るよう意識することが重要です。
スナップ写真を楽しもう|遺影にも使用できるって本当?
スナップ写真とは、ありのままの光景を瞬時に撮影したもの。被写体が人物の場合、普段の自然な表情を写真におさめられます。スナップ写真の撮影を趣味にしている人も多くいます。ちなみにお気に入りのスナップ写真は、遺影に使用することも可能です。
撮った写真をシェアしておく
家族が友人と旅行に行った、同窓会があったなど、何か楽しい話題をきいた時には、同時に写真のシェアをお願いしてみましょう。せっかくいい表情で写っていたとしても、遺族が持ち合わせていなければ遺影に使うことはできません。故人のスマホにだけ残っていて、ロックが解除できないこともありえます。日ごろから写真共有をしておけば、家族間のコミュニケーションにも役立ちそうです。
既存の写真を加工しておく
遺影用の写真データを自分で用意する方法もあります。あらかじめ写真を選んでおけば、いざという事態でも慌てず対処できるのに加え、故人の気持ちを尊重できるのが利点です。
写真は、鮮明かつ大きく顔が写ったものを選んでください。画素数は200万画素以上、ファイルサイズは1メガバイトほどが目安ですが、近年のスマホカメラやデジタルカメラなら画素数やファイルサイズで問題が起きることはほとんどありません。パソコンが使える場合は、切り抜きや色の加工で好みの写真に仕上げられます。
フォトスタジオで遺影を撮影しておく
プロのカメラマンに遺影の撮影を依頼するのも、選択肢の1つに挙げられます。ヘアメイクや写真加工がセットになったプランが多く、綺麗に仕上がるのが魅力。なお、遺影用の写真を生前に自分で準備する方法は、こちらの記事も参考にしてください。
新しく遺影用の写真を撮影する方法
最近では遺影の撮影方法も豊富になっています。どういった撮影方法があるのか紹介します。
葬儀後の遺影の取り扱いと飾り方
葬儀後、遺影は遺族が引き取って自宅に飾ったり、保管したりします。ここでは、葬儀後の遺影の取り扱い方法や飾り方について紹介するので、大切な人の思い出を残すための参考にしてください。
【飾る時期・期間】葬儀~四十九日までが一般的
宗教的な意味を持たない遺影には「いつまで飾るべき」という定めはないものの、葬儀を終えたら四十九日まで飾るのが通常です。葬儀後、自宅でしばらく遺骨を祀るために後飾り祭壇を設置し、そこに遺影も飾ります。
後飾り祭壇の設置は四十九日で終える場合がほとんどのため、遺影も同様に四十九日まで飾るようになりました。四十九日を経た後は仏壇付近に飾ることもありますが、使う予定がないときは処分しても支障はありません。
【飾る場所】決まりはないが仏壇の中はタブー
先に述べたように、遺影は四十九日を迎えるまで後飾り祭壇に飾ります。四十九日を終えた後の飾り方には決まりはなく、仏壇や仏間付近に飾るのが一般的。見えにくい場所だと故人を思い出す機会が減るため、普段の生活で自然と目に入る場所がおすすめです。
昔から遺影を飾る習慣がある家では、フックや長押を付け、壁掛けにすることもよくあります。家の事情に合わせて、飾る場所を検討してみてください。
ただし、ご本尊が飾られているなど仏式に則ったカタチの仏壇の中には遺影を一緒に飾らないのが良しとされています。此岸の世界の姿を現した写真を、彼岸の世界である仏壇の中にいれるのは避けられてきたためです。仏の住む清らかな世界を表す仏壇には遺影を置かないのがマナーとされています。
【飾る方法】住宅事情に合わせて飾る
仏壇内以外であれば、遺影の飾り方にルールはありません。以前は壁に掛ける飾り方が大多数でしたが、なかには遺影を飾るのに十分なスペースがない家も。遺影のサイズに決まりはないため、部屋の広さに合わせて飾りやすいサイズに直しても大丈夫です。
他には、インテリアに合うおしゃれな額縁に変えたり、写真データを活用してデジタルフォトフレームに仕立てたり、現代の住宅事情に沿って遺影の飾り方も多様化しています。
遺影を処分するには
葬儀後の遺影の扱い方に明確な決まりはありません。法事や法要で使う予定がなく、自宅に飾るのも難しいときは処分しても良いとされています。最後に遺影の処分方法を紹介するので、故人への思いを込め、適切な方法を選ぶようにしてください。
自治体のルールに従ってゴミして処分する
居住地のルールに従えば、ゴミとして遺影を処分しても差し支えありません。写真自体は可燃ゴミ、額縁は不燃ゴミに当てはまることが多いですが、あらかじめルールを確認してください。
なお、遺影を白い紙や布で包んで塩をかけると、お清めになると考えられています。遺影をそのままゴミとして出すのに抵抗がある場合は、取り入れてみてはいかがでしょうか。
神社・お寺で供養してもらって処分する
ゴミとして処分するのは気おくれするというときは、お寺や神社に遺影の供養をお願いする方法があります。きちんと供養した後に処分するため、抵抗感が和らぐはず。
宗派は関係なく、どこに供養を依頼しても大丈夫です。お布施や玉串料といった費用がかかるので、事前に用意してください。
葬儀社に依頼して処分する
葬儀社の中には、遺影の引き取りサービスをおこなっていることがあります。ただし、遺影の処分のみ受けつけている葬儀社は少なく、法要費用の内訳に処分費を含んでいることも。処分が決まっているときは、葬儀を依頼した葬儀社に問い合わせてみてください。
遺影とは故人を偲び思い出をよみがえらせる写真
遺影は、見るだけで故人の人柄を感じられたり、楽しかった思い出を呼び起こしたりできるものです。故人の自然な姿を残すには、写真選びが重要。普段から思い出の写真を撮る習慣を作っていれば、いざというときにも慌てることなく素敵な遺影を用意できます。葬儀後は、デジタル化や縮小などの工夫を凝らし、家庭の事情に合わせた方法で遺影を飾ってはいかがでしょうか。
監修:1級葬祭ディレクター 政田礼美
家族葬のファミーユ初の女性葬祭ディレクター。葬儀スタッフ歴は10年以上。東京・神奈川・埼玉を中心に都市部の事情に通じた葬儀相談を社内外・オンラインセミナー含めておこなっている。
【保有資格】1級葬祭ディレクター(厚生労働省認定・葬祭ディレクター技能審査制度)、メンタルヘルスマネジメントⅡ種
【活動実績】野村證券ハッピーライフセミナー講師(2022)
【保有資格】1級葬祭ディレクター(厚生労働省認定・葬祭ディレクター技能審査制度)、メンタルヘルスマネジメントⅡ種
【活動実績】野村證券ハッピーライフセミナー講師(2022)