緩和ケア病棟に入院したら平均余命はどれくらい?向き合い方を知ろう

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緩和ケア病棟に入院したら平均余命はどれくらい?向き合い方を知ろう

この記事はこんな方におすすめです

緩和ケアを受けている人の平均余命を知りたい
緩和ケアを受ける人との向き合い方を知りたい
身近な人が緩和ケアを始めたら「あとどれくらい生きられるのか」と考える人は多いはず。本記事では、緩和ケア病棟に入院した場合の平均寿命がどれくらいなのか解説します。さらに、緩和ケアの定義と内容、緩和ケアを受ける人へかける言葉も紹介するので、大切な人との向き合い方を考えるための参考にしてください。

寿命に影響を与える?緩和ケアを受ける人の平均余命

緩和ケアに対して、治る見込みのない人が受けるものというイメージを持つ人も多いですが、必ずしも治療の手立てがないわけではありません。しかし大病を患っている状態には間違いなく、病状によっては余命があまり残されていない可能性も考えられます。そこで、まずは緩和ケアを受ける人の平均余命や緩和ケアが寿命に及ぼす影響について紹介します。

平均余命は病名、病状などで異なる

大きな病を患っていると診断された場合、医師から余命宣告がなされ、緩和ケアを勧められることがあります。余命宣告は患者や家族への衝撃が大きいため、あくまで病状を知る目安として伝えられます。

具体的には、がんなどの場合は進行ステージごとの5年相対生存率などの指標を用いて、3か月や半年などの月単位や、1年、3年、5年、10年などの年単位での生存割合が伝えられます。したがって、緩和ケアを受ける人の余命も病名や病状によって異なります。

緩和ケア病棟の平均入院日数が1~2か月程度であることから、平均余命も同じくらいではないかと心配になるかもしれませんが、一概に同じではありません。例えば、国立がんセンターの緩和ケア病棟への平均在院日数は14日間ですが、これは在宅療養支援のための入院が多いからです。ただし、余命3か月の診断を受けた人のみ緩和ケア病棟に入院できるという病院もあります。

緩和ケアが平均余命に影響を与える可能性も

早い段階から緩和ケアを始めると、余命が伸びることがあると言われています。患者のQOL(クオリティ・オブ・ライフ:生活の質)が向上することで精神疾患などの併発が減り、通常ケアに比べて生存率が高まったという研究結果も存在します。必ずとは言い切れないものの緩和ケアが平均余命の伸長にも良い影響を与える可能性があり、緩和ケア病棟や緩和ケアのできる施設も増加傾向にあります。

緩和ケアとは何か?ケアの内容について知ろう

大切な家族に寄り添う際は、緩和ケアが終末期の患者だけが受けるものではないことを知っておく必要があります。ここからは、緩和ケアの定義と具体的なケア内容について解説するので、正しい知識を身に付けるための参考にしてください。

緩和ケアの定義

緩和ケアについて、WHOは「生命を脅かす疾患によって問題に直面する患者とその家族を対象とするもの」と定めました。以前の緩和ケアは、必要な治療をすべておこない、ほかに有効な手立てがなくなった段階で取り入れるものでしたが、近年はその意味合いに変化が起きています。
現在の緩和ケアの目的は、がんなどの重い病を患った人の身体面だけでなく精神的・社会的な苦しみや痛みを和らげることです。終末期に実施される印象が強いですが、早い段階で治療と並行しながらおこなわれます。
そのため、緩和ケアが始まったとしても病気が治る見込みがなくなるわけではありません。病状によっては完治の可能性も残されています。また、緩和ケアは患者のQOLの向上・維持を目標とするものです。家族もケアを受ける対象となり、患者が亡くなった後の遺族の悲しみにも配慮が向けられます。
緩和ケアと似た言葉にターミナルケアがありますが、両者はそれぞれ異なるものです。主な違いは、ケアの開始時期と目的。ターミナルケアの詳細については、下記の記事を参考にしてみてください。

具体的な緩和ケアの内容

痛みやつらさを取り除くケアはもちろん、食事を堪能したり、夜にゆっくり寝たりといった通常の生活を送るためのケアや、元気な気持ちを保つためのケアなどがあります。総合的なケアをおこなうため、医師や看護師に限らず理学療法士や栄養士、薬剤師などさまざまな専門家が揃ったチームで協力体制を組むのが基本です。
また、患者は緩和ケア病棟への入院もしくは在宅ケアのどちらかを選べます。入院した場合は担当医師や看護師が24時間対応してくれる点、在宅ケアでは慣れ親しんだ自宅でケアを受けられる点がメリット。本人が望むことを優先的に考えて、ケア方法を決めてください。

緩和ケアを受ける人との向き合い方

緩和ケアを受けるとき、患者本人は精神的に大きなショックを感じ、気持ちの変化が起きていることが多いです。また、周りの家族や親しい人が本人と同じように悩みを抱えることも少なくありません。そこで、ここからは緩和ケアを受ける患者との向き合い方について紹介します。

病気について正しく理解する

まずは、患者の病気を正しく理解することから始めます。医療技術は日々進歩し続けているため、自分が持つ病気のイメージは古くなっているかもしれません。病気の最新情報を理解した上で、緩和ケアを受ける人と向き合うことが大切です。今後予定している治療がある場合も、具体的な内容や副作用などを把握するようにしてください。

相手の気持ちに寄り添い、話に耳を傾ける

緩和ケアを受ける人と向き合うときは、本人がどのような気持ちなのか想像しながら寄り添うことを意識してください。患者は、病気によって過度な気遣いをされたり、アドバイスを受けたりすることを望んでいないことも多いです。
相談を受けた際には「何に迷っているのか」「何に不安を感じているのか」と悩みを聞いて共感を示すと、患者の心にのし掛かる負担の軽減につながります。また、意見を言う場面では自分の気持ちを押し付けていないか注意することも重要です。
患者には、どのようなときもそばにいて話を聞いてくれる人が必要。家族が病気になったことを嘆くばかりではなく「今後どういった形で一緒に過ごすのか」「充実した時間を過ごすためには何をするべきか」などを考えると良いかもしれません。

自分の生活を犠牲にしない

大病を患った家族がいると、生活の大部分が患者のケアに集中しがちです。そのため、看病する家族は第2の患者と呼ばれることがあります。しかし、それぞれに守るべき日常があり、すべてを犠牲にして患者に尽くす生活は長く続きません。無理をせず、自分の生活を大事にすることも意識する必要があります。
また診断直後は患者本人だけでなく家族も苛立ちや不安感といったストレスを感じるときがありますが、2~3週間で落ち着く場合がほとんど。もし不調が長引くようなら、心の専門家への相談も検討してみてください。

余命宣告を受けて緩和ケアを始めた人にかけてあげたい言葉

緩和ケアを受ける人のなかには、余命宣告を受けた上で治療を続けている人もいます。ここでは、余命が長くない人にかける言葉について例文を用いながら紹介するので、患者に寄り添うために役立ててください。

気持ちに共感する言葉

つらい思いを抱く患者には、共感を示す言葉や、そばに寄り添っていることを伝える言葉をかけると安心感を与えられます。
【家族がかける言葉の例】
  • つらくなったらすぐに呼んでね
  • いつでも話を聞くよ
  • できることがあったら言ってね
  • とても治療を頑張ってるね
【お見舞いに来た人がかける言葉の例】
  • つらかったね
  • 大変だったね

前向きになれる言葉

前向きになれる言葉は、患者の気持ちを明るくするきっかけになります。また、少し先の予定について話すのもおすすめです。
【家族がかける言葉の例】
  • 退院したら○○(患者の名前)が好きな□□へドライブしようか
  • この治療を終えたら好物の□□を食べよう
【お見舞いに来た人がかける言葉の例】
  • 来月は手術から3年になるから、みんなで集まって食事に行こう
未来がイメージできる現実的な予定の話は、患者の希望や励みにつながります。ただし、悲観的になっている人に対して無理に前向きな言葉をかけると裏目に出ることもあるため、相手の様子を見てかける言葉を決めてください。

気を付けたい言葉

患者と向き合う際には、気を付けたい言葉も把握しておく必要があります。根拠のない回復への見通しや軽率に励ましの言葉を使うと、悪気はなくても相手を傷つけてしまうかもしれないので注意してください。
【気を付けたい言葉の例】
  • きっと治るよ
  • 大丈夫だよ
  • 頑張ってね
また「早く良くなってね」は相手に負担をかける可能性があり「かわいそうに」は憐れみと捉えられることがあるため、こうした言葉も軽々しく使わない方が無難です。

余命は緩和ケアで伸びることも。大切なのは相手に寄り添う気持ち

終末期に受けるものと誤解を抱きやすい緩和ケアですが、近年は患者のQOL向上を目的として早めに開始されるケースも増えています。また早期に緩和ケアを受けることで、患者の余命が伸びる可能性も。そのため、大切な人が緩和ケアを受けることになっても悲観する必要はありません。患者の気持ちに寄り添い、本人の望む形で一緒の時間を過ごしてくださいね。