お通夜で遺体との顔合わせを促されたら?作法や辞退のマナー

お葬式のマナー・基礎知識
お通夜で遺体との顔合わせを促されたら?作法や辞退のマナー

この記事はこんな方におすすめです

遺体との顔合わせをする際の作法を知りたい人
遺体との顔合わせを辞退する際のマナーを知りたい人
家族や親族・親しかった人が亡くなったとき、最後に一目でも顔を見たいと思う人も少なくないでしょう。しかしながらマナーを知らずに遺体と顔合わせをしてしまうと、遺族に不快な思いをさせてしまうことも。この記事では、お通夜で遺体と顔合わせをする際の作法や辞退したいときのマナーを紹介します。

お通夜で遺体と顔を合わせることがある

基本的には、遺族から「顔を見てお別れをしてやってください」と促された場合に限り、故人と対面できます。遺体と顔を合わせる機会は、「逝去後の安置場所」や「葬儀後の告別の儀(お別れ)」でもありますが、お通夜時に設けられるのが一般的です。
遺体との顔合わせは、自然死や死後化粧などによって顔が見られる状態であれば、基本的には可能でしょう。しかし、亡くなった理由や遺言書の内容などにより遺族が拒否した場合は対面できません。また、遺族が火葬のみをおこなう直葬(ちょくそう)を選択している場合などは、お通夜や告別式をおこなわないこともあります。その場合も、顔合わせの機会は設けられません。
基本的に、対面は促された場合に限られるため、自分から顔を見たいと申し出るのはマナー違反にあたります。遺族に顔合わせを促されなかった場合は、顔合わせはできないものと認識するのが一般的なマナーです。
もし、どうしても最後に一度顔を見ておきたい場合は、必ず遺族に「拝顔(はいがん)してもよろしいですか」と確認するようにします。遺族の様子や場の雰囲気から、直接遺族に声をかけにくい場合は、近くにいる葬儀社のスタッフに確認してみると良いかもしれません。

知っておきたい作法・対面時に述べるお礼の言葉

遺体との顔合わせを促されたときは、遺族の気持ちを尊重して、できるだけ受けるのが望ましいでしょう。顔を合わせる際は、まず遺族に対面のお礼を伝えるのがマナー。ここでは、遺体と顔を合わせるときのマナーを状況別に、また、対面時に遺族に述べるお礼の言葉について確認しておきます。

布団に安置されている場合の作法

遺体と顔を合わせる前に、お悔みの言葉を述べたのち、遺族に対面のお礼を述べるのがマナーです。遺体の枕元から少し下がって正座をし、両手を床につけて深く一礼します。
遺族が遺体の顔にかかっている白い布を取ったら、膝をつけたまま遺体に近づいて顔を合わせます。床に膝をつけたまま遺体に近づき、床や足から手を離さずにおこなうのが作法です。
顔合わせが済んだら、合掌して深く一礼、枕元から下がり、遺族に一礼してからその場から離れます。

棺に納められている場合の作法

布団に安置されている場合と同じように、顔を合わせる前にまず遺族に対面のお礼を述べます。遺体の顔の少し下で一礼し、遺族が柩(ひつぎ=遺体の納められた状態)の扉を開けたら、そっと近づき遺体と顔を合わせます。もしあらかじめ扉が開けられている場合は、そのままそっと近づいて構いません。
顔合わせが済んだら、合掌して深く一礼、遺体から下がり、遺族に一礼してからその場から離れます。

対面時に遺族へ述べるお礼の言葉

遺体と顔合わせをする前は、遺族の方々に「ありがとうございます。対面させていただきます」「では、お別れをさせていただきます」などとお礼を述べてから対面します。
布団に安置されている場合も、棺に納められている場合も、遺体との顔合わせが済んだ後は「この度はご愁傷様です」「お悔やみ申し上げます」などに加え、「きれいなお顔ですね」「安やかなお顔で眠られていますね」などの遺族をいたわる言葉で短く切り上げるのが一般的です。
最後は対面のお礼として「ありがとうございました」と締め括ります。

辛くて遺体との顔合わせを辞退したいときのマナー

遺族に遺体との顔合わせを促された場合は、相手の気持ちを慮(おもんぱか)り、できる限り受けるのが礼儀です。しかし、こちら側の精神的ダメージが強かったり、取り乱したりしてしまいそうな場合は、顔合わせを辞退することもできます。
そのような場合は、以下のように率直な理由を伝えて辞退するようにします。
<顔合わせを辞退する理由の例>
・お会いするのが辛すぎますので
・ひどく取り乱してしまいかねませんので
・これ以上は辛くて耐えかねます
・生前の元気な姿を大切な思い出にしたいので など
対面を促されたとき、どうしても気持ちの整理がつかない場合もあるでしょう。対面を辞退するのは可能ですが、その際は遺族のせっかくの心遣いを否定するような言葉を慎むのがマナーです。

遺体と顔を合わせるときの注意点

遺体と顔を合わせるときは、遺体や白い布に勝手に触れない、柩の扉は遺族が開けるまで待つ、死因や病名を尋ねることはしない、できるだけ涙を見せないなど、事前に知っておきたい注意点がいくつかあります。ここから、遺体と顔を合わせる際の注意点を見ていきます。

顔にかけられた白い布や遺体には触れない

布団に安置されている遺体と顔を合わせる際は、遺体の顔にかけられた白い布を遺族が取るまで勝手に触らないのがマナーです。白い布を遺族が取った後に、遺体に近づくようにします。
また、遺体に勝手に触れるのはマナー違反です。死因やご遺体の状態によっては感染症などのリスクもありますので、必ず遺族の許可を取ってから触れるようにします。

棺に勝手に触れない・扉を自ら開けない

顔合わせでは、遺体はもちろん、棺にも手を触れてはいけません。柩の扉が開いていない場合は、自分では開けずに、遺族か葬儀社が開けるのを待ってから対面します。

死因や病名を尋ねない

故人の死因や病名、亡くなったときの様子などを遺族に尋ねるのはやめておくべきです。遺族の中には、死因や病名を話したくない人もいます。また、死因を話すことで遺族の悲しみが深くなってしまうかもしれません。遺族の気持ちを慮り、不必要なことは聞かないようにするのがマナーです。

長居をしない

ほかの参列者が顔合わせを待っている場合があるため、遺体との顔合わせはできるだけ短い時間で切り上げるようにします。遺族にかける言葉も、なるべく短く済ませるのが無難です。
遺族は葬儀の準備などで忙しくなることがあるため、特に手伝いなどを頼まれていなければ、長居はしないようにします。

声をあげたり取り乱さない

弔問客はできるだけ声をあげたり取り乱さないようにするのがマナーです。顔を見たら平静さを失いそうなくらい辛い場合は、事前に遺体との顔合わせを辞退するようにします。
弔問する側の悲しみやどうしたら良いか分からない気持ちも分かりますが、一番辛く悲しいのは遺族です。遺族の悲しみに寄り添うよう、心がけてみてください。
このように注意点はあるものの、すべてのマナーを厳密に守る必要はありません。大切なのは、故人の冥福を祈ること、遺族に対するお悔やみの気持ちを持つことです。遺体との顔合わせで振る舞いに不安があるときは、前の人の動きに倣うと良いでしょう。

マナーを心得て遺体との顔合わせを

お通夜で遺族に遺体との顔合わせを促された場合は、遺族への気持ちを慮り、できる限り受けるようにします。しかし精神的なダメージが大きいなどの理由がある場合は、辞退も可能です。また、遺体が布団に安置されている場合は、顔にかかっている白い布を自ら取らない、遺体に勝手に触れない、棺に納められている場合はその扉を勝手に開けないなど、事前に注意点を確認しておくことが重要です。

監修:1級葬祭ディレクター 瀬戸隆史

家族葬のファミーユにて新入社員にお葬式のマナー、業界知識などを伝える葬祭基礎研修の講師を務める。
【保有資格】1級葬祭ディレクター(厚生労働省認定)/サービス介助士、訪問介護員2級養成研修課程修了