おかあさまと、同じ空を見た日

ご家族様が語られる故人様のお話は実に鮮明に、私たちスタッフの脳裏に、心に、焼きつくものです。
先日担当させていただいたお式も、もちろん、そうでした。故人様は大の乗り物好きで、ドライブでは自然の緑や花々を眺めるのが大好きだったこと。お亡くなりになる2年ほど前に、ご長男様と一緒に阿蘇でのヘリコプター遊覧を大層楽しまれたこと。

故人様との思い出を、一つひとつかみしめながらお話されるご家族様のなかに「もう一度乗り物に乗せてあげたい」という想いが一層強まるのを感じました。同時に私たちも、故人様のために、ご家族様のために「何ができるのか」、頭の中を巡らせ、スタッフ同士でアイデアを搾り出したのです。

当然のことながら、お通夜までそれほどお時間はございません。私たちは、伺ったお話と、これまでの経験とを総動員させ、一つひとつ丁寧に、すばやく確実な行動を取ることを心がけました。

お通夜当日。入口にはヘリコプターの模型と故人様の写真をお飾りし、ご家族様をお迎えしました。そして、思い出の阿蘇の空撮写真が広がる会場へとご案内したのです。その景色は、故人様が目にしたものと、まったく同じではないかもしれません。ただ、故人様の胸に残っていた景色を、ご家族様が一目見ただけで想起し、思い出としてずっと大切にしていただければ...と、全身全霊で再現しました。

ご家族様には感謝のお言葉をかけていただき、私たちも精一杯のことをさせていただいたつもりではございますが、いつものことながら「もっとできることはなかったか」と振り返ることもありました。しかし、そんな思いも後日、ご家族様から届いた一通のお手紙に解きほぐされました。そこに綴られていた、「人とのご縁、感謝そして優しい方への気持ちを忘れず、同じように生きていくこと」というお言葉は、故人様からご家族様、そして私たちへとつながったように思えます。私たちを選んでくださったこと、私たちを家族の一員だとおっしゃっていただいたこと、スタッフ一同、とても深く感謝いたしております。